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第68話 予想外な結末
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吹き荒れる猛吹雪の中、視界を奪われてグーリは珍しく焦っていた。
「ぐぬぅ、何も見えぬぞ。何だこの異様な現象は!」
どうやらグーリは吹雪が理解できないのか、その場から動けずにいた。しかし、パステルシアンからコピーした反射技のおかげで吹雪の直撃は免れている。
ところが、パステルパープルのこの技は反射技で跳ね返せていない。その事がなおの事、グーリを混乱させているのである。
そのグーリに対して、こっそりと近付く影があった。本来ならグーリに近付く事など不可能なはずなのだが、パステルパープルの起こした吹雪のおかげでそれが可能だったのだ。
「えーいっ!」
突如として聞こえた声にグーリは反応したのだが、すでに遅かった。パンッという弾ける音がしたかと思えば、容赦ない吹雪がグーリを襲ったのだ。そう、反射技が重なり合って技を相殺したのだ。
「ぐぬおぉっ!!」
必死にグーリはその場から動いて、吹雪の範囲外に出ようとする。だが、この隙を見逃すほどに状況は甘くはなかった。
「おりゃっ!」
パステルピンクが、吹雪でボロボロになったグーリに蹴りをお見舞いする。
「ぐぬぁっ!」
さすがにこの攻撃も躱すに至らず、まともに食らってしまったグーリ。モノトーン四天王のリーダーは情けなく地面に倒れてしまった。
「ぐぬぬ……、こ、こんなはずでは……っ!」
グーリが悔しそうな表情を浮かべている。
「マジェ、大丈夫ですかしら?」
「あ、ありがとう。まったく、このじじいったら油断も隙もありゃしないわ……」
パステルパープルがマジェを気遣うと、実に素直に礼を言ってきた。今までの態度からすれば不思議な感じである。
ボロボロになったグーリの前には、伝説の戦士が勢ぞろいしている。さすがにこの状況は、グーリにとって危機的な状況となっていた。
「くそっ! イエーロはどうしたっ!」
「あいつなら今は崖下よ。あの程度で死ぬような奴じゃないけれど、しばらくは戻って来れないでしょうね」
「お、おのれぇ……っ!」
パステルオレンジの答えに、グーリはいよいよ自分が追い詰められた事を実感している。その表情からはいつもの余裕の色が完全に消え失せていた。
「マゼンダ・ペンシル・ロケット!」
グーリにいつもの落ち着きが戻る前に、マジェは決着をつけるべく技を放つ。今のグーリならば、落ち着いて対処はできないはずだ。
「わしを、甘く見るでないぞっ!」
グーリはパステルシアンとマジェの合わせ技で再び防御を試みる。だが、今回はさすがに状況が違い過ぎた。
「グルーミング・フラワー・ガード!」
「オータム・リーフ・フラッド!」
マジェの技を最初に見せた事で、意識がそっちに向いている間に後ろに回ったパステルピンクとパステルオレンジが技を放つ。普段のグーリなら余裕で対処できるだろうが、今のグーリなら果たしてどうなるのか。
「なっ!」
答えは簡単、反射技で跳ね返ってきた。パステルピンクは予想しなかった事だが、パステルオレンジは問題なく対処していた。
「何だってんだよ、グルーミング・フラワー・ガード!」
パステルピンクは文句を言いながら、自分の技を自分の技で見事相殺していた。だが、この不意打ちは確実にグーリを追い込んでいた。パステルシアンの反射技は本人が3~4回なのに対し、グーリのコピー技は2回なのだ。当然ながら、二人の不意打ちで解除されてしまっているし、そこに間髪入れずにマジェの色鉛筆が襲い掛かる。グーリには躱す余裕などなかった。
「ぐわあああぁぁぁっ!!」
6本は相殺できたマジェの技だが、残りの6本をその身に受けたグーリは、派手に吹き飛んでその場に倒れた。
「みんな、今よっ!」
マジェが叫ぶ。
「輝け、ぬくもりの色よ! 舞え、春風に乗せて! スプリング・カラフル・ストーム!」
「降り注げ、浄化の雨! パステル・サマー・スコール!」
「悪しき心を塗り替える! パステル・オータム・ペイントレイ!」
「冬の静寂に安らかに眠れ、ウィンター・アメジスト・コフィン!」
その声に応えた四人が、一斉に浄化技を放つ。今のグーリにはとても躱せる余裕などなかった。
「もはやこれまで! わし一人ではやられぬぞ!」
グーリは逃げ戻っても後がないと悟ったのか、破れかぶれで巻き添えを試みる。
「あらやあねぇ、醜いったらありゃしないわ~」
「その声はイエーロ!」
不意に聞こえた声に、グーリの意識が向く。
「もう私たちは終わりよ、おとなしく退場しなさ~い」
その声とともに、グーリにイエーロのマジックが突き刺さる。
「ぐはっ!」
グーリは膝をつき、口から緑色の液体を流しながら、声の聞こえた方を睨み付ける。
「お前まで……、お前まで、モノトーンを裏切るつもりか! 答えろ、イエーロ!」
だが、その答えを待つ間もなく、四人の浄化技がグーリを襲う。
「こんな……こんな最期などあるものか! モ、モノトーンに栄光あれっ!」
浄化技をまともに食らったグーリは、緑色の塊となり、さぁっと崩れ去って消えたのだった。
「ふふん、やーっと口うるさいじじいが消えたわねぇ」
その様子を離れた場所から見ている者が居た。他でもない崖から落ちたはずのイエーロだった。
「正直、今の私じゃ、もうあいつらに敵わないかも知れないしねぇ。モノトーンにも戻れないでしょうし、身の振り方を改めて考えるべきねぇ」
「おっと、逃がしゃしねえぜ、イエーロさんよぉ」
くるりとイエーロが振り返ると、そこにはワイスが居た。
「あらぁ? 死に損ないさんが何の用かしら?」
「じきにここにみんながやって来る。逃げ切れると思うなよ?」
「あらやだ、脅しなの? 怖いわねぇ」
ワイスが睨み付けると、イエーロは困ったような顔をする。
「はあ、私だってモノトーンには戻れないでしょうからねぇ。そうねえ、あなたたちにやられるくらいなら、生き延びる方を選ぶわ。……今ならぁ、マジェの気持ちも分かる気がするわ~」
イエーロの物言いに、ワイスは正直絶句した。まさか自分たちの国を滅ぼした相手が、こんな事を言うとは思ってみなかったからだ。
「……そうだな、俺っちたちと戦わないっていうなら、働き口くらい聞いてやってもいいぜ」
「いいわね、それ。乗ったわ」
パステルピンクたちが居ない中、イエーロとワイスの間で妙な取引が成立するのであった。
「ぐぬぅ、何も見えぬぞ。何だこの異様な現象は!」
どうやらグーリは吹雪が理解できないのか、その場から動けずにいた。しかし、パステルシアンからコピーした反射技のおかげで吹雪の直撃は免れている。
ところが、パステルパープルのこの技は反射技で跳ね返せていない。その事がなおの事、グーリを混乱させているのである。
そのグーリに対して、こっそりと近付く影があった。本来ならグーリに近付く事など不可能なはずなのだが、パステルパープルの起こした吹雪のおかげでそれが可能だったのだ。
「えーいっ!」
突如として聞こえた声にグーリは反応したのだが、すでに遅かった。パンッという弾ける音がしたかと思えば、容赦ない吹雪がグーリを襲ったのだ。そう、反射技が重なり合って技を相殺したのだ。
「ぐぬおぉっ!!」
必死にグーリはその場から動いて、吹雪の範囲外に出ようとする。だが、この隙を見逃すほどに状況は甘くはなかった。
「おりゃっ!」
パステルピンクが、吹雪でボロボロになったグーリに蹴りをお見舞いする。
「ぐぬぁっ!」
さすがにこの攻撃も躱すに至らず、まともに食らってしまったグーリ。モノトーン四天王のリーダーは情けなく地面に倒れてしまった。
「ぐぬぬ……、こ、こんなはずでは……っ!」
グーリが悔しそうな表情を浮かべている。
「マジェ、大丈夫ですかしら?」
「あ、ありがとう。まったく、このじじいったら油断も隙もありゃしないわ……」
パステルパープルがマジェを気遣うと、実に素直に礼を言ってきた。今までの態度からすれば不思議な感じである。
ボロボロになったグーリの前には、伝説の戦士が勢ぞろいしている。さすがにこの状況は、グーリにとって危機的な状況となっていた。
「くそっ! イエーロはどうしたっ!」
「あいつなら今は崖下よ。あの程度で死ぬような奴じゃないけれど、しばらくは戻って来れないでしょうね」
「お、おのれぇ……っ!」
パステルオレンジの答えに、グーリはいよいよ自分が追い詰められた事を実感している。その表情からはいつもの余裕の色が完全に消え失せていた。
「マゼンダ・ペンシル・ロケット!」
グーリにいつもの落ち着きが戻る前に、マジェは決着をつけるべく技を放つ。今のグーリならば、落ち着いて対処はできないはずだ。
「わしを、甘く見るでないぞっ!」
グーリはパステルシアンとマジェの合わせ技で再び防御を試みる。だが、今回はさすがに状況が違い過ぎた。
「グルーミング・フラワー・ガード!」
「オータム・リーフ・フラッド!」
マジェの技を最初に見せた事で、意識がそっちに向いている間に後ろに回ったパステルピンクとパステルオレンジが技を放つ。普段のグーリなら余裕で対処できるだろうが、今のグーリなら果たしてどうなるのか。
「なっ!」
答えは簡単、反射技で跳ね返ってきた。パステルピンクは予想しなかった事だが、パステルオレンジは問題なく対処していた。
「何だってんだよ、グルーミング・フラワー・ガード!」
パステルピンクは文句を言いながら、自分の技を自分の技で見事相殺していた。だが、この不意打ちは確実にグーリを追い込んでいた。パステルシアンの反射技は本人が3~4回なのに対し、グーリのコピー技は2回なのだ。当然ながら、二人の不意打ちで解除されてしまっているし、そこに間髪入れずにマジェの色鉛筆が襲い掛かる。グーリには躱す余裕などなかった。
「ぐわあああぁぁぁっ!!」
6本は相殺できたマジェの技だが、残りの6本をその身に受けたグーリは、派手に吹き飛んでその場に倒れた。
「みんな、今よっ!」
マジェが叫ぶ。
「輝け、ぬくもりの色よ! 舞え、春風に乗せて! スプリング・カラフル・ストーム!」
「降り注げ、浄化の雨! パステル・サマー・スコール!」
「悪しき心を塗り替える! パステル・オータム・ペイントレイ!」
「冬の静寂に安らかに眠れ、ウィンター・アメジスト・コフィン!」
その声に応えた四人が、一斉に浄化技を放つ。今のグーリにはとても躱せる余裕などなかった。
「もはやこれまで! わし一人ではやられぬぞ!」
グーリは逃げ戻っても後がないと悟ったのか、破れかぶれで巻き添えを試みる。
「あらやあねぇ、醜いったらありゃしないわ~」
「その声はイエーロ!」
不意に聞こえた声に、グーリの意識が向く。
「もう私たちは終わりよ、おとなしく退場しなさ~い」
その声とともに、グーリにイエーロのマジックが突き刺さる。
「ぐはっ!」
グーリは膝をつき、口から緑色の液体を流しながら、声の聞こえた方を睨み付ける。
「お前まで……、お前まで、モノトーンを裏切るつもりか! 答えろ、イエーロ!」
だが、その答えを待つ間もなく、四人の浄化技がグーリを襲う。
「こんな……こんな最期などあるものか! モ、モノトーンに栄光あれっ!」
浄化技をまともに食らったグーリは、緑色の塊となり、さぁっと崩れ去って消えたのだった。
「ふふん、やーっと口うるさいじじいが消えたわねぇ」
その様子を離れた場所から見ている者が居た。他でもない崖から落ちたはずのイエーロだった。
「正直、今の私じゃ、もうあいつらに敵わないかも知れないしねぇ。モノトーンにも戻れないでしょうし、身の振り方を改めて考えるべきねぇ」
「おっと、逃がしゃしねえぜ、イエーロさんよぉ」
くるりとイエーロが振り返ると、そこにはワイスが居た。
「あらぁ? 死に損ないさんが何の用かしら?」
「じきにここにみんながやって来る。逃げ切れると思うなよ?」
「あらやだ、脅しなの? 怖いわねぇ」
ワイスが睨み付けると、イエーロは困ったような顔をする。
「はあ、私だってモノトーンには戻れないでしょうからねぇ。そうねえ、あなたたちにやられるくらいなら、生き延びる方を選ぶわ。……今ならぁ、マジェの気持ちも分かる気がするわ~」
イエーロの物言いに、ワイスは正直絶句した。まさか自分たちの国を滅ぼした相手が、こんな事を言うとは思ってみなかったからだ。
「……そうだな、俺っちたちと戦わないっていうなら、働き口くらい聞いてやってもいいぜ」
「いいわね、それ。乗ったわ」
パステルピンクたちが居ない中、イエーロとワイスの間で妙な取引が成立するのであった。
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