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第五章 2年目前半
第267話 危機を乗り越えろ
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宿泊地から少し離れたウーリンの街の外れ。そこで私たちは迫り来る魔物の群れと交戦中だった。
ただ、その魔物たちと戦っていて、私たちは違和感を感じていた。
「大した事がなさすぎますね」
「ええ、弱い魔物ばかりで拍子抜けだわ」
ミズーナ王女とエスカがそんな事を言っている。
確かにそうだ。弱い魔法でもサクサクと倒せている。とはいえども魔物の数は多い。これではまるで捨て石のように思われる状態だった。
そう思った矢先、合宿所の方から何やら強い魔力の波動を感じる。それで直感した。
「しまった。この魔物たちは陽動だわ!」
私は大声で叫ぶ。
「なんですって?!」
それに続いて叫ぶエスカ。
「確かに、この強い魔力の波動は尋常ではありませんね。ですが、この魔物たちを放っておくわけには参りません」
ミズーナ王女は冷静だった。
「アンマリア。ここは私とエスカに任せて、戻って下さい」
「でも……!」
ミズーナ王女に言われたものの、私はさすがに心配になって躊躇する。
「行って下さい!」
だけど、ミズーナ王女からもう一度強く言われて、私は意を決して頷く。
「ここは任せました。どうかご無事で!」
私がそう言うと、ミズーナ王女とエスカはこくりと頷いた。それを確認して、私は瞬間移動魔法で宿泊地へと戻ったのだった。
私が転移したのを見届けるミズーナ王女とエスカ。
「さて、拡張版では魔物氾濫のイベントなんてのはなかったけれど、家を出てからの反動でいろんなゲームをやりまくったから、こういう状況は燃えるわね!」
普段では見る事のないミズーナ王女の表情に、エスカは寒気がした。まるでバトルジャンキーのような顔なのである。だが、それは脳筋なタンやサクラとは違った、別の種類のバトルジャンキーなのである。
「さあ、エスカ。ちゃっちゃと片付けて、私たちも合流しますよ。……なんだか嫌な予感がしますのでね」
「え、ええ……」
怪しい笑顔のミズーナ王女にドン引きのエスカである。
バチバチとミズーナ王女の両手に閃光がほとばしる。
「さあ、一瞬で終わらせてあげますよ」
次の瞬間、ミズーナ王女から強力な魔法が放たれたのだった。
転移魔法で宿泊地に戻った私の目に飛び込んできたのは、実におぞましい光景だった。
辺り一帯に不気味な黒い物体がうごめき、学生たちが逃げ惑っていたのだ。一応防護壁は張っていたというのに、なぜこんな事になっているのか。私には理解できなかった。
「アンマリア様!」
私は不意に声を掛けられる。声の主はサクラだった。
「サクラ様、これは一体?!」
「テール様が原因です」
「テール様って、サクラ様たちと一緒に居た男爵令嬢の?」
私が確認すると、サクラはこくりと頷いた。
そして、サクラが指差す方向を見ると、赤い禍々しい光を放ちながら宙に浮かぶテールの姿があった。ただ、本人に意識はなさそうなので、眠っているようだった。
「この怪しい影たちは、テール様から噴き出している漆黒のオーラから生まれたものです。私やタン様が剣で応戦していますけれど、困った事に物理攻撃が通用しません」
説明しながらもサクラが漆黒のオーラに応戦する。確かに、弾く事はできるものの、斬る事はできていない。
「まったく、やってられないわね」
サクラもさすがに焦りを覚えて始めていた。
「漆黒……闇……、だったら!」
私は思いつきを実行する。
「レイ!」
闇の塊だというのであるなら、光に弱いはず。なので、ゲームなんかでよくある光属性の魔法を使ってみたわけ。
すると、思った通り。漆黒のオーラは光に焼かれて消滅してしまった。
これならば、対処は可能だ。
「サクラ様、ここはしばらく頼みます」
「アンマリア様、どちらへ?」
「光魔法の使い手を連れてくるのですよ」
サクラの問い掛けにそうとだけ答えると、私は一目散に思い当たる光魔法の使い手の居る小屋へと走っていった。もちろん、その途中も光魔法でオーラを焼き払っていた。
私が知っている光魔法の使い手は、フィレン王子とサキの二人だ。
とりあえず、最初に怪しい気配を感じた時にすべての小屋にも防護魔法を掛けておいたので、被害は出ていないはず。私はとにかく中心部にある小屋へと急いだ。
まずはラムとサキの居る小屋へと急ぎ二人を起こす。それからフィレン王子の居る小屋へと移動する。
正直異性の居る小屋を訪れる事には抵抗はあるけれど、今は緊急事態だ。今回ばかりはやむを得ない。
「失礼致します。フィレン殿下、起きて下さい!」
小屋の外からドンドンと扉を叩く。しばらくすると、フィレン王子が目を擦りながら出てきた。この状況で寝ていたらしい。
「どうしたんだい、アンマリア」
「敵襲です。倒すには殿下の力が必要なのです」
「なんだって?!」
一気に目を覚ますフィレン王子。
寝間着姿の私たちだけれど、今はそんな事気にしている余裕はない。一生懸命に走って、魔物の襲撃が発生している北側へと移動する。
「なんていうおぞましさなんだ……」
闇夜に浮かび上がる漆黒のオーラに、フィレン王子は青ざめていた。
