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真実
秘密
しおりを挟む朝食どころではなくなってしまった。
話す…?ずっと知りたかった。何故私だったのかと。他に行きたい人もいると思うのに、行きたくないと言った私を送ったのは何故なのか。
それを今、聞くことができる。
「わかりました。お願いします、ルトラス様。話して下さい」
私も真っ直ぐに見る。ルトラス様は頷いて近くにあるテーブルセットに腰かけた。私も同じように席につく。二人は座らず、私の後ろで立つようだ。
「まずはセーレを選んだ理由。それはね君が神の使者になる魂を持っていたからだ」
神の使者…?
「神の使者は文字通り、神の遣いとして生きる者のことなんだ。世界は無数に存在している。神もたくさんいるんだ。上位から下位まで様々だ。上位は神の暮らす世界に存在していて、数多の世界を守っている。下位は自分が守護する世界にしか存在できない。己が守護する世界が壊れたら、自分も消える者もいる」
神様がそんなにいるのか…
「上位の神様なら誰でも神の使者を連れているのですか?」
「いや、そんなことはない。神の使者は僕にしかいない。僕は数多いる神の王だ。自分の創った世界の他にも、沢山の世界を見なければならない。そうなると僕だけでは無理なんだ。全ての世界を見ることができないと、もし何かあった時対処するのが遅れてしまうんだ。対処が遅れてしまったら、その世界は滅んでしまうかもしれない。だから僕の代わりに世界を見てくれる神の使者が必要なんだよ」
そんなに重要な役割を担う神の使者。そして私は神の使者になる魂の持ち主…?それにルトラス様は神の王?もうついて行けていない。
「混乱させてしまってごめんね。君をこの世界に強引に連れてきたのにも魂が関係するんだ。神の使者になる魂はとても脆い。放っておくとすぐに死んでしまうんだ。セーレ、君も死にかけていたんだよ」
「私が死にかけていた…?そんなことないです!健康でしたし、重い病気は何一つとしてありませんでした」
私は自他共に認めるくらい体が強かった。病気もたまに風邪になるくらいで、他の病気は一切したことがない。
しかしルトラス様は首を横に振る。
「僕が言う死にかけていたっていうのはね、君の体ではなく、存在なんだ」
「存在…?」
「そう。君は昔から影が薄かったでしょう?それがもっと酷くなってくると誰も君の存在を思い出せなくなっていたんだ。でも君には家族がいたから、そこまでにならずにすんでいたんだよ。君の家族が常に君の存在を肯定してくれていた、だから君は消えずにすんだんだ」
勿論友達もねと言って笑うルトラス様。私の影が薄いのは私の性格なのだと思っていた。人見知りで上手く人と話すことができないからだと。まさか魂のせいだったとは…どう改善しようとしても上手くいかないわけだ。納得した。
「そうやって君は存在を保ち続けていた。でも…もうそろそろ家族や友達だけでは限界だったんだ。そのままなら後もって2日だった。だから強引にアルライトに行かせたんだ。黙っていてごめんね」
そう言ってルトラス様は私に頭を下げる。いやいやいや!!ちょっと待って!!
「ルトラス様!頭を上げてください!!確かに行かされた時は泣きました。早く帰りたかったですし…でも、理由を聞いて納得しました。私後2日しか保たなかったんですね…助けて頂き有難う御座いました。
あの…聞いてもいいですか?何故私の家族と友達の記憶を消したんでしょうか?」
もう一つ私が聞きたかったこと。あの時はろくに聞くこともできなかったから、知れるなら知りたい。
「勿論いいよ。記憶を消したのは、セーレがいなくなってしまったことに、君の家族と友達が耐えられないと思ったから。彼らはセーレをとても大切にしていた。本当に忘れることもなく、いつも気にかけていたんだよ。そんな彼らが君が消えて悲しまないはずがない。だから消したんだ。もう会わせることもできないから、忘れた方がいいって思って」
……そうだったのか…離れてもう二度と会えなくなって初めて知った。地球にいた頃は弟妹達にかかりっきりだったから、私だけに何かしてもらったことなんて数えるほどしかない。でも私はそんな家族が大好きだった。私達を大切にしてくれる両親が好きだし、私を見てくれていた兄も、手はかかったが、私を慕ってくれていた弟妹達も皆大好きだ。私の大好きな家族が、私と同じ気持ちでいてくれた。それが本当に嬉しい。友達も、私が唯一人見知りしないで話せた彼女も、私のことを大切に想ってくれていた。本当に幸せだ。
私の大好きな人達にはいつまでも泣いていてほしくない。私のことを忘れてしまってもいいから笑っていてほしい。今やっと本心からそう思えた。
「ルトラス様、私の大切な人達のことを気にかけてくれて有難う御座います。とても嬉しいです」
精一杯の笑顔で言う。ルトラス様がやっぱりやめておけばよかったなんて思わないように、今できる最大の笑顔で言った。
そんな私にルトラス様は少しだけ微笑んでくれた。
「ありがとうセーレ…私のことを考えてくれる、その気持ちが本当に嬉しいよ。君の大切な人達のことは心配しないで。ちゃんと見ているから」
神の王様に見て頂けているなら絶対に大丈夫だろう。私には大切な人達の幸せを祈ることしかできないが、幸せになってほしいと思う。
そんな私の心が分かっているのだろう。ルトラス様は任せてとばかりに頷いてくれた。
「有難う御座います、ルトラス様。これからも宜しくお願いします。
それで…私はもう神の使者なんですか?」
大事なことはきちんと聞かなければ。
「いや、まだだよ。というか…今のセーレではなれないんだ」
「どういうことです?私は神の使者になることが決定された魂なのでは…?」
「確かにそうだ。セーレには神の使者になってもらわないといけない。何故なれないかというと、それはダンタリオンが関係している」
「ダンタリオンが…ですか?」
ダンタリオンがどうかしたのだろうか。
「そうダンタリオンの正体が関係してるんだ」
「正体ですか…?ダンタリオンはルトラス様と何か関係があるということですか?」
ルトラス様が頷く。そして言い辛そうに、苦々しげに言った。
「ダンタリオンはね…」
神の使者なんだ
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