追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?

あとりえむ

文字の大きさ
7 / 65
第2章:地球大掃除

第7話:新入社員は『潔癖症の聖女』

 魔王城のトイレ修理(邪神討伐)から数日後。
 株式会社クリーン・ファンタジーに、とんでもないクレーム客が押し掛けてきた。

「貴方が灰坂ソウジですね! 神聖なダンジョンを『洗剤』ごときで冒涜する異端者は!」

 社長室のドアを蹴破って現れたのは、純白の法衣に身を包んだ美少女だった。
 透き通るような金髪に、勝ち気な碧眼。
 彼女の名はセシリア(16歳)。
 バチカンから派遣された、世界最高峰の『聖女』である。

「冒涜だなんて人聞きの悪い。うちは環境に優しいエコ洗剤を使ってますよ?」
「そういう問題ではありません! 浄化とは祈りであり、奇跡なのです! それをデッキブラシで擦るだなんて……言語道断です!」

 セシリアは激昂していた。
 彼女にとって、ダンジョンのアンデッド浄化は高尚な宗教儀式だ。それを「掃除」と言い張るソウジの存在が、生理的に許せなかったのだ。

「証明してあげますわ。私の『聖なる魔法』と、貴方の『野蛮な掃除』……どちらが上か!」

 こうして、急遽「浄化勝負」が勃発することになった。

 ***

 場所は、都内のD級ダンジョン『地下墓地(カタコンベ)』。
 ここは低級の幽霊(ゴースト)が無限に湧き出ることで有名なスポットだ。

「ふふん、見ていなさい。これが本物の浄化です!」

 先行のセシリアが、優雅に杖を構える。
 通路の奥からは、無数の白い幽霊たちが「うらめしや~」と漂ってくる。

「穢れし魂よ、光に還れ! 『聖なる光(ホーリー・レイ)』!!」

 カッッッ!!
 極大の光魔法が炸裂し、通路を埋め尽くしていた数百の幽霊が一瞬で蒸発した。
 後に残ったのは、神聖な静寂だけ。

「どうです? 塵一つ残さず消滅させましたわ」

 セシリアがドヤ顔で振り返る。
 D-Liveのコメント欄も『さすが聖女様』『美しい』と称賛の嵐だ。

 ――だが。
 ソウジだけは、ゴーグル越しに眉をひそめていた。

【解析:浄化不全を確認】
【残留物:魂の燃えカス(怨念煤)】
【評価:B(拭き残しあり)】

「あー、ダメダメ。全然落ちてないですよ」
「は? 何を言っていますの? どこからどう見ても綺麗に――」
「よく見てください。表面の汚れ(霊体)を焼いただけだから、根本の『煤(すす)』が残ってるじゃないですか」

 ソウジが指差した空間には、一般人には見えない微細な「黒い粉」が舞っていた。
 魔法による急速な除霊は、いわば「汚れを焼き切る」行為だ。そのため、どうしても微細な燃えカスが残り、それが新たな穢れの温床になってしまう。

「いいですか。掃除の基本は『舞い上げない』こと。静かに、確実に吸着するんです」

 ソウジはそう言うと、背中の道具袋から「ある武器」を取り出した。
 T字型の柄に、白い筒状のロール紙がついたもの。
 日本中の家庭にある、最強の掃除用具。

 粘着カーペットクリーナー(通称:コロコロ)である。
 ただし、彼が手にしているのは業務用の『超強力粘着・幅広タイプ』だ。

「な、なんですのそれは? 魔法の杖……?」
「いや、ただの粘着テープですけど」

 ソウジは無造作に、何もない空中に向かってローラーを構えた。
 次々と湧いてくる幽霊たち。
 ソウジの目には、それらが「静電気を帯びて浮遊するホコリ」にしか見えていない。

「ホコリ取りなら、これが一番早い」

 コロコロコロ……。

 ソウジが虚空を撫でるようにローラーを動かす。
 すると、物理法則を無視した怪奇現象が起きた。

「ギャァァァァァァ!?!?」
「吸い寄せられるぅぅぅぅ!!」

 実体のないはずの幽霊たちが、まるで掃除機に吸われるように歪み、次々と白い粘着テープに張り付いていくではないか!

「ひぃっ!? 魂が……霊体が物理的に捕獲されていますわ!?」
「よし、一面埋まったな」

 ソウジは手際よくミシン目でテープを切り、ビリッ! とめくった。
 剥がされたシートには、数百体の幽霊たちが、まるで魚拓のようにビッシリと(そして平面的に)プリントされ、封印されていた。

「はい、一丁上がり。燃やしてないから空気も汚れない」

 彼は怨念が詰まったシートを丸め、ゴミ袋にポイッと捨てた。
 その空間は、セシリアの魔法を使った場所よりも遥かに澄み渡り、文字通り「塵一つない」聖域となっていた。

『ファッ!?』
『コロコロ最強説www』
『幽霊って粘着テープで取れるんか……』
『聖女様の魔法が「ただの消臭スプレー」扱いされてて草』
『除霊(物理)』

「そ、そんな……私の聖魔法が、あんな大衆用品に負けた……?」

 セシリアはその場に崩れ落ちた。
 彼女の常識が崩壊した瞬間だった。
 だが次の瞬間、彼女の目はカッと見開き、ソウジの足元にすがりついた。

「素晴らしいです……!」
「え?」
「汚れを焼き払うのではなく、優しく包み込んで捨て去る……これこそが真の慈愛! 真の浄化ですわ!」

 彼女は感動で潤んだ瞳を向け、ソウジの手(とコロコロ)を握りしめた。

「師匠! その神具『聖・コロコロ』の極意、未熟な私にご教授ください! 私、今日からここで働かせていただきます!」

 こうして、世界最強の聖女が、あろうことか清掃会社に「インターン志望」として陥落したのだった。

「……ちょっと、離れてください!」

 その時、背後から氷点下の声が響いた。
 秘書のコアちゃんが、鬼の形相で二人の間に割り込んでくる。

「社長のメイン武器(モップ)の手入れをするのは私です! ぽっと出の新人(聖女)に、そのポジションは渡しませんからね!」
「あら? 道具の手入れなら聖女の加護がある私のほうが適任ですけれど?」
「むきーっ! 物理干渉しかできないくせに!」

 ギャーギャーと騒ぎ始めた二人の美女をよそに、ソウジは「やれやれ」と肩をすくめ、新しい粘着テープのスペアを交換するのだった。

【新着タスク:社内の人間関係の整理】
【難易度:測定不能】

(続く)
感想 1

あなたにおすすめの小説

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!

よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。 10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。 ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。 同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。 皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。 こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。 そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。 しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。 その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。 そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした! 更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。 これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。 ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。