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第七章 3年目前半
第373話 生意気魔族テリア
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「キャハハハ! みーんな仲良く潰れちゃえ」
テリアが上空で魔力を集中させた魔法弾を構えている。
「サクラ様」
「いいですよ、アンマリア様」
そんな中、私とサクラが意を決する。
私が軽く放り上げた柑橘魔石。それをサクラが魔石剣で、テリア目がけて打ち上げたのだ。
魔法に集中するテリアは避けるどころか気付く事さえもできずにまともに食らってしまった。
「ぺっぺっ。なによこれぇ、気持ち悪ぅ~い!」
柑橘の香りがたっぷり染み込んだ魔石の直撃を食らい、テリアが表情を歪ませている。
さすが魔族が弱点レベルで苦手にしている柑橘の香りだ。その効果は一目瞭然だった。
「もう、何してくれっちゃってんのよぅ。これだから人間ってのは嫌いなのよ。ぶっ殺して……」
私たちを睨み付けながら叫んでいたテリア。だけど、この時彼女は何かに気が付いたようだった。
「ちょっと待って、何これ……。って、あたしが放とうとしてた魔法弾じゃないのよ。わわわっ、どうすんの?!」
そう、彼女自らが用意して私たちに放とうとしていた魔法弾。それが今、テリア自身に落っこちてきているのだ。
「もうこうなったら……」
相殺するのは無理だけど、何とか回避はできると見たのだろう。テリアはその手に魔力をまとわせている。
「ってぇ~いっ!」
なんと、魔法弾を素手で掴んでいた。そして、そのまま私たちに向けて落下してきたのだ。
なんて無茶苦茶をするのよ。
「あたしをコケにしておいて……。この程度で勝てるなんて思わないでよね。これでも四天王のナンバー2なんだから!」
さっきまで暗くてよく見えなかったものの、今は魔法弾のおかげでテリアの表情がよく見える。
(うっわ、すごい形相で睨んでるわ。目が血走っているあたり、相当頭に来ているのね)
テリアは激おこのようである。よく見れば血管まで浮いている。
「死っねぇ~っ!」
目を完全に見開いた危険な表情で、掴んだ魔力弾を放り投げるテリア。なんて無茶苦茶をするのだろうか。これが魔族というものだろうか。
「キャハハハ。このあたし、テリア様をコケにした罰よ。死んで詫びるといいわよ~。けほっ、けほっ」
勝ちを確信したのか、余裕で笑っているテリア。しかし、柑橘魔石のダメージがあるのかむせ返っている。
思ったより効きが悪いのは誤算だったわね。
とにかくこの魔法弾をどうにかしなきゃいけないのは間違いなかった。
必死に対抗手段を考えようとした次の瞬間、魔法弾が潰れて弾け飛んでしまった。一体何が起きたというの?
「はあ、はあ。まさか、柑橘魔石を作るためにしてた事が、ここで役に立つとはね」
肩で息をするエスカ。どうやら、エスカが闇魔法によって魔法弾を押し潰してしまったようだった。
「な、何よそれぇ! あの魔法弾を押し潰しちゃうなんて、非常識じゃないのよ」
魔族にこう言われる始末である。
確かに、魔力の塊である魔法弾を潰すなんてこと、普通の発想じゃ思い至らないものね。今回ばかりは同意するわ。
「けど、一体どうやったってわけ~? あの魔法弾、あたしの全力とはいかないまでも相当に魔力込めたんだけどぉ?」
テリアが上空で足を放り出しながら腕を組んで悩んでいる。
こらこら、女子が脚広げて何やってんのよ。
まあ、辺りは暗いから分かりにくいからいいんだけど、前世で少々大人まで過ごした私には耐えらんないわ。
とはいえ、敵である魔族にわざわざ口で言う義理なんてない。テリアの気が逸れているうちに、不意を打つしかないわ。
「レイ」
私はぼそっと魔法を使う。周りの誰にも聞こえないような小さな声で、テリアに気付かれないように死角へと発動地点を動かす。
これだけ器用な事ができるのは、ここまでの特訓のおかげよ。
私が特訓していたのはなにも剣だけじゃないですからね。なんといっても、剣も魔法もこなせるデブ、アンマリア・ファッティなのですからね。
「はっ!」
いざ魔法が放たれようとした瞬間、テリアが気が付いて回避行動を取る。
完全に気配を消して放ったはずの魔法なのに、気付かれたっていうの?
「あっぶな~い。まったく油断も隙もありゃしないわね。けほっ、この気持ち悪いにおいのお返しに、徹底的にいたぶってあげるわ」
柑橘魔石のダメージがまだあるので、時々むせるテリア。しかし、直撃したにもかかわらず、あまり効いているようではなかった。どうしてなのかしら。
すると、上空に舞い上がったテリアから、何か光り輝く者が零れ落ちてきた。
(あれは!)
そう、さっきテリアにぶつけたはずの柑橘魔石だった。どうやら完全に砕けていなかったようだ。そのためにテリアが余裕を持って動けているというわけなのだ。
(だったら、もう一度!)
