人見知り転生させられて魔法薬作りはじめました…

雪見だいふく

文字の大きさ
40 / 99
皇都騒動

何もできません…

しおりを挟む

「治せない…?」

 レンルナードさんがポツリと呟いた。信じたくないというように。

「はい。申し訳ありませんが…私には治すことができません」

 しっかりと目を見て伝えた。いつもなら、親しくない人と目を見て話すなんて絶対に避けたい。でも、今回はそんなこと言っていられない。きちんと目を見て伝えたかった。

「何故ですか…?貴方様は以前、酷い怪我を負っていたレンルナード様を治すことが出来たと聞いております。なのに何故!?」

 フォルさんに詰め寄られる。余りの勢いに思わず身を竦ませてしまったが、すぐにバロンさんが抑えてくれた。

「フォル!落ち着け、気持ちは分かる。だが落ち着くんだ。セーレ殿、怖がらせてしまって本当に申し訳ない。セーレ殿が治すことは無理だと仰る根拠について、聞かせて頂けないだろうか?」

「はい。まず、魔法薬も万能ではない。それを踏まえた上で私の話を聞いて頂きたいのです」

 私がそう言うとバロンさんは頷いてくれる。呆然としていたレンルナードさんも、復活して頷いて話を聞こうとしてくれているし、フォルさんも我に返って真剣にこちらを見ている。
 言葉に詰まったりしないようにしなくては…しっかり伝える為に頑張らないと。

「レンルナード様のお怪我を治すことが出来たのは、外傷だったからです。魔法薬は大抵の呪い、毒、外傷は治すことが出来ます。ですが、体の内側を蝕んでいく病には効かないのです。呪いも、治せないものもあります。
 今回の皇女様の人形化はその治せない部類のもののようです。王様に使われた解呪薬は効果はなかったんですよね?」

「あぁ…薬師長ですら治せなかったんだ。魔法でなら治せるのかと色々と試したが…どれも結果は思わしくはなかった。だから魔法薬に賭けたんだ。だが…それも無理となると…」

 レンルナードさんがとても苦しそうに言う。あぁ、本当に最後の賭けだったんだ。だからこそ、こんな場所まで来て素性の知れない私に頼んだ。でも私には治せない。ならこんな場所に長居してもらうべきじゃない。早く帰って皇女様を治す手段を探すなりした方がいいだろう。

「お役に立てなくてすみません…あの、もう帰られた方がいいと思います。私には治すことができませんし…ノワール、送って行って差し上げて?」

 私が頼むと、ノワールは不本意そうな顔をしながら かしこまりました と言った。申し訳ないが、一刻も早く帰った方がいいだろう。人形化については知らないが、時間が経つ程まずい気がする。仮にもし、呪いだったのなら時間が経つ程解けにくくなったり、解けなくなったりするのだ。だから早く。これが私に出来る精一杯のお手伝いだ。

「待ってくれ!流石にそこまでしてもらうわけには…」

「私でしたら一瞬で送り届けて差し上げますよ?転移魔法を使えばすぐですから」

「転移魔法ですか!?あの使える者が世界にも数人程度しかいないと言われるあの!?」

 いきなりフォルさんのテンションが上がった。そ、そんなに珍しいのか…ノワール達は気軽につかっているから知らなかった。レンルナードさんが咳払いをしたからか慌てて取り繕った。どうやら魔法のことになるとテンションが上がるらしい。

「あの…ノワールに送ってもらって下さい。その方が早く帰れますから」

 ノワールを見ると心得たとばかりに頷いて魔法を発動させる準備をし始めた。と言ってもすぐに終わってしまうのだが。
 ノワールの発動させた魔法によってできた光に、三人が包まれていく。もうすぐで転移できるというところでレンルナードさんに声をかけられた。

「セーレさん!いや…セーレ!気にしなくてもいい、治せなかったのはセーレの責任じゃない。元はと言えば自国のことを満足に解決できないこちらが悪いんだ。だから気にする必要はない。また会おう!」

 そう言ってレンルナードさんは転移して行った。残ったのは私とディアルマだけだ。暫くぼーっとしているとディアルマが私の手に擦り寄ってきた。

「主、帰ろう。帰ってノワールを待とう。疲れただろう?紅茶でも飲んでゆっくりしよう」

 そうディアルマは気遣ってくれる。此処にいてもしょうがないのだが、何故か足が動かない。
 そんな私を見かねてディアルマが魔法を発動させた。転移魔法だ、家へと連れ帰ってくれるのだろう。
 その間、私の心はずっと無力感で締め付けられていた。




ーーーーレンルナードside

 ノワールの転移魔法によって国に帰ってきた。出て行く時は必ず治す方法を持ち帰ってみせると意気込んでいたのに…たった一人の大切な妹を治すことすらできないでいる自分に腹が立つ。二人も同じ気持ちなのだろう。その顔色は浮かない。

「おい」

 ノワールに声をかけられた。なんだとノワールの方を見遣る。

「お前の曽祖父の墓を暴け」

「は?何言って…」

「話はそれだけだ」

 言いたいことだけ言ってノワールは消えた。曽祖父の墓を暴けだと…?

「バロン、フォル。一度皇宮に帰り、その後墓を暴く」

「「御意」」

 何故そんなことを言ったのかは分からない。分からないが、やるしかない。
 
 ルシェを家族を助ける為なら多少の無茶は押し通してやる。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

処理中です...