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ドキドキッ?デート
えぇ…と
しおりを挟む「ってことがあったんだけど、この世界では普通なの?」
ミラージュファーマシーを閉めて、家に帰ってきた。私はすぐに、二人を呼んだ。質問がしたかったのだ。呼ばれて駆けつけ、質問をぶつけられた二人は顔を見合わせている。
「花祭り?もうそんな時期なのか…」
「そうみたいだな。時が経つのは早いものだ。主様、花祭りに行くこと自体は問題御座いません。人間は友達といわれる間柄の者と、一緒に行ったりもしますから。問題は、一緒に行く相手です」
「相手はレンルナードさんだよ?やっぱり皇子様だし、ダメかな?」
「普通の相手より問題はあるかと。……あの小僧、人がいない隙に……」
「え?問題はあるの後、何か言った?」
最初の方は聞こえたのだが、後の方は聞こえなかった。ボソボソと何か言っていたようだが…
「いえ、何も」
「そ、そうですか…」
ノワールに眩しい程の笑顔で言われ、もう一度聞くこともできない。 聞きませんよね? と視線が語っている。こうなると、もう何も言えない。私のメンタルはそこまで強くない。
「主様、彼はアキュリスタ帝国の第二皇子です。当然ご令嬢方の人気もあるかと。そんな人物と二人で花祭りに行ったと知られたら…嫉妬の嵐が巻き起こり、何をされるか分かりません。それを覚悟なされるなら、行かれても宜しいかと」
「ひぇぇ…」
思わず情けない声が出る。私にご令嬢の知り合いなんていないが、地球にあった物語の中に出てくるご令嬢は、なかなか苛烈な性格をしている人もいた。勿論全てではないだろう。だが、苛烈な性格をしているご令嬢の虐め方が凄かったのだ。教科書を破るのは序の口で、酷いものは強姦の被害に遭わせようとしていた。架空のお話なのだが、そんなご令嬢から虐められるのかと思うと、怖くて仕方がない。
「でぃ、ディアルマは…どう思う?」
おそるおそるディアルマにも聞いてみる。
「まぁ、確かにそういう奴もいる。貴族というのは、優雅なふりをして陰険なのが多い。他者を追い落とす者も珍しくないと聞く。社交界は華々しく煌びやかに見えて、実はドロドロしているというのもよく聞く話だ。当然そこに生きる令嬢も、一筋縄ではいかない性格の者もいるだろうな」
「聞いたって誰から…?」
そこいら辺にいる噂好きのおばさんに聞いたとかなら、そこまで信憑性はない。
「自然から聞いた。主に風だな。風は世界中を周る。情報を聞くのには最適なんだ」
「へ、へぇ…」
まさかの人ではなく、自然そのもの。これは信憑性が高そうだ。風は、少しの隙間さえあれば入ってくるのだ。聞きたい放題だろう。
「こ、怖いから…断ろうかな…」
「えぇ。それが宜しいかと。では晩ご飯に致しましょうか。準備はできておりますよ」
「はーい!あ、私手を洗ってくるね」
洗面所に向かった私は知らなかった。
「クククッ…ご令嬢の件、あれは咄嗟に出た話なだけだろう?嫉妬の嵐が巻き起こり、何をされるか分からない?何もさせる気はないくせに、よく言う」
「うるさい。お前だってそうだろう?何故、大切な主様をあんな小僧にやらなければならない?」
「ふっ…まぁそうだな」
そんなことを二人が話していたなんて…
カランコロンッ
「いらっしゃいませ。ミラージュファーマシーにようこそ。どのような魔法薬をお求めです…か…」
来客を知らせるベルが鳴り、魔法薬を棚に片付けていた私は振り返った。最初は片付けながら言っていたので、相手を見ていなかったのだ。見るとそれは、レンルナードさんだった。思わずいつもの挨拶が止まる。今日来るとは聞いていたが…まさか今来るなんて。今日は二人共いないのだ。神の眷属の仕事があるらしい。
「こんにちはセーレ。花祭りの件、考えてくれたか?」
「え、えぇと…ご、ごめんなさい…!あの…や、やっぱりその…ご令嬢に恨まれるのも怖いですし…」
そう言って断ろうとした時
「恨まれるのだけか?」
「え?」
まだ話していた途中だったのに、レンルナードさんに遮られた。
「恨まれるのだけが不安で、断ろうとしているのか?」
「は、はい…」
他に理由はない。そもそも花祭りがどんなものか、詳しくは知らないのだ。他に嫌がる理由は…特にない。
「なら一緒に行こう。令嬢は心配要らない。何も気にすることはないんだ。今日はこれだけ聞きにきた。また詳しく決めよう。すまないが、今日はもう戻らなければ。またな、セーレ」
そう言い残して去っていってしまった。止める隙もない、正に早技だ。
こ、これは…行くの決定です…か?
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