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最終章(こちらだけ15話構成です)
第51話:里帰りは「ホコリ」まみれ
「……ひでぇな、こりゃ。どんだけ換気サボってんだよ」
すべての始まりの地。
新宿ダンジョンの最深部、深度2000メートルへと空間跳躍で降り立った灰坂ソウジは、目の前の惨状に顔をしかめた。
かつてコアちゃんが引きこもっていたその空間は、すっかり様変わりしていた。
迷宮の壁や床の岩肌がベロベロに剥がれ落ち、その下から緑色のノイズや、文字化けした文字列が剥き出しになっている。
そして通路の奥からは、かつての初期モンスター(スライムやゴブリン)たちが、原形を留めない「グリッチの塊」となって、ノイズ音を撒き散らしながらうごめいていた。
「しゃ、社長! あいつら様子がおかしいです! 完全にデータがバグってますよ!」
剣崎が怯えながら叫ぶ。
「ええい、鬱陶しい! 邪魔だ、どけ!」
ソウジはいつものようにトングとモップでバグの塊を払いのけようとした。
──スカッ。
「……あ?」
ソウジの攻撃が、まるで幻影をすり抜けるようにバグの塊を通過してしまった。
南極の時と同じだ。世界のバグに対し、ソウジの掃除が「通用しない」。
『ガガ……ピィィィィッ!!』
バグの塊が、ソウジに向かって文字化けした触手を伸ばしてくる。
「なんだこいつら、汚れじゃねぇのか!?」
ソウジが舌打ちをして後ろへ跳ぶ。
彼の顔には、愛用のアーティファクト【真実の魔眼(解析ゴーグル)】が装着されていた。しかし、レンズに表示されるのは相変わらず意味不明な警告文ばかりだ。
【警告:創造主(Admin)による権限介入】
【対象はシステム外エラー(ゴミとして認識不可)】
【アクセスが拒否されました】
「クソッ、やっぱりこのゴーグル、南極からずっと調子が悪い! 変なアルファベットと『アクセス拒否』ばっかり出やがって。これじゃあ、ただの度の合わない色眼鏡だ!」
ソウジが苛立ち紛れにゴーグルを外そうとした、その時だった。
「マスター、待ってください!」
秘書のコアちゃんが、ソウジの前にサッと進み出た。
「マスターのゴーグル、大家さん(創造主)の『管理者権限』で強力な干渉(ロック)をかけられてます! 世界を作った大家さんの力が直接働いてるから、マスターの目でも『ただのゴミ』として認識できなくなってるんです!」
「なんだと? 大家の嫌がらせだと!?」
「はい! でも大丈夫です、私が綺麗にしますから! マスター、ちょっと動かないでくださいね!」
コアちゃんがソウジの顔に両手をかざす。
彼女の魔法はその大家(創造主)から教わった、世界のシステムそのものに干渉できる希少な力だ。
「えいっ! 【超重力・極小空間圧縮クリーニング】!!」
キュイィィィィンッ!
コアちゃんの手から放たれた高密度の重力波が、ゴーグルのレンズ表面をミクロの単位で削り取り、同時に磨き上げた。
パリィィィンッ!
