6 / 500
第一章 転生アンマリア
第6話 攻略対象の王子
しおりを挟む
アンマリアが父親に告げられて絶望に落ち込んでいる頃。サーロイン王国の王城では、王子が単独で洗礼式に臨んでいた。
「では、フィレン殿下の洗礼式を始めます」
「はい、よろしく頼みます」
司祭が水晶を持った神の彫像をテーブルの上に置くと、フィレンはそこに一度深呼吸をしてから手を置いた。
すると、眩い光が放たれる。白と黄色のに2色の光が放たれたので、光と雷の2属性持ちだという事が分かる。適性は『指導者』、恩恵は『先見の目』と表示された。これから国を担う立場としてはこの上ない適性と恩恵である。
「おお、素晴らしい。さすがはフィレン殿下でございますね」
「ありがとうございます。ですが、あくまで目安でしかありません。これからの私の努力というのが大事なのですよね?」
フィレンがにっこりと言うと、
「そうでございます。さすがはフィレン殿下」
神父はちょっと困惑した表情を浮かべていた。
フィレン・サーロイン第一王子。
大不人気乙女ゲーム『アンマリアの恋愛ダイエット大作戦』の攻略対象の一人で、告白時の要求体重が一番軽い範囲にある最高難易度の攻略対象。120kgスタートのアンマリアにとって、最大の敵である。なにせ、告白成功をさせられる体重の範囲は55kg未満だ。三年目ともなれば個別ルートに入ってしまうので、実質2年で半減という鬼畜な要求をされる難攻不落の城塞なのだから。
減らすだけなら何とでもなるのだが、さらに困難を極めさせたのがアンマリアの体質だ。アンマリアの体重は学園に入るまでの生活のせいでとにかく増えやすい。恩恵の効果が切り替わったからといっても、その体質が容易に変わる事はない。それに加えてお出かけなどのイベントで、やたらとアンマリアに食事をさせようとするのだ。たとえ頑張って5kg減らしたとしても、このイベントでいとも簡単にリバウンドしてしまう。しかも好感度と密接に関係してくるので本当にやりづらいのだ。
ちなみにゲーム中のフィレン王子はイケメンですらりとした体格に軽くウェーブした金髪に碧眼という、いかにも王子様ないでたちをしている。数あるイラストの中にはBLまであったとかなかったとか。
洗礼式を終えたフィレンは、椅子に座って神父に問い掛ける。
「今年の洗礼式では、何か面白い方はいらっしゃいましたか?」
自分と同じように洗礼を受けた子どもたちがたくさん居るのだ。フィレンもどうやら気になっているようである。だが、聞き方が8歳のそれじゃない。
「ええ、なんでも聖女候補が出たらしいです」
城で洗礼式をしている神父は、教会で洗礼式をしていた神父とは別人なので、どうやら伝聞のようだ。
「聖女候補ですか。一体どのような方ですか?」
気になるフィレンが問い掛けると、神父はちょっと渋っていたが、
「サキ・テトリバーという名の男爵令嬢だそうです。洗礼を聞いた時にちょっと叫んでいたので、お耳に入れるか少々迷いました」
と正直に答えていた。聖女候補という事は、将来王妃として迎える可能性があるだけに、神父は性格面で躊躇したという事らしい。
「そうなのですね」
フィレンは無邪気に笑っていた。フィレンが特に気にしていないようなので、神父は少し気が楽になった。
「ああ、そういえばもうひと方、妙な洗礼結果が出ていたと聞きましたね」
「へえ、それはどんな方なのですか?」
神父が追加で伝えようとしたその時だった。
「兄上、洗礼式の結果はいかがでしたか?」
バーンと扉が開いて、少年が入ってきた。
「これはこれはリブロ殿下。フィレン殿下の洗礼式は先ほど終わったばかりでございますよ」
「そなたに聞いているのではない。僕は兄上に聞いているのだ」
「いやはや、これは失礼致しました」
リブロに怒られた神父はおとなしく頭を下げる。確かにそうだが少々理不尽である。
「こらこらリブロ。入ってくる時はノックをするように言っているでしょうが。今後は気を付けるのですよ」
「兄上、申し訳ありません。ですが、僕はどうしても結果が聞きたいのです」
