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第五章 2年目前半
第262話 夏合宿が、来る
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戻ってきた時間が遅かったので、私は急に消えた理由を翌朝父親に説明した。その内容に父親はとても驚いていたものの、聞き終えた後に私に頭を下げていた。娘とはいえど簡単に頭は下げてもらっては困るけれど、人の命を救ったのであれば仕方ないかなという事で、私は納得しておいた。
かなり回復させておいたので、タミールは早ければ後期には学園に出てこれるんじゃないかと思うけど、こまめに様子を見に行った方がいいかも知れないわね。瞬間移動魔法があるんだし、いつでも行けるわけだしね。
病人だから経過観察は必要だけど、そうも言ってられないのよね。他でもないモモの誕生日があるんだもの。私に依存している気があるだけに、さすがにこの予定をすっぽかす事ができないわ。このままヤンデレにでもなっちゃったらどうしようかしらね……。モモの事も正直頭の痛い話だった。
モモの誕生日を明日に控えた夜の事、またもやエスカが私の部屋にやって来ていた。
「モモの誕生日は明日ですね、アンマリア」
「ええ、そうよ。合宿の事もあって、今年も身内だけの小さなお祝いですけれどね」
エスカは話し掛けてきたので、私は簡単に返しておく。なまじ王女なだけに、適当にあしらえないものね。はあ、面倒だわ。
「それにしても、モモはずいぶんとアンマリアにべったりね」
「うーん、小さい頃に暴力的な両親から助けた事はあるけれど、それが原因でここまで私にべったりとは思ってもみなかったわ」
「なるほど、頼れるお姉さんになってしまったわけなのね」
私が簡単に話した事情から察してしまうエスカである。無駄なところで有能だから扱いに困るのよね、このお姫様は。
「でも、そういうのだったら、好きな殿方でも居れば変わるんでしょうけどね」
「婚約者自体は居るのよ、タカー・ブロック侯爵令息という方がね……」
人差し指を立てながら言うエスカに対して、私はすぐにツッコミを入れた。
「あら、もう居るのね」
あっけらかんとした表情で返してくるエスカ。
「婚約者も居て、それなりの仲になっているのに、それでも私にべったりなのよ、モモは!」
そう話す私は右手の拳を強く握っている。そのくらいにこの状況に不満なのである。どうしてモモは、義理の姉妹とはいえここまでシスコンになってしまったのか。本当によく分からない話よね。
「それは大変ですね。でも、アンマリアが王妃になるために城に住むようになれば、少しは変わると思いますよ。会えなくなりますからね」
エスカはそう言いながら、意味ありげに笑みを浮かべていた。何やだ怖いわ、この王女。
そうは思いながらも、眠る時間が来るまで、私たちはモモの誕生日の事で盛り上がったのだった。
今年のモモの誕生日も身内だけのささやかなものとはいえ、結構盛り上がった。大体エスカのせい。
私からのプレゼントは、モモの名前にちなんだ髪飾りよ。魔法の練習のために渡したトレント木材の杖だってあるから、今回は実にシンプルなものにしておいた。
モモの名前の由来は”太もも肉”なんだけど、同じ音の別のもの、つまりは桃をデザインにあしらったものなのよね。見た事ない物体のデザインに驚いていたようだけど、気に入ってもらえてよかったわ。というか、私から贈り物をしたら、よっぽどでない限りは喜びそうなんだけどね。
とりあえず、モモの笑顔を見れたので、誕生日パーティーは成功ね。
もう明後日には、夏の合宿に向けて出発しなければならないから、すぐさま気持ちを切り替えていかなきゃね。
今年の夏の合宿の場所はサングリエ辺境伯領の中の街道から外れた場所だから、地味に初めて行く場所になる。だから、私も学園の用意する馬車に乗って移動しないと、瞬間移動魔法で後から合流する事はできないのよね。行った事のある場所にしか飛べないっていうのは不便だけど、魔法って結局イメージだから、イメージできなければ飛べないのだから仕方ないわね。
そういえば、今年からは3学年まとめて同じ場所の合宿らしいけど、そんな場所あるのかしらね。詳細に関しては出発の朝に説明があるらしいけれど、心配だし不安になってくるわ。
うーん、大臣たる父親ならその辺り詳しそうなんだけど、サングリエ辺境伯領の話は聞けたけれど、合宿の事は聞いても答えてくれなかったものね。仕方ないから楽しみに取っておきましょうかね。
ゲーム中では3年とも合宿はバッサーシ辺境伯領だったけれど、去年の魔物の大量発生のせいで、今年はサングリエ辺境伯領で行われる事になった学園の夏の合宿。
初めての場所、未知のイベントという事もあって、私たち転生者の知識もまったく役に立たないという事になる。
ただ、3学年全員が同じ場所で合宿を行うという事で、通常版と拡張版のキャラクターが一堂に会する。これはこれで楽しみというものだ。
はてさて、2年目の夏合宿では一体どんな事が起きるのだろうか。できれば何にも起きずに終わってほしいものだけど、ゲームだとこういう大きなイベントでは大体何かが起きる。
期待と不安の入り混じった2年目の夏合宿が、ついにその幕を開けようとしていた。
かなり回復させておいたので、タミールは早ければ後期には学園に出てこれるんじゃないかと思うけど、こまめに様子を見に行った方がいいかも知れないわね。瞬間移動魔法があるんだし、いつでも行けるわけだしね。
病人だから経過観察は必要だけど、そうも言ってられないのよね。他でもないモモの誕生日があるんだもの。私に依存している気があるだけに、さすがにこの予定をすっぽかす事ができないわ。このままヤンデレにでもなっちゃったらどうしようかしらね……。モモの事も正直頭の痛い話だった。
モモの誕生日を明日に控えた夜の事、またもやエスカが私の部屋にやって来ていた。
「モモの誕生日は明日ですね、アンマリア」
「ええ、そうよ。合宿の事もあって、今年も身内だけの小さなお祝いですけれどね」
エスカは話し掛けてきたので、私は簡単に返しておく。なまじ王女なだけに、適当にあしらえないものね。はあ、面倒だわ。
「それにしても、モモはずいぶんとアンマリアにべったりね」
「うーん、小さい頃に暴力的な両親から助けた事はあるけれど、それが原因でここまで私にべったりとは思ってもみなかったわ」
「なるほど、頼れるお姉さんになってしまったわけなのね」
私が簡単に話した事情から察してしまうエスカである。無駄なところで有能だから扱いに困るのよね、このお姫様は。
「でも、そういうのだったら、好きな殿方でも居れば変わるんでしょうけどね」
「婚約者自体は居るのよ、タカー・ブロック侯爵令息という方がね……」
人差し指を立てながら言うエスカに対して、私はすぐにツッコミを入れた。
「あら、もう居るのね」
あっけらかんとした表情で返してくるエスカ。
「婚約者も居て、それなりの仲になっているのに、それでも私にべったりなのよ、モモは!」
そう話す私は右手の拳を強く握っている。そのくらいにこの状況に不満なのである。どうしてモモは、義理の姉妹とはいえここまでシスコンになってしまったのか。本当によく分からない話よね。
「それは大変ですね。でも、アンマリアが王妃になるために城に住むようになれば、少しは変わると思いますよ。会えなくなりますからね」
エスカはそう言いながら、意味ありげに笑みを浮かべていた。何やだ怖いわ、この王女。
そうは思いながらも、眠る時間が来るまで、私たちはモモの誕生日の事で盛り上がったのだった。
今年のモモの誕生日も身内だけのささやかなものとはいえ、結構盛り上がった。大体エスカのせい。
私からのプレゼントは、モモの名前にちなんだ髪飾りよ。魔法の練習のために渡したトレント木材の杖だってあるから、今回は実にシンプルなものにしておいた。
モモの名前の由来は”太もも肉”なんだけど、同じ音の別のもの、つまりは桃をデザインにあしらったものなのよね。見た事ない物体のデザインに驚いていたようだけど、気に入ってもらえてよかったわ。というか、私から贈り物をしたら、よっぽどでない限りは喜びそうなんだけどね。
とりあえず、モモの笑顔を見れたので、誕生日パーティーは成功ね。
もう明後日には、夏の合宿に向けて出発しなければならないから、すぐさま気持ちを切り替えていかなきゃね。
今年の夏の合宿の場所はサングリエ辺境伯領の中の街道から外れた場所だから、地味に初めて行く場所になる。だから、私も学園の用意する馬車に乗って移動しないと、瞬間移動魔法で後から合流する事はできないのよね。行った事のある場所にしか飛べないっていうのは不便だけど、魔法って結局イメージだから、イメージできなければ飛べないのだから仕方ないわね。
そういえば、今年からは3学年まとめて同じ場所の合宿らしいけど、そんな場所あるのかしらね。詳細に関しては出発の朝に説明があるらしいけれど、心配だし不安になってくるわ。
うーん、大臣たる父親ならその辺り詳しそうなんだけど、サングリエ辺境伯領の話は聞けたけれど、合宿の事は聞いても答えてくれなかったものね。仕方ないから楽しみに取っておきましょうかね。
ゲーム中では3年とも合宿はバッサーシ辺境伯領だったけれど、去年の魔物の大量発生のせいで、今年はサングリエ辺境伯領で行われる事になった学園の夏の合宿。
初めての場所、未知のイベントという事もあって、私たち転生者の知識もまったく役に立たないという事になる。
ただ、3学年全員が同じ場所で合宿を行うという事で、通常版と拡張版のキャラクターが一堂に会する。これはこれで楽しみというものだ。
はてさて、2年目の夏合宿では一体どんな事が起きるのだろうか。できれば何にも起きずに終わってほしいものだけど、ゲームだとこういう大きなイベントでは大体何かが起きる。
期待と不安の入り混じった2年目の夏合宿が、ついにその幕を開けようとしていた。
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