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第九章 拡張版ミズーナ編
第499話 すべての終わりに
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アンマリアは年を越す前にサーロイン王国に戻ってしまい、タミールは一人異国の地に残されてしまった。エスカがいなければさらに心細かっただろう。
ああも衝撃的な告白劇があったために、国王と王妃、それとレッタス王子王族や家臣たちに至るまで大騒ぎである。
もちろん、ベジタリウス王家としても何もしていなかったわけではなかった。候補者は絞り込んではいたものの、本人たちがいない状況では決められないと決定を渋っていたのである。
そこへあの年末パーティーの電撃である。
ミズーナ王女の嫁ぎ先は決まったと、王城の中はお祭り状態が今日も続いていた。
「いやあ、タミール・ファッティと申したかね」
「は、はい」
年が明けて、タミールは王家の食卓に呼ばれていた。
結局アンマリアは戻ってくる気配はなく、一人で食卓の中で緊張感のあまり、ガチガチの状態で座っている。
周りはどこを見ても王族である。タミール一人だけがただの一般貴族。緊張するなという方が無理なのだ。
「娘の結婚相手として名乗り出てくれたのは嬉しい限りだよ。ミズーナも受け入れたのであれば、私たちから何も言うことはない」
「ええ、まったくですわよ」
国王はうんうんと頷いているし、王妃にいたっては涙を流している。
ベジタリウス王国にやって来た時点で退路は断っていたとはいえ、国王と王妃にまでこんな反応をされては、本当にもう後戻りなんてできない状況になっていた。
タミールは言い知れぬ恐怖のようなものを感じて、食事がまったくのどを通らないでいた。
あまりにも緊張した様子に、ミズーナ王女もつい笑ってしまう。
「タミール、そんなに硬くならなくてもいいわよ。あのアンマリアのいとこですから、お父様たちも信用して下さっていますわ」
「そ、そうですか。うう、姉上のおかげかぁ……」
フォローしたつもりだが、ミズーナ王女の言葉でタミールはちょっと凹んだようだった。どうやら、アンマリアのおかげというのはタミールにとってはあまりいい言葉ではないようだった。
「ふふっ、同じ男としてその気持ちはよく分かりますよ、タミール」
「お兄様ってば」
急に話し始めるものだから、思わず反応してしまうミズーナ王女である。
「それで、サーロイン王国に向かうとしていつ頃になるんだい?」
「そうですね……」
続けてレッタス王子から飛んできた質問に、ミズーナ王女は真剣に考え込んでしまう。
「早い方がいいとは思いますけれど、今は学園の新学期ですからね。対応云々を考えれば、来月の頭くらいに到着するのがよろしいかと」
「そうか。ミズーナと離れると思うと寂しくなるな」
ミズーナ王女の答えに、レッタス王子は暗い表情でため息をついている。
「でしたら、お兄様も早めにお相手を見つけられるといいですわよ。お兄様はなんといっても王子なんですからね」
「うん、まあ。そうだね」
ミズーナ王女からきっぱり言われて、不思議と明るい表情で笑ってしまうレッタス王子である。
「まぁ、そこはミズーナの心配する事じゃないよ。なにせ国家の将来がかかった話だ。最長一年はかけてじっくり検討させてもらうつもりだよ」
そして、ミズーナ王女を安心させようと、今後の見通しを国王の顔色を見ながら話していた。
「それはとても楽しみですわね。素敵なご令嬢が見つかるとよろしいですわね」
にこにこと微笑みながら、レッタス王子にエールを送るミズーナ王女であった。
今後の方針が決まってミズーナ王女は、出発の時が来るまでいろいろと支度を済ませておく。
サーロイン王家とファッティ伯爵領へと使いを出して、必要な服装やら荷物をまとめていく。
ファッティ伯爵の兄デバラは爵位なしではあるが、一応王国内での処理は伯爵の爵位持ちになっている。それというのも、ゼニークがほぼ大臣職につきっきりで、領地経営から離れてしまっているためだ。そのため、書類上の伯爵という立場にあたるのだ。
その息子であるタミールと結婚するので、ミズーナ王女の将来的な立場は伯爵夫人となる。これは、アンマリアも養女であるモモもファッティ家を出ていってしまうためだ。そうなれば、自然と伯爵位はタミールに継がれることになるというわけだ。
ミズーナ王女の状況が落ち着くのを見届けると、エスカは魔王と一緒にコール子爵領へと向かっていった。
そして、その翌日には、いよいよミズーナ王女もサーロイン王国へと向かうことになる。ファッティ伯爵家への嫁入りである。
「それでは、お父様、お母様、お兄様。私はサーロイン王国へと旅立ちますね」
「ええ、体に気をつけてね、ミズーナ」
「はい」
挨拶を交わし、ミズーナ王女は馬車へと乗り込む。夫となるタミールと一緒の馬車である。
「お兄様も、早くお相手が見つかるといいですわね。結婚式には絶対駆けつけますから」
「そのうち吉報を届けられるように頑張らせてもらうよ」
ちょっとふて腐れたように言葉を返すレッタス王子である。こんな時にも強がる兄の姿に、ミズーナ王女は笑みが絶えなかった。
「それでは、着きましたら手紙を出させて頂きますね」
「ああ、楽しみに待っているよ」
馬車越しに最後の挨拶を交わす。
それが終わると、まだ雪の残る景色の中を馬車はゆっくりと走り出していった。
「娘が旅立つと、こんなに寂しくなるものなのですね」
「学園の時はまだ戻ってくるからと思っていたが、いざ結婚となるとな……」
黙り込んでしまう国王と王妃である。
馬車の立てる音が聞こえなくなるまで、ベジタリウスの王族たちはずっと立ち尽くしていた。
