イカイノマコト

RX140

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第九話 華に涙を

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 華やかなパレードに盛大なファンファーレ。大通りには各国の国旗が掲げられ、街を埋め尽くすのは見物人と世界の重鎮とその護衛たち。今日はアビルホード連邦の建国式典だ。準備段階でイザコザやドタキャンは多々あれど、恐れていた暴動は報告されていない。また、護衛たちの間で起きていたギスギスも、国王の取り成しもあって仲は前よりも良くなった(そのために国家予算を削ったのは言うまでもない)。
「しっかし、ここまで派手にやるものなんすかね…」
「まあつい最近まで統制に苦労していたらしいからな。ていうか、土方の世界ではなかったのかい?」
この華やかさに驚く土方を見て更に驚くバラッカ。ここでは絶対、とまではいかなくても私語は厳禁で、バレたらタダでは済まない。
「俺は武士の出じゃないから、正直ここまでやるかはわからん。あったとしても、国中を巻き込んでまではやらんな」
「なるほど」
ちょうどその時、アビルホード連邦2代目大総統:デギンズ・ガーネが壇上に出てきた。式典用に調達した豪華なタキシードに、きらびやかに輝く国章のバッジをつけている。
『えー、皆の衆!よくぞ我らの式典に来られた!私が、この度当連邦2代目大総統に就任した、デギンズ・ガーネだ』
壇上から響く、壮大で、かつ威厳のある張りのいい声。自ら帝国軍を率いて周辺国家を制圧し、占領地すべてを見事に統治した彼には、声一つとっても、どこか惹かれるものを感じる。
事実、彼が大総統を続けられるのもこの「声」のおかげだ。彼の声自体に特殊な力があり、人を引き付けることが可能、らしい。完全に使いこなすにはそれなりの熟練度がいるが、彼は昔から演説があるたびに聴衆を惹き付けてきた。彼が蒔いた種がようやく実を結んだようだ。
『つい最近まで、我々は他国に対し侵略・併合を繰り返してきた。俗に言えば、我々は世界の”汚点”でもある。だが、それでも我々が今日まで生きてこられたのは、他ならぬ諸君らの、たゆまなき努力の成果でもある。そして、今日この日をもって、我々の国の建国を祝う日を迎えることができた。実に、実に感謝している』
ほぼ綺麗に言ってはいるが、その裏では大きな犠牲(かつてバースクリート皇国から独立を掲げたときに起きた大きな戦争)を払っていた。その屍の山の上に、この連邦がある、と言っても過言ではない。
その時、奥から魔法弾が飛び出た。幸い、防壁を貼ってたから大事には至らなかったが、暴動と紐づけるには十分だった。
「敵襲!敵襲だ!!」
誰かがそう叫んだことで混乱は一気に広がる。たちまち大通りは悲鳴と咆哮に満ちた。
「チィ!先手を取られたか!総員、各国の重鎮たちを守り抜け!我らが威信に決して泥を被せるな!!」
「はい!!」
総隊長の号令で一斉に武器を取り、構える。誰の攻撃かはわからない。それでも守り抜くのが護衛の務め。ならばと、全員一騎当千の働きを見せつけるチャンスだ。
 無論、バラッカ率いる特別編隊も例に漏れず張り切っていた。
「ダストロトとゲンバは重鎮たちの避難を頼む。アゼルと土方は大総統の護衛、俺とヴァルザは迎撃で対処するぞ!」
「「「「「了解!」」」」」
バラッカの的確な指示のもと、二人一組で行動に移す。決して実力を信じてないわけではない。お互いの弱点をカバーし合うことでより有利に動きやすくなるのだ。
 さて、ここからは三組それぞれの動向を細かく書きたかったが、締切(月末)に間に合わないので割愛させてもらおう。
 なにはともあれ、各国の重鎮たちは大急ぎでその場を離れさせ、かつ襲撃部隊の迎撃に当たるというまあ過酷な戦場へと変貌していった。

「土方、あんたの剣さばき、見事なものやのお。是非うちに来てほしいくらいだわ」
「アゼル殿。口を動かす前に手を動かしてください。そのような余裕は、ないはずですぞ?」
「ハッハッハ!よう言うわ。面白い奴じゃのう!」
大総統をなんとか守りながらこの会話である。敵はそこまで強い訳ではないが、斬っても斬っても斬っても異形が湧いてくる。まだ余裕があるとはいえど、いつまで持つかはわからない。故に、敵の大多数が攻めてくる大通り方面は土方、アゼル含め精鋭6人で対処することに。残りは裏通り、空中から攻めてくるやつだが、それは総統親衛隊の生き残りと他の部隊で対処することに。
 話を少し戻して、迫ってくる敵を斬って対処する一同。あれほど華やかだった装飾はいまや屍の血で薄汚くなっている。数えるだけでも、ざっと100ぐらいの異形の屍が転がっていた。できるだけ街への被害を減らそうと、各員大技を振るえない中で、これほどの敵を倒してるあたり、連れてきて正解だったかもしれない。しかし、
「ちっ、いくらなんでも多すぎるだろ…」
仲間の一人がそう漏らすように、すでに多くの敵を葬ったというのに、その勢いは留まることを知らない。これほどの異形を送り込むには、相当な量の魔力を持っていて、かつ異形をも従うことができる、かなりの実力を持った人となる。しかも異形を従えるのは容易いことではなく、手懐けることは愚か、支配することすら難しい。どうにかしようにも、彼らは支配されるのを拒むから、誰も管理せずほったらかしにしていた。其のツケが返ってきたのかもしれないが、今はひたすら敵を叩くしかない。
「くっ、背に腹は変えられない。アゼル殿、飛ばすぞ!」
「やるのか、土方?しかし…」
困惑するアゼルを尻目に敵の渦中へ躍り出る。それに続いて他の者も敵陣に躍り出る。呆気に取られるアゼルだが、しばし間を置いてようやく決心をつけ、追いかける。
「近藤さん、力を貸してくれよ…」
右手の痣を確認しながら総攻撃をかける。街への被害は少しずつ大きくなってはいるが、それは今は些細なこと。本気モードになった歴戦の猛者たちには、赤子の手をひねるようなものだった。
気がつけば、数を数えるのも億劫になるほどの量がいた異形も、いつの間にか30を下回った。あとはこのまま壊滅させればいいのだが…。
「みんな、生きているか?」
「「「「舐めてもらっちゃあ困るッ!」」」」
「ですって」
土方の応答に全員元気に(?)答える。彼らの反応をわかっていたのか、微笑みを漏らす。
「だが、気をつけろよ。こないだのように、変異体に覚醒されたら俺達は一溜まりもない。各員!決して油断するな!敵を全滅してこそ、我らに勝利があると思え!」
「「はい!」」
「「「了解です!」」」
アゼルの一喝で士気があがる。戦場を知らない一般人でもわかるほど、覇気に満ちている。もう一度総攻撃を仕掛けようと一歩を踏み出した、その時だ。
「『フェーネ・ラ・モード』」
誰かの魔法により全員が壇上に吹き飛ばされる。その一撃は凄まじく、打ちどころが悪かった2人はやられてしまった。
「誰だ!!」
困惑しながら新手を探すアゼル。しかし土方は一発でわかった。一度聞いたら忘れられない、その声を。
「お前は…、なぜだ!?」

「ワルカ・セ・モーラル…!」
視線の先には、不敵に笑う、「名医」がいた。
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