マジカル☆パステル

未羊

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第122話 三傑決戦・その5

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「あたいは秋を司る実りの聖獣メルプ。どう、驚いたかしら?」
 まさかの聖獣の姿に戻るパステルブラウン。ただ、それは戦闘能力の低下を意味している。回避のための変身だったが、これではブラークに有効な攻撃を仕掛けられない。しかし、パステルパペットは召喚できたままなので、完全に能力が低下するというわけではないようだった。
「はっ、まさか聖獣が伝説の戦士になっているとはな! どうりで数が合わんはずだよ」
 ブラークは驚いているものの、まだ余裕の表情である。
「さあ、その姿で我の攻撃にどこまで耐えられるかな?」
 そう叫んだブラークは、毛筆を振るってメルプに襲い掛かってくる。
「甘く見ないでちょうだい!」
 聖獣の姿なれど、メルプは華麗にその攻撃を躱していく。
「パステル・ペンシル!」
 メルプの姿のまま、パステルブラウンの武器である色鉛筆を召喚するメルプ。この辺りもしっかりと特訓済みのため、聖獣のままでも伝説の戦士の力を使えるようになっていた。パシモよりも数段能力が高いメルプなのである。
「パステル・ペンシル・ロケット!」
 そのまま、色鉛筆で攻撃をするメルプ。だが、人間形態よりはさすがに威力が劣るようだ。通常なら12本扱えるはずなのに、今は8本しかなかった。これが聖獣と伝説の戦士との差なのだろう。だが、それでも今は十分だった。
「ぬるいわっ!」
 しかし、相手も相手だ。ブラークは毛筆を振るって色鉛筆を振り落としていく。大振りで動きが遅いのだが、それでも一撃が強力なのである。あっという間に色鉛筆8本を叩き割ってしまった。
「はっ、どうだ。三傑の力を思い知ったか!」
 ブラークがメルプの居る方を見るが、そこには誰も居なかった。
「ぬ、どこへ行った?」
 そう、あくまでも自分から注意を逸らすための攻撃だったのである。ブラークはそのメルプの作戦に、見事嵌まってしまったのだった。
「おのれ、逃げ出したか!」
「誰が、逃げ出すですって?」
 周りを見回すブラーク。すると、どこからともなくメルプの声が聞こえてきた。
「あんたのその尊大な性格を利用させてもらったわ。覚悟なさい!」
「ぬぅ?!」
 パステルブラウンの声が響き渡る。その声にブラークが反応した時、目の前にメルプから姿を戻したパステルブラウンが現れた。
「パステル・フォール・インパクト!」
 パステルブラウンはそう叫ぶと、手に持つレイピアを振り上げて跳び上がり、上空から連続突きをブラークへと浴びせた。
「ぬおおおっ!!?」
 上空から放たれる高速の連続突きは、ブラークの体をかすめていく。それは秋の長雨のように長くブラークへと降り注いだ。
「ぐぬぬぬぬ……、なめるなぁっ!」
 だが、さすがのブラークも直撃を避けているのでダメージはそう大きくはなかった。そして、攻撃が軽い事を見抜くと、パステルブラウンへと攻撃を定める。
「この程度の攻撃など、効かぬわぁっ!!」
 ブラークは毛筆を抱えて、上空のパステルブラウン目がけて跳び上がった。
「ぬおおっ、我の愚弄もそこまでだ、死ねいっ!」
 明確な殺意を持ってパステルブラウンへと襲い掛かるブラーク。だが、明らかに不意打ちが効いたのだろう、ブラークは冷静さを欠いていた。
 ブラークの攻撃が到達する前に、パステルブラウンは次の手を打つ。
「パステル・リーフ・フラッド!」
 紅葉の葉っぱの洪水を起こすパステルブラウン。これによってブラークの視界を奪う。
「ぬるいわっ!」
 ブラークは毛筆を振るって葉っぱを切り裂く。しかし、そこにはパステルブラウンの姿はなかった。そう、これはただの目くらましだったのだ。
「おのれっ! どこへ行った。姿を見せろ!」
 ブラークは再び辺りを見回すが、パステルブラウンの姿はどこにもなかった。
「パステル・フォール・インパクト!」
 その声が聞こえて、ブラークは声の方向を向く。だが、さすがに今度の攻撃を躱す事はできなかった。なにせ、振り向くと同時にパステルブラウンの放った無数の突きが襲い掛かって来たのだから。
「ぐおおおおっ!」
 もろに食らってしまったブラークは、ふらつきながら、ついにはそのまま地面へと落下してしまった。相当にダメージを受けたようである。
 地面に落ちたブラークの隣に、レイピアを構えたパステルブラウンが現れる。
「ぐ……ぬ……、見事だ」
 すると、ブラークはパステルブラウンに視線を向けて、そうとだけ呟いた。
「正直、卑怯かとは思ったけど、悪いわね」
「勝つために持てる力を有効に使ったのだ、後悔する事はない。このブラーク、満足な戦いだったぞ……」
 パステルブラウンは、ちょっと後悔したような事を言っているが、ブラークはそれを含めてパステルブラウンを褒めた。
「……さすがに我はもう動けぬ。さあ、やるならひと思いに、やってくれ……」
 ブラークは実に満足そうに微笑んでいた。パステル王国にたまった負の感情の塊とは思えぬ、すがすがしい笑顔だった。
「ふっ、そんな顔をするな。このまま放っておけば、また我はお前たちに容赦なく牙を剥く。我の気が……穏やかになうちに、とどめを刺すのだ……」
「……そうね。いい戦いだったわ」
「うむ。我も、満足だ」
 パステルブラウンとブラークは、互いに微笑み合う。
「重なる色、実りを彩れっ! パステル・フォール・カラーリング!」
 そして、パステルブラウンの浄化技がこだましたのだった。
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