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第七章 3年目前半
第390話 重力で威厳も地に落ちた
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王妃との話もひと区切りついたということで、手続きのために大臣が外へと出ていく。
しかし、まだまだ問題は山積がしている状態なのだ。次は一体何をすべきなのだろうか。
「当然、あなたが焼いたコール子爵邸の再建ですね」
にっこりとした笑顔のエスカである。魔王相手の言葉だというのに、どこか命令的に感じるのはなぜだろうか。
「なんで我がそんな事をせねばならぬのだ」
「何を言うのですか。ただ復活するだけなら、なにも家を焼く必要はなかったでしょうに」
「ぐうっ!」
エスカに正論を言われて、厳しい表情をする魔王である。既に尻に敷かれている状態のようで、私たちはどう反応していいのか困ったものだった。
ちなみに魔王が警戒しているのは、エスカの使う重力魔法。重力の概念がないこの世界では、それだけ脅威になる魔法というわけだった。まあ、そのおかげで本来脅威であるはずの魔王がおとなしくなっているので、あまりエスカを責める気にはなれなかった。
しかし、その状況は魔族化しているメチルや、その眷属と化したアルーにとっては驚きというものである。自分たちが恐れていた魔王が怯えているのだから。
「あの魔王様を怯えさせているわ……」
「これは私たちも逆らわない方がいいですね」
メチルとアルーはひそひそと話し合っていた。
「ちょっと、二人とも?」
「ひっ」
エスカが静かな怒りを乗せた笑顔をメチルたちに向けると、二人は本気でびびっていた。
「二人のために魔王に詰め寄ってるんですから、そんなに怖がらないで下さいな」
「む、無理です」
両手を腰に当てながら言うと、メチルから即答されたのでショックを受けるエスカだった。その落ち込む様を見て、つい笑ってしまう私たちだった。
「それはそれとして、確かに魔王にはコール子爵邸を建て直す義務がありますね。エスカ、頼みますよ」
「任せなさい」
気を取り直した私が声を掛けると、どんと胸を叩くエスカである。本当にその自信はどこから来るのかしらね。
とはいえ、現状では魔王に関してはエスカに任せるのが適任には違いないでしょうね。はっきりとした根拠はないけれど、これだけ力関係を見せつけられたのだから納得するしかない。
「で、我は何をすればいいのだ」
改めて聞いてくる魔王。
「コール子爵邸を復元すればいいのですよ」
「……分かった。待っていろ、すぐに終わらせる」
エスカに詰め寄られた魔王は、突如として姿を消してしまう。どうやら魔王も瞬間移動魔法が使えるようだ。さすがは魔王。
これには逃げたのではないかという声も上がったのだが、それをエスカが涼しい笑顔で一蹴する。
「ふふふ、地の果てまでも追いかけてやりますよ。私から逃げられるとでも思っているのかしら」
その顔を見た全員が思った。こいつの方がまるで魔王じゃないか……と。
しばらくすると魔王が戻ってくる。
「元通りにしてやったから、後で確認してみるといい」
仏頂面で腕を組んでいる魔王。使いっ走りにされてプライドが傷ついているのだろう。まったく、エスカに目を付けられたのが運の尽きというか、私たちは魔王相手に同情してしまっていた。
魔王からの報告を受けた王妃は、すぐさま使いの兵士を北へと向かわせる。
「まったく、なぜ我がこんな事をせねばならぬの……ぶべらっ!」
腕を組んで文句を言う魔王だったが、次の瞬間、床へと押し付けられていた。
「ひと言多いのですよ、魔王様?」
怖い笑顔を向けるエスカ。もうなんていうかしらね、ヤンデレってやつですかね、これは……。
「はいはい、エスカ、そのくらいにしておきましょう。仮にも一国の王女なのですから、これ以上はやめておきなさい。そんな姿を国民の前で見せられますか?」
「むぅ……」
ミズーナ王女の指摘を受けて、エスカは不満げに重力魔法を解く。やっと解放された魔王は、息も絶え絶えだった。
「た、助かった。礼を言う……」
「いいのですよ。昔敵対していたとはいえ、あなたもベジタリウス王国の一員なのですから助けるのは当然です」
ミズーナ王女がほっこりとした笑顔を向けると、王妃も数度頷いていた。
「バカな、我がいつ国に所属したと……」
「王国内の土地で長らく住んでいるのですから、国民も同然でしょう」
衝撃を受ける魔王にミズーナ王女ははっきりと言ってのけていた。これは強い。
王女たちにいろいろと無力化されてしまう魔王の姿に、私はただ苦笑いするしかなかった。魔王も本当は抵抗したいところだろうけど、攻撃を放つ前に重力魔法で潰されてきたので、もう諦めたのだろう。本当に可哀想だわ。
この後も、諦めて落ち込む魔王との間で、あれやこれや話をしていくミズーナ王女とエスカ。それを見ていたフィレン王子は、
「いやはや……、私たちは必要だったのかな?」
思わず本音を呟いてしまう。
「万一の時のためでしたから、必要だったと思いますわ。ただ、エスカ王女殿下が規格外すぎただけですわね」
ラムはそう言いながら笑みをこぼしていた。
まだまだ問題点はありそうではあるものの、ひとまず魔王と魔族をめぐる戦いは終止符が打たれたようだった。
今後どうなるかは注視する必要はあるものの、ここからは魔王とベジタリウス王国との間の問題だ。
