34 / 52
【一章】ゴールド・ノジャーの人助け編
034
しおりを挟むバルザックの件が解決してから数日後。
もうすぐマルクス君の家庭教師として復帰しようと試みている俺は、気が早いことに入学祝いにマルクス君でも使える超つよつよアイテムの製造に着手していた。
マルクス君にも使える、といっても、人間にしては規格外の大魔力を持つ天才のことであるからして、それなりにパワーのあるアイテムが製造できそうであった。
ここをこう……。
ちょちょいのちょい、とな。
うむ、いい感じに超つよつよなスゲー杖になりそうである。
たぶんマルクス君が最大魔力を込めたら、大国の首都がふっとぶレベルの大爆発が起きるくらいの代物だ。
ちょっとやりすぎ感が否めないが、第二の弟子が一生涯使える最強装備と考えれば、妥当ではなかろうか。
なお、まだ出戻りするには二か月くらいの期間があるので、この後も使いやすさとパワーを求めて研究を続けていく所存である。
やれるところまでやってしまおうの精神だ。
魔法学院組には黄金のバフをかけていないし、このくらいの装備というアドバンテージがないと勇者組に一歩も二歩も劣ってしまう。
よって、これは良い悪乗りなのだ。
「つんつん」
「何じゃ?」
「つんつん。のじゃロリ、お前いま、ちょっと怪しいのよ」
……ふぁっ!?
な、ななな、なにが怪しいというのだろうか。
くっ、くそ。
まさかツーピーに悪乗りがバレたのか?
いや、こいつ賢さのわりにポンコツだから、そんな鋭い直観なんて持っているはずがない。
きっと気のせいだ。
「な、なんのことかのう」
「ふ~ん、なのね~」
くっ、なんだその信じてませんよーみたいな顔は。
いつからこのちびっこは親を疑うように……!
……いや、それは最初からか。
うん、そうだったね。
俺の負けだよツーピー。
お前はいつでもどこでもマイペースな奴だった。
認めよう、それがツーピーの個性であると。
だが、この研究だけは譲れない。
かつて魔道具には頼らないと誓った俺だが、あれからも成長を続けているのだよ。
今度こそうまくいくはず、そう、今度こそね!
アカシックレコードを応用して生まれた知識に間違いなどあるはずがないのだ。
たとえそれがまだ未発見の知識だとしても、ベースとなる情報が限りなく正しいのだから問題ない。
そう、この杖にあとちょっと、もうちょっとだけ空間魔法の魔力を注げば、最強のマルクス装備が完成するはずなのだ!!
まかり間違って空間魔法の魔力を思いっきり混入させない限り、あとちょっとで────。
「しんちょ~に、しんちょ~に……」
「…………。…………。…………フッ」
こちょこちょこちょ~。
「ぶふぇぁあああはぁっ!!! ちょ、何するんじゃツーピー!? 不意打ちすぎて笑ってしもうたわ!」
「仕方が無いのよ。わたち何日も放置されてて、暇だったのよね~。それよりも、なんかその杖、ちょっと挙動がおかしいのよ?」
────ふぁ?
────え?
「のじゃぁあああああああ!?」
「イェーーーーーーーーー!!」
次の瞬間。
込め過ぎた空間魔法の力が大暴走した。
研究所にしていた無人の大森林のログハウスとどこかの空間が直結し、魔力暴走を起こした杖が吸い込まれていく。
幸いなことにどこかと繋がった空間は一瞬で閉じたものの、杖はそのまま消えてしまった。
というかあの勢いだと、たぶん繋がった先でとんでもない空間の大爆発を起こしているよなぁ……。
そういう仕様で作った杖だったし。
さて、どうしよう。
「まっ、やっちまったものはしゃーないのじゃ、儂、しーらない」
「すごい魔力暴走だったのよね~。わたち、ちょっと興奮したかも」
「いや、お主は少し反省せい。一週間はオヤツ抜きじゃ」
「…………っ!!」
そんな顔してもダメだよ。
いくら何度でも作り直せるといっても、いまのはちょっとやりすぎ。
とはいっても、ツーピーをずっと放置していた俺にも多少の責任はあるので、オヤツは俺も一週間抜きで過ごす所存。
こういうのはお互いの連帯責任だよね。
ま、次だよ次。
やっぱり暴走や破損のきっかけを持つ魔道具に頼るのはよくないね。
マルクス君に渡す魔法杖は、そこそこのやつにしておこっと。
プレゼントは奇をてらい過ぎず、慎重に、だな。
◇
その日、聖国の聖都セレスティア上空に、とてつもない大魔法が展開された。
この世の終わりを連想させるエネルギーの塊は渦を巻き、特定の教会勢力を飲み込んで全てを無に帰していく。
狙われた教会勢力は全て、今回の事件の発端であるゴールド・ノジャーなる魔族を絶対の敵として認識し、無き者にしようとしている過激派の者達だ。
冒険者たちがもたらした聖なる魔族という情報は一部の狂信者、そして魔族に敵対することで権力をむさぼっている者達には都合が悪かった。
故に教会側はゴールド・ノジャーを亡き者にしようとする過激派と、勇者が認めたのならば手を出すべきではないという穏健派の二つに分かれていたのだ。
そして、その結果は……。
「……なんてことだ」
「天罰だ……! 天罰だぁああ!」
「ゴールド・ノジャーが神々の使徒だという話は本当だったのだ! だから私はあれほど反対して……!」
突如上空に現れた強大な地獄に対し、口々に責任を擦り付け合う教会の者達。
ある者は地に頭をこすりつけ神に懺悔し、ある者は逃げまどい、ある者は泣き叫ぶ。
まさにこの世の終わりであった。
彼らは一様に思う。
あの冒険者たちが言っていた情報は本当だったのだと。
ゴールド・ノジャーは神に選ばれた救世の使徒。
決して手を出し手はならない者だったのだと。
そうしてしばらくの間、上空で渦巻いていた強大なエネルギーは徐々に落ち着きを取り戻し。
ゴールド・ノジャーを絶対の敵としていた勢力は、ほとんど全てが壊滅的状況に追い込まれる。
また、僅かに生き残った敵対勢力も、既に歯向かう気概など無いのだろう。
地にへたり込み、ただただ己が罪を悔い改めるのであった。
もちろんこの状況を起こした本人がアカシックレコード経由で知るのは、もう少しあとのことである。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる