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1 幼少期、少年期 編

初めての学園と入学式

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…あのパーティーから4年経った。その4年間僕にはメイドさんしかいなかった。シモンも王子殿下ということもあって手紙も話すこともあまりなかった。パーティーではこっそりと少し話すだけだった。
僕は7歳になり、今日からアルスド小中学園へ通う。
今日は確か入学式と少し歴史の授業をする予定だったはずだ。
アルスド小学園は家から少し遠いので馬車ではなく汽車で行く。

メイドがさようならの挨拶をしにきてくれる。
「いってらっしゃいませ。レセア様。」
「…ありがとうございます。」
どうやら「いってきます」の文化はないらしい。「いってらっしゃいませ」があるなら普通「いってきます」はあるのだろうと思ったけどこの4年間で学んだ。この世界の文化にはそんなものはないらしい。

汽車のところまでは近い。さっさと歩いて汽車へ向かう。

…! 汽車へ着いた。汽車へお金を払って乗る。どうやらこの汽車はチップではなくお金を入れるらしい。お金を入れて席へ座る。その後荷物を下ろし、窓を開ける。

シュッシュー!
汽車が鳴り、動き出した。汽車は乗ったことがないが、窓から頭全部を出すのは危険なので少しだけ顔を出す。
…街が見えた。様々な色の家と商店が、横並びに並んでいる。家や商店の周りは芝生が広がっていて、子供たちがそこで遊んでいる。大人たちは家に居たり、商店へ行ったりしている。商人の人たちは、「いらっしゃいませー!」や、「きてくれてありがとうございます!」というように快く迎え入れている。
…! 思い出した。俺の前世の時も、このような田舎だけど、和気あいあいとしている場所に住んでいた。懐かしく思う。そんな風に思い耽ていると、学園の最寄り駅についた。

汽車から降りて学園へ向かう。この学園は、7歳から15歳までの貴族を対象とした学園だ。大体の貴族は、アルスド学園に入学する為にここへ通う。アルスド学園とは、身分関係なしの、完全実力主義の学校で、エリートがさらに優秀になる為に通い、他のエリート達と競い合い、高め合う学園のことだ。

…! 学園へ着いた!なんというか、まあ日本の私立の学校って感じだ。正直、どんなすごいとこなんだろうと、期待していたから少し凹む。まずは入学式会場へ向かおう。
入学式場へ向かって歩いている時、僕の方を見ておそらく同級生たちが、ヒソヒソと僕への愚痴を言っている。
「あ、あの髪。忌み子の…」ヒソヒソ
「確かあそこグレイド伯爵家の…」ヒソヒソ
「知ってるよ。あそこ以外いないでしょ。」ヒソヒソ
「はぁ、なんで来るのかしら。私の目が汚れるわ」ヒソヒソ
僕の耳はいい方だから聞こえる。ヒソヒソせずに、話しかけてきたらいいのに。

そして入学式場へ着いた。沢山の人がこちらを見ている。中には行儀も悪く、ヒソヒソしてる人たちがいた。
いよいよ入学式の始まりだ!
司会が話し始める。
「皆様、ご入学おめでとうございます。本日、司会を務めさせて頂きます。シド•リーアーと申します。本日はよろしくお願いします。」

「まずは、学園主席であり、生徒会長であるハーツ•アーツさん。よろしくお願いします。」
座ってる人が出てくる。…青緑の髪色に赤い目の色。とても綺麗だ。
「皆様、今日はご入学おめでとうございます。ここ、アルスド小中学園ではたくさん学び、その中でたくさん考えていってほしいと思います。沢山の仲間と共に、学園で楽しく学んでほしいと思います。」
実にかっこいい声だ。容姿端麗でかっこいい声ときて令嬢達は、まるで「なんと素敵な殿方なのかしら!」と言いたくなるくらいである。ちなみに俺もそう思った。決して、恋愛対象が男というわけではないが、それにしてもかっこいい。

「次に国王陛下、お願いします。」
国王陛下が出てくる。
「今日は入学おめでとう。沢山のことを学んでほしい。この学園の生徒として。また、貴族として。」
パチパチパチ
拍手が続いた。それはもう力強く。司会でさえも、生徒会長でさえも、新入生でさえも拍手をする。
そして、それは終わることがない。いつ終わるんだろうと、思って周りを見ると、国王陛下が拍手の準備をしていた。
パチ!大きな音で手を叩く音が聞こえる。そうすると、拍手は病む。
正直、俺はこの状況に「コントか!」とツっこんでしまいたくなった。

「以上で入学式を終わります。」
そして入学式が終わった。次は、クラス発表と歴史の授業が少しある。
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