私は零れ落ちた魔石に対して魔法を使う。
「アンマリア様?」
近くで見ていたサキとサクラが叫んでいる。
「キャハ。何をしてるのかしら。よそ見は、死を早めるだけよ」
楽しそうな笑い声を放った人物と同一とは思えない、重苦しいトーンの声が聞こえてくる。
「あら、よそ見もたまには必要ですよ。お・ば・さ・ん」
「な、なんですってーっ!」
私が煽ると、テリアはものすごく逆上していた。
「こんのガキが……。その言葉、取り消せ!」
テリアが再び魔法弾の準備を始める。
その時だった。突如としてテリアに向けて爆風が吹き荒れたのだった。
テリアが上空で魔力を集中させた魔法弾を構えている。
「サクラ様」
「いいですよ、アンマリア様」
そんな中、私とサクラが意を決する。
私が軽く放り上げた柑橘魔石。それをサクラが魔石剣で、テリア目がけて打ち上げたのだ。
魔法に集中するテリアは避けるどころか気付く事さえもできずにまともに食らってしまった。
「ぺっぺっ。なによこれぇ、気持ち悪ぅ~い!」
柑橘の香りがたっぷり染み込んだ魔石の直撃を食らい、テリアが表情を歪ませている。
さすが魔族が弱点レベルで苦手にしている柑橘の香りだ。その効果は一目瞭然だった。
「もう、何してくれっちゃってんのよぅ。これだから人間ってのは嫌いなのよ。ぶっ殺して……」
私たちを睨み付けながら叫んでいたテリア。だけど、この時彼女は何かに気が付いたようだった。
「ちょっと待って、何これ……。って、あたしが放とうとしてた魔法弾じゃないのよ。わわわっ、どうすんの?!」
そう、彼女自らが用意して私たちに放とうとしていた魔法弾。それが今、テリア自身に落っこちてきているのだ。
「もうこうなったら……」
相殺するのは無理だけど、何とか回避はできると見たのだろう。テリアはその手に魔力をまとわせている。
「ってぇ~いっ!」
なんと、魔法弾を素手で掴んでいた。そして、そのまま私たちに向けて落下してきたのだ。
なんて無茶苦茶をするのよ。
「あたしをコケにしておいて……。この程度で勝てるなんて思わないでよね。これでも四天王のナンバー2なんだから!」
さっきまで暗くてよく見えなかったものの、今は魔法弾のおかげでテリアの表情がよく見える。
(うっわ、すごい形相で睨んでるわ。目が血走っているあたり、相当頭に来ているのね)
テリアは激おこのようである。よく見れば血管まで浮いている。
「死っねぇ~っ!」
目を完全に見開いた危険な表情で、掴んだ魔力弾を放り投げるテリア。なんて無茶苦茶をするのだろうか。これが魔族というものだろうか。
「キャハハハ。このあたし、テリア様をコケにした罰よ。死んで詫びるといいわよ~。けほっ、けほっ」
勝ちを確信したのか、余裕で笑っているテリア。しかし、柑橘魔石のダメージがあるのかむせ返っている。
思ったより効きが悪いのは誤算だったわね。
とにかくこの魔法弾をどうにかしなきゃいけないのは間違いなかった。
必死に対抗手段を考えようとした次の瞬間、魔法弾が潰れて弾け飛んでしまった。一体何が起きたというの?
「はあ、はあ。まさか、柑橘魔石を作るためにしてた事が、ここで役に立つとはね」
肩で息をするエスカ。どうやら、エスカが闇魔法によって魔法弾を押し潰してしまったようだった。
「な、何よそれぇ! あの魔法弾を押し潰しちゃうなんて、非常識じゃないのよ」
魔族にこう言われる始末である。
確かに、魔力の塊である魔法弾を潰すなんてこと、普通の発想じゃ思い至らないものね。今回ばかりは同意するわ。
「けど、一体どうやったってわけ~? あの魔法弾、あたしの全力とはいかないまでも相当に魔力込めたんだけどぉ?」
テリアが上空で足を放り出しながら腕を組んで悩んでいる。
こらこら、女子が脚広げて何やってんのよ。
まあ、辺りは暗いから分かりにくいからいいんだけど、前世で少々大人まで過ごした私には耐えらんないわ。
とはいえ、敵である魔族にわざわざ口で言う義理なんてない。テリアの気が逸れているうちに、不意を打つしかないわ。
「レイ」
私はぼそっと魔法を使う。周りの誰にも聞こえないような小さな声で、テリアに気付かれないように死角へと発動地点を動かす。
これだけ器用な事ができるのは、ここまでの特訓のおかげよ。
私が特訓していたのはなにも剣だけじゃないですからね。なんといっても、剣も魔法もこなせるデブ、アンマリア・ファッティなのですからね。
「はっ!」
いざ魔法が放たれようとした瞬間、テリアが気が付いて回避行動を取る。
完全に気配を消して放ったはずの魔法なのに、気付かれたっていうの?
「あっぶな~い。まったく油断も隙もありゃしないわね。けほっ、この気持ち悪いにおいのお返しに、徹底的にいたぶってあげるわ」
柑橘魔石のダメージがまだあるので、時々むせるテリア。しかし、直撃したにもかかわらず、あまり効いているようではなかった。どうしてなのかしら。
すると、上空に舞い上がったテリアから、何か光り輝く者が零れ落ちてきた。
(あれは!)
そう、さっきテリアにぶつけたはずの柑橘魔石だった。どうやら完全に砕けていなかったようだ。そのためにテリアが余裕を持って動けているというわけなのだ。
(だったら、もう一度!)
私は零れ落ちた魔石に対して魔法を使う。
「アンマリア様?」
近くで見ていたサキとサクラが叫んでいる。
「キャハ。何をしてるのかしら。よそ見は、死を早めるだけよ」
楽しそうな笑い声を放った人物と同一とは思えない、重苦しいトーンの声が聞こえてくる。
「あら、よそ見もたまには必要ですよ。お・ば・さ・ん」
「な、なんですってーっ!」
私が煽ると、テリアはものすごく逆上していた。
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その時だった。突如としてテリアに向けて爆風が吹き荒れたのだった。
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