そんなわけなので、私たちは数日間ベジタリウス王国に滞在したのち、サーロイン王国へと戻っていったのだった。両親と再会して笑顔を浮かべるメチルとアルーに見送られながら……。
しかし、まだまだ問題は山積がしている状態なのだ。次は一体何をすべきなのだろうか。
「当然、あなたが焼いたコール子爵邸の再建ですね」
にっこりとした笑顔のエスカである。魔王相手の言葉だというのに、どこか命令的に感じるのはなぜだろうか。
「なんで我がそんな事をせねばならぬのだ」
「何を言うのですか。ただ復活するだけなら、なにも家を焼く必要はなかったでしょうに」
「ぐうっ!」
エスカに正論を言われて、厳しい表情をする魔王である。既に尻に敷かれている状態のようで、私たちはどう反応していいのか困ったものだった。
ちなみに魔王が警戒しているのは、エスカの使う重力魔法。重力の概念がないこの世界では、それだけ脅威になる魔法というわけだった。まあ、そのおかげで本来脅威であるはずの魔王がおとなしくなっているので、あまりエスカを責める気にはなれなかった。
しかし、その状況は魔族化しているメチルや、その眷属と化したアルーにとっては驚きというものである。自分たちが恐れていた魔王が怯えているのだから。
「あの魔王様を怯えさせているわ……」
「これは私たちも逆らわない方がいいですね」
メチルとアルーはひそひそと話し合っていた。
「ちょっと、二人とも?」
「ひっ」
エスカが静かな怒りを乗せた笑顔をメチルたちに向けると、二人は本気でびびっていた。
「二人のために魔王に詰め寄ってるんですから、そんなに怖がらないで下さいな」
「む、無理です」
両手を腰に当てながら言うと、メチルから即答されたのでショックを受けるエスカだった。その落ち込む様を見て、つい笑ってしまう私たちだった。
「それはそれとして、確かに魔王にはコール子爵邸を建て直す義務がありますね。エスカ、頼みますよ」
「任せなさい」
気を取り直した私が声を掛けると、どんと胸を叩くエスカである。本当にその自信はどこから来るのかしらね。
とはいえ、現状では魔王に関してはエスカに任せるのが適任には違いないでしょうね。はっきりとした根拠はないけれど、これだけ力関係を見せつけられたのだから納得するしかない。
「で、我は何をすればいいのだ」
改めて聞いてくる魔王。
「コール子爵邸を復元すればいいのですよ」
「……分かった。待っていろ、すぐに終わらせる」
エスカに詰め寄られた魔王は、突如として姿を消してしまう。どうやら魔王も瞬間移動魔法が使えるようだ。さすがは魔王。
これには逃げたのではないかという声も上がったのだが、それをエスカが涼しい笑顔で一蹴する。
「ふふふ、地の果てまでも追いかけてやりますよ。私から逃げられるとでも思っているのかしら」
その顔を見た全員が思った。こいつの方がまるで魔王じゃないか……と。
しばらくすると魔王が戻ってくる。
「元通りにしてやったから、後で確認してみるといい」
仏頂面で腕を組んでいる魔王。使いっ走りにされてプライドが傷ついているのだろう。まったく、エスカに目を付けられたのが運の尽きというか、私たちは魔王相手に同情してしまっていた。
魔王からの報告を受けた王妃は、すぐさま使いの兵士を北へと向かわせる。
「まったく、なぜ我がこんな事をせねばならぬの……ぶべらっ!」
腕を組んで文句を言う魔王だったが、次の瞬間、床へと押し付けられていた。
「ひと言多いのですよ、魔王様?」
怖い笑顔を向けるエスカ。もうなんていうかしらね、ヤンデレってやつですかね、これは……。
「はいはい、エスカ、そのくらいにしておきましょう。仮にも一国の王女なのですから、これ以上はやめておきなさい。そんな姿を国民の前で見せられますか?」
「むぅ……」
ミズーナ王女の指摘を受けて、エスカは不満げに重力魔法を解く。やっと解放された魔王は、息も絶え絶えだった。
「た、助かった。礼を言う……」
「いいのですよ。昔敵対していたとはいえ、あなたもベジタリウス王国の一員なのですから助けるのは当然です」
ミズーナ王女がほっこりとした笑顔を向けると、王妃も数度頷いていた。
「バカな、我がいつ国に所属したと……」
「王国内の土地で長らく住んでいるのですから、国民も同然でしょう」
衝撃を受ける魔王にミズーナ王女ははっきりと言ってのけていた。これは強い。
王女たちにいろいろと無力化されてしまう魔王の姿に、私はただ苦笑いするしかなかった。魔王も本当は抵抗したいところだろうけど、攻撃を放つ前に重力魔法で潰されてきたので、もう諦めたのだろう。本当に可哀想だわ。
この後も、諦めて落ち込む魔王との間で、あれやこれや話をしていくミズーナ王女とエスカ。それを見ていたフィレン王子は、
「いやはや……、私たちは必要だったのかな?」
思わず本音を呟いてしまう。
「万一の時のためでしたから、必要だったと思いますわ。ただ、エスカ王女殿下が規格外すぎただけですわね」
ラムはそう言いながら笑みをこぼしていた。
まだまだ問題点はありそうではあるものの、ひとまず魔王と魔族をめぐる戦いは終止符が打たれたようだった。
今後どうなるかは注視する必要はあるものの、ここからは魔王とベジタリウス王国との間の問題だ。
そんなわけなので、私たちは数日間ベジタリウス王国に滞在したのち、サーロイン王国へと戻っていったのだった。両親と再会して笑顔を浮かべるメチルとアルーに見送られながら……。
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