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第384話 早く起きたから
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朝を迎える。
布団からむくりと起き上がって、満は自分の体を確認する。
「あ、今日は男に戻ってる……」
胸がない時点で男だとすぐ分かる満である。そのくらいに、女の時との体型の差が明確になってしまっているのだ。
(何か夢を見たような気がするんだけど、なんだったかな……?)
目を覚ました満は、夢で見た内容……どころか夢を見たこと自体を忘れてしまっているようだ。腕を組んで首を捻っているが、どうにも思い出せない。
まあいっかと、満は気にしないことにしたようだ。
起き上がって布団を片付けた満は、まずは顔を洗いに降りていく。
(そういえば、今日は文化祭の振り替えで休みだったな。何をしようかな、今日は……)
月曜日ではあるものの学校が休みなので、満はやることが分からずに困っているようである。
顔を洗った満は、ひとまず朝のいつものルーティンを済ませることにしたのだった。
SNSのチェックをして、PASSTREAMERの自分のチャンネルの確認。相変わらず動画の再生数は伸び続けている。チャンネル登録者数も右肩上がりだ。
(さすがにこんなにあると、どのくらい税金持ってかれちゃうのか気になるなぁ)
収益化のページを覗いてみると、すでに六桁の収益が数か月にわたって上がっている。とてもじゃないが、一般人である中学生で稼げる額ではないだろう。以前に税金のことで相談に乗ってもらっていたけれど、どうなるんだろうなと怖くなってくる満である。
改めて窓の外を見にカーテンを開ける満。もう十一月が目の前ということもあって、まだ夜明けは来ていない。時計を確認すると五時を回ったばかりだった。寝るのが早い満は、起きるのも早いのである。
(この時間なら、光月ルナとして活動してても問題ないか。たまにはお休み配信でもしてみるかな)
満はそんなことを思いながら、モーションキャプチャをつけて配信の準備をする。
光月ルナのソフトを立ち上げて、いざ配信を行う。
「こんばんはですわ、みなさま。光月ルナでございます」
『およ、ルナちだ』
『おはよるな~』
困惑するリスナーと普通に挨拶をしてくれるリスナーとに分かれている。
それにしても「おはよるな」は便利な挨拶だ。
夜に配信すれば、光月ルナが「おはよう」でリスナーが「夜」であり、朝に配信すればリスナーが「おはよう」で光月ルナが「夜」である。考え出したリスナーは天才か。
『こんな時間に配信とは珍しいな』
「ええ、なんだか変わったことをしてみてもいいのではないかとふと思ったのですわ」
『くうう、朝からのルナちはなんか元気が出る』
『なんだろう、イライラしていた気持ちが落ち着いた気がするよ』
リスナーたちからの反応に、満はついくすくすと笑ってしまう。
「これから冬にかけましては、僕の時間ですわね。夜は長いですから、活動時間が広がりますわ」
『確かにそうやな』
『ってことは、朝配信もしてくれるん?』
『これなんてモーニングコールじゃね?』
やることに迷って行った朝の配信は、意外とリスナーたちには受けがいいようである。
「ふふっ、朝配信は考えておきますわ。僕の方はもう寝る時間が近付いていますので、それほど大した時間は取れないでしょうからね」
『ああ、それもそうだ』
『吸血鬼は暗い時間しか活動できんからな』
「ご要望があるようでしたら、実現可能な範囲でお答えしますわよ。ただし、僕が眠る直前だということもお忘れになりませんように頼みますわよ」
『りょ!』
満の言葉に、リスナーたちは元気な返事をしてくれていた。
「さて、今日のところはこのくらいで済ませておきましょう。みなさまからの需要が分かりましたのは幸いなことですわ。配信内容にご希望がございましたら、気軽にSNSにでも書いておいて下さいませ」
『わくわく』
『朝からルナちは助かる』
『おまいら、節度持って書けよ?』
『もちろんじゃい!』
リスナーたちの反応に、つい笑顔になってしまう満だった。
「それでは、みなさま。本日も一日元気にお過ごしくださいませ。ごきげんよう」
挨拶をして締めると、満は配信終了のボタンをカチッとクリックしていた。
時間としては十分しゃべったかどうかというくらいである。
とはいえ、時間を持て余して行った朝配信が、まさかここまで高評価を得るとは思っていなかった。満は、光月ルナの新たな可能性を感じたようである。
「う~ん、だけど、問題は僕がどこまで頑張れるかかなぁ……」
その一方で、夜の配信に加えて、朝の配信も行うので、自分の生活と体調のことも気にかかってしまっていた。
なにせ満はまだ中学三年生である。これからも高校受験も控えている時期なので、勉強時間を削るわけにはいかない。となると、受験に向けて活動時間を考え直す時期に来ているのかもしれないということのようだった。
「……とりあえず、年末になったら考え直そう」
面倒になったのか、満は結論を出すのを先延ばしにしてしまったようである。
朝の配信を行ってすっかり目の覚めた満は、今日一日の活動を始めるためにまずは服を着替えるのだった。
布団からむくりと起き上がって、満は自分の体を確認する。
「あ、今日は男に戻ってる……」
胸がない時点で男だとすぐ分かる満である。そのくらいに、女の時との体型の差が明確になってしまっているのだ。
(何か夢を見たような気がするんだけど、なんだったかな……?)
