40 / 52
【二章】ゴールド・ノジャーの祝福編
038
しおりを挟むどうもみなさん、こんにちは。
つい最近、弟子二人の入学を見届けて少しだけ暇になった不老の魔女。
ゴールド・ノジャーです。
いまの季節は入学式が終わり一週間後の春真っ盛り。
だいたい日本の四季と似たようなところがあるこの異世界で、現在俺とツーピーは無人の大森林にてお花見を実行していた。
まあ、この世界には桜なんてないけどね。
ではこんなことをして何になるのかというと、基本的には最近目まぐるしく動く弟子たちの周辺状況調査とか、そういう事に対する作戦会議の口実作りになるのだった。
アカシックレコードの更新には一日のタイムラグがあるので、未来演算抜きなら昨日までの情報しか確定していないが、それでもいろいろと見逃せない要素がいくつか浮き彫りになっている。
たとえば一つ例をあげるとすれば、問題となっているのは勇者ノアたちが追っている謎の事件。
聖都セレスティア上空で爆発した謎の大規模魔法についてだ。
これについて原因を探ったところ、心当たりがありすぎて冷や汗が止まらなかったね。
魔法杖を制作していたこちらの不注意で、まさか俺を亡き者にしようとしていた教会の過激派たちが一網打尽にされるとは。
アカシックレコードで確認するまでは予想もしなかったビックリ案件だ。
しかもその過激派、空間魔法の暴走により大きな被害を出して一時は反省したものの、喉元過ぎればなんとやらといった感じで、まだまだ勢いを盛り返そうと躍起になっているらしい。
まったく困ったやつらである。
こんな奴らのために調査に駆り出される勇者たちに同情を禁じ得ない。
しかも手がかりが全くない以上、まともに調査して犯人を特定する証拠をつかむ可能性は、ほぼゼロだ。
嫌になっちゃうよね。
でも、いま困っているのはそんなことじゃないんだ。
そもそも、勇者たちはそれなりに安定したパーティー構成をしているから、俺もツーピーもそこまで気にしていない。
むしろツーピーなんかは、次に勇者ノアに会ったときはどうやって煽り倒そうかと、新たなる路上ダンスを考え抜いていたくらい平和。
では何に頭を悩ましているのかというと、それは魔法学院に入学した弟子二人の周りを取り巻く権謀術数のもろもろだったりする。
現在もお花見と称した作戦会議にてもっぱら話題に上がり続け、あーでもない、こーでもないとノジャー親子の議論が白熱していた。
「そもそも前提がおかしいの。魔法学院に行ったわたちの子分たちは賢いから、貴族たちの嫌がらせにはうまく折り合いをつけて、適切な距離感を保っているんだから。なのにあいつらときたら、そういう配慮も無視でやりたい放題なのよね~」
そう、それだよそれ。
せっかく弟子たちがうまくやろうとしているのに、よりにもよってヤバイのに目をつけられたものだ。
「ほうじゃのう。しかも昨日はいよいよドンパチ始まりそうな気配じゃったしのう」
既にマルクス君とユーナちゃんは交流を果たし、魔法学院一年生の中でもトップクラスの成績を誇る。
弟子たちはお互いにサポートし合って、二人の力で逞しく生きているのだ。
それに、木偶の棒といわれたマルクス君の汚名は間違いだったと気づく者も出てきているし、二人に味方する勢力だって徐々に育ってきていた。
だが、そうじゃない勢力もいる。
その筆頭となっているのがこの国の二大公爵家たる水氷のクライベル家と、火炎のフォース家だ。
特にアンネローゼ・クライベルはとにかく平民のユーナちゃんのことを敵視していて、日夜嫌がらせに余念がない。
陰口を叩き教科書を隠したりするのは当たり前で、ひどい時には食事中に手が滑ったとのたまい頭から水をぶっかけていた。
マジモンのクソ女こと悪役令嬢のごとき活躍っぷりである。
ここまでくるとむしろ清々しいね。