リブロがせがんでくるので、仕方なくフィレンは結果を伝える。するとリブロの表情は明るくなった。
「さすがは兄上! 来年は僕も負けていられませんね」
「リブロは来年洗礼式だね。私も楽しみにしているよ」
どうやらこの少年は、フィレンの一つ下の弟のようだった。
リブロ・サーロイン第二王子
フィレンの弟である彼は、攻略対象を全員クリアした後の隠しキャラとして登場する。だが、上の通り、年齢が一つ下で同じように三年目に固定ルートに入ってしまうので、体重が告白に関係ないとはいえ兄同様に鬼畜難易度の攻略レベルを誇っている。何と言っても初登場が二年目に突入してからなのだ。その上、地味に神出鬼没で好感度が上げにくい。アンマリアも前世で攻略方法を確立するまでかなり時間を費やしたようである。なにせ貴重なショタ枠だったのだから。
ちなみに容姿自体は兄とよく似ているが、少し髪はリブロの方が長いし、髪色も濃い。
エンディングとしてはほぼ兄が王位を継ぐので、アンマリア次第でかなりエンディングの種類が多かった。ちなみにリブロが兄を差し置いて王位を継ぐエンディングも存在しているのである。
「で、奇妙な洗礼式の結果というのがですね……」
神父は二人の王子に詳細を伝えると、フィレンは怪しく笑い、リブロは楽しそうに笑った。
「それは面白い。実にお近付きになりたいものですね」
そう話すフィレンの表情に、神父は思わず背筋が凍り付くのであった。
「では、フィレン殿下の洗礼式を始めます」
「はい、よろしく頼みます」
司祭が水晶を持った神の彫像をテーブルの上に置くと、フィレンはそこに一度深呼吸をしてから手を置いた。
すると、眩い光が放たれる。白と黄色のに2色の光が放たれたので、光と雷の2属性持ちだという事が分かる。適性は『指導者』、恩恵は『先見の目』と表示された。これから国を担う立場としてはこの上ない適性と恩恵である。
「おお、素晴らしい。さすがはフィレン殿下でございますね」
「ありがとうございます。ですが、あくまで目安でしかありません。これからの私の努力というのが大事なのですよね?」
フィレンがにっこりと言うと、
「そうでございます。さすがはフィレン殿下」
神父はちょっと困惑した表情を浮かべていた。
フィレン・サーロイン第一王子。
大不人気乙女ゲーム『アンマリアの恋愛ダイエット大作戦』の攻略対象の一人で、告白時の要求体重が一番軽い範囲にある最高難易度の攻略対象。120kgスタートのアンマリアにとって、最大の敵である。なにせ、告白成功をさせられる体重の範囲は55kg未満だ。三年目ともなれば個別ルートに入ってしまうので、実質2年で半減という鬼畜な要求をされる難攻不落の城塞なのだから。
減らすだけなら何とでもなるのだが、さらに困難を極めさせたのがアンマリアの体質だ。アンマリアの体重は学園に入るまでの生活のせいでとにかく増えやすい。恩恵の効果が切り替わったからといっても、その体質が容易に変わる事はない。それに加えてお出かけなどのイベントで、やたらとアンマリアに食事をさせようとするのだ。たとえ頑張って5kg減らしたとしても、このイベントでいとも簡単にリバウンドしてしまう。しかも好感度と密接に関係してくるので本当にやりづらいのだ。
ちなみにゲーム中のフィレン王子はイケメンですらりとした体格に軽くウェーブした金髪に碧眼という、いかにも王子様ないでたちをしている。数あるイラストの中にはBLまであったとかなかったとか。
洗礼式を終えたフィレンは、椅子に座って神父に問い掛ける。
「今年の洗礼式では、何か面白い方はいらっしゃいましたか?」
自分と同じように洗礼を受けた子どもたちがたくさん居るのだ。フィレンもどうやら気になっているようである。だが、聞き方が8歳のそれじゃない。
「ええ、なんでも聖女候補が出たらしいです」
城で洗礼式をしている神父は、教会で洗礼式をしていた神父とは別人なので、どうやら伝聞のようだ。
「聖女候補ですか。一体どのような方ですか?」
気になるフィレンが問い掛けると、神父はちょっと渋っていたが、
