人見知り転生させられて魔法薬作りはじめました…

雪見だいふく

文字の大きさ
91 / 99

暑い…!

しおりを挟む

「まさかこんな所に出るとは…」

「想定外だな」

「うん…送ってください!とは言ったけども」

 想定外すぎた。私達は開いた口が塞がらない。

「何も砂漠のど真ん中に送らなくとも…」
  
 ノワールが呟いたことが全てだ。そう。本当に砂漠のど真ん中。向こうの方に緑が見える気がするが、見渡す限り砂。砂しかない。照りつける太陽のせいで灼熱地獄だ。

「神の息吹を探す前に、私達が倒れそうだよ…」

 茹だるように暑い。まさかこんな所に送られるとは想定もしていなかったから、水も食料もない。何のサバイバルだろうか…


「主、早く此処から離れよう。此処にいては主が危険だ。遠くに見える緑に向かって進もう。きっとオアシスだと思う」

 乗れ と言わんばかりに伏せをするディアルマ。でも…

「でも…ディアルマも大変でしょう?暑いし、そんなことして大丈夫なの?」

「主、忘れたのか?俺達は神の眷属だぞ?これくらいどうってことない」

「そうです。今一番この場で危険なのは、主様です。ディアルマの指示に従って下さい」

 二人がかりで説得されれば従うしかない。それに二人とも本当に平気そうだ。これが神の眷属と、人間の差なのだろうか…

「分かった。ディアルマ、お願いね。無理だと思ったらすぐに言って。約束してくれる?」

「あぁ勿論だ。俺が主との約束を違えるはずがないだろう?さぁ、早く」

 急かされて急いで背中に乗る。私が乗ったのを確認したディアルマは、風のように走り出した。いつもよりスピードが速い。

「そ、そんなに急がなくても大丈夫だよ?しんどくない?」

「しんどくない。だから大丈夫だ。主は安心して乗っていてくれ」

 ディアルマは走り続ける。ノワールもディアルマと並走しているが、二人とも全く息を乱していない。私達は、砂漠の中を風のように走り抜けた。







 暫く走って、オアシスに到着した。そこで漸く二人も落ち着いたらしい。ふぅ…と息をついた。

「危なかったな…あのままゆっくり進んでいたら、主が倒れていた」

「主様、此処は普段生活されている場所とは何もかも異なります。もし少しでも、異変を感じられたらすぐに仰って下さい」

 二人の真剣さにタジタジになってしまう。

「わ、分かった。すぐに言うね。それにしても…何処に神の息吹があるんだろう?」

 私がそう聞くと、二人とも考え始めた。

「全く神の気配を感じません。ディアルマは?」

「俺もだ。何も感じない。でも、ルトラス様が此処に送られたんだ。きっと何処かにある」

「この広大な砂漠を全て探すのは不可能だ。海の中とも状況が異なる。前はすぐに分かったから良かったが…力が失われて時が立ち過ぎたのか?」

「それしか考えられないな…」

 二人が話し合いをしている。話し合いというより意見交換か。それにしても本当に暑い。日本の暑さとは比べものにならない。

「ねぇ。オアシスって此処にしかないのかな?」
 
 私が素朴な疑問をぶつけると、二人とも一斉に振り返った。

「此処にしかないかと思われますが…此処にしかない?」

 答えたノワールが自分の答えに違和感を持つ。

「俺の力を使っても此処しか分からない。何故此処だけなんだ…?」

 ディアルマも違和感を持った。

「此処にしか水脈がない?いやそんなことはない。現に水は感じるんだ。このオアシスの外にも。なら何故此処にしかない?」

「生き物が全くいないのも気にかかる。この砂漠に生きるものにとって、オアシスは大切なはずだ。考えれば考えるほど疑問しかないな…主様、もう暫くお待ち頂けますか?詳しく調べてみます」

「分かった。お願いね」

 まさか私の疑問がここまで大きくなるとは思っていなかった。

 神の息吹に少しでも繋がればいいのに…


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。 日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。 両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日―― 「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」 女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。 目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。 作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。 けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。 ――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。 誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。 そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。 ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。 癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...