目を覚ました満は、夢で見た内容……どころか夢を見たこと自体を忘れてしまっているようだ。腕を組んで首を捻っているが、どうにも思い出せない。
まあいっかと、満は気にしないことにしたようだ。
起き上がって布団を片付けた満は、まずは顔を洗いに降りていく。
(そういえば、今日は文化祭の振り替えで休みだったな。何をしようかな、今日は……)
月曜日ではあるものの学校が休みなので、満はやることが分からずに困っているようである。
顔を洗った満は、ひとまず朝のいつものルーティンを済ませることにしたのだった。
SNSのチェックをして、PASSTREAMERの自分のチャンネルの確認。相変わらず動画の再生数は伸び続けている。チャンネル登録者数も右肩上がりだ。
(さすがにこんなにあると、どのくらい税金持ってかれちゃうのか気になるなぁ)
収益化のページを覗いてみると、すでに六桁の収益が数か月にわたって上がっている。とてもじゃないが、一般人である中学生で稼げる額ではないだろう。以前に税金のことで相談に乗ってもらっていたけれど、どうなるんだろうなと怖くなってくる満である。
改めて窓の外を見にカーテンを開ける満。もう十一月が目の前ということもあって、まだ夜明けは来ていない。時計を確認すると五時を回ったばかりだった。寝るのが早い満は、起きるのも早いのである。
(この時間なら、光月ルナとして活動してても問題ないか。たまにはお休み配信でもしてみるかな)
満はそんなことを思いながら、モーションキャプチャをつけて配信の準備をする。
光月ルナのソフトを立ち上げて、いざ配信を行う。
「こんばんはですわ、みなさま。光月ルナでございます」
『およ、ルナちだ』
『おはよるな~』
困惑するリスナーと普通に挨拶をしてくれるリスナーとに分かれている。
それにしても「おはよるな」は便利な挨拶だ。
夜に配信すれば、光月ルナが「おはよう」でリスナーが「夜」であり、朝に配信すればリスナーが「おはよう」で光月ルナが「夜」である。考え出したリスナーは天才か。
『こんな時間に配信とは珍しいな』
「ええ、なんだか変わったことをしてみてもいいのではないかとふと思ったのですわ」
『くうう、朝からのルナちはなんか元気が出る』
『なんだろう、イライラしていた気持ちが落ち着いた気がするよ』
リスナーたちからの反応に、満はついくすくすと笑ってしまう。
「これから冬にかけましては、僕の時間ですわね。夜は長いですから、活動時間が広がりますわ」
『確かにそうやな』
『ってことは、朝配信もしてくれるん?』
『これなんてモーニングコールじゃね?』
やることに迷って行った朝の配信は、意外とリスナーたちには受けがいいようである。
「ふふっ、朝配信は考えておきますわ。僕の方はもう寝る時間が近付いていますので、それほど大した時間は取れないでしょうからね」
『ああ、それもそうだ』
『吸血鬼は暗い時間しか活動できんからな』
「ご要望があるようでしたら、実現可能な範囲でお答えしますわよ。ただし、僕が眠る直前だということもお忘れになりませんように頼みますわよ」
『りょ!』
満の言葉に、リスナーたちは元気な返事をしてくれていた。
「さて、今日のところはこのくらいで済ませておきましょう。みなさまからの需要が分かりましたのは幸いなことですわ。配信内容にご希望がございましたら、気軽にSNSにでも書いておいて下さいませ」
『わくわく』
『朝からルナちは助かる』
『おまいら、節度持って書けよ?』
『もちろんじゃい!』
リスナーたちの反応に、つい笑顔になってしまう満だった。
「それでは、みなさま。本日も一日元気にお過ごしくださいませ。ごきげんよう」
挨拶をして締めると、満は配信終了のボタンをカチッとクリックしていた。
時間としては十分しゃべったかどうかというくらいである。
とはいえ、時間を持て余して行った朝配信が、まさかここまで高評価を得るとは思っていなかった。満は、光月ルナの新たな可能性を感じたようである。
「う~ん、だけど、問題は僕がどこまで頑張れるかかなぁ……」
その一方で、夜の配信に加えて、朝の配信も行うので、自分の生活と体調のことも気にかかってしまっていた。
なにせ満はまだ中学三年生である。これからも高校受験も控えている時期なので、勉強時間を削るわけにはいかない。となると、受験に向けて活動時間を考え直す時期に来ているのかもしれないということのようだった。
「……とりあえず、年末になったら考え直そう」
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