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第3話 モノトーンのアジト
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明らかに地球上ではない、どす黒く重たい空間が広がっている。
そこに建つ漆黒の建物の中で、赤い男はどすどすとものすごい足音を立てて歩いている。そして、とある一室のテーブルの前に立つと、ドカッと壊れそうな勢いで椅子に座った。
パステルピンクに邪魔をされ、チェリーを殺し損ねた男は明らかに不機嫌である。赤い男がいらいらとしながら座っていると、そこに近付く謎の3つの人影が現れた。
「あらあら~、ずいぶんとご立腹なようじゃな~い、レ・ド。 何があったのかしら~?」
オネエ口調のずいぶんと野太い声が聞こえてくる。だが、レドと呼ばれた赤い男には、その口調がさらに苛立ちを掻き立てる。
「何だ、イエーロ。からかいに来たってんならぶっ飛ばすぞ?」
レドはギラリと睨みながら、実にブチ切れ寸前の状態のようである。
「いや~ん、怖いわぁ~。ねっ、ブルーエ」
ブチ切れ寸前のどすの効いた声に、イエーロは怖がったように震えながら他の人影に話を振った。
「ええ、そうね。まったくもって気持ち悪いわ、イエーロ」
「ええっ、そっちなの?! いや~ん、イエーロったら孤独~~」
全身青色のスタイルの良いブルーエと呼ばれた人物からつっけんどんに返されて、全身真っ黄色で目に痛いイエーロは気持ち悪くくねくねと動く。まったくもって気持ち悪い。体の色も相まって本当に目に痛すぎる。
イエーロの気持ち悪い動きの横で、
「レド、お前の持っているそれは……」
残った一人の人影がレドに話し掛けていた。どうやら、レドが手に何かを持っていたらしい。それは、このモノトーンの世界には似つかわしくない物だった。
「ああ、どうやらこの間滅ぼしたパステル王国の生き残りが居たらしい。その死にぞこないが、次のターゲットの世界の奴と協力して俺のモノトーンを倒しやがったんだよ。これはそのモノトーンの成れの果てだ」
「なんだと?!」
レドの証言に、残った一人が険しい反応をする。そして、それにつられるようにして、イエーロとブルーエのケンカも止まった。どうやらパステル王国という単語に反応したようだ。
「パステル王国……。【伝説の戦士】という奴が居るからと、えらく作戦を練り込んだからよく覚えているぞ」
「あの国の死にぞこないが居るの~? やだ~、こわ~い~」
残った一人とイエーロがそれぞれに反応する。
「という事は何なの? まさかあんたが失敗したっていうのは、その【伝説の戦士】って奴のせいなの?」
ブルーエの言葉に、イエーロともう一人が黙り込む。
そして、沈黙を破るようにレドが話し始める。
「ああ、そうだ。おそらくあいつはその【伝説の戦士】って奴だろう。確か、パステルピンクといったか。少女趣味な服を着てはいたが、とても乱暴な奴だったぜ」
レドは思い出してきたのか、とても苛立っている様子だ。ところが、他の三人は「お前が言うのか」という冷ややかな目で見ていた。火に油を注ぐ事になるし、面倒事になるだけなので口には出さなかったが。
そして、言うだけ言ったレドは乱暴に立ち上がった。
「俺のモノトーンをあっさりと葬り去ってくれやがって。……この俺に退くという選択肢を取らせやがって!」
そう言い放ったレドは、大きな足音を立てながら部屋の出入口へと歩き始めた。
「今度会った時は、必ずやあの死にぞこないともども、俺の一撃で真っ赤に染め上げてやる!」
がはははは、という笑い声をレドは響き渡らせて歩いていった。失態を取らされた恨みを晴らすべく、その怒りを拳に込めて、いつも以上に闘志を燃やしていた。他の三人はその様子を黙って見送った。
レドが部屋から出ていってしばらくすると、三人はようやく落ち着きを取り戻す。
「さて、どう思うのかしら、グーリ」
「どうもこうも、パステルピンクというのが出てきたという情報だけじゃ。しばらくの間は様子見じゃな。死にぞこないどもが他にも居るかも知れんし、伝説の戦士が一人出てきたのなら、他にも誕生している可能性がないとも言えん」
グーリと呼ばれたのは、緑色の老人のようである。他の面々に比べると背が格段に低い。そして、落ち着いていて頭もよいようだ。
このグーリの意見には、イエーロとブルーエも賛成のようである。どうやら慎重派のようだ。
「表立った行動はあの単細胞に任せておけばよかろう。あいつが派手に動いてくれれば動くほど、わしらは裏で動きやすくなるからの」
「そうね。死にぞこないがあの辺りに出たのなら、他の連中が居たとしても似たような範囲に居るでしょうね」
ブルーエはグーリの方針に同意する。イエーロも反対の様子はないので、四人の当面の行動が決まったようである。
「あらあらまあまあ、なかなか楽しくなってきたじゃな~い。この私が~、残りの死にぞこないちゃんたちを見つけて~、ぜ~んぶ始末してあ・げ・るっ♪」
「イエーロ、頼むからやめて。吐き気がするわ」
「あら~、ブルーエったら、い・け・ず、ね~?」
