ゴールド・ノジャーと秘密の魔法

たまごかけキャンディー

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【一章】ゴールド・ノジャーの人助け編

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 突然だが、魔法王国と名高いこのルーベルス王国の価値観の基準は、それはもう清々しいほどに魔法の実力にある。
 貴族は爵位が高いほどに強い魔力を持っているし、代々家に受け継がれていくような魔法だって普通に存在していた。

 誰にも真似できないオリジナル性の高い魔法は家柄を表現する個性となり、魔力の大きさは爵位の大きさといっても過言ではない。
 例えば魔法の名家であるフラム伯爵家は火の魔法を代表するといったように、あらゆる面で魔法が地位に直結しているのだ。

 といっても、基本的に魔力量は本人の魂の力に依存するので、特殊な経験や訓練を積まなければ増大するようなことはない。
 だから大貴族の血を引いていても魔力量の少ないものはいるし、その逆もまたしかりだ。

 本当にほんの僅かな一例として、魔法に深い理解を持つ大貴族とかに関しては、その限りじゃないようだけどもね。
 ただ、一般的にはそうじゃないという話。

 魔力を大きく上昇させることができる、肉体に張り巡らされた魔力回路の調整だって、アカシックレコードの知識を利用した俺の黄金バフでようやく実現可能になる妙技なのだから。
 エルロンみたいに死の淵から復活するくらいじゃないと、そうそうパワーアップなんてできないのが、この魔力量というやつなのである。

 爵位が高いほど魔力が強いというのも、ある意味では高位貴族になるほど魔法への理解が深いから、修行法もある程度確立されているというだけの話に過ぎない。

 でもって、そんな生まれた時からそうそう変わることのない才能の限界について。
 今回のターゲットであるルーベルス王国の隅っこにある、それはもう小さな農村の娘、絶賛入試勉強中のユーナちゃん十四歳はどうなのかというとだ……。

「ほほう。情報は先に閲覧しておいたが、あの娘っ子、なかなかやるのぉ~」
「えっ。あいつ、わたちより魔力の扱いうまくね?」

 絶対的な魔力量こそマルクス君には遠く及ばないものの、十分に特殊な訓練を積んだ大貴族エリートに通用するほどの魔力量と、なにより精密な魔力操作技術が垣間見れたのであった。

 その魔力操作に関しては特に目を見張るものがあり、俺の横に立ち、遠くから魔法望遠鏡を覗いているツーピーがビビるレベルだ。

 まあ、ツーピーは前衛として創造したホムンクルスだからね。
 とはいっても、そんじょそこらの魔法使いより練度は高いので、一つの技術においてこいつを超えているのは驚愕に値するのは事実。

 魔力というのは大きければ大きいほどに操作難易度があがるので、それも考慮すれば、十四歳でこの操作精度を実現したユーナちゃんは一種の天才といえるだろう。

「これは合格じゃな」
「なのよね~」
「うむ、素晴らしい」

 彼女に接触する前に、最終確認として遠くから眺めてみたが、やっぱりアカシックレコードの情報通りの結果に終わった。
 彼女はいまのままでも十分に特待生入学できるほどの、努力と根性と才能を秘めた高レベルヒロインちゃんらしい。

 しかしこのままだとマルクス君に接触する機会というものが失われてしまうので、村に訪れた凄腕魔法使いポジションとして接触する予定だ。
 一応ゴールド・ノジャーの知識を得ることはユーナちゃんにもメリットのあることだし。

 特に筆記テストで出題される貴族関連の問題はクセモノである。

 それじゃ、さっそく各地を放浪する謎の魔女を装って予定地に突撃するとしますかね。
 タイミング的にはユーナちゃんが家の手伝いとして、近所の山林に売れる薬草を採取しに向かう辺りがベストだろう。

 なんでも、今日はちょうどそのあたりで魔物による襲撃が起こるらしいんだよね。





 ユーナちゃんに接触するための作戦会議から、数時間ほどが経ち。
 時刻は太陽が傾き始め、三時のおやつタイムを少し過ぎたあたりの昼下がりにて。

 俺とツーピーはターゲットをしっかり監視しつつ、少し離れた山林の一角に陣取る。
 怠惰にも大地に敷いた絨毯型結界の上で寝そべり、トラブルが起こるのはいまかいまかと待ちわびているが、なかなかそのタイミングはやってこない。

 時間的にはそろそろだと思うので油断はできないが、こうして快適な結界ライフを過ごしていると、ここが魔物の襲撃現場であることを忘れてしまいそうになる。

「ん~む。もう少しで予定時刻かな~と思うんじゃがな~」
「わたちはいつでも構わないのよ。ここには明日までいたっていい」
「そりゃお主、触り心地のよい絨毯におやつのバナナまであれば、みんなそう思うだろうて」

 まったく、これだから楽なことに流されやすい幼女は。
 もう少しで襲撃イベントなんだから、シャキっとしなさい、シャキっと。

 ちなみに今回の襲撃イベントにはツーピーの出番はなく、すべて俺が単独で解決する計画だ。
 恩を売っておかないとユーナちゃんの師匠になる権利を掴み損ねるらしいので、これは必須の案件である。

 まあ助けなくともユーナちゃんは多少のトラウマと怪我を抱えつつも、ギリギリのところで命だけは助かるらしいんだけどね。
 ただそんな未来も回避できるならしておいた方が良いだろうし、何よりこちらにもメリットがあるので見逃す手はない。

 ……と、そんなウィンウィンの関係がどうのとか、いろいろと言い訳を並び立てていたちょうどその時。

 ここから少しだけ離れた山林で、甲高い少女の悲鳴があがった。
 どうやら始まったようだ。

「ほいじゃ、いくぞ~」
「もう食べられないのよね~」

 お腹をさすさすして、食べ過ぎたバナナに満足するツーピーを乗せて絨毯は天を翔ける。

 一応ヒロインの窮地のはずなのだが、まったく緊張感がないな。
 まあ、この襲撃を計算してこの位置に陣取っていたわけだから、緊張などしようもないのは事実だけどさ……。

 そんな感じで空飛ぶ絨毯型結界はものの十数秒で目的地へとたどり着き、いままさにゴブリンの集団に襲われているうら若き乙女の頭上に姿を現すのであった。

「グギギギギ」
「グギャ、グギャッ!」
「いやっ! こないで、こないでえっ!」

 初めて魔物に襲われる焦りからか、それとも多対一という集団戦に慣れていないためか。
 彼女の本来の武器である魔法を行使せず、薬草取りに使っていた簡素なナイフを振り回し応戦している。

 扱える魔法的には十分魔物に対抗できるはずなのだが、こういう感じで焦っちゃうところも含めて実力ってやつだからね。
 いまのユーナちゃんをゲームキャラに例えるなら、将来有望だけど経験の足りないメインヒロインレベル一といったところだろうか。

 つまりこれはこれから始まる冒険の、ちょっとしたチュートリアル。
 このゴールド・ノジャーのサポートを受けて、存分に戦うがよろしい。

 ここに到着した一瞬の間に強力な結界は張り巡らせているので、もしかしなくともユーナちゃんの耐久力ヒットポイントはチュートリアルらしく無限なのであった!

「娘っ子よ。そう怯えずともよい。お前が真価を発揮すれば、この程度の雑魚に遅れなどとるまいて」
「……はえ? な、な、なあああ! 誰ぇ!? というか人が浮いてるぅう!? なんでぇ!?」

 ようやくこちらに気付いたらしい。
 そして人が飛ぶところを見たショックで逆に混乱が解けて心が落ち着いたのか、自分の周りに展開された結界を認識して感嘆の息を漏らす。

「こ、これって……。すごい、なんて精密な魔法なの……。でも、これなら……!」
「そうじゃ、それでよい。いまは戦に集中するのじゃ」

 さあ、見せておくれよヒロインの可能性を。
 いまの落ち着いた君なら、この程度の魔物、もう敵ですらないのだから。

 小さな農村の娘ユーナの運命は、いまこの瞬間に変わったのだ。

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