追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?

あとりえむ

文字の大きさ
8 / 65
第2章:地球大掃除

第8話:ライバル企業『ネオ・レイディアント』の逆襲

 灰坂ソウジの活躍によって、『クリーン・ファンタジー社』が世界的な名声を得ていた頃。
 かつての最大手クラン『レイディアント』は、焦っていた。

「見ろ、この株価の大暴落を! これも全て、あの清掃員を追放したせいだ!」
「ええい、打開策はないのか! このままでは業界の笑い者だぞ!」

 株主総会で吊し上げられる経営陣。
 そこに、包帯だらけの男が足を引きずりながら現れた。
 元支部長、剣崎である。

「……ありますよ。起死回生の策が」

 彼は血走った目で笑った。
 ソウジへの逆恨みと、エリートとしての歪んだプライド。それだけが今の彼を動かしていた。

「私は怪しい……いや、有力な海外投資家から資金を調達しました。これを使って新会社『ネオ・レイディアント』を設立し、ソウジのやり方を『科学的』に模倣するのです!」

 彼が指を鳴らすと、会議室に無機質な駆動音が響いた。
 現れたのは、銀色に輝く人型ロボットの軍団。

「最新AI搭載、全自動清掃兵器『ジェノサイド・ブルーム』です! 感情も疲労もなく、24時間365日働き続ける完璧な掃除屋……これさえあれば、あんな薄汚いオッサンなど不要だ!」

 ***

 数日後。
 剣崎は、大々的な「復帰配信」を行っていた。
 場所は、千葉県のC級ダンジョン『湿地帯エリア』。

『みなさん! これからはロボットの時代です! 見てください、この統率された動きを!』

 画面には、数十体のロボットが一糸乱れぬ動きで進行する様子が映し出されている。
 今回のターゲットは、壁一面に張り付いた『増殖スライムカビ』だ。
 物理攻撃が効かず、放置すると無限に増える厄介な相手である。

「さあ行け! ソウジ如きには不可能な、完璧な駆除を見せてやるのだ!」

 剣崎の号令と共に、ロボットたちのAIがカビをスキャンする。

『ピピッ。対象ヲ解析……成分:水分ヲ多量ニ含有』
『判断:乾燥処理ヲ実行シマス』

 ロボットたちの腕が変形し、巨大なドライヤー(温風放射器)が現れた。
 
「なるほど! 湿気を好むカビを乾燥させて殺すわけか! さすがAI、合理的だ!」

 剣崎は勝ち誇った。
 ゴーッ! という音と共に、高熱の温風がカビに浴びせられる。
 表面の水分が飛び、カビがカサカサに乾いていく。

「ははは! 見ろ、一瞬で干からびていくぞ! 勝った! 完全勝利だ!」

 しかし。
 彼は知らなかった。
 カビという生物が、生命の危機(乾燥)を感じた時、種の保存のために何をするかを。

 ボンッ!!!

 乾いたカビの表面が爆ぜた。
 次の瞬間、視界を埋め尽くすほどの猛烈な「粉塵」が噴き出したのだ。

「えっ? な、なんだこの煙は!?」
『警告。警告。胞子ノ爆発的拡散ヲ確認』

 それは、死に物狂いで放たれた濃縮胞子爆弾だった。
 温風に乗って拡散した胞子は、湿地帯の水分を吸って瞬く間に発芽。
 ロボットの関節、カメラのレンズ、そして剣崎の防護服――あらゆる場所に付着し、秒速で増殖を始めた。

「うわあああ!? なんだこれ、取れない! 増える! 中に入ってくるぅぅぅ!」
『エラー。視界不良。動作不能』

 ロボットたちがカビの塊となって次々と倒れていく。
 剣崎もまた、緑色のカビに全身を覆われ、生きたまま苗床にされようとしていた。

『うわああああああ!』
『パンデミック発生www』
『バカだ! カビに温風当てたら胞子が舞うに決まってんだろ!』
『お風呂掃除の常識も知らないのかよ!』
『誰か! 誰か助けてくれぇぇぇ!』

 剣崎がカメラに向かって絶叫し、画面が緑色に染まりかけた、その時。

「うわ、くっさ。なんだこのカビ臭さは」

 能天気な声と共に、シューーッという爽快な噴射音が響いた。

 ***

 通りすがりの灰坂ソウジは、鼻をつまんでいた。
 近くの現場からの帰り道、いつもの帰り道(ダンジョン内)が、ひどい悪臭に包まれていたからだ。

 彼のゴーグルには、真っ赤な警告が表示されている。

【警告:空気中のカビ胞子濃度が危険域です】
【原因:不適切な乾燥作業による拡散】
【推奨:次亜塩素酸ナトリウムによる空間除菌】

「ったく、どこの素人だ? カビは乾燥させたら胞子が飛ぶって、家庭科で習わなかったのか?」

 ソウジの視界には、緑色のモジャモジャした塊(剣崎とロボット)が映っていたが、彼はそれを「カビが繁殖した粗大ゴミ」としか認識していなかった。

「とりあえず、これ以上広がる前に殺菌するか」

 ソウジは背中のタンクに圧力をかけ、業務用の噴霧ノズルを構えた。
 中に入っているのは、彼が独自調合した『スライムキラー・ミスト(カビ取り用)』だ。

「消毒開始!」

 プシュァァァァァァァァァ!!

 高濃度の消毒ミストが、白煙のように空間を制圧していく。
 塩素の刺激臭と共に、空気中の胞子が次々と死滅し、地面に落ちていく。

 そして、そのミストは当然、カビまみれの剣崎にも直撃した。

「ぐあああああああ!? 目が、目がぁぁぁぁ!!」

 剣崎がのたうち回る。
 カビは死滅してポロポロと剥がれ落ちていくが、同時に生身の人間にはキツすぎる塩素の刺激が彼を襲う。

「ん? なんか大きなゴミが動いてるな」

 ソウジは首を傾げた。
 ゴーグルには【対象:しつこい黒カビ】【推奨:浸け置き洗い】と表示されている。

「まあいいや。念入りにかけておこう」
「やめろぉぉ! 俺だ、剣崎だ! 助けてくれぇぇ……ぶべらっ!?」

 ソウジは無慈悲に、剣崎の口の中めがけて消毒液を噴射した。
 カビごと消毒された剣崎は、白目を剥いてその場に崩れ落ちた(※気絶しただけで、命に別状はありません。たぶん)。

【タスク完了:空間除菌に成功】
【空気清浄度:クリア】

「ふぅ。これで空気も美味しくなったな」

 ソウジはマスクを外し、深呼吸した。
 周囲には、カビが落ちてピカピカになったロボットの残骸と、同じくピカピカに消毒された泡だらけの剣崎が転がっている。

『またお前かwww』
『通りすがりの英雄(清掃員)』
『剣崎、カビごと消毒されてて草』
『「ぶべらっ」って言ったぞ今』
『これぞプロの仕事。なお、元上司への配慮はゼロの模様』

 ソウジは倒れている剣崎に気づく様子もなく、「粗大ゴミの回収は管轄外だな」とつぶやいて、その場を立ち去った。

 後に残されたのは、
 最新鋭のAIが「ただの洗剤」に敗北したという事実と、
 全身からプールの臭いを漂わせる哀れな男の姿だけだった。

(続く)
感想 1

あなたにおすすめの小説

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!

よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。 10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。 ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。 同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。 皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。 こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。 そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。 しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。 その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。 そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした! 更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。 これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。 ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。