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【最終章】背中とお腹
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しおりを挟む今でも思い出すよ。
イジメを学校から根絶した小学4年生のユリア。
ある日、ユリアが近所のお婆さんを助けたお礼に自転車をもらった。
ヤクザの任侠道じゃないけど、ユリアは『弱きを助け、強きを挫(くじ)く』
その日、杖をついたお婆さんが交差点で青信号の時にヨロヨロと渡ろうとしたんだけど、途中で赤信号になってしまい、外車を乗り回す不良に大クラクションを鳴らされまくり、ビックリして腰を抜かしてしまい、それを見たユリアは助けに入った。
『ばか~! 弱い者イジメすんな! ばかばか~!』
これを機にお婆さんとユリアは仲良くなり、もう歳だから乗れないと言って、お婆さんは家にある古くなったママチャリをユリアにくれた。
後日ユリアと一緒に自転車のお礼に行き、話をするとお婆さんは元美容師だと言い、『ユリアちゃん、髪を切ってあげようか?』と誘われる。
その言葉にユリアは俺の顔を見る。
分かるんだ、ユリアとは心が通じ合ってる。
小さい頃からずーっとユリアの美容師は俺。
月に1度の、ユリアとの楽しい触れ合いなんだ。
貧乏だから100均で買ったハサミで切ってた。
ゴミ袋に頭を通す部分だけ穴を開けて、それを被りテルテル坊主になったユリアがたまらなく可愛い。
いつ思い出しても涙がにじむのは何故だろう?
ユリアはゴミ袋のテルテル坊主姿で我が身を任せると、ニコっと微笑みいつも決まってこう言う。
『お父ちゃん、かわいくしてね~』
『よっしゃ、任せとけぇ!』
脳にこびりついてるんだ。
クラスの女の子はみんな美容院に行ってるのかなぁ。
ユリアも元が可愛いし、女の子だからプロの美容院に行きたいのは間違いない。
けど俺には金がかかるからそんなこと絶対に言わないんだ。
髪を切るテクニックなんかないから、いつも髪型はマンネリのオカッパ頭。
何回やっても上達しないオカッパ頭。
元プロからのご好意であるお誘いなんて断ろうはずもなく、お婆さんにお願いした。
それからお婆さんは、なついてくれるユリアを可愛がり、専属の美容師さんになってくれた。
さびしいよ。
にじむ涙。
ゴミ袋をかぶった、あの笑顔。
貧しさを真っ向から受け入れた目。
可愛い可愛いテルテル坊主姿。
目頭が熱くなる貧しさの1ページ。
忘れることは出来ない。
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