「サキ・テトリバーという名の男爵令嬢だそうです。洗礼を聞いた時にちょっと叫んでいたので、お耳に入れるか少々迷いました」
と正直に答えていた。聖女候補という事は、将来王妃として迎える可能性があるだけに、神父は性格面で躊躇したという事らしい。
「そうなのですね」
フィレンは無邪気に笑っていた。フィレンが特に気にしていないようなので、神父は少し気が楽になった。
「ああ、そういえばもうひと方、妙な洗礼結果が出ていたと聞きましたね」
「へえ、それはどんな方なのですか?」
神父が追加で伝えようとしたその時だった。
「兄上、洗礼式の結果はいかがでしたか?」
バーンと扉が開いて、少年が入ってきた。
「これはこれはリブロ殿下。フィレン殿下の洗礼式は先ほど終わったばかりでございますよ」
「そなたに聞いているのではない。僕は兄上に聞いているのだ」
「いやはや、これは失礼致しました」
リブロに怒られた神父はおとなしく頭を下げる。確かにそうだが少々理不尽である。
「こらこらリブロ。入ってくる時はノックをするように言っているでしょうが。今後は気を付けるのですよ」
「兄上、申し訳ありません。ですが、僕はどうしても結果が聞きたいのです」
リブロがせがんでくるので、仕方なくフィレンは結果を伝える。するとリブロの表情は明るくなった。
「さすがは兄上! 来年は僕も負けていられませんね」
「リブロは来年洗礼式だね。私も楽しみにしているよ」
どうやらこの少年は、フィレンの一つ下の弟のようだった。
リブロ・サーロイン第二王子
フィレンの弟である彼は、攻略対象を全員クリアした後の隠しキャラとして登場する。だが、上の通り、年齢が一つ下で同じように三年目に固定ルートに入ってしまうので、体重が告白に関係ないとはいえ兄同様に鬼畜難易度の攻略レベルを誇っている。何と言っても初登場が二年目に突入してからなのだ。その上、地味に神出鬼没で好感度が上げにくい。アンマリアも前世で攻略方法を確立するまでかなり時間を費やしたようである。なにせ貴重なショタ枠だったのだから。
ちなみに容姿自体は兄とよく似ているが、少し髪はリブロの方が長いし、髪色も濃い。
エンディングとしてはほぼ兄が王位を継ぐので、アンマリア次第でかなりエンディングの種類が多かった。ちなみにリブロが兄を差し置いて王位を継ぐエンディングも存在しているのである。
「で、奇妙な洗礼式の結果というのがですね……」
神父は二人の王子に詳細を伝えると、フィレンは怪しく笑い、リブロは楽しそうに笑った。
「それは面白い。実にお近付きになりたいものですね」
そう話すフィレンの表情に、神父は思わず背筋が凍り付くのであった。
17
あなたにおすすめの小説
異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!
男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる
暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。
授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。
【連載版】ヒロインは元皇后様!?〜あら?生まれ変わりましたわ?〜
naturalsoft
恋愛
その日、国民から愛された皇后様が病気で60歳の年で亡くなった。すでに現役を若き皇王と皇后に譲りながらも、国内の貴族のバランスを取りながら暮らしていた皇后が亡くなった事で、王国は荒れると予想された。
しかし、誰も予想していなかった事があった。
「あら?わたくし生まれ変わりましたわ?」
すぐに辺境の男爵令嬢として生まれ変わっていました。
「まぁ、今世はのんびり過ごしましょうか〜」
──と、思っていた時期がありましたわ。
orz
これは何かとヤラカシて有名になっていく転生お皇后様のお話しです。
おばあちゃんの知恵袋で乗り切りますわ!
転生調理令嬢は諦めることを知らない!
eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる