マジカル☆パステル

未羊

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第86話 慢心

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「さあ行くぞ、伝説の戦士どもよ!」
 グーレイがパステルピンクとパステルシアンに襲い掛かる。
「くっ、速い!」
 初撃はなんとか躱すパステルピンク。だが、
「モノ、トーンッ!」
 道路工事で置かれていたパイロンが変化した化け物が、続けざまに襲い掛かってくる。さすがに躱した直後でパステルピンクには隙がある。このままでは避けられない。
「弾ける海の息吹、注げ! パステル・オーシャン・シャワー!」
「モノォッ?!」
 だが、間一髪パステルシアンが妨害する。これによって化け物が怯む。
「心地よい春の調べよ、かの者を眠りへと誘え、スリーピング・ウォーム!」
 そして、すぐさまパステルピンクが久しぶりの技を使う。相手を眠らせる補助技である。さすがにグーレイのあの動きを見せられたのでは、2対2ではまず勝ち目はない。なので一体はご退場願いたいのだ。
「モノォ……、モー、ノー……」
 眠り攻撃をまともに食らった化け物は、ものすごい勢いで眠りに就いた。
「降り注げ、浄化の雨! パステル・サマー・スコール!」
 そこへすぐさま、パステルシアンが浄化技を放つ。
「モー、ノー、トー……ン」
 化け物は眠りながらも無事に浄化されてしまった。
 どうにか無事に化け物を倒したパステルピンクとパステルシアンだったが、振り返るとグーレイの姿がどこにもなかったのだ。逃げたのなら解けているはずのモノトーンの空間が残っている。つまり、どこかにまだグーレイは居るはずなのである。忍者型の敵から目を離したのはさすがに悪手だった。
「パステルシアン、俺から離れるなよ」
「え、ええ」
 そういった次の瞬間だった。かすかに何かが聞こえたパステルピンクが反応する。
「ちっ、危ねえ!」
 そう叫んでパステルシアンを庇うように動くパステルピンク。
「ぐっ!」
 すると、パステルピンクの背中を何かがかすめたのだ。
「パステルピンク?!」
「くっそ、姿を隠してからの飛び道具かよ。さすが忍者は汚いな」
 パステルピンクは痛みに耐えながら、何かが飛んできた方向を見る。
「ほお、今のをかすり傷で済ませるか。風穴を開けるつもりだったが、意外とやるようだな」
 どこからともグーレイの声が聞こえてくる。
「だが、その手負いで次は躱せるかな? チャコール・ピアッシング!」
「なめんじゃねぇっ!」
 グーレイの攻撃に、パステルピンクの感情が爆発する。
「グルーミング・フラワー・ガード!」
 もう一度防御技の植物の蔓を張り巡らす。
「ふっ、そんなやわな蔓で何ができようぞ。その程度、我の木炭の針の前には無力なり!」
 あざ笑うグーレイの声が聞こえるが、パステルピンクは険しい表情を崩さなかった。
「甘く見るなって、言ってんだよっ!」
 パステルピンクが叫ぶと、その体が光り輝き始めた。
「あれは……っ!」
 その姿を見たチェリーが叫ぶ。
「初めて見たわ……、あれが伝説の戦士の覚醒……」
 グローリも感動に打ち震えている。
 二体の目の前で、パステルピンクの放った植物の蔓が変化を見せる。蔓が盾へと変化して、二人の周りを取り囲んだのだ。
「ふっ、盾になったからなんだというのだ。隙間だらけぞっ!」
 グーレイの声が聞こえて、さらに攻撃が放たれる。だが、その攻撃が二人に届く事はなかった。カランカランと音を立てて、すべての攻撃を防ぎ切ったのだ。
「無駄だ。今のお前の攻撃は俺たちには届かない!」
 パステルピンクが言い切ると、グーレイが姿を見せる。
「くっ、少し甘く見ていたようだな。だが、その強がりがいつまで続くかな!?」
 グーレイは木炭の刀を取り出して、パステルピンクたちに斬り掛かる。だが、斬り掛かる攻撃には、パステルシアンの反射が有効のようだった。
 今度はパステルシアンが逆にパステルピンクを庇うと、斬り掛かった衝撃を跳ね返されてグーレイが軽く後ろへと吹き飛んだ。
「くっ、これまた面妖な能力よな。だが、今の受けた感じ、相手の攻撃を跳ね返すもののようだな」
 さすがはモノトーン三傑。目の前で一撃跳ね返されてその能力を悟ったようだ。
「だが、それも何度も続くまい。我が刀術をどこまで耐えられるか、試してみようではないか!」
「そうはいくかっ!」
 グーレイが木炭の太刀を構えると、パステルピンクがそれを阻止すべく動く。
「スリーピング・ウォーム!」
 危険を承知でグーレイの目の前に飛び込むと、至近距離で眠り攻撃を使ったのだ。距離があっては通じないと見たパステルピンクによる決死の作戦だった。
「ぐ……ぬ……」
 だが、それが正解だったようだ。ほぼ0距離で眠り攻撃を受けたグーレイは、その構えを崩しかけていた。
「この、程度っ!」
 グーレイもさすがに三傑の意地がある。眠りに意識が落ちかける中、パステルピンクへと斬り掛かろうとしている。しかし、その一撃もあえなく失敗に終わる。
「させないわっ!」
 パステルシアンも飛び込んできたのだ。それを見たグーレイは攻撃をやめて、後方へと飛び下がった。
「う……、我とした事が、油断したか……」
 弱者と見ていたパステルピンクとパステルシアンの思わぬ攻撃に、グーレイはショックを隠し切れないようだった。そして、自分に向けて木炭の針を突き刺した。
「ぐぬぅっ!」
 これで目を覚ましたグーレイだったが、思わぬ苦戦に、
「今日のところはこのくらいで勘弁しておく。次はこのようにはいかぬぞ!」
 捨て台詞を吐いて姿を消したのだった。
 モノトーン三傑相手に、パステルピンクとパステルシアンは無事に勝利を収めたのであった。
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