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考察
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野盗の集団を退けたギンは商人たちと共に、コッポ王国の首都ネイムに無事到着する。
「助かったぜ、兄ちゃん、報酬はギルドで受け取ってくれ。じゃあな」
商人達はギンに別れの挨拶をしてネイムで商売を始める準備を始める。港町タグも商売が盛んであったが首都であるネイムにはより多くの商品が集まり、町人たちも多く品物を購入していくのである。
商人達と別れたギンは一晩宿に泊まり、翌朝宿の主人に手配を頼んでおいた馬車でギルドのあるタグに戻ることとした。
野盗達を退けたとはいえ遠回りではあるが安全な道で帰ることとし、野盗に襲われた森を通る道では半日で通過できたところを丸1日かけてタグの町に戻った、馬車の御者に報酬を渡して別れた。
「毎度ありがとうございます。」
そう言って馬車の御者は帰っていった。
ギルドに行く前に、ギンは今回の依頼の途中で起きた野盗襲撃に関して自分なりに考えていた。まず野盗達は軽装であったのに対して野盗のリーダー格と思われる男はプレートアーマーを装備していた点である。両者の装備に統一性がない点に不審点が多く、彼らの関係が協力なのか主従なのかが分かりにくいのである。
更にリーダー格の男の戦闘能力の高さは戦い慣れしている者のそれという点を感じた。
魔力の高さと風魔法の適性を生かして風を刃状にする魔法の精度にギンも苦戦を強いられたが剣士でありながら魔法に頼り切りというお世辞にも剣士らしくない戦い方はギンにとっては隙があるように思えた。
そのため、魔法剣で一気に勝負を決めることができた。もし彼が魔法剣、もしくは精霊との契約をして強力な魔法を使用できたとしたら今も自分では勝てたかどうか…と考えるほど魔力自体は強力であった。
そもそも狙いは本当に商人の品物であったのかという点も疑問であった。野盗達は品物の強奪が目的であったかもしれないが、風魔法の男は違うかもしれないと考えた。
最後の方に放った言葉の中にギンが魔法剣を使えることを知ったうえで襲ってきたかのような発言があった。少なくとも商人の護衛に魔法剣の使い手がいることは分かっていたようであった。
そして最後にギルドに連れて身元を調べようとした際に、男の身体が燃え上がった点について、これは何者かが男に依頼、もしくは命令でギン自身、もしくは魔法剣の使い手を襲わせようとしたのでないかと考えるには充分である。保険の為に、遠隔魔法で男の身体を焼き尽くすという行為をすることから慎重な人物であることが予想される。今後の為にもギンはこの人物の足取りを掴みたいところだが、魔力の低いギンでは魔法を辿って感知することができない。そこでギンはギルドで相談をすることとした。
タグの町は商人ギルドがあり、腕自慢の者たちが依頼探しに来るため、いつも人で賑わっている。ギルドに到着したギンは受付の女性に話しかける。
「あら、いらっしゃいギンさん。今日はなんのご用?」
「最近、妙なやつに出くわした。実は……」
ギンは受付に依頼中に起きた事柄を説明した。
「そう、そんなことがあったのね。それでギンさんはどうしたいの?」
「その男の裏にいるやつの足取りを掴みたい。魔法に関する依頼はないか?」
「そうね、その男の人と関係あるかどうかは分からないけど、魔導具を扱うバン・パークさんって方の所でよく魔導具を買う魔術師の方がいるみたいなんだけど」
魔導具とは魔術師が魔法の補助の為に使用する道具のことである。主に、ステッキやローブ、アクセサリーに魔力が込められており、魔法の威力・精度を高めることができるのである。
「どうも、その魔術師さんがバンさんを通して依頼したいことがあるみたいなの、もちろん報酬は自分で負担してね」
「その内容は?」
「自分の護衛らしいんだけど、まず直接護衛する人に説明したいって話なの。話を聞いてみる?」
「もちろんだ」
「バンさんはこの町に店を構えているし、私から話してみるわ。その魔術師さんも今、この町に泊まっているからすぐに仕事の話があると思うわ」
そう言って受付はすぐさまにバンの店に赴いて行った。とりあえずギンは待つこととして数時間が経過すると受付が戻ってくる。
「ギンさん!明日、その魔術師さんがここに来て説明するって、だからギンさんも明日ここへ来てね」
「分かった、助かる」
そう言ってギンはギルドをあとにする。ギンにとっては風魔法の男の裏にいる人物のきっかけになる望みがでてきて翌日を楽しみにしている。
そして翌日、ギンはギルドに赴き、受付に声を掛けられる。
「あ、ギンさんほらもう魔術師さん来てるわよ。ほらあそこに座っている女の子」
受付が示す方向にいたのは一人の少女であった。ステッキを所持し、ローブを着ている魔術師の少女である。声が聞こえた少女はギンと受付の方向を向き、声を発する。
「依頼を受けて下さる方ですか?初めまして私は……」
この少女がこれからのギンの戦いの大きな助けになることをまだギンも、そして少女自身も知る由はないのである。
続く
「助かったぜ、兄ちゃん、報酬はギルドで受け取ってくれ。じゃあな」
商人達はギンに別れの挨拶をしてネイムで商売を始める準備を始める。港町タグも商売が盛んであったが首都であるネイムにはより多くの商品が集まり、町人たちも多く品物を購入していくのである。
商人達と別れたギンは一晩宿に泊まり、翌朝宿の主人に手配を頼んでおいた馬車でギルドのあるタグに戻ることとした。
野盗達を退けたとはいえ遠回りではあるが安全な道で帰ることとし、野盗に襲われた森を通る道では半日で通過できたところを丸1日かけてタグの町に戻った、馬車の御者に報酬を渡して別れた。
「毎度ありがとうございます。」
そう言って馬車の御者は帰っていった。
ギルドに行く前に、ギンは今回の依頼の途中で起きた野盗襲撃に関して自分なりに考えていた。まず野盗達は軽装であったのに対して野盗のリーダー格と思われる男はプレートアーマーを装備していた点である。両者の装備に統一性がない点に不審点が多く、彼らの関係が協力なのか主従なのかが分かりにくいのである。
更にリーダー格の男の戦闘能力の高さは戦い慣れしている者のそれという点を感じた。
魔力の高さと風魔法の適性を生かして風を刃状にする魔法の精度にギンも苦戦を強いられたが剣士でありながら魔法に頼り切りというお世辞にも剣士らしくない戦い方はギンにとっては隙があるように思えた。
そのため、魔法剣で一気に勝負を決めることができた。もし彼が魔法剣、もしくは精霊との契約をして強力な魔法を使用できたとしたら今も自分では勝てたかどうか…と考えるほど魔力自体は強力であった。
そもそも狙いは本当に商人の品物であったのかという点も疑問であった。野盗達は品物の強奪が目的であったかもしれないが、風魔法の男は違うかもしれないと考えた。
最後の方に放った言葉の中にギンが魔法剣を使えることを知ったうえで襲ってきたかのような発言があった。少なくとも商人の護衛に魔法剣の使い手がいることは分かっていたようであった。
そして最後にギルドに連れて身元を調べようとした際に、男の身体が燃え上がった点について、これは何者かが男に依頼、もしくは命令でギン自身、もしくは魔法剣の使い手を襲わせようとしたのでないかと考えるには充分である。保険の為に、遠隔魔法で男の身体を焼き尽くすという行為をすることから慎重な人物であることが予想される。今後の為にもギンはこの人物の足取りを掴みたいところだが、魔力の低いギンでは魔法を辿って感知することができない。そこでギンはギルドで相談をすることとした。
タグの町は商人ギルドがあり、腕自慢の者たちが依頼探しに来るため、いつも人で賑わっている。ギルドに到着したギンは受付の女性に話しかける。
「あら、いらっしゃいギンさん。今日はなんのご用?」
「最近、妙なやつに出くわした。実は……」
ギンは受付に依頼中に起きた事柄を説明した。
「そう、そんなことがあったのね。それでギンさんはどうしたいの?」
「その男の裏にいるやつの足取りを掴みたい。魔法に関する依頼はないか?」
「そうね、その男の人と関係あるかどうかは分からないけど、魔導具を扱うバン・パークさんって方の所でよく魔導具を買う魔術師の方がいるみたいなんだけど」
魔導具とは魔術師が魔法の補助の為に使用する道具のことである。主に、ステッキやローブ、アクセサリーに魔力が込められており、魔法の威力・精度を高めることができるのである。
「どうも、その魔術師さんがバンさんを通して依頼したいことがあるみたいなの、もちろん報酬は自分で負担してね」
「その内容は?」
「自分の護衛らしいんだけど、まず直接護衛する人に説明したいって話なの。話を聞いてみる?」
「もちろんだ」
「バンさんはこの町に店を構えているし、私から話してみるわ。その魔術師さんも今、この町に泊まっているからすぐに仕事の話があると思うわ」
そう言って受付はすぐさまにバンの店に赴いて行った。とりあえずギンは待つこととして数時間が経過すると受付が戻ってくる。
「ギンさん!明日、その魔術師さんがここに来て説明するって、だからギンさんも明日ここへ来てね」
「分かった、助かる」
そう言ってギンはギルドをあとにする。ギンにとっては風魔法の男の裏にいる人物のきっかけになる望みがでてきて翌日を楽しみにしている。
そして翌日、ギンはギルドに赴き、受付に声を掛けられる。
「あ、ギンさんほらもう魔術師さん来てるわよ。ほらあそこに座っている女の子」
受付が示す方向にいたのは一人の少女であった。ステッキを所持し、ローブを着ている魔術師の少女である。声が聞こえた少女はギンと受付の方向を向き、声を発する。
「依頼を受けて下さる方ですか?初めまして私は……」
この少女がこれからのギンの戦いの大きな助けになることをまだギンも、そして少女自身も知る由はないのである。
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