補助魔法しか使えない魔法使い、自らに補助魔法をかけて物理で戦い抜く

burazu

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鍛冶の理想

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 カールは自らが魔力耐性が生まれつき強い事もあり、アビジンを扱えることを明かし、ニラダに剣の加工を願い出るが、自宅での鍛冶は不可能だと判断し、ゲンを説得し工房で鍛冶をする事を告げるが、逆にニラダ達が戸惑ってしまう。

「あの、カールさんのお気持ちは嬉しいんですが、自分の師匠の説得は大変なんじゃ」
「そうですよ、もし失敗したらカールさんが破門されるかもしれませんし、私達の為にそうなってしまうのは……」
「ええ、お師匠さんのお気持ちよりも私達を選んだととられればあなたの修行がやりにくくなっていしまいます」
「あんたがどうしても俺達に協力してえんならデデンに来てドットの旦那の工房を借りりゃあいい」

 ニラダ達がそれぞれ自分の気持ちをカールに告げるとカールが返答をする。

「僕を気遣ってくれるのはありがたいですけど、これは親方の為でもあるんです」
「どういうことですか?」
「例の投獄された冒険者は他にもあちこちで金銭や女性とのトラブルもあって、あの時には借金もあったんです」
「そうだったんですか?それじゃあ勇者の剣を売ったのも……」

 勇者の剣を売り払った冒険者は借金も大きく抱えており、その事実を知ったニラダは勇者の剣を売り払った理由を言おうとするが先んじてカールが言葉を発する。

「そうです、もちろん自分が武器を扱えないのもあるんですが、目的は借金返済の為です」
「だけど、市場での価値が不明な武器って武器屋でも引き取ってはもらえないはずですよね?」
「ええ、だからその冒険者は闇商人に勇者の剣を高値で売り払ったんです」
「そうなんですか」
「親方はもう武器の作れないショックに加えて、どんなにいい武器を作ってもいざとなったら簡単に売り払う冒険者の姿勢に嫌気もさして冒険者嫌いを加速させてしまったんです」
「だけどよ、それはそいつがあまりにひどい奴なだけであって、一括りにして嫌うのは少し違うだろう!」

 ジャンはゲンの行動に納得がいかずに大声を発するが、その事をティアにたしなめられる。

「ジャン、あなたの気持ちも分かるけど、この事件はゲンさんが冒険者に猜疑心を生むのには十分すぎるわ、一度猜疑心が生まれると簡単にはぬぐえないもの」
「う……」
「ゲンさん、すごく苦しいんだろうね」
「ニラダさん、あなたにムキになったのは理想に燃えていてそれを追い続けている親父さん、ドットさん、そして昔の自分に重ねたんでしょう」
「おじさん、昔の自分、お父さんに……」
「考えは違っても鍛冶そのものには理想を持ってやっていた、せめて僕らが親方のかつての志を引き継げるように説得してみます」

 かつては理想に燃えていたゲン、カールは弟子である自分達がその志を引き継げるよう説得してみせると宣言する。
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