29 / 207
巣立
しおりを挟む
エイムが自らの実子ではないことを語ったエイムの父トール。そのトールはギンに何故この話をしたかを打ち明けようとしている。
「理由は2つあります。1つはエイムがあなたの助けになるかも知れないからです」
「彼女が自分の助けに?」
「ええ、あなたを狙っているかも知れないブロッス帝国には強力な魔法を使用する宮廷魔術師が存在すると聞いている。名はエンビデスといったと思います。彼は魔術師の軍団を束ねる存在であると同時に政治面でも宰相として皇帝の補佐をしている人物です」
エンビデスという人物の存在を聞かされたギンはトールに聞き返す。
「彼女がそのエンビデスなる人物の魔力に匹敵すると?」
「私には分かりませんが、少なくとも魔法剣だけでは厳しいでしょう。だからあなたにはエイムの魔法が助けになると思います」
「それで彼女に旅の許可を、では2つ目の理由は?」
トールはギンの問いに言葉を溜めて話す。
「2つ目の理由は……、あなたにエイムを守ってほしいからです」
「どういうことです?先程は自分の力になるとおっしゃっていたのに」
「あの時、ボース王国の軍が私達の村の近くの町に襲撃をしていた。もしかしたらエイムはボースの関係者の子かも知れないと私は考えています」
トールの推測に沈黙を守りながら聞くギンに対してトールは更に言葉を続ける。
「まだ帝国はエイムの存在に気付いてないとは思いますが、気付くのは時間の問題でしょう。その時に私達ではエイムを守れない。それどころか私達の方が足手まといになってしまう」
「それは……」
「だから強力な魔法剣を使うあなたと共にいることが互いの助けになりエイムを守ることにもつながるかも知れない。身勝手を承知でお願いします。どうか私達の代わりにエイムを守ってください」
そう言ってトールはギンに対して頭を深々と下げて懇願する。しばらくしてからギンがトールに対して言葉を発する。
「頭をお上げください。彼女には依頼のさなかも助けられましたから、守り抜くことで受けた恩を返すことになるというなら……」
「では……」
「あなたのお願いをお聞きします。傭兵ではない1人の人間として」
ギンの言葉に感激したトールはギンの手を握りながら礼を述べる。
「ありがとうございます!」
「さあ、もう休みましょう病み上がりでお体に障りますよ」
そう言ってギン、トール共に寝床に着く。
翌朝、一同は朝食もほどほどに旅支度を終え、いよいよ出発となった。エイムが両親に対して出発の挨拶をしていた。
「それじゃあ、お父さん、お母さん、行ってきます。あと、ありがとうございます。私のわがままを聞いてくれて」
エイムの言葉を聞いた母のアンリがエイムを突如抱擁する。
「お、お母さん」
エイムは一瞬戸惑うがアンリはエイムに思いを話す。
「いつかはこういう日が来ると思っていた。あなたが巣立っていく日が、でも忘れないで。あなたはいつでもここに帰ってきていいんだから。
だってあなたは私達の娘なんだから」
「お、……母さん……うっ、うっ……」
母の言葉を聞いたエイムは涙が止まらず子供のように泣き続ける。
「うっ……うっ……」
だが自ら涙をぬぐい、母に言葉を掛ける。
「はい、きっと帰ってきます。だから2人ともそれまでお体に気を付けてくださいね」
そう言ってエイムはギン達に声を掛ける。
「お待たせしました」
エイムの呼びかけにギンが返答する。
「ああ、行こう」
こうしてエイムとギン達は村を後にした。
近くの町まで徒歩で移動していく中、ギンがエイムに声を掛ける。
「エイム、ご両親との別れは辛くないか?」
「辛くないといえばウソになりますけど、でもいつかまた会えると信じて旅立つことにしましたから」
「強いなエイムは」
「それはギンさん達が一緒にいてくれるからです」
エイムの言葉に感激したブライアン、ルルーが言葉を発する。
「うれしいこといってくれるじゃねえか」
「そうね、そう言ってもらえるだけでここまで来た甲斐があったわ」
楽しそうにしている3人を見てギンは何年振りか分からないほどの穏やかな気分になっていた。
続く
「理由は2つあります。1つはエイムがあなたの助けになるかも知れないからです」
「彼女が自分の助けに?」
「ええ、あなたを狙っているかも知れないブロッス帝国には強力な魔法を使用する宮廷魔術師が存在すると聞いている。名はエンビデスといったと思います。彼は魔術師の軍団を束ねる存在であると同時に政治面でも宰相として皇帝の補佐をしている人物です」
エンビデスという人物の存在を聞かされたギンはトールに聞き返す。
「彼女がそのエンビデスなる人物の魔力に匹敵すると?」
「私には分かりませんが、少なくとも魔法剣だけでは厳しいでしょう。だからあなたにはエイムの魔法が助けになると思います」
「それで彼女に旅の許可を、では2つ目の理由は?」
トールはギンの問いに言葉を溜めて話す。
「2つ目の理由は……、あなたにエイムを守ってほしいからです」
「どういうことです?先程は自分の力になるとおっしゃっていたのに」
「あの時、ボース王国の軍が私達の村の近くの町に襲撃をしていた。もしかしたらエイムはボースの関係者の子かも知れないと私は考えています」
トールの推測に沈黙を守りながら聞くギンに対してトールは更に言葉を続ける。
「まだ帝国はエイムの存在に気付いてないとは思いますが、気付くのは時間の問題でしょう。その時に私達ではエイムを守れない。それどころか私達の方が足手まといになってしまう」
「それは……」
「だから強力な魔法剣を使うあなたと共にいることが互いの助けになりエイムを守ることにもつながるかも知れない。身勝手を承知でお願いします。どうか私達の代わりにエイムを守ってください」
そう言ってトールはギンに対して頭を深々と下げて懇願する。しばらくしてからギンがトールに対して言葉を発する。
「頭をお上げください。彼女には依頼のさなかも助けられましたから、守り抜くことで受けた恩を返すことになるというなら……」
「では……」
「あなたのお願いをお聞きします。傭兵ではない1人の人間として」
ギンの言葉に感激したトールはギンの手を握りながら礼を述べる。
「ありがとうございます!」
「さあ、もう休みましょう病み上がりでお体に障りますよ」
そう言ってギン、トール共に寝床に着く。
翌朝、一同は朝食もほどほどに旅支度を終え、いよいよ出発となった。エイムが両親に対して出発の挨拶をしていた。
