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第九章 拡張版ミズーナ編
第443話 暗闇での戦い
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陽が沈み、夜の帳が下りてくる。
建国祭のメインイベントとなる祈りの儀式が始まる。
今となってはどうして夜なのかは分からないが、夜になってから貢物を捧げるというのがこの建国祭におけるメインイベントとなっているのだ。
それにしても、海に近付くにつれて不穏な魔力が強くなっていく。いくらメチルの魔法で和らげてあるとはいえ、かなりミズーナ王女とエスカは影響を受けてしまっているようだ。
「吐き気がしますね」
「ええ、ここまで強い影響があるなんて思ってもみなかったわ……」
正直言って二人とも想像以上の状態だった。
「まったく、去年はなんて事なかったのに、どうしてここまで……」
エスカは口をしっかりと手で押さえている。
「本当に二人とも大丈夫?」
メチルの頭の上にいるアルーが気にしている。そのくらいに二人揃って顔色がよくない。
「お父様たちには悪いけど、会場に着いたらすぐに呪具を探しましょう」
「そうですね。とっとと浄化するなり破壊するなりしないと、いつまで大丈夫か分かりませんからね」
すでにかなり具合が悪そうなので、ミズーナ王女の言い分はよく分かる。
儀式の会場に着くなり、エスカは護衛の人たちに告げてその場から離れた。
ミズーナ王女も魔法を展開して、メチルの浄化魔法を強化する。すると、だいぶ体の状態がマシになってきた。
「ふぅ、気持ち悪さがかなり楽になったわね」
「私まで使わないと抑えられないなんて、どれだけ強力な邪気なのかしらね……」
ミズーナ王女は少しふらついている。
「メチルたち転生者にだけ影響するというのが気になるわね。純粋なこの世界の住人である私にはまったく影響がないっていうのが、本当によく分からないわ」
「私も魔族でなければ、お二人と同じようになってたんでしょうね」
まだまだ調子の悪そうなミズーナ王女とエスカを見ながら、メチルとアルーは呟いていた。
しばらく休憩をした後、エスカたちは深呼吸をする。
「よし、だいぶ良くなってきたわ。元凶を探しに行くわよ」
エスカの呼び掛けに、ミズーナ王女たちは元気よく右手を突き上げて返事をする。
そして、海の方へと向かって闇夜の中を移動し始めた。
足元を照らすように、一番元気なアルーが光をともしている。これがなければまったく何も見えない。
ただでさえ海岸の岩場ということもあって、地形はかなりガタガタしている。明かりがなければ、時間的に歩くことは非常に困難である。
ようやく波打ち際まで歩いてきたミズーナ王女たち。かなり大きな波の音がしている。
「これ以上進んだら波にさらわれかねないわね。仕方ないわ、ここら辺で捜索を始めましょうか」
ミズーナ王女の声に、エスカたちは頷いた。
平然とした顔をしているが、ミズーナ王女とエスカはかなり状態が思わしくない。二人を襲う呪具が作り出す邪気がかなり強くなっているのだ。
「……やっぱり、この邪気は海の中から漂ってきますね」
「私も同じように感じるわ」
メチルとアルーが同じ事を口にしている。どうやら問題の呪具はやはり海の中のようだった。
二人の反応を聞いてどうするかミズーナ王女が悩んでいると、またもや二人が同時に反応を見せていた。
「どうしたのかしら」
「魔物が接近しているわ。数はものすごく多いわね」
ミズーナ王女が問い掛けると、メチルからは険しい表情で答えが返ってきた。
ものすごくという数が特定できない言い方だけに、ミズーナ王女たちの表情は厳しくなる。
「やむを得ませんね。メチル、エスカを頼みます。アルーは私と一緒に空中で魔物を迎え撃ちます」
「了解」
ミズーナ王女の呼び掛けに、メチルとアルーは快く返事をしていた。
聖女ではないミズーナ王女ではあるものの、そこは全属性の使い手たる主人公だ。風魔法を器用に使い、光魔法で体を覆いながら魔物の群れへと向かっていく。
2年前は雷を伴った嵐を起こして壊滅させたという実績があるミズーナ王女。
ただ2年前と違うのは、周囲の邪気が強いということ。そのおかげで、魔力のリソースはだいぶそちらの対処のために割かれてしまっている。そのためのアルーである。
アルーは精霊とかしているために、飛ぶための魔力の消耗が少ない。それでいて、多彩な魔法も使えるとあって、心強い味方なのである。
「暗くてよく見えないし、邪気がものすごくて魔物の正確な数がまったく分かりませんね……」
「そこは私に任せて。目の前に飛行系の魔物がかなり迫ってきているわ」
「了解よ」
アルーの話を聞いて、ミズーナ王女は魔法を使う構えを見せる。
「分からないなら分からないで、全部ぶっ倒すだけだわ!」
「言葉遣い!」
物騒なことを言うミズーナ王女に冷静にどうでもいいツッコミを入れるアルー。言葉遣いが気になるとは、さすがは元貴族令嬢である。
「アルーが黙っていれば問題ないわ」
ミズーナ王女も開き直りである。だが、冗談めいたことを言いながらも、状況は油断ならない。
「アルー、ひと暴れするわよ」
「ああもう、なるようになっちゃえ!」