イエーロとブルーエが喧しく叫ぶ中、グーリは我関せずと次の作戦を練り始めた。
モノトーン陣営も一枚岩ではなさそうだが、その野望のためにそれぞれが動き始めたのであった。
そこに建つ漆黒の建物の中で、赤い男はどすどすとものすごい足音を立てて歩いている。そして、とある一室のテーブルの前に立つと、ドカッと壊れそうな勢いで椅子に座った。
パステルピンクに邪魔をされ、チェリーを殺し損ねた男は明らかに不機嫌である。赤い男がいらいらとしながら座っていると、そこに近付く謎の3つの人影が現れた。
「あらあら~、ずいぶんとご立腹なようじゃな~い、レ・ド。 何があったのかしら~?」
オネエ口調のずいぶんと野太い声が聞こえてくる。だが、レドと呼ばれた赤い男には、その口調がさらに苛立ちを掻き立てる。
「何だ、イエーロ。からかいに来たってんならぶっ飛ばすぞ?」
レドはギラリと睨みながら、実にブチ切れ寸前の状態のようである。
「いや~ん、怖いわぁ~。ねっ、ブルーエ」
ブチ切れ寸前のどすの効いた声に、イエーロは怖がったように震えながら他の人影に話を振った。
「ええ、そうね。まったくもって気持ち悪いわ、イエーロ」
「ええっ、そっちなの?! いや~ん、イエーロったら孤独~~」
全身青色のスタイルの良いブルーエと呼ばれた人物からつっけんどんに返されて、全身真っ黄色で目に痛いイエーロは気持ち悪くくねくねと動く。まったくもって気持ち悪い。体の色も相まって本当に目に痛すぎる。
イエーロの気持ち悪い動きの横で、
「レド、お前の持っているそれは……」
残った一人の人影がレドに話し掛けていた。どうやら、レドが手に何かを持っていたらしい。それは、このモノトーンの世界には似つかわしくない物だった。
「ああ、どうやらこの間滅ぼしたパステル王国の生き残りが居たらしい。その死にぞこないが、次のターゲットの世界の奴と協力して俺のモノトーンを倒しやがったんだよ。これはそのモノトーンの成れの果てだ」
「なんだと?!」
レドの証言に、残った一人が険しい反応をする。そして、それにつられるようにして、イエーロとブルーエのケンカも止まった。どうやらパステル王国という単語に反応したようだ。
「パステル王国……。【伝説の戦士】という奴が居るからと、えらく作戦を練り込んだからよく覚えているぞ」
「あの国の死にぞこないが居るの~? やだ~、こわ~い~」
残った一人とイエーロがそれぞれに反応する。
「という事は何なの? まさかあんたが失敗したっていうのは、その【伝説の戦士】って奴のせいなの?」
ブルーエの言葉に、イエーロともう一人が黙り込む。
そして、沈黙を破るようにレドが話し始める。
「ああ、そうだ。おそらくあいつはその【伝説の戦士】って奴だろう。確か、パステルピンクといったか。少女趣味な服を着てはいたが、とても乱暴な奴だったぜ」
レドは思い出してきたのか、とても苛立っている様子だ。ところが、他の三人は「お前が言うのか」という冷ややかな目で見ていた。火に油を注ぐ事になるし、面倒事になるだけなので口には出さなかったが。
そして、言うだけ言ったレドは乱暴に立ち上がった。
「俺のモノトーンをあっさりと葬り去ってくれやがって。……この俺に退くという選択肢を取らせやがって!」
そう言い放ったレドは、大きな足音を立てながら部屋の出入口へと歩き始めた。
「今度会った時は、必ずやあの死にぞこないともども、俺の一撃で真っ赤に染め上げてやる!」
がはははは、という笑い声をレドは響き渡らせて歩いていった。失態を取らされた恨みを晴らすべく、その怒りを拳に込めて、いつも以上に闘志を燃やしていた。他の三人はその様子を黙って見送った。
レドが部屋から出ていってしばらくすると、三人はようやく落ち着きを取り戻す。
「さて、どう思うのかしら、グーリ」
「どうもこうも、パステルピンクというのが出てきたという情報だけじゃ。しばらくの間は様子見じゃな。死にぞこないどもが他にも居るかも知れんし、伝説の戦士が一人出てきたのなら、他にも誕生している可能性がないとも言えん」
グーリと呼ばれたのは、緑色の老人のようである。他の面々に比べると背が格段に低い。そして、落ち着いていて頭もよいようだ。
このグーリの意見には、イエーロとブルーエも賛成のようである。どうやら慎重派のようだ。
「表立った行動はあの単細胞に任せておけばよかろう。あいつが派手に動いてくれれば動くほど、わしらは裏で動きやすくなるからの」
「そうね。死にぞこないがあの辺りに出たのなら、他の連中が居たとしても似たような範囲に居るでしょうね」
ブルーエはグーリの方針に同意する。イエーロも反対の様子はないので、四人の当面の行動が決まったようである。
「あらあらまあまあ、なかなか楽しくなってきたじゃな~い。この私が~、残りの死にぞこないちゃんたちを見つけて~、ぜ~んぶ始末してあ・げ・るっ♪」
「イエーロ、頼むからやめて。吐き気がするわ」
「あら~、ブルーエったら、い・け・ず、ね~?」
イエーロとブルーエが喧しく叫ぶ中、グーリは我関せずと次の作戦を練り始めた。
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