392 / 500
第八章 3年生後半
第392話 残り半年
しおりを挟む
いよいよゲーム本編最後となる3年生の後期が始まった。前世みたいにこの後進学だとか就職だとか騒ぐ必要がないので、ただひたすら勉強をするだけだわね。
最後まで所属していれば普通に学園を卒業できてしまうので、その後はこの学園3年間の頑張りがそのまま跳ね返ってくる。なので、卒業後苦労したくない学生は必死に勉学に励んでいた。
もちろん、私だって苦労はしたくないから勉強は頑張ってるわよ。前世の癖も抜けてないしね。なにより、モモとエスカの勉強も見なきゃいけないから、気が抜けないものね。
3年生の後期とはいえ、大きな催し物といったら学園祭くらい。今年も私は剣術大会には顔を出す予定よ。去年も出てはいたけれど、やっぱり男子生徒の壁は厚かったわね。いくらヒロインチートがあるとはいっても、女性であるからには限度があるもの。
ところがどっこい、家で学園祭の話題が出てくると、父親が予想外な事を言い渡してきた。
「アンマリア、今年は剣術大会に出てはならんぞ」
まさかの親による出場停止である。理由はなんとなく分かるんだけど、納得はしたくなかったわね。
「お父様、去年もおととしも出ているのです。確かに事情は分かるのですが、直前になってから言われても納得いきませんね」
真面目だった前世の性格が、ここにきて親への反抗心となって牙を剥く。ここまで出たのなら皆勤するのは普通でしょうという悪い癖だった。
貴族の体裁と私の意地が戦った結果、私の意地が勝った。父親は私の剣術大会への出場を認めたものの、傷がつく事は許さないという条件を付けてきた。出場できるのならと、私はその条件を飲むことにした。
なんにせよ、これで剣術大会3年連続出場という目的は達成された。完全に魔法系であるカービルとタカー以外は、これで好感度が稼げるのがゲームの仕様だったのよね。まあ、ここは現実なんだけど。
そのやり取りを見ていたモモは本気で心配をしてきたし、エスカにいたっては笑いっぱなしだった。まあ、同じゲームをしていたのなら、状況がよく分かっているものね。
そんなこんなで、それからというもの学園祭に向けた準備が始まった。
その間の学園の講義は、時間を短縮して行われている。最低限の教養は身に付けてもらわないといけないので、講義そのものを削るわけにはいかないので苦肉の策というわけである。
話が決まった翌日の学園で、私たちはいつものように昼食を共にする。
「お姉様ってば、本気で今年も出ますの?」
「ええ、もちろんですよ。守られるだけが女性ではありませんからね」
モモの心配の声に、私はにこやかに返しておく。
「本当にアンマリア様ってばすごいですね。その強さに、私たち親子もすっかりお世話になってしまいました」
去年の一件以降すっかり仲間に加わってテールは、感心したように話している。
ちなみにテールだけれど、魔族の問題が解決した事で今はロートント男爵家に戻っている。もう命を狙われる危険はなくなったのだから。
「今年もアンマリア様と戦えるかもと思うと、私も俄然と燃えてきたというものですよ」
サクラもサクラで予想通りの反応だわね。私もそう思うわ。
私とサクラは相変わらず交流講義でミスミ教官の講義を取っている。そのせいでお互いの事はよく分かっているつもりなのだ。手の内が分かっている相手だからとはいっても、どっちが上かというのはつい気にしてしまいものだからね。
「今年で学生は最後なのですから、直接対決をして決着をつけておきたいですね」
サクラは好戦希望のようである。さすがは脳筋の一族といったところである。
「望むところですよ。タン様も今年は参加されるのでしょうか」
「ええ、彼も参加されるそうですよ。ああ、今から戦いが楽しみでドキドキしてしまいます」
「あは、あははは……」
頬を赤らめながら話すサクラの姿に、思わず笑顔を引きつらせてしまう私である。この思考がバッサーシの一族なのだった。他のみんなも苦笑いである。
「そういえば、テール様も武術型でしたね。ご参加はなさるおつもりですか?」
「わ、私はさすがに出ませんよ。元平民の私では魔法がうまく使えませんので、それで武術型に入ったようなものなのですから」
「あら、あれだけの魔力をお持ちで魔法がそんなに得意ではない。それはさすがにもったいないですね」
慌てているテールに対して、ラムがにこやかに話していた。ラムは公爵令嬢というのもあるし、魔法を得意としているからこその発言というものだった。
「今からでも、魔法を身に付けられるでしょうか……」
「可能ですよ。20歳を過ぎてから魔法を習い始めた方も過去にはいらっしゃるようですし、遅いという事はないと思います」
にっこりと微笑んで返すラムに、ほっと安心したような表情を見せるテール。この様子では魔法を使って見たかったようだった。
「わたくしでよろしければ、お教え致しますよ」
「は、はい。よろしくお願いします」
剣術大会の話だったはずなのに、なんか魔法の話がまとまっちゃったわね。
でも、こういった話ができるくらいには平穏な日常が戻ってきたってことよね。うん、やっぱり平和が一番ね。
心の底からそう思う私なのであった。
最後まで所属していれば普通に学園を卒業できてしまうので、その後はこの学園3年間の頑張りがそのまま跳ね返ってくる。なので、卒業後苦労したくない学生は必死に勉学に励んでいた。
もちろん、私だって苦労はしたくないから勉強は頑張ってるわよ。前世の癖も抜けてないしね。なにより、モモとエスカの勉強も見なきゃいけないから、気が抜けないものね。
3年生の後期とはいえ、大きな催し物といったら学園祭くらい。今年も私は剣術大会には顔を出す予定よ。去年も出てはいたけれど、やっぱり男子生徒の壁は厚かったわね。いくらヒロインチートがあるとはいっても、女性であるからには限度があるもの。