将来的にユーナちゃんがコイツをぶっとばすのに、少しの良心も傷まないあたりが特に良い。
で、次のゼクス・フォースは陰湿な嫌がらせこそしないものの、とにかく傍若無人でわがままなクソガキ。
学校での成績はともかくとして、実践では自分より優れた魔法使いなど存在しないと自負しているらしく、模擬戦でマルクス君に膝をつけさせられなかったのが悔しいらしい。
俺がプレゼントした魔法杖の性能も相まって、マルクス君が模擬戦で本気を出すと校舎が崩壊してしまうからね。
対戦形式の授業では防御に徹していたみたいなんだよ。
それがまた、ゼクスにとっては舐められたと思い込んでしまった要因みたいだ。
まあ、ゼクスの感情に関してはわからなくもない。
男子っていうのは実力の近いライバルに対抗心を燃やす生き物だからだ。
もはや本能と言ってもいい。
だが、それを踏まえてもコイツはやりすぎた。
「なのよね~。それにもうそろそろ、マルクスが我慢の限界みたい。ゼクスとかいう奴にユーナが傷つけられかけたって、めっちゃ怒ってたのよ。あのバカ貴族、わたちの大切な子分に失礼しちゃうわ?」
という訳である。
いやはや、まさか学院の図書室で白昼堂々実力行使にでるとは思わなかったよ。
きっといつもマルクス君にべったりなユーナちゃんを暴力で脅して、マルクス君の本気を引き出そうとか思っていたんだろうね。
今回はたまたま変装して現場に居合わせたノジャー親子がいたから、爆音魔法で騒ぎを起こして事なきを得たけどね。
ただ、あのときゼクスの狙い通りのことになっていたらと考えると、ゾッとする思いである。
もちろんユーナちゃんの心配もあるが、問題はそこじゃない。
なにせ我が三番目の弟子たるユーナちゃんがあの程度の輩にいいようにされるなど、到底、実力的にありえないことだからだ。
では何が問題であり心配ごとなのか。
それは当然、マルクス君が本気でキレた時に収集がつかなくなるだろうことについてだ。
弟子仲間としても異性としても気になる関係になりつつあるユーナちゃんが、こんなくだらない理由で脅迫されかけたのだ。
マルクス君としては怒髪天もいいところだろう。
いやはや、本当にゼクスとかいうアホが事を起こす前に止められてよかった。
爆音によって手を出す前に未遂で終わったからこそ、マルクス君もまだ我慢できている。
「ほうじゃのう。あれはちとやりすぎじゃ」
「あいつバカなのよね~。マルクスが怒ったら、アンネローゼとかいう女もゼクスとかいう男も、一瞬でけちょんけちょんなのよ」
いやほんとに、おっしゃる通りで。
まあそんな感じの問題がいろいろとあるものだから、俺たちは頭を悩ませているわけだ。
では見守るだけで解決策はないのかというと、実はそうでもない。
マルクス君には魔法学院での仲間以外にも、彼のことを第一に考える家族、オーラ侯爵家が味方についているのだ。
いくら王族に次ぐ権力を持つ二大公爵家とはいえ、大貴族の一角たる侯爵家が本腰を入れれば易々と手はだせないだろう。
しかしかといって、学院での問題に親であるアルバン・オーラが出しゃばるというのも外聞が悪い。
だがそこはご安心を。
なんと都合のいいことに、マルクス君にはこと政争に至っては父親以上に心強い味方がついている。
それが誰なのかはもう言うまでもないかもしれないが、一応紹介するならば……。
幼い頃から兄であるマルクス・オーラの才能に心酔している彼のかわいい弟。
十二歳にしてオーラ侯爵家当主アルバンから、既に自らを超えたと称されている政争の天才。
エレン・オーラ君のことである。
「ほいじゃ、エレン坊に今回のことを密告しにいくぞえ~」
「イェーーーーーー!」
というわけで、作戦開始である。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる