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第五章 2年目前半
第272話 呪い?
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翌日、合宿から帰る事になったのだけど、テールはやっぱり起きてこない。この状況に声を上げたのはエスカだった。
「この子、預かっていいかしら」
その声に、私たちが一斉に視線を向ける。もちろん教師陣だって驚いていた。
「だって、そうでしょう? あんな捨て駒のように使われたんですもの。しばらくはかくまっておいた方がいいと思いますの。私は瞬間移動魔法が使えますので、連れ帰るのは一瞬ですわ」
エスカが珍しく王女様然として振る舞っている。あまりに珍しいので、私はつい笑いそうになってしまう。まあ、エスカが私の態度に気が付いて睨んできたけど、それはまあ気にしない。だって、普段が普段ですものね。
まぁそれはさておいて、結局エスカの申し出は受け入れられたようだった。
すると、エスカはテールを抱きかかえると、私たちの方を向いて挨拶をする。
「それではみなさん、一足先に王都に戻っていますわ。ごきげんよう」
エスカはテールと共に、瞬間移動魔法で姿を消したのだった。それを見届けた私たちは、荷物をまとめて馬車へと乗り込んだのだった。
王都に一足先に戻ったエスカが現れたのは、ファッティ伯爵家だった。
サーロイン王国でエスカがまともに知っている場所なんて、そりゃ私の家しかないわけだからね。城よりもよく知っている。
エスカはテールを引きずりながら屋敷の入口にやって来る。
「まあ、エスカ王女殿下。どうなさったのですか?」
エスカの姿に気が付いた使用人が、驚きながら駆け寄ってくる。
「ちょっと訳ありまして、私だけ一足先に戻って参りました。この方を部屋まで運びたいのですが、ちょっと手伝って頂けませんでしょうか」
「か、畏まりました。では、私めが手伝わさせて頂きます」
最初に駆け寄ってきた女性の使用人が、エスカを手伝ってテールをエスカの部屋まで運んでいった。
自分の部屋のベッドにテールを寝かせるエスカ。
(後は戻ってくるアンマリアたちから、テールの荷物の情報を得るだけですわね)
テールの寝顔を見ながら、エスカはそのように考えていた。
一応、向こうを出てくる前には私とミズーナ王女との間で話をしていた。その中にはテールの持ち物の事も入っていた。
今回は身に付けていたアクセサリーが呪具だったわけで、テールの荷物の中にはまだそういった類のものが潜んでいる可能性があったからだ。帰り道で発動しないとも限らないので、出発前に私に加えてサキとミズーナ王女で封印を施してある。
ところがだ。あの時、呪具1個に対して相当な魔力を消費する事になったので、これでも万一紛れていた時に抑え込めるかというと不安である。
一足先に戻ってきたエスカも、こればかりは気がかりになっていた。
(アンマリアたちなら大丈夫とは思いますがね……。しかし、私はこのテールの事を見守るという責務があります。……早く目を覚まさないかしら)
エスカはすっとテールの前髪を撫でながら、その様子を見守っていた。
私たちの方は特に問題もなく、馬車に揺られながら4日間で王都まで戻ってきた。魔物も盗賊も出ないあたり、さすがは治安が行き届いていた。
学園に着いた私たち。学校に着いた学生や教師たちは、無事に戻って来れた事に安堵の表情を浮かべていた。さすがにあんな事があったのだから、そうなってしまうのも分かるわね。
一方の私はエスカとテールの様子がどうしても気になってしまう。なのでラムたちに挨拶をした後、エスカとテールの荷物を引き取ると収納魔法に放り込んで、モモと一緒に瞬間移動魔法で家まで跳んだのだった。
「ただいま戻りました」
家に戻った私は、玄関の扉をバーンと勢いよく開けた。
貴族令嬢としてははしたない行為ではあるものの、そんな事に構っていられる状態ではなかったものね。
「お帰りなさいませ、アンマリアお嬢……様?」
どういうわけか言い淀む使用人たち。
これも仕方がない話といえる。なにせ、私はまた痩せていたのだから。
帰りの馬車の中で指摘されるまで気が付かなかったけど、どうやらテールの一件で大魔法を使った事で痩せる事ができたらしい。というか、そんなに見た目変わるくらいに変化してたっけ?!
使用人たちの反応に、私は正直戸惑った。
でも、今はそれどころじゃない。私は戻ってきたエスカの居場所を聞き出すと、エスカの部屋へとモモの手を引きながら急いだ。
「エスカ王女殿下」
中でテールが寝ているだろうから、静かに部屋へと突入する私。そこでは驚いた顔でエスカがこっちを振り向いていた。
「ああ、お帰りなさい。アンマリア、モモ」
エスカは私たちに挨拶をすると、再びテールの方を見た。
さすがに破天荒っぽいエスカでも、同じ年代の子が意識不明となれば心配なようだった。
「……まだ、目を覚ましませんのね」
「ええ、あれからもう5日間も眠ったままですわ」
エスカはテールの顔を覗き込みながら、私と受け答えをしていた。
テールの持っていた呪具。放たれた漆黒のオーラ。そして、いまだに目を覚まさないテール。
一体何が起きているというのだろうか。
私たちはしばらくの間、黙ったままテールの姿を見つめていたのだった。
「この子、預かっていいかしら」
その声に、私たちが一斉に視線を向ける。もちろん教師陣だって驚いていた。
「だって、そうでしょう? あんな捨て駒のように使われたんですもの。しばらくはかくまっておいた方がいいと思いますの。私は瞬間移動魔法が使えますので、連れ帰るのは一瞬ですわ」
エスカが珍しく王女様然として振る舞っている。あまりに珍しいので、私はつい笑いそうになってしまう。まあ、エスカが私の態度に気が付いて睨んできたけど、それはまあ気にしない。だって、普段が普段ですものね。
まぁそれはさておいて、結局エスカの申し出は受け入れられたようだった。
すると、エスカはテールを抱きかかえると、私たちの方を向いて挨拶をする。
「それではみなさん、一足先に王都に戻っていますわ。ごきげんよう」
エスカはテールと共に、瞬間移動魔法で姿を消したのだった。それを見届けた私たちは、荷物をまとめて馬車へと乗り込んだのだった。
王都に一足先に戻ったエスカが現れたのは、ファッティ伯爵家だった。
サーロイン王国でエスカがまともに知っている場所なんて、そりゃ私の家しかないわけだからね。城よりもよく知っている。
エスカはテールを引きずりながら屋敷の入口にやって来る。
「まあ、エスカ王女殿下。どうなさったのですか?」
エスカの姿に気が付いた使用人が、驚きながら駆け寄ってくる。
「ちょっと訳ありまして、私だけ一足先に戻って参りました。この方を部屋まで運びたいのですが、ちょっと手伝って頂けませんでしょうか」
「か、畏まりました。では、私めが手伝わさせて頂きます」
最初に駆け寄ってきた女性の使用人が、エスカを手伝ってテールをエスカの部屋まで運んでいった。
自分の部屋のベッドにテールを寝かせるエスカ。
(後は戻ってくるアンマリアたちから、テールの荷物の情報を得るだけですわね)
テールの寝顔を見ながら、エスカはそのように考えていた。
一応、向こうを出てくる前には私とミズーナ王女との間で話をしていた。その中にはテールの持ち物の事も入っていた。
今回は身に付けていたアクセサリーが呪具だったわけで、テールの荷物の中にはまだそういった類のものが潜んでいる可能性があったからだ。帰り道で発動しないとも限らないので、出発前に私に加えてサキとミズーナ王女で封印を施してある。
ところがだ。あの時、呪具1個に対して相当な魔力を消費する事になったので、これでも万一紛れていた時に抑え込めるかというと不安である。
一足先に戻ってきたエスカも、こればかりは気がかりになっていた。
(アンマリアたちなら大丈夫とは思いますがね……。しかし、私はこのテールの事を見守るという責務があります。……早く目を覚まさないかしら)
エスカはすっとテールの前髪を撫でながら、その様子を見守っていた。
私たちの方は特に問題もなく、馬車に揺られながら4日間で王都まで戻ってきた。魔物も盗賊も出ないあたり、さすがは治安が行き届いていた。
学園に着いた私たち。学校に着いた学生や教師たちは、無事に戻って来れた事に安堵の表情を浮かべていた。さすがにあんな事があったのだから、そうなってしまうのも分かるわね。
一方の私はエスカとテールの様子がどうしても気になってしまう。なのでラムたちに挨拶をした後、エスカとテールの荷物を引き取ると収納魔法に放り込んで、モモと一緒に瞬間移動魔法で家まで跳んだのだった。
「ただいま戻りました」
家に戻った私は、玄関の扉をバーンと勢いよく開けた。
貴族令嬢としてははしたない行為ではあるものの、そんな事に構っていられる状態ではなかったものね。
「お帰りなさいませ、アンマリアお嬢……様?」
どういうわけか言い淀む使用人たち。
これも仕方がない話といえる。なにせ、私はまた痩せていたのだから。
帰りの馬車の中で指摘されるまで気が付かなかったけど、どうやらテールの一件で大魔法を使った事で痩せる事ができたらしい。というか、そんなに見た目変わるくらいに変化してたっけ?!
使用人たちの反応に、私は正直戸惑った。
でも、今はそれどころじゃない。私は戻ってきたエスカの居場所を聞き出すと、エスカの部屋へとモモの手を引きながら急いだ。
「エスカ王女殿下」
中でテールが寝ているだろうから、静かに部屋へと突入する私。そこでは驚いた顔でエスカがこっちを振り向いていた。
「ああ、お帰りなさい。アンマリア、モモ」
エスカは私たちに挨拶をすると、再びテールの方を見た。
さすがに破天荒っぽいエスカでも、同じ年代の子が意識不明となれば心配なようだった。
「……まだ、目を覚ましませんのね」
「ええ、あれからもう5日間も眠ったままですわ」
エスカはテールの顔を覗き込みながら、私と受け答えをしていた。
テールの持っていた呪具。放たれた漆黒のオーラ。そして、いまだに目を覚まさないテール。
一体何が起きているというのだろうか。
私たちはしばらくの間、黙ったままテールの姿を見つめていたのだった。
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