ところがどっこい、家で学園祭の話題が出てくると、父親が予想外な事を言い渡してきた。
「アンマリア、今年は剣術大会に出てはならんぞ」
まさかの親による出場停止である。理由はなんとなく分かるんだけど、納得はしたくなかったわね。
「お父様、去年もおととしも出ているのです。確かに事情は分かるのですが、直前になってから言われても納得いきませんね」
真面目だった前世の性格が、ここにきて親への反抗心となって牙を剥く。ここまで出たのなら皆勤するのは普通でしょうという悪い癖だった。
貴族の体裁と私の意地が戦った結果、私の意地が勝った。父親は私の剣術大会への出場を認めたものの、傷がつく事は許さないという条件を付けてきた。出場できるのならと、私はその条件を飲むことにした。
なんにせよ、これで剣術大会3年連続出場という目的は達成された。完全に魔法系であるカービルとタカー以外は、これで好感度が稼げるのがゲームの仕様だったのよね。まあ、ここは現実なんだけど。
そのやり取りを見ていたモモは本気で心配をしてきたし、エスカにいたっては笑いっぱなしだった。まあ、同じゲームをしていたのなら、状況がよく分かっているものね。
そんなこんなで、それからというもの学園祭に向けた準備が始まった。
その間の学園の講義は、時間を短縮して行われている。最低限の教養は身に付けてもらわないといけないので、講義そのものを削るわけにはいかないので苦肉の策というわけである。
話が決まった翌日の学園で、私たちはいつものように昼食を共にする。
「お姉様ってば、本気で今年も出ますの?」
「ええ、もちろんですよ。守られるだけが女性ではありませんからね」
モモの心配の声に、私はにこやかに返しておく。
「本当にアンマリア様ってばすごいですね。その強さに、私たち親子もすっかりお世話になってしまいました」
去年の一件以降すっかり仲間に加わってテールは、感心したように話している。
ちなみにテールだけれど、魔族の問題が解決した事で今はロートント男爵家に戻っている。もう命を狙われる危険はなくなったのだから。
「今年もアンマリア様と戦えるかもと思うと、私も俄然と燃えてきたというものですよ」
サクラもサクラで予想通りの反応だわね。私もそう思うわ。
私とサクラは相変わらず交流講義でミスミ教官の講義を取っている。そのせいでお互いの事はよく分かっているつもりなのだ。手の内が分かっている相手だからとはいっても、どっちが上かというのはつい気にしてしまいものだからね。
「今年で学生は最後なのですから、直接対決をして決着をつけておきたいですね」
サクラは好戦希望のようである。さすがは脳筋の一族といったところである。
「望むところですよ。タン様も今年は参加されるのでしょうか」
「ええ、彼も参加されるそうですよ。ああ、今から戦いが楽しみでドキドキしてしまいます」
「あは、あははは……」
頬を赤らめながら話すサクラの姿に、思わず笑顔を引きつらせてしまう私である。この思考がバッサーシの一族なのだった。他のみんなも苦笑いである。
「そういえば、テール様も武術型でしたね。ご参加はなさるおつもりですか?」
「わ、私はさすがに出ませんよ。元平民の私では魔法がうまく使えませんので、それで武術型に入ったようなものなのですから」
「あら、あれだけの魔力をお持ちで魔法がそんなに得意ではない。それはさすがにもったいないですね」
慌てているテールに対して、ラムがにこやかに話していた。ラムは公爵令嬢というのもあるし、魔法を得意としているからこその発言というものだった。
「今からでも、魔法を身に付けられるでしょうか……」
「可能ですよ。20歳を過ぎてから魔法を習い始めた方も過去にはいらっしゃるようですし、遅いという事はないと思います」
にっこりと微笑んで返すラムに、ほっと安心したような表情を見せるテール。この様子では魔法を使って見たかったようだった。
「わたくしでよろしければ、お教え致しますよ」
「は、はい。よろしくお願いします」
剣術大会の話だったはずなのに、なんか魔法の話がまとまっちゃったわね。
でも、こういった話ができるくらいには平穏な日常が戻ってきたってことよね。うん、やっぱり平和が一番ね。
心の底からそう思う私なのであった。
19
あなたにおすすめの小説
異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!
男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる
暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。
授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。
【連載版】ヒロインは元皇后様!?〜あら?生まれ変わりましたわ?〜
naturalsoft
恋愛
その日、国民から愛された皇后様が病気で60歳の年で亡くなった。すでに現役を若き皇王と皇后に譲りながらも、国内の貴族のバランスを取りながら暮らしていた皇后が亡くなった事で、王国は荒れると予想された。
しかし、誰も予想していなかった事があった。
「あら?わたくし生まれ変わりましたわ?」
すぐに辺境の男爵令嬢として生まれ変わっていました。
「まぁ、今世はのんびり過ごしましょうか〜」
──と、思っていた時期がありましたわ。
orz
これは何かとヤラカシて有名になっていく転生お皇后様のお話しです。
おばあちゃんの知恵袋で乗り切りますわ!
転生調理令嬢は諦めることを知らない!
eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる