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生と死
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しおりを挟む世の中って身分証が無いと生き辛いんだ。
だから16になって直ぐに原付の免許も取って、新しい裏の仕事でも車が必要だったからその都度地元に帰り車校には通わず運転免許試験場で直接普通免許も取得した。
俺は暴力団から逃走しているから地元の名古屋に一時的とは言え戻る度に心臓がドキドキ。
この危機感が逆に新しい悪知恵の閃きに繋がった。
夜逃げ屋を始めたんだ。それも究極の!
何かから逃げたい奴が相手だから当然悪(わる)ばかり。
で、逃がす奴には新しい人生を与えてやる。
逃走目的の客にとってみれば超の付くプレミアムだ。
“戸籍ごと”他人に生まれ変わる必殺技!
【新しい人生、売ります】
SFに出て来るようなタイトルだが、現実世界の出来事だ。
バブル崩壊直後だったから、客は会社の資金繰りがショート目前の社長など、自殺をも覚悟をした奴ら。
ことわざにある『鼬(いたち)の最後っ屁』をいただく大作戦。
最後っ屁とは、すなわち逃る奴の最後の資金だ。
新しい人生は俺自身も欲しいが、あらゆる人生の結末を見届けてから判断すると決めた。
★闇金の借金を踏み倒したい奴。
★暴力団から逃げたい奴。
★DV被害者。
★破門された暴力団員。
★ストーカーにつきまとわれている女。
★殺人を含む各種 犯罪者。
問題は、ヤク漬けの思考力が破綻している奴もいるから客は選ばなきゃならない。
それに俺達が今住む家賃が25万もするマンションは高いし、保証人がクラブのオーナーだったから、金のみで解決出来る保証会社に依頼し、家賃10万の1LDKに引っ越した。
ユリコは生活レベルが落ちたとふてくされていたが、こうなった原因もユリコだし、借金の返済も少しずつしか払わないお前が言うなと捩じ伏せた。
夜逃げ屋の車は、ワンボックスカーを安く買って、窓にスモークを張ったよ。
ユリコはフェラーリのリムジンが欲しいと訳の分からないことを言うが、脳ミソがお花畑で出来ているから無視。
こっちは真剣勝負なんだ。
相手(客)がワルだけに、命の危険さえある。
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