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第一章 リーベン島編

Sランク超えの魔物

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「これが、この世界と三人の英雄の話だ」

 凄く内容の濃い話だった……。

「私の父は、クズ野郎の上に変な奴なんだね……」
「まぁ、そうだな……ただ、強かった。今はもっと強いんだろうな。私とほぼ年齢は変わらん」

「里長の奥様は?」
「リンファはここに移住して百年後くらいかの、病気で亡くなった。メイリンと同じ病気だった。妻も間違いなくこの里の功労者だ」
「そうでしたか……その病気は今は?」
「今はもう治療法を確立できた。姉さんの残した記録と母さんの協力でな。母さんを救えなかったのが唯一の心残りだ……私より下の子は母親が違うんだ」
「なるほど……」

 多くの犠牲の上にこの里の平和がある。
 それは医術も同じだ、多くの症例の上で治療法が確立される。救えなかった命の上で皆生きているんだ。
 

「……で、何の話だったかの?」
「ミモロ山の魔物の話でしたね」
「あぁ、そうであった。北のミモロ山を越えるとミワ湖という湖がある。そこには鶏と龍を合わせたような魔物がおる。仙族は『コカトリス』だろうと言うておった」
「この島には色々な生き物を合わせたような魔物が多いですよね……」
「確かに、ヌエやギュウキもそうだの……ミワ湖の魔物は特に被害が無い故に放っておったが、行くなら止めはせぬ。が、強いぞあれは。毒を持つゆえ気をつけろ」

 Sランクは超えてるんだろうな。毒か……。

「みんな、どうする?」
「行こうよ! 毒は私に任せてくれたらいいしさ!」
「うん、自分の力を試したい。行こうよ」

 決まったな、オレらは強くなった。
 力試しだ。

「里長、行ってきます!」
「うむ、斬ってこい」
「体皮が使えるか分からねぇが、持って帰って来い。俺が見てやる」

「はい!」
 

 ◇◇◇
 

 昼食を済ませて少ししてから、修練場から北に移動した。
 道中はヘビやトカゲの魔物が多い。かなり大きい大蛇だ。

「動きが結構速いな」
「ま、速くても燃やしてしまえば一緒だよ!」

『火遁 紅蓮ぐれん!』

 エミリーの火遁で大蛇は消炭になった。
 けど……。

「お前は学習能力がねーのか!!」

 山の木々に炎が燃え移った。

『水遁 大津波!』

 直ぐに消火活動。
 
「ごめんなさい……」
「風遁で刻もうね……」

 大蛇や大蜥蜴を遁術や剣術で倒して進む。練気術が無ければ切れなかっただろうな。
 けど、オレにはやっぱり斬るべき弱点が視える。
 魔石や魔晶石を回収しながら進む。体皮も硬そうだ、持って帰ろう。

 
 山を越えると湖が見えた。

「ニワトリさん、いないね」
「とりあえず湖を一周してみるか」

 湖の外周をぐるりと周る。
 ん? なんかモヤが見える……?
 そういえば、変な匂いも……。

「おい! 息を止めろ!」

 手先に少し痺れがある。これは神経毒だ。
 その場から離れ息を整える。

『治療術 解毒げどく!』

 エミリーの治療術で痺れが緩和する。

「毒霧の類だね、気付かずに歩いてたらヤバかったかもね……」
「二人はモヤのようなもの見えたか?」
「いや、見えなかったけど?」
「じゃあ、龍眼は毒霧なんかも可視化されるみたいだ」
「ほほー! 良い能力だねぇ!」
「こういう事もあるんだな。常に観察しとかないと。とりあえず近くにはいるな」

 辺りを観察する、どうやらあそこだ。

「あの岩裏の茂みに居るな」

 斬撃を飛ばしてみる。

「コォーッ!!」

 出てきた。
 ドラゴンの胴体と羽に、鶏の頭と脚が出ている。意外とカッコいいフォルムだ。

「毒が厄介だな。毒牙や毒爪とかだと思ったが、毒霧を吐くとはな……」
「遠距離攻撃で様子見よっか」
「じゃ、僕も攻撃に回るかな」

 三人で斬撃を放って攻撃だ。
 トーマスの斬撃を避けた所に、二人で斬撃を放った。
 
「速いな。空中で方向転換するぞ」
「よし、風遁の一斉射撃だ」

『風遁 多段鎌鼬!!!』

 鎌鼬の一斉攻撃。
 無数の風の刃が一頭の魔物に飛んでいく。が、素早い。
 
「おいおい、一個も当たらないとはな……」
「だね、素早さはニワトリさんだ」
「三方向から火遁で行こうか、上に逃げたら同時に風遁だ」
「そうしよう」

 コカトリスを三方向から包囲する。

「行くぞー!」
『火遁 業火殺ごうかさつ!』

 炎が晴れると姿はない。
 上を見ると、ドラゴンの羽で飛んでいる。

『風遁 嵐塵!!!』

 やはり速い。全部避けられた。 

「毒霧浴びる覚悟で、斬りに行くしかないかもね」
「だね、解毒はまかせてよ」

「よし、トーマスは盾頼む! オレは観察してみる。なるべく息は止めよう」
「分かったよ」
「エミリーはヤツの横から、剣風や遁術仕掛けてくれ!」
「はいよっ!」

 正面からは何も分からない。エミリーの風遁で横を向いた。
 なるほど、視るまでもないなこれは。弱点は、ニワトリとドラゴンの継ぎ目だ。
 ただ、速い。

「よし、一気に距離を詰めて斬る!」

 ……その時、悪寒が走った。

『トーマス!! 皆に守護術を!!』

「分かった!」
『守護術 堅牢・陣!』

『コケェーッッ!!』

 コカトリスは羽を細かく振って、とんでもない威力の風魔法を放ってきた。

 守護術が身を守る。
 少し深い傷はあるが、致命傷はない。

「皆、大丈夫か!?」
「何かが視えたね? 良かった、ユーゴのお陰で間に合ったよ」
「怪我は治せばいい!」

 コカトリスは地上に降りてきた。
 
「よし、トーマス、オレに個別で守護術頼む」
「了解」

「コケェーッ!!」

 トーマスの守護術が、コカトリスの風魔法を防ぐ。

『土遁 影縛り!』

 エミリーがコカトリスの動きを封じた。

「エミリー! ナイス!」

『剣技 雷鳴斬りらいめいぎり
 
 オレは練気術で一気に距離を詰め、コカトリスの首を刎ねた。

 ニワトリの首が地に落ち、ドラゴンの胴体が倒れ込んだ。

「ふぅ、何とか勝った……ちょっと龍眼が進化した感じがあるな。けど、こんなに傷だらけになってたら先が思いやられるな……」
「怪我したら治せばいいよ。腕が飛んでもくっつけられる様になるからさ!」
「腕が飛ぶとしたら僕だろうね。よろしく頼むよ」

 エミリーに解毒と治療を頼み、コカトリスの胴体の体皮と、一応トサカやクチバシ、爪などを持ち帰る。
 火遁で火葬すると、小さめの魔晶石が三つ転がった。今つけている魔晶石よりも見るからに上質だ。

「三つ出たー!」
「こりゃ綺麗だ。ナグモ山の魔物とはランクが違う証拠だね」
「オレ等もう文句なしのSランクだな! よし、帰ろうか!」

 オレ達は強くなってる。それは間違いない。
 
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