という甲高い音と共に、レンズにへばりついていた不可視の膜──大家(創造主)が直接介入していた『認識阻害の管理者ロック』が、ガンコな油膜のように浮き上がる。
「汚れは浮かせました! あとはマスターの手でお願いします♪」
「おおっ? いつの間にこんな油膜が付いてたんだ。 コアちゃん、ありがとう! あとは任せろ!」
「ソウジ様、これをお使いください!天使の羽から作られた超極細繊維のクロスです。」
「ミカエルも、サンキュー!」
ソウジは万能スライムクリーナーを取り出して、超極細繊維のクロスに付けて中心から円を描くように浮き上がった油膜を優しく拭き取る。
次の瞬間、視界が恐ろしくクリアになった。
【解析:極めて悪質なホコリの塊(放置期間・約数千年)】
【状態:静電気で巨大化し、意思を持ったハウスダスト】
ゴーグルの表示が、いつも通りの「清掃業者向けの安心するログ」に戻っていた。
「なるほどな……。大家の野郎、俺のゴーグルに『頑固な油膜』を張って、汚れを直視できないように細工してやがったのか」
ソウジの口角が、凶悪に吊り上がった。
「マスター、仕上げにコーティングもしておきますね♪ ──空間圧縮【重力コーティング】!!」
「でかしたぞ、コアちゃん。おかげでハッキリ見えたぜ」
ソウジはバンの荷台から、巨大な「T字型のローラー」を引きずり出した。
幅2メートルにも及ぶ、超大型の粘着クリーナー。通称、【業務用・巨大コロコロ(スライム粘着仕様)】である。
「剣崎、セシリア! バグでもシステムエラーでもねぇ。あいつらの正体は、何千年も部屋の掃除をサボったせいで、静電気で固まって動き出した『ただの巨大なホコリの塊』だ!」
「ホ、ホコリィィ!?」
「どんな換気の悪い部屋だよクソ大家が! アレルギー出たらどう落とし前つける気だ!」
ロックが外れた瞬間、世界の致命的なエラーすら、ソウジの前では「ちょっとデカいだけのホコリ」に成り下がった。
彼にとってホコリとは、ただ絡め取るだけの存在だ。
「まとめて接着してやる! オラァァァッ!!」
ソウジが【巨大コロコロ】を勢いよく床に押し当て、猛ダッシュで突撃する。
『ピギィィィ!? ガ、ガガガガッ……(剥ガサレルゥゥ!?)』
ベリベリベリッ! という強烈な粘着音と共に、掃除をすり抜けていたはずのバグの塊たちが、次々と巨大コロコロの粘着シートに絡め取られ、ぺちゃんこに圧縮されていく。
『コロコロで世界のバグを掃除してるwww』
『世界のバグが粘着テープに負けるなんて』
『ホコリ扱いww』
『ソウジ社長、完全復活キタアアアア!!』
「よし! ホコリの溜まり場は一掃したぞ!」
瞬く間に通路を綺麗にしたソウジは、コロコロの汚れたシートをベリッと一枚剥がし、不敵に笑いながら地下のさらに奥──大家の部屋へと視線を向けた。
「さあ、大家を引っ張り出すぞ。お前らの部屋の『大掃除』の時間だ」
(続く)
すべての始まりの地。
新宿ダンジョンの最深部、深度2000メートルへと空間跳躍で降り立った灰坂ソウジは、目の前の惨状に顔をしかめた。
かつてコアちゃんが引きこもっていたその空間は、すっかり様変わりしていた。
迷宮の壁や床の岩肌がベロベロに剥がれ落ち、その下から緑色のノイズや、文字化けした文字列が剥き出しになっている。
そして通路の奥からは、かつての初期モンスター(スライムやゴブリン)たちが、原形を留めない「グリッチの塊」となって、ノイズ音を撒き散らしながらうごめいていた。
「しゃ、社長! あいつら様子がおかしいです! 完全にデータがバグってますよ!」
剣崎が怯えながら叫ぶ。
「ええい、鬱陶しい! 邪魔だ、どけ!」
ソウジはいつものようにトングとモップでバグの塊を払いのけようとした。
──スカッ。
「……あ?」
ソウジの攻撃が、まるで幻影をすり抜けるようにバグの塊を通過してしまった。
南極の時と同じだ。世界のバグに対し、ソウジの掃除が「通用しない」。
『ガガ……ピィィィィッ!!』
バグの塊が、ソウジに向かって文字化けした触手を伸ばしてくる。
「なんだこいつら、汚れじゃねぇのか!?」
ソウジが舌打ちをして後ろへ跳ぶ。
彼の顔には、愛用のアーティファクト【真実の魔眼(解析ゴーグル)】が装着されていた。しかし、レンズに表示されるのは相変わらず意味不明な警告文ばかりだ。
【警告:創造主(Admin)による権限介入】
【対象はシステム外エラー(ゴミとして認識不可)】
【アクセスが拒否されました】
「クソッ、やっぱりこのゴーグル、南極からずっと調子が悪い! 変なアルファベットと『アクセス拒否』ばっかり出やがって。これじゃあ、ただの度の合わない色眼鏡だ!」
ソウジが苛立ち紛れにゴーグルを外そうとした、その時だった。
「マスター、待ってください!」
秘書のコアちゃんが、ソウジの前にサッと進み出た。
「マスターのゴーグル、大家さん(創造主)の『管理者権限』で強力な干渉(ロック)をかけられてます! 世界を作った大家さんの力が直接働いてるから、マスターの目でも『ただのゴミ』として認識できなくなってるんです!」
「なんだと? 大家の嫌がらせだと!?」
「はい! でも大丈夫です、私が綺麗にしますから! マスター、ちょっと動かないでくださいね!」
コアちゃんがソウジの顔に両手をかざす。
彼女の魔法はその大家(創造主)から教わった、世界のシステムそのものに干渉できる希少な力だ。
「えいっ! 【超重力・極小空間圧縮クリーニング】!!」
キュイィィィィンッ!
