伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦

未羊

文字の大きさ
219 / 500
第五章 2年目前半

第219話 事件に次ぐ事件

しおりを挟む
 私たちは揃いも揃って学園を丸1日お休みした。あれだけの大魔法を使って消耗してしまっていたので、こればかりは仕方がないというものよね。
 私はぴんぴんしているけれど、ミズーナ王女もかなりお疲れだったし、サキにいたってはかなり危険な状態にまで足を突っ込みかけていたものね。明日、学園に行く前にでもお見舞いに行こうかしらね。
 そんなわけで、あの一件の翌々日。私は王都のテトリバー男爵邸を訪れていた。ちなみにモモはエスカと一緒に先に学園に向かってもらっているので、私一人だけである。
「おはようございます。サキ様は起きていらっしゃいますでしょうか」
 玄関に立った私が声を掛けると、
「はい、アンマリア様、おはようございます」
 玄関にサキが出てきた。慌てて出てきたのか、服装は寝間着のままだった。
「よかった、だいぶ危険な感じでしたけれど、回復されたのですね」
「はい。でも、まだ本調子ではありませんので、本日もお休みさせて頂く事になりました。せっかく迎えに来られたのに、申し訳ございません」
 私が安心したように声を掛けると、サキは私に謝ってきた。どうやら、私が一緒に学園に行くために迎えに来たのだと思ったらしい。うーん、そうなっちゃうかしらね。サキってば真面目なんだから。
「サキ様、ご安心下さい。私は登校に誘いに来たわけではありません。一昨日あんな状態で倒れたのですから、心配になって様子を見に来ただけです。でも、元気そうなお姿を見られて安心しました」
 私がにこりと微笑むと、サキが早とちりに気が付いて顔を真っ赤にしていた。本当に可愛い事してくれるわね。
「私は完全に回復しましたが、サキ様はご無理なさらず、ゆっくり休んでいて下さい。教官たちには私から説明しておきます」
「あ、アンマリア様……。ありがとう、ございます……」
 サキは顔が真っ赤な状態なまま、俯きながら私にお礼を言っていた。そして、ついて来ていた侍女に抱えられながら、自室へと戻っていった。その姿を見送った私は、安心して学園へと向かったのだった。

 学園に到着すると、ちょうどお城から来たと思われる馬車が到着していた。ところどころに緑色の装飾のあるこの馬車は、隣国ベジタリウス王国の馬車だ。つまり、そこに乗っているのはレッタス王子とミズーナ王女だろう。
 私は少し下がって頭を下げる。現場に居合わせた以上、ちゃんと形式に則って出迎えないとね。普通に考えれば不敬罪よ、ふ・け・い・ざ・い。
 馬車からはレッタス王子とミズーナ王女が降りてきたのだが、その姿を見た私はつい驚いてしまった。
「あら、アンマリア。おはようございます」
「お、おはようございますです、ミズーナ王女殿下……」
 なんとか挨拶を交わした私だけれど、ミズーナ王女の姿にはついついびびらざるを得なかった。
 120kgあった巨体が、10kg以上落ちて思いの外痩せていたんだもの。私だって、一昨日の一件で5kg落ちたんだけどさ。いやまあ、驚いたわね。
 しかし、周りのみんなはそれが分かっていない。あれだけの巨体なら多少痩せたところで誤差の範囲なんでしょうね。現に、私が痩せた事にも気が付いていないんだもの。
「うふふ、アンマリアも痩せましたか」
「あっ、はい。……気が付いちゃいますか」
「ふふっ、これでも拡張版のヒロインですからね」
「あははははは……」
 こそこそと話をする私たちである。転生者でここがゲームの世界だと気付いているからこその会話だった。でも、ヒロインでも油断できない環境に居るからこそ、こうやって地に足をつけて生活できているんだと思う。どっかのヒロインたちのように頭お花畑にならずに済んだのは大きいわね。

 とりあえず、あの件に絡んだ私たち三人は無事に回復に向かっているので、まずはひと安心というところだった。
 しかし、あの一件に関してはまだ解決していない。呪いの正体は何で、誰が何の目的で仕掛けたものなのか、それをはっきりさせる必要がある。
 おそらくはゲーム中に出てきた痩せる薬である事は間違いないんだろうけど、一度きりしか出てこなかったゲームとは違い、現実は何度でも登場する可能性があるんだもの。根本原因を取り除かないと、この先、こういった事が何度も起こりえてしまう。
 その関連で、昼休みに私とミズーナ王女は揃って教官たちに呼び出されて事情聴取をされた。学園の教師の一部はそういった事件の調査などを兼任している人が居るのよ。分かりやすいのがミスミ教官だけどね。
「なるほどね。建物一棟丸ごとに仕掛けられた呪いか」
「あれから2日経っていますけれど、今ならまだ魔力の痕跡が残っているかも知れません」
「その辺りなら、王都の警備隊が既に調べて入るだろうけれど、私たちも調べてみましょうかね」
 こう話すのは魔法型の教官のミズーチ・ボーンリーである。魔法に関する研究をしている研究者でもあるので、こういった呪いの類も守備範囲に入るのよ。
「平民街の中の貧民街寄りの食堂だったわね」
「はい、地図を描きましょうか?」
「助かるわ。こういうのは私たち大人に任せておきなさい。あなたたちは立場ある人間なのだから、危険な事には極力首を突っ込まないように。いいわね?」
「分かりました」
 そんなわけで、私たちは一度この事件を大人の手に委ねる事にしたのだった。
 すんなり解決してくれるといいわね。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妖精族を統べる者

暇野無学
ファンタジー
目覚めた時は死の寸前であり、二人の意識が混ざり合う。母親の死後村を捨てて森に入るが、そこで出会ったのが小さな友人達。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

【連載版】ヒロインは元皇后様!?〜あら?生まれ変わりましたわ?〜

naturalsoft
恋愛
その日、国民から愛された皇后様が病気で60歳の年で亡くなった。すでに現役を若き皇王と皇后に譲りながらも、国内の貴族のバランスを取りながら暮らしていた皇后が亡くなった事で、王国は荒れると予想された。 しかし、誰も予想していなかった事があった。 「あら?わたくし生まれ変わりましたわ?」 すぐに辺境の男爵令嬢として生まれ変わっていました。 「まぁ、今世はのんびり過ごしましょうか〜」 ──と、思っていた時期がありましたわ。 orz これは何かとヤラカシて有名になっていく転生お皇后様のお話しです。 おばあちゃんの知恵袋で乗り切りますわ!

転生調理令嬢は諦めることを知らない!

eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。 それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。 子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。 最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。 八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。 それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。 また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。 オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。 同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。 それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。 弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

処理中です...