「フィレン殿下、サキ様、光魔法でこの闇を焼き払いますよ!」
私の呼び掛けに、二人は驚いた反応をしていた。
ただ、その魔物たちと戦っていて、私たちは違和感を感じていた。
「大した事がなさすぎますね」
「ええ、弱い魔物ばかりで拍子抜けだわ」
ミズーナ王女とエスカがそんな事を言っている。
確かにそうだ。弱い魔法でもサクサクと倒せている。とはいえども魔物の数は多い。これではまるで捨て石のように思われる状態だった。
そう思った矢先、合宿所の方から何やら強い魔力の波動を感じる。それで直感した。
「しまった。この魔物たちは陽動だわ!」
私は大声で叫ぶ。
「なんですって?!」
それに続いて叫ぶエスカ。
「確かに、この強い魔力の波動は尋常ではありませんね。ですが、この魔物たちを放っておくわけには参りません」
ミズーナ王女は冷静だった。
「アンマリア。ここは私とエスカに任せて、戻って下さい」
「でも……!」
ミズーナ王女に言われたものの、私はさすがに心配になって躊躇する。
「行って下さい!」
だけど、ミズーナ王女からもう一度強く言われて、私は意を決して頷く。
「ここは任せました。どうかご無事で!」
私がそう言うと、ミズーナ王女とエスカはこくりと頷いた。それを確認して、私は瞬間移動魔法で宿泊地へと戻ったのだった。
私が転移したのを見届けるミズーナ王女とエスカ。
「さて、拡張版では魔物氾濫のイベントなんてのはなかったけれど、家を出てからの反動でいろんなゲームをやりまくったから、こういう状況は燃えるわね!」
普段では見る事のないミズーナ王女の表情に、エスカは寒気がした。まるでバトルジャンキーのような顔なのである。だが、それは脳筋なタンやサクラとは違った、別の種類のバトルジャンキーなのである。
「さあ、エスカ。ちゃっちゃと片付けて、私たちも合流しますよ。……なんだか嫌な予感がしますのでね」
「え、ええ……」
怪しい笑顔のミズーナ王女にドン引きのエスカである。
バチバチとミズーナ王女の両手に閃光がほとばしる。
「さあ、一瞬で終わらせてあげますよ」
次の瞬間、ミズーナ王女から強力な魔法が放たれたのだった。
転移魔法で宿泊地に戻った私の目に飛び込んできたのは、実におぞましい光景だった。
辺り一帯に不気味な黒い物体がうごめき、学生たちが逃げ惑っていたのだ。一応防護壁は張っていたというのに、なぜこんな事になっているのか。私には理解できなかった。
「アンマリア様!」
私は不意に声を掛けられる。声の主はサクラだった。
「サクラ様、これは一体?!」
「テール様が原因です」
「テール様って、サクラ様たちと一緒に居た男爵令嬢の?」
私が確認すると、サクラはこくりと頷いた。
そして、サクラが指差す方向を見ると、赤い禍々しい光を放ちながら宙に浮かぶテールの姿があった。ただ、本人に意識はなさそうなので、眠っているようだった。
「この怪しい影たちは、テール様から噴き出している漆黒のオーラから生まれたものです。私やタン様が剣で応戦していますけれど、困った事に物理攻撃が通用しません」
説明しながらもサクラが漆黒のオーラに応戦する。確かに、弾く事はできるものの、斬る事はできていない。
「まったく、やってられないわね」
サクラもさすがに焦りを覚えて始めていた。
「漆黒……闇……、だったら!」
私は思いつきを実行する。
「レイ!」
闇の塊だというのであるなら、光に弱いはず。なので、ゲームなんかでよくある光属性の魔法を使ってみたわけ。
すると、思った通り。漆黒のオーラは光に焼かれて消滅してしまった。
これならば、対処は可能だ。
「サクラ様、ここはしばらく頼みます」
「アンマリア様、どちらへ?」
「光魔法の使い手を連れてくるのですよ」
サクラの問い掛けにそうとだけ答えると、私は一目散に思い当たる光魔法の使い手の居る小屋へと走っていった。もちろん、その途中も光魔法でオーラを焼き払っていた。
私が知っている光魔法の使い手は、フィレン王子とサキの二人だ。
とりあえず、最初に怪しい気配を感じた時にすべての小屋にも防護魔法を掛けておいたので、被害は出ていないはず。私はとにかく中心部にある小屋へと急いだ。
まずはラムとサキの居る小屋へと急ぎ二人を起こす。それからフィレン王子の居る小屋へと移動する。
正直異性の居る小屋を訪れる事には抵抗はあるけれど、今は緊急事態だ。今回ばかりはやむを得ない。
「失礼致します。フィレン殿下、起きて下さい!」
小屋の外からドンドンと扉を叩く。しばらくすると、フィレン王子が目を擦りながら出てきた。この状況で寝ていたらしい。
「どうしたんだい、アンマリア」
「敵襲です。倒すには殿下の力が必要なのです」
「なんだって?!」
一気に目を覚ますフィレン王子。
寝間着姿の私たちだけれど、今はそんな事気にしている余裕はない。一生懸命に走って、魔物の襲撃が発生している北側へと移動する。
「なんていうおぞましさなんだ……」
闇夜に浮かび上がる漆黒のオーラに、フィレン王子は青ざめていた。
「フィレン殿下、サキ様、光魔法でこの闇を焼き払いますよ!」
私の呼び掛けに、二人は驚いた反応をしていた。
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