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未羊

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第447話 夏休みが始まる

 ルナ・フォルモントに勉強を見てもらえることになった満だったが、そうしている間に終業式を迎えることになる。
 一学期が終わったその時、満は香織から話しかけられる。

「ねえ、満くん。ちょっと相談はいい?」

「えっ? いいよ、香織ちゃん」

 真剣な表情に見えた満は、申し出を二つ返事で了承していた。
 帰り道、風斗も一緒になったところで、香織は相談の内容を満に打ち明ける。

「クラスの女子からね、プールに誘われたんだけど、満くんも一緒にどうかなって思ったの」

「なんで女子たちの集まりに僕を呼ぶの?!」

 香織からの相談を受けた満は、第一声でそう言い返していた。

「まったくだぞ。いくら変身できるからっていっても、それはどうかと思うな」

 風斗も満の肩を持って、香織に言い返している。

「そうなんだけど、ちょっと詳しい話をするとややこしいのよ。説明させてもらってもいい?」

「まあ、事情くらいは聞くさ。なあ、満」

「うん。どういうことか聞かせてもらえる?」

 やむなく自転車を止めて、香織から詳しい話を聞くことにする。
 それによれば、どうやらゴールデンウィークの時に姿を見せたルナの話が出てきたらしい。よりによって、その時に香織が知り合いだと勢い余っていってしまったことで、プールに行くから誘ってきてよということになったのだという。

「……なんだよ、それ。完全に花宮のやらかしじゃねえか。満にフォローを頼むんじゃねえよ」

「分かってる。分かってるけど……」

 風斗が強く言えば、香織はしどろもどろになっていく。
 こうなってくると、満がどう動くかということはもう想像に難くないというものだ。

「分かったよ。僕がいけば丸く収まるんでしょ?」

「おい、満……」

 そう、満が助け舟を出してしまったのだ。本当にお人好しというほかない。
 風斗が止めようとするも、満は行く気を固めてしまったようだった。こうなってしまっては、満を止めるのは難しいだろう。風斗は顔に手を当ててあちゃーと言わんばかりに上を向いていた。

「週末は配信予定で女性になるつもりだから、ちょうどいいよ。問題は、水着が合うかどうかかなぁ……。ダメそうだったらお母さんに相談してみる」

「ごめんね、満くん」

「いいよ、幼馴染みなんだし」

 両手を合わせて謝る香織に対して、満は照れくさそうに答えていた。

「まったく、どうなったって知らねえからな、俺は……」

 話がまとまる中、風斗ただ一人だけが頭を抱えているようだった。

 そんなこんなで翌日を迎える。
 夏休みの初日が週末にかち合っているために、混雑するだろうということで早めの出発になっている。
 香織との約束は、市民プールに現地集合である。

「それじゃ、お母さん。行ってくるね」

「ええ、行ってらっしゃい。痴漢には気をつけるのよ」

「うん、気をつけるね」

 母親に見送られながら、満は朝の八時半には家を出ていった。
 市民プールの開業は朝の九時半だが、なるべく早い順番を取れるようにと満は一人早く出ていったのだ。
 ルナ・フォルモントの影響が残っているので、女性の姿の時の満は日の光には少し弱い。日焼けを考えて、しっかりと日焼け対策をした上で満は出かけていった。
 とはいえ、服装はキャミソールにショートパンツだ。薄手のカーディガンを羽織っているとはいえ、ずいぶんと肌の露出が多いものである。

 市民プールに到着した満は、駐輪場に自転車を止めて入口にやってくる。
 辺りを見回してみるも、まだ誰も来ていないようである。

「あれぇ……。みんなまだ来てないのか。もう人が並び始めてるよ」

 満が市民プールの入口を見ると、すでに十数人ほどの待機列ができていた。

「みんな遅いなぁ。しょうがない、僕だけ並んでいてもしょうがないから、誰か来るのを待つかな」

 満はしょうがなく、待機列から離れた日陰でみんなを待つことにした。
 しばらくすると、ようやく香織がやって来た。

「ごめん、ルナちゃん。待たせちゃったわね」

「大丈夫だよ。まだ五分くらいしか待ってないから」

 謝っている香織に対して、満はしれっと答えていた。

「他のみんなはまだなのかな。というか、何人くらい来るの?」

「私以外には三人かな。どうしよう、だいぶ列が長くなってきてるよね」

 満と話をしながら、香織は入口の方へと目を向ける。たった五分しか経っていないというのに、もう入場待機列は五十人を超えてしまっていた。

「さすが夏休み最初の日曜日ね」

「本当だね。しかも無料開放とあって、なおさら入りやすくなってるもんね」

 満たちは今も伸びていく待機列を見ながら、困った顔をしている。

「しょうがない。私たちだけで先に行きましょう。中で集合場所を決めて、そこで集まる様にしよう」

「うん、そうだね。しょうがない」

 そんなわけで、満と香織は他の友だちに先に中に入って待っているという連絡を入れておくことになった。

「これでよしっと。それじゃ、先に行きましょっか」

「うん、そうだね」

 連絡を入れた香織は、満と手をつなぎながら待機列のところへと移動していく。
 見た目から女の子同士であるため周りは気に留めない行動ではあるが、香織は満と手をつなぎながら顔を赤くしていた。

 こうして、高校生になった満たちの最初の夏が始まるのであった。
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