コアちゃんの手から放たれた高密度の重力波が、ゴーグルのレンズ表面をミクロの単位で削り取り、同時に磨き上げた。
パリィィィンッ!
という甲高い音と共に、レンズにへばりついていた不可視の膜──大家(創造主)が直接介入していた『認識阻害の管理者ロック』が、ガンコな油膜のように浮き上がる。
「汚れは浮かせました! あとはマスターの手でお願いします♪」
「おおっ? いつの間にこんな油膜が付いてたんだ。 コアちゃん、ありがとう! あとは任せろ!」
「ソウジ様、これをお使いください!天使の羽から作られた超極細繊維のクロスです。」
「ミカエルも、サンキュー!」
ソウジは万能スライムクリーナーを取り出して、超極細繊維のクロスに付けて中心から円を描くように浮き上がった油膜を優しく拭き取る。
次の瞬間、視界が恐ろしくクリアになった。
【解析:極めて悪質なホコリの塊(放置期間・約数千年)】
【状態:静電気で巨大化し、意思を持ったハウスダスト】
ゴーグルの表示が、いつも通りの「清掃業者向けの安心するログ」に戻っていた。
「なるほどな……。大家の野郎、俺のゴーグルに『頑固な油膜』を張って、汚れを直視できないように細工してやがったのか」
ソウジの口角が、凶悪に吊り上がった。
「マスター、仕上げにコーティングもしておきますね♪ ──空間圧縮【重力コーティング】!!」
「でかしたぞ、コアちゃん。おかげでハッキリ見えたぜ」
ソウジはバンの荷台から、巨大な「T字型のローラー」を引きずり出した。
幅2メートルにも及ぶ、超大型の粘着クリーナー。通称、【業務用・巨大コロコロ(スライム粘着仕様)】である。
「剣崎、セシリア! バグでもシステムエラーでもねぇ。あいつらの正体は、何千年も部屋の掃除をサボったせいで、静電気で固まって動き出した『ただの巨大なホコリの塊』だ!」
「ホ、ホコリィィ!?」
「どんな換気の悪い部屋だよクソ大家が! アレルギー出たらどう落とし前つける気だ!」
ロックが外れた瞬間、世界の致命的なエラーすら、ソウジの前では「ちょっとデカいだけのホコリ」に成り下がった。
彼にとってホコリとは、ただ絡め取るだけの存在だ。
「まとめて接着してやる! オラァァァッ!!」
ソウジが【巨大コロコロ】を勢いよく床に押し当て、猛ダッシュで突撃する。
『ピギィィィ!? ガ、ガガガガッ……(剥ガサレルゥゥ!?)』
ベリベリベリッ! という強烈な粘着音と共に、掃除をすり抜けていたはずのバグの塊たちが、次々と巨大コロコロの粘着シートに絡め取られ、ぺちゃんこに圧縮されていく。
『コロコロで世界のバグを掃除してるwww』
『世界のバグが粘着テープに負けるなんて』
『ホコリ扱いww』
『ソウジ社長、完全復活キタアアアア!!』
「よし! ホコリの溜まり場は一掃したぞ!」
瞬く間に通路を綺麗にしたソウジは、コロコロの汚れたシートをベリッと一枚剥がし、不敵に笑いながら地下のさらに奥──大家の部屋へと視線を向けた。
「さあ、大家を引っ張り出すぞ。お前らの部屋の『大掃除』の時間だ」
(続く)
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