上 下
15 / 22

【第10話】 午後の予定

しおりを挟む



考え込んでいる私の顔を覗き込んで、ガクが意地悪い表情で口を開いた。


「おまえ、怖いのか?」


「なっ…!別にそんなことないし!」


急に何を言いだす!そして何でにやけてるんだよ!!

 
怒る私を見て何が楽しいのか、更に口角を上げながら煽ってくる。


「そうだよなぁ、初歩の初歩の初級魔法しか使えないおまえは、ただ俺たちに守られることしかできねぇもんな。ははっ!」

「あぁあうるさい!! すぐ使えるようになるもん!あなたに守ってもらわなくたって…!私だって自分の身くらいっ…………!」




「自分の身くらい?」







…………守れませんけど!!







こんちっくしょーーう!  あーもうやだ!早く使えるようになるんだから!こんなやつぶっ飛ばせるくらい強力な魔法を!


「安心しろ。お前が無能でも、俺たちがついているからには死なねぇよ。」


 ただ守られてりゃいいと、楽しそうに笑いながらガクはそう言った。その言葉には、ミカやレンも頷いていた。

私は守られるのが好きなおとめなんかじゃないですーだ!どっちかっていうと私が戦いたいのに!


「ふん!そんなこと言ってられるのも今のうちだよ。すぐに私が守る側に行ってやるんだから!」


すぐにあなたは私に助けを乞うになるの!見てなさい、本気を出したらちょちょいのちょいよ!
頬を膨らませ、なぜか楽しげなガクを思いっきりを睨みつける。 何気にこいつが笑ったの初めて見たな。…中身によらずいい顔してるなんてこのこのこのーっ!


「ふふっ、きっとリラちゃんならすぐに強くなれるよ。楽しみだなぁ。」


ミカの全てを包み込むような優しさに、心の棘はすべて抜け落ちていく。はぁぁミカ可愛い!聖女さまみたい…!


そうだ、と何かを思い出したのかレンが口を開いた。

「ショウ達が帰ってきたら、フィレスピーロにいって神託をもらいに行こうか。」


「フィレ…なに?」


さらっと出てきた聞き慣れないことばを復唱しようとしたけど無理だった。レンは私がそのフィ何とかを知らない事に驚いたような顔をしていたけど、ゆっくりと説明してくれた。

「フィレスピーロ。神を祀っている神殿の1つだよ。この国で一番大きいところなんだ。」

「なるほど。つまり大神殿ってことだね。」


そこに行って、自分の属性と合う職業みたいなもを神から教えてもらえるらしい。神様かぁ…


「本当にいるの?神様。」


神の存在を信じたことがないんですが…少なくとも地球には居たとは思えないな。神に祈るって言っても気休め程度だったよ。 ここの世界には居たりするのかな…?なんかまじでいそうだな。

リラちゃんのところにもいたでしょ?と、ミカが少し驚いた声で聞いてきた。

「神の力は信じられ、祀られることによって強くなるの。だからリラちゃんが居たところでは信仰心が薄かったんじゃないかな?」


「そんなものなのかー、確かに地球で本気で神を信じてるひとって少なかったし、年々そういう儀式的なのも減ってきてるらしいから弱くなったのかも?」


昔は居たのかもしれない。初詣とかするけど、それくらいしかしないよね。


「神っていってもそんな大したことできねぇけどな。神にできることは限られている。できることと言えば、人の中に眠っている素質を見つけて教えたり、少し先に起こる大きな災いとかを伝えることくらいだな。」


直接自然界に影響を与えることや、死んだ人を生き返らせるとかはできないと、ガクも説明を付け足した。

なるほど、なんでもできるわけじゃないんだ。それならまだ信じられそう。願えば叶うなんて、そんなものはないし。神は我らを見守っている~ってね。

今はまだお昼前で時間があるから、とにかくショウ達が帰って来てお昼を食べ次第大神殿フィレスピーロに行く事になった。
この辺な世界に来て初めて屋敷の外に出るからめっちゃ楽しみ!早く帰ってこないかなぁ。

しおりを挟む

処理中です...