伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦

未羊

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第一章 転生アンマリア

第40話 これが転生者チート?!

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 国王たちとの話も終わり、私たちは国王の執務室から退出した。まったく、あの部屋の空気といったら何とも言えない重苦しさがあった。それこそ胃に穴が開きそうな感じだった。これが平気な転移者とかも居るらしいから、どういう神経しているのかしらね。とりあえず、無事にフィレン王子に魔石ペンを渡せた事はよかった。まあ、国王からもせびられたのはちょっとなんともだったけれど、私の胃が痛いのはそれが最大の原因だった。
(これはこの間頼んだお店で王家の紋章を刻んでもらうしかないわね。帰ったら早速数本作りましょう)
 私は首を左右に動かしてコリを解した。
 部屋を出てからしばらく、私はサキとも話をしていた。魔石ペンはサキも欲しがっていたので、同じ婚約者候補のよしみとして作ってあげる事にした。もちろん男爵にも。ただ、国王の分が先だからという断りは入れておいた。二人ともそれは貴族としてしっかりと弁えていたので、よくあるふざけた貴族ではなかったようだ。思い上がっている様子もないし、これはこれで貴重な貴族である。
 王子の婚約者候補なんてだけでもつけあがる貴族はそこそこ居る。それを思えば良識的な貴族だ。こういった貴族との付き合いは大切にしたい。
「マリー、あの魔石ペンの作り方を教えてもらっていいかい?」
 テトリバー男爵親子と別れてから、父親がそんな大それた事を聞いてきた。まぁ、我が家から売りに出すなんて言ってしまったのだから、ある程度の量産化は視野に入れなければならない話だものね。再現性は難しいけれど、根気よく説明すれば大丈夫かしらね。私は、とにかく信用できる人物という条件を付けて、父親の言葉を了承した。
 母親とも合流し、私は王都のファッティ伯爵家に戻る。
「うーん、魔石はこの間のクッケン湖の一件があったから、まだ在庫はあるのよね。量産化するともなれば、この確保は大事よね。それに、魔石にはまだまだ利用方法がありそうだし、確保となると専属の冒険者でも雇った方がいいかしらね」
 自分の持つ魔石を前に、私は唸っていた。しかし、これはあとで父親と相談した方がいいだろう。とりあえず今は、国王に献上する魔石ペンを作る。今まで作ったペンと同じ要領で作っていき、あっと今に完成させてしまう。さすがに4本目ともなれば手慣れたものだった。動作もちゃんと確認する。うん、問題ない。そういうわけで、私は父親の元へと向かった。
「お父様、よろしいでしょうか」
「マリーかい、入ってらっしゃい」
 スーラには傍を離れてもらって、私は単身父親の書斎へと向かった。そしたらば、父親は今日も溜まった書類を一生懸命片付けていた。
 本当に伯爵ともなれば片付ける書類の量が増える。領地のもそうだが、父親はこれ以外にもお城での執務もあるのだ。一体どれだけの紙を相手にしているのだろうか、まったく想像がつかない。
「お父様、陛下に献上する魔石ペンができましたわ」
「早いな、もうできたのか」
「もう4本目ですもの。慣れてしまいました」
 父親に魔石ペンを渡すと、父親はしきりにそれを眺めている。使っている筒は高級な鉱石だ。ファンタジー世界では有名な魔法銀である。ノックする部分には宝石を継ぎ当ててあり、この石には防御の魔法を込めておいた。任意で防御壁を張れるほか、一度きりではあるものの持ち主の命を護るというファンタジーあるあるな魔法である。国王ならそれなりにそういう人物が居るだろうからね、念のためよ、ね・ん・の・た・め。
「また大それた魔法を使ったものだな。だが、陛下ならばそれくらいの危険は起こりうるだろう。さすがだな、マリー」
 私は内心ひやひやしながら、父親の称賛の言葉を聞いている。なんでひやひやしているかというと、多分、聖女になるサキが使えないだろうからだ。今度会う時にでも、お話させてもらおう、うん。聖女なら回復と防御と浄化の3つは極めておく必要があるからね。ゲームのサキもその辺りは全部極めてくれるからなぁ。死者蘇生こそないけれど、気絶から一気に満タンまで回復なんてのはお手の物だったもの。
 ちなみに、一度だけ命を護るという魔法の仕組みは、サキに説明する時にでもお話しする事としましょう。
 まぁ、国王への献上品となる魔石ペンの話はこれくらいにして、テトリバー男爵親子に贈る魔石ペンを作るついでに、父親にその作り方を披露する。
 国王と王子の魔石ペンは魔法銀の筒、私のを含めそれ以外のは魔物の骨だ。骨を魔法で加工して筒にしているのだ。ちなみにこの骨、魔石と同じクッケン湖でのスタンピードで手に入った物。ケルピーの骨も使い道が無いからといって、全部私が引き取った。全部捨てる予定だったらしいので、捨て値ではあるものの買い取ったのだ。ああ、頭蓋骨は防具に使えるらしいからって売ってもらえなかったわね、忘れてた。おかげさまでしばらく材料には困らなさそう。魔法を使えばそのまま切り出すんじゃなくて、形を自由に変えられるのはいいわね。
 父親の目の前でケルピーの骨と魔石を、どんどんと魔法を使って変化させていく。その光景を父親はあんぐりとした表情で見ていた。
 あれ、やっぱり私、なんかやっちゃいましたかね。
 そう思いつつも、私は無事にテトリバー男爵親子に渡す魔石ペンを完成させたのだった。
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