「それじゃあ、お父さん、お母さん、行ってきます。あと、ありがとうございます。私のわがままを聞いてくれて」
エイムの言葉を聞いた母のアンリがエイムを突如抱擁する。
「お、お母さん」
エイムは一瞬戸惑うがアンリはエイムに思いを話す。
「いつかはこういう日が来ると思っていた。あなたが巣立っていく日が、でも忘れないで。あなたはいつでもここに帰ってきていいんだから。
だってあなたは私達の娘なんだから」
「お、……母さん……うっ、うっ……」
母の言葉を聞いたエイムは涙が止まらず子供のように泣き続ける。
「うっ……うっ……」
だが自ら涙をぬぐい、母に言葉を掛ける。
「はい、きっと帰ってきます。だから2人ともそれまでお体に気を付けてくださいね」
そう言ってエイムはギン達に声を掛ける。
「お待たせしました」
エイムの呼びかけにギンが返答する。
「ああ、行こう」
こうしてエイムとギン達は村を後にした。
近くの町まで徒歩で移動していく中、ギンがエイムに声を掛ける。
「エイム、ご両親との別れは辛くないか?」
「辛くないといえばウソになりますけど、でもいつかまた会えると信じて旅立つことにしましたから」
「強いなエイムは」
「それはギンさん達が一緒にいてくれるからです」
エイムの言葉に感激したブライアン、ルルーが言葉を発する。
「うれしいこといってくれるじゃねえか」
「そうね、そう言ってもらえるだけでここまで来た甲斐があったわ」
楽しそうにしている3人を見てギンは何年振りか分からないほどの穏やかな気分になっていた。
続く
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います
こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!===
ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。
でも別に最強なんて目指さない。
それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。
フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。
これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。
ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました
グミ食べたい
ファンタジー
現実に疲れ果てた俺がたどり着いたのは、圧倒的な自由度を誇るVRMMORPG『アナザーワールド・オンライン』。
選んだ職業は、幼い頃から密かに憧れていた“料理人”。しかし戦闘とは無縁のその職業は、目立つこともなく、ゲーム内でも完全に負け組。素材を集めては料理を作るだけの、地味で退屈な日々が続いていた。
だが、ある日突然――運命は動き出す。
フレンドに誘われて参加したレベル上げの最中、突如として現れたネームドモンスター「猛き猪」。本来なら三パーティ十八人で挑むべき強敵に対し、俺たちはたった六人。しかも、頼みの綱であるアタッカーたちはログアウトし、残されたのは熊型獣人のタンク・クマサン、ヒーラーのミコトさん、そして非戦闘職の俺だけ。
「逃げろ」と言われても、仲間を見捨てるわけにはいかない。
死を覚悟し、包丁を構えたその瞬間――料理スキルがまさかの効果を発揮し、常識外のダメージがモンスターに突き刺さる。
この予想外の一撃が、俺の運命を一変させた。
孤独だった俺がギルドを立ち上げ、仲間と出会い、ひょんなことからクマサンの意外すぎる正体を知り、ついにはVチューバーとしての活動まで始めることに。
リアルでは無職、ゲームでは負け組職業。
そんな俺が、仲間と共にゲームと現実の垣根を越えて奇跡を起こしていく物語が、いま始まる。
チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。
交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。
そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。
その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。
だが、それが不幸の始まりだった。
世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。
彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました
髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」
気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。
しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。
「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。
だが……一人きりになったとき、俺は気づく。
唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。
出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。
雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。
これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。
裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか――
運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。
毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります!
期間限定で10時と17時と21時も投稿予定
※表紙のイラストはAIによるイメージです
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる