マジカル☆パステル

未羊

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第70話 なんで居るわけ?

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「な、なんでこいつがここに居るんだよぉっ!」
 モノトーン四天王との戦いが終わってから一週間後、雪路の家に招かれた千春たちは、予想外の人物が居た事で大声を上げていた。
「あらぁ、失礼ね~。私だって死にたくないから、こうして雪路お嬢様の執事になったのよ~?」
 そう、イエーロだった。全身黄色で何かと目に痛かったイエーロも、うまく人間に化けているようだった。金髪金眼という目立つ容姿ではあるが。
「そうですわね。ワイスが連れて帰ってきた時には驚きましたけれど、別に危害を加えようという様子はありませんでしたので、私の側に置いて監視する事にしましたの。ちなみに今までの私の執事や侍女もそのままの配置ですわ」
 雪路はもうあまり気にしていないようである。
「驚いたわ、イエーロ。あんたがそういう判断をするなんて、空からマジックでも降ってくるのかしら……」
「失礼ね~、マジェったらぁ。あなたが生き延びようとして、私たちの所に潜り込んだ真似をさせてもらっただけよ。モノトーンに戻ったところで~、三傑も戻っているでしょうから、私は始末されるだけだもの~」
 イエーロは身震いをしていた。モノトーンの連中でも死ぬのは嫌なようである。
「それに、どのみちグーリの奴に捨て駒にされたでしょうしね~。だから、こっちから見捨ててやったわ」
「じゃあ、最後にグーリに大きな隙ができたのって……」
「そう、私が手を加えってやったのよぉ。ちなみにあの程度の高さじゃあ、私に傷ひとつ付けられないし、上がってくるのも本当にすぐよ?」
 イエーロは杏を指しながら、種明かしをしていた。
「はぁ、生への執念って本当にすごいわね」
 美空は呆然とした感じで呟いた。
「にしても、全身黄色で直視しにくかったから気付かなかったけど、お前ってすげえ筋肉だったんだな。執事服が張り裂けそうになってるぜ」
 千春がイエーロの体をまじまじと見ている。さすがにサッカーというスポーツをしているだけあって、筋肉には興味があるようだ。
「あらぁ、この肉体美が分かるかしらぁ? 鍛えてあげてもいいのよ? 散々おかまって言ってくれたから、特別に鍛えてあげるわよぉ」
「うげっ、根に持ってんのかよ……」
 イエーロの不敵な笑みに、千春はものすごく引いた。そりゃまあ、あれだけ怒っていたのだから、根に持って当然と言えよう。千春は遠慮したかった。
「だめよ、千春。鍛えてもらいましょう」
「お、おい、美空。……本気か?」
 ところが、美空が異様に強く迫ってきて、千春はちょっとたじろいだ。
「だって、私と千春はまだまだ弱いのよ? これからモノトーン三傑が来るっていうのに、現状のままじゃますます足を引っ張るだけだわ」
「ぐぬぬぬ……、それもそうだな」
 美空の押しに、千春は折れた。
「うふふふ、それは面白そうですわね。ですが、本日はあくまでも顔合わせのみですわ。お互いにまだ信用できる状態ではございませんもの」
 ところが、雪路が割り込んで今日のところはお流れになった。それを聞いて千春はほっとひと安心していた。
「それでイエーロ、モノトーン三傑についてお聞かせ願えるかしら?」
 雪路から話を振られると、イエーロは少し震えた。
「モ、モノトーン三傑について、ですか……」
 今まで三傑の名前をさらりと出していたのに、本体を語ろうとすると急に体を強張らせている。あれだけパステルピンク、パステルシアン、パステルオレンジを苦しめてきたイエーロですら恐れるモノトーン三傑とは、一体どんな奴らなのだろうか。
「そ、そうねぇ……。はっきり言って、私も足元にも及ばない連中ね。三傑の名前は黒色のブラーク、灰色のグーレイ、白色のシイロ。奴らの誰もが一人だけで、私たちモノトーン四天王を余裕で全員相手にできるくらいの実力の持ち主なの」
「四天王が赤、青、黄、緑で三傑は白、黒、灰の三色か。モノトーンらしい色の構成だな」
 イエーロが一生懸命説明しているのに、千春の何とも空気を読まない発言である。
「いったっ!」
 千春が声を上げる。その隣では美空が睨むように千春を見ていた。どうやら太ももをつねったらしい。
「黙って聞きなさいよ、千春」
「は、はい……」
「こほん、続きをお願いします」
 痛がる千春を横目に、美空はイエーロに続きを促した。
「今回、三傑が呼び戻された理由はあなたたちのせいね。私たちが一つの世界を滅ぼせずに手間取っているものだから、ダクネース様が苛立って呼び戻したのよ」
 文句の一つも言いたい杏と楓は我慢をして聞いている。
「でも、三傑はモノトーンではダクネース様に次ぐ実力の持ち主よ」
「つまり、モノトーン三傑を倒せば、親玉を引っ張り出せるって事か」
「そういう事ね。でも~、今のあなたたちじゃ、単独相手でもどこまで善戦できるかってところねぇ」
 イエーロがこう言うと、全員黙り込んだ。
「それだけじゃないわよ。私たち四天王と同様に、モノトーンを召喚する事ができるわ。しかもブルーエのように2体召喚も当たり前よ。全力で潰しに来られると、まず勝ち目どころか、一瞬で勝負が決まりかねないわ」
 もはや言葉を失う千春たち。モノトーン三傑とは、相当に規格外の連中のようである。
「だがよ、策がねえってわけじゃねえぜ」
「ワイス」
 そこへ現れたのは、ワイスとチェリーとグローリだった。聖獣たちも聖獣たちで話をしていたようである。
「なあ、イエーロさんよ」
「あら、何かしら~?」
「お前さんも、雪路たちを鍛えるのを手伝ってくれ」
「それならOKよぉ。私だって死にたくないもの~」
 イエーロからの返事を聞いてにやりと笑うワイス。みんながイエーロの返事に驚いている中、楓だけがそのワイスの表情に気が付いていた。
(まったく、ワイスは何を考えているというの?)
 一番ワイスとつながっているはずの楓の中に、ワイスへの疑念が生まれていたのだった。
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