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第二章 大陸冒険編
王家交流定例パーティー
しおりを挟む二つの城の間にある大きなホールがパーティ会場だ。シャルロット女王と一緒に来たので、中にはすんなり入れた。招待状みたいなものも貰ってないしな。
流石は貴族のパーティ、皆の衣装が華やかだ。オレたち四人で様になっているのはジュリアくらいだ。
立食パーティなんだな。
真中に色々な料理が置いてあり、その周りをヘソほどの高さのテーブルが囲んでいる。
レオナード王が正面に立ち挨拶をする。
「今年の定例パーティーも二回目だね。いきなり企画したのに、こんなに参加してもらってありがとう! 今日は、仙神国からジュリエットちゃんとその仲間たちが来ちゃってるから、みんなでワイワイヤッちゃってよ! じゃ、カンパーイ!」
グラスのワインを掲げ、パーティーが始まった。
あの小型の拡声器も、シャルロット女王の発明なんだろうな。
中央から様々な料理を皿に取り分けてワインと共に頂く。
「うん、美味いなぁ」
「僕はコース料理より、こういうビュッフェ形式の方が好きだな」
「うん、ホテルの朝食もいつもこんな感じだもんね!」
しばしの歓談で腹を満たす。
「皆様、エミリアの母のリヴィアです。娘と一緒に本当に幸せな時間を過ごすことができました。本当にありがとう……何度お礼を言っても足りません……」
リヴィアさんとイリアナさんが、深々と頭を下げている。
「いや、オレたちは何もしてませんよ。頑張ったのはエミリー本人です」
二人と少し話せた。
二人共、心から笑えてる様に見えた。ずっと心にエミリーへの心配があったんだろうな、探したくても探せるもんじゃないし。
「これからは、エミリア・オーベルジュを名乗るの?」
「いや、その名前はここだけにする。王都を出れば、私は冒険者『エミリー・スペンサー』だよ! ジュリアもそうだもんね」
「オレ達は今まで通り、エミリーと呼ばせてもらうよ」
「もちろん、そうして!」
「エミリア、スペンサーってどなた?」
「あぁ、ジュリアがウェザブール王国に入って、初めて喋った人族のオジサンの姓だってさ……」
「あぁ、名前も顔も忘れたけどな!」
楽しく喋っていると、王二人が近づいて来た。
「みんな! ワインヤッちゃってる? 良かったね、ちゃんリヴィ! ずっと気にしてたもんね」
「はい、私達の今があるのは、王のお陰です」
「やめなって! 同族でしょ!」
みんな理解して聞いてるのかな……。
「さっきの小型の拡声器も女王が開発したんでしょ?」
「うん、そうだょ。昔からアイデアがどんどん浮かぶんだょ。昔のアイデアでも、やっとここ数百年で実現出来たってのも結構あるね」
「技術的な事ですか?」
「それもあるけど、一番は動力だね。ウチの発明の動力のほとんどは魔力だからね」
あぁ、魔石や魔晶石か。
「冒険者ギルドを設立したのもこの二人だ」
「うん、魔物を倒した時に出てきた魔石を見て、これだ! って思ったょね。魔物を倒してお金を稼げる職業ができると、防具の元になる体皮や、魔石や魔晶石が増える。武具を作る職業が増えれば、更に冒険者も増えるし、生活を豊かにする燃料も増える。冒険者って仕事は世の中の潤滑油だょ。冒険者カードと銀行システムも相性が良かったしね」
人族の世のほとんどを手掛けてるんだな……。
「そういえばユーゴっち。右眼は生まれつきなの」
「いや、今日の朝起きたらこうなってたんです。そうだ、王にお尋ねしようと思ってたんです、何なんですかねこれ」
「んー、見たことないねバイオレットは。ちゃんボク達は緑だし」
王二人の眼は元々は青だもんな。
王でも分からないのか、なんなんだろうこの眼は……。
「二人共、仙人に退化して何か損することはなかったのか?」
「いや、体感では特に無かったね。目が緑になっただけだよ。人族は子が出来やすいけど、仙人になると少し出来にくくなるようだ」
「んだね、空間魔法も無くなるかと思ってビクビクしたけど、今じゃ普通に昇化した仙人も使ってるしね」
ん……?
てことは?
「僕も空間魔法使えるんですか!?」
「へ? 昇化してんじゃん。なら使えるよ」
それを聞いてトーマスはジュリアに教えてもらってる。
「本当だ! 開いた! とうとう僕も空間魔法デビューか……凄く羨ましかったんだよね」
「いいなぁ……使えないのオレだけか……さすがにこの青紫の眼は関係ないだろうしな」
一応ジュリアがトーマスに教えてた通りにしてみる。
「え!? 開いたー! 空間魔法オレにも!」
「え……? なんで……?」
「その眼、仙族とつながりがあるってこと?」
「ホント何なんだろうね、その眼は……」
「アタシ、仙人が空間魔法使えるの知らなかったよ……そういえば、気にしたことなかった……」
「ウチらは空間魔法って呼んでるけど、魔力なんてほとんど使わないょ。これは眼の力だね」
晴れて全員空間魔法デビューだ。
「私の天下が終わってしまったよ……」
「いや、エミリーにはこれまでお世話になったからな、これまで通り移動の見張りはオレらが請け負う」
「あらそう? じゃ頼むよ!」
「僕はユーゴと『契約』しようかな」
「じゃ、相互契約しようか」
方法を教えてもらい、トーマスと相互契約し、エミリーとジュリアからオレ達の荷物を受け取った。
例の革袋の宝玉がオレの手に戻った。
エミリーが知らずに持たせてた事、ちょっとだけ気になってたんだよな……。
「いやぁ、ホント楽だなこれ」
「人生が豊かになるねこれは」
話はアレクサンド達の話題に移った。
「二人は、アレクサンドが魔人と龍族とつるんでるのは知ってるのか?」
「うん、ラファちゃんと試験通信したときに聞いたょ」
「奴らは、魔、仙、龍の三種族の戦闘法を習得してる。あの三人は相当強いぞ。アタシたちも、龍族と仙族の戦闘法を掛け合わせただけで戦闘能力が跳ね上がった。今は魔族の戦闘法も習得したがな」
「そうなのね。王国内の騎士団には仙人も多いけど、ほとんどは人族だょ。人族は仙術を扱うのが厳しいらしいんだ。気力が持たないみたい」
「龍族の練気術を習得すれば、人族も仙術を使いこなせるようになるはずですよ」
「レンキジュツ? 指導してくれるの?」
「あぁ、お前らや王都の幹部も覚えて損はない。とんでもなく戦闘能力が上がる」
「十日後に軍事演習があるんだょ。そこで指導してくんない?」
「えぇ、オレらは構いません。ここは他国の抑えです。奴らが動き出したら相手をするのは王都の騎士団でしょうから、強くなってもらいましょう」
「そんな良いものがあるなら、是非頼むょ!」
「じゃ、十日後にシクヨロね!」
王二人は他の来賓達の所に行った。
本当に話しやすい王達だ。なんでも気兼ねなく話せる。
「十日後か、レトルコメルスに行ってこようかな。そのあと里長に通信機を届けに行こう。仙族と魔族の戦闘法を教えといたら、万一奴ら三人が来ても抑えになるしな。里長が自然エネルギー取り込んだらどうなるのか見てみたいのもある」
「アタシも仙神国に帰って指導してこようかな。じゃあ、二手に分かれるか?」
「そうだな」
「いつも男と女で別れてるが、男女ペアで行動してみないか? 前にトーマスと一日過ごしたんだがいい刺激になったんだよ。トーマス、一緒に仙神国行かないか?」
「うん、僕はかまわないよ」
「じゃ、私はユーゴと一緒に行くね! 奥様に治療術の新術見てもらいたいし。魔力障害の事も聞かないと」
レトルコメルスまでは四人一緒か。
今のオレらなら夜明けに出たら夕方にはつくかな。全力で飛べばもう少し早く着くかもしれない。
「じゃ、明日は早起きだね!」
「とりあえず、この美味い料理とワインを楽しもう」
◇◇◇
定例パーティーも終わり、皆が帰っていく。
「レオナード王、シャルロット女王、お招き頂きましてありがとうございました。十日後にまた参ります」
「あぁ、またパーリー参加してね!」
「毎回来てもらってもいいょ!」
ホントに仲のいい王達だな。
もっと王家同士でバチバチなイメージ持ってた。
パーティー会場とオーベルジュの城は隣同士だ。歩いて数分で客間に着いた。
「皆様、お帰りなさいませ。お風呂の準備はできておりますよ」
「あぁ、ただいまリナさん。明日からオレたち数日間出かけます」
「左様でございますか、かしこまりました。お召し物のクリーニングはいかが致しましょう?」
「あぁ、お願いしようかな。みんなどうする?」
「うん、お願いしようかな」
「アタシも!」
「かしこまりました。お部屋に置いておいて頂ければ、こちらでしておきますので」
完璧だなリナさん。
「さぁ、風呂に入ろうか」
「あ! もしかしてここも混浴?」
「あぁ、そうだよ」
「私それが嫌でこっちに来たのもあるのに……こっちもかよ!」
「いいじゃないか、見られてどーなんだよ」
「いやだよ……二人に裸見られるんでしょ……?」
「二人先に入ってきなよ、僕らは後でいいからさ……」
「いや、今日は来賓が多かったから、いっぱい入ってると思うけどな。嫌ならシャワールーム借りるか?」
「うん、そうする……」
エミリーは恥ずかしいようだ。
ざんね……いや、仕方ないな。
三人で風呂に行く。
確かに多いな、裸の男女がこんなに入り乱れると普通に思えてくるから不思議だ。
もうジュリアの裸を見てもなんとも……いや、まだやめとこう。
シャワーで汗を流し、露天風呂へ。
王族の奥様や年頃の娘さんも、隠す事なく湯に足を浸けて座っている。
すごい文化だなこれ、眼福である。
やっぱり、ジュリアの美しすぎる裸体で目が鍛えられた。他の女性を見ても耐えられる。
いや、耐えるというのがもう違うのだろうけど……。
ゆっくり温まり、脱衣所で体を拭く。
「お前ら今日は勃起しなかったな」
「あぁ、ジュリアほどの美しい裸体は無かったからな」
「ほんと、今ジュリア見たら勃つ自信があるよ」
「お前ら褒め過ぎだって。アタシのが他と何が違うんだよ。ほれ、トーマス! 見てみろ!」
ジュリアはトーマスの顔を掴んで、自分の胸に向けた。
「うぁー! やめてって!」
そして、勢い余ってジュリアの胸の谷間に、トーマスの顔が埋まった。
ピーン
急いで下着を履くトーマス。
「キャハハ! 可愛いなトーマス!」
「うん、大サービスありがとう、ジュリア……」
明日はレトルコメルス行きだ。
早起き頑張ろう。
応援ありがとうございます!
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