こうして、乙女ゲーム『アンマリアの恋愛ダイエット大作戦』は、ここにすべてのエンディングを無事に向かえたのである。
ああも衝撃的な告白劇があったために、国王と王妃、それとレッタス王子王族や家臣たちに至るまで大騒ぎである。
もちろん、ベジタリウス王家としても何もしていなかったわけではなかった。候補者は絞り込んではいたものの、本人たちがいない状況では決められないと決定を渋っていたのである。
そこへあの年末パーティーの電撃である。
ミズーナ王女の嫁ぎ先は決まったと、王城の中はお祭り状態が今日も続いていた。
「いやあ、タミール・ファッティと申したかね」
「は、はい」
年が明けて、タミールは王家の食卓に呼ばれていた。
結局アンマリアは戻ってくる気配はなく、一人で食卓の中で緊張感のあまり、ガチガチの状態で座っている。
周りはどこを見ても王族である。タミール一人だけがただの一般貴族。緊張するなという方が無理なのだ。
「娘の結婚相手として名乗り出てくれたのは嬉しい限りだよ。ミズーナも受け入れたのであれば、私たちから何も言うことはない」
「ええ、まったくですわよ」
国王はうんうんと頷いているし、王妃にいたっては涙を流している。
ベジタリウス王国にやって来た時点で退路は断っていたとはいえ、国王と王妃にまでこんな反応をされては、本当にもう後戻りなんてできない状況になっていた。
タミールは言い知れぬ恐怖のようなものを感じて、食事がまったくのどを通らないでいた。
あまりにも緊張した様子に、ミズーナ王女もつい笑ってしまう。
「タミール、そんなに硬くならなくてもいいわよ。あのアンマリアのいとこですから、お父様たちも信用して下さっていますわ」
「そ、そうですか。うう、姉上のおかげかぁ……」
フォローしたつもりだが、ミズーナ王女の言葉でタミールはちょっと凹んだようだった。どうやら、アンマリアのおかげというのはタミールにとってはあまりいい言葉ではないようだった。
「ふふっ、同じ男としてその気持ちはよく分かりますよ、タミール」
「お兄様ってば」
急に話し始めるものだから、思わず反応してしまうミズーナ王女である。
「それで、サーロイン王国に向かうとしていつ頃になるんだい?」
「そうですね……」
続けてレッタス王子から飛んできた質問に、ミズーナ王女は真剣に考え込んでしまう。
「早い方がいいとは思いますけれど、今は学園の新学期ですからね。対応云々を考えれば、来月の頭くらいに到着するのがよろしいかと」
「そうか。ミズーナと離れると思うと寂しくなるな」
ミズーナ王女の答えに、レッタス王子は暗い表情でため息をついている。
「でしたら、お兄様も早めにお相手を見つけられるといいですわよ。お兄様はなんといっても王子なんですからね」
「うん、まあ。そうだね」
ミズーナ王女からきっぱり言われて、不思議と明るい表情で笑ってしまうレッタス王子である。
「まぁ、そこはミズーナの心配する事じゃないよ。なにせ国家の将来がかかった話だ。最長一年はかけてじっくり検討させてもらうつもりだよ」
そして、ミズーナ王女を安心させようと、今後の見通しを国王の顔色を見ながら話していた。
「それはとても楽しみですわね。素敵なご令嬢が見つかるとよろしいですわね」
にこにこと微笑みながら、レッタス王子にエールを送るミズーナ王女であった。
今後の方針が決まってミズーナ王女は、出発の時が来るまでいろいろと支度を済ませておく。
サーロイン王家とファッティ伯爵領へと使いを出して、必要な服装やら荷物をまとめていく。
ファッティ伯爵の兄デバラは爵位なしではあるが、一応王国内での処理は伯爵の爵位持ちになっている。それというのも、ゼニークがほぼ大臣職につきっきりで、領地経営から離れてしまっているためだ。そのため、書類上の伯爵という立場にあたるのだ。
その息子であるタミールと結婚するので、ミズーナ王女の将来的な立場は伯爵夫人となる。これは、アンマリアも養女であるモモもファッティ家を出ていってしまうためだ。そうなれば、自然と伯爵位はタミールに継がれることになるというわけだ。
ミズーナ王女の状況が落ち着くのを見届けると、エスカは魔王と一緒にコール子爵領へと向かっていった。
そして、その翌日には、いよいよミズーナ王女もサーロイン王国へと向かうことになる。ファッティ伯爵家への嫁入りである。
「それでは、お父様、お母様、お兄様。私はサーロイン王国へと旅立ちますね」
「ええ、体に気をつけてね、ミズーナ」
「はい」
挨拶を交わし、ミズーナ王女は馬車へと乗り込む。夫となるタミールと一緒の馬車である。
「お兄様も、早くお相手が見つかるといいですわね。結婚式には絶対駆けつけますから」
「そのうち吉報を届けられるように頑張らせてもらうよ」
ちょっとふて腐れたように言葉を返すレッタス王子である。こんな時にも強がる兄の姿に、ミズーナ王女は笑みが絶えなかった。
「それでは、着きましたら手紙を出させて頂きますね」
「ああ、楽しみに待っているよ」
馬車越しに最後の挨拶を交わす。
それが終わると、まだ雪の残る景色の中を馬車はゆっくりと走り出していった。
「娘が旅立つと、こんなに寂しくなるものなのですね」
「学園の時はまだ戻ってくるからと思っていたが、いざ結婚となるとな……」
黙り込んでしまう国王と王妃である。
馬車の立てる音が聞こえなくなるまで、ベジタリウスの王族たちはずっと立ち尽くしていた。
こうして、乙女ゲーム『アンマリアの恋愛ダイエット大作戦』は、ここにすべてのエンディングを無事に向かえたのである。
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