やる気十分のミズーナ王女に対し、アルーはもうやけくそだった。
はたして、迫りくる魔物たちを無事に討伐することはできるのか。ミズーナ王女とアルーの戦いが始まった。
建国祭のメインイベントとなる祈りの儀式が始まる。
今となってはどうして夜なのかは分からないが、夜になってから貢物を捧げるというのがこの建国祭におけるメインイベントとなっているのだ。
それにしても、海に近付くにつれて不穏な魔力が強くなっていく。いくらメチルの魔法で和らげてあるとはいえ、かなりミズーナ王女とエスカは影響を受けてしまっているようだ。
「吐き気がしますね」
「ええ、ここまで強い影響があるなんて思ってもみなかったわ……」
正直言って二人とも想像以上の状態だった。
「まったく、去年はなんて事なかったのに、どうしてここまで……」
エスカは口をしっかりと手で押さえている。
「本当に二人とも大丈夫?」
メチルの頭の上にいるアルーが気にしている。そのくらいに二人揃って顔色がよくない。
「お父様たちには悪いけど、会場に着いたらすぐに呪具を探しましょう」
「そうですね。とっとと浄化するなり破壊するなりしないと、いつまで大丈夫か分かりませんからね」
すでにかなり具合が悪そうなので、ミズーナ王女の言い分はよく分かる。
儀式の会場に着くなり、エスカは護衛の人たちに告げてその場から離れた。
ミズーナ王女も魔法を展開して、メチルの浄化魔法を強化する。すると、だいぶ体の状態がマシになってきた。
「ふぅ、気持ち悪さがかなり楽になったわね」
「私まで使わないと抑えられないなんて、どれだけ強力な邪気なのかしらね……」
ミズーナ王女は少しふらついている。
「メチルたち転生者にだけ影響するというのが気になるわね。純粋なこの世界の住人である私にはまったく影響がないっていうのが、本当によく分からないわ」
「私も魔族でなければ、お二人と同じようになってたんでしょうね」
まだまだ調子の悪そうなミズーナ王女とエスカを見ながら、メチルとアルーは呟いていた。
しばらく休憩をした後、エスカたちは深呼吸をする。
「よし、だいぶ良くなってきたわ。元凶を探しに行くわよ」
エスカの呼び掛けに、ミズーナ王女たちは元気よく右手を突き上げて返事をする。
そして、海の方へと向かって闇夜の中を移動し始めた。
足元を照らすように、一番元気なアルーが光をともしている。これがなければまったく何も見えない。
ただでさえ海岸の岩場ということもあって、地形はかなりガタガタしている。明かりがなければ、時間的に歩くことは非常に困難である。
ようやく波打ち際まで歩いてきたミズーナ王女たち。かなり大きな波の音がしている。
「これ以上進んだら波にさらわれかねないわね。仕方ないわ、ここら辺で捜索を始めましょうか」
ミズーナ王女の声に、エスカたちは頷いた。
平然とした顔をしているが、ミズーナ王女とエスカはかなり状態が思わしくない。二人を襲う呪具が作り出す邪気がかなり強くなっているのだ。
「……やっぱり、この邪気は海の中から漂ってきますね」
「私も同じように感じるわ」
メチルとアルーが同じ事を口にしている。どうやら問題の呪具はやはり海の中のようだった。
二人の反応を聞いてどうするかミズーナ王女が悩んでいると、またもや二人が同時に反応を見せていた。
「どうしたのかしら」
「魔物が接近しているわ。数はものすごく多いわね」
ミズーナ王女が問い掛けると、メチルからは険しい表情で答えが返ってきた。
ものすごくという数が特定できない言い方だけに、ミズーナ王女たちの表情は厳しくなる。
「やむを得ませんね。メチル、エスカを頼みます。アルーは私と一緒に空中で魔物を迎え撃ちます」
「了解」
ミズーナ王女の呼び掛けに、メチルとアルーは快く返事をしていた。
聖女ではないミズーナ王女ではあるものの、そこは全属性の使い手たる主人公だ。風魔法を器用に使い、光魔法で体を覆いながら魔物の群れへと向かっていく。
2年前は雷を伴った嵐を起こして壊滅させたという実績があるミズーナ王女。
ただ2年前と違うのは、周囲の邪気が強いということ。そのおかげで、魔力のリソースはだいぶそちらの対処のために割かれてしまっている。そのためのアルーである。
アルーは精霊とかしているために、飛ぶための魔力の消耗が少ない。それでいて、多彩な魔法も使えるとあって、心強い味方なのである。
「暗くてよく見えないし、邪気がものすごくて魔物の正確な数がまったく分かりませんね……」
「そこは私に任せて。目の前に飛行系の魔物がかなり迫ってきているわ」
「了解よ」
アルーの話を聞いて、ミズーナ王女は魔法を使う構えを見せる。
「分からないなら分からないで、全部ぶっ倒すだけだわ!」
「言葉遣い!」
物騒なことを言うミズーナ王女に冷静にどうでもいいツッコミを入れるアルー。言葉遣いが気になるとは、さすがは元貴族令嬢である。
「アルーが黙っていれば問題ないわ」
ミズーナ王女も開き直りである。だが、冗談めいたことを言いながらも、状況は油断ならない。
「アルー、ひと暴れするわよ」
「ああもう、なるようになっちゃえ!」
やる気十分のミズーナ王女に対し、アルーはもうやけくそだった。
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