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第151話 予想外の正体
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黒いもやが収束して立っていた人物に、シイロが驚きの表情を浮かべている。それもそうだろう。だってそれは……。
「お、お母さん?」
そう、シイロの母親プリムだった。
「ふふっ、久しぶりね。我が娘」
「う、嘘よ。お母さんは病気で死んだのよ? こんな所に居るわけが……」
立ち尽くすシイロの顔が青ざめている。だが、目の前に立つ人物は、見れば見るほどシイロの母親そっくりなのである。
「ええ、確かに私は死んだわ。でも、不思議な力でこうやって蘇ったのよ。そして、その力に導かれて、このような素晴らしい力を手に入れたの」
妖麗に笑うプリムだが、その姿にシイロは完全に怯えている。
「そ、それじゃ、あの日私が追いかけていった怪しい人物って……」
「そう、私。蘇らせてくれたお礼に、ダクネースの意思を解き放ったのよ」
剣に手を掛けて構えた状態のシイロ。そのシイロが放った疑問に、プリムはすんなりと答えていた。悪びれないその態度に、シイロはぎりっと唇を噛む。
「おのれっ! パステル王国を滅ぼしただけではなく、レイン様まで石化させておいてっ!」
次の瞬間、シイロはプリムに斬り掛かっていた。
「あらやだ。私はそんな子に育てた覚えはないんだけどね……」
「かはっ!」
プリムが展開した暗黒の気に、シイロはあえなく跳ね返されてしまった。それでもシイロは歯を食いしばって立ち上がる。
「本当に何も教えなかったとはいえ、無知よね。私たちにあの生活を強いたのが一体誰なのか。今だからこそ教えてあげる」
プリムは憂いを含んだ表情を一瞬だけ浮かべると、鋭い目つきでシイロへと振り向いた。
「私たちがあんな生活になったのは、チュナラのせいよ。そして、パステル王国の女王レインは、私の娘であり、あなたの双子の姉なのよ!」
プリムは衝撃の真実をこの場で叩きつけてきた。
「あの男は、私に妊娠させ出産させた事を隠すために、私を城へは迎え入れず、しかも子どもの片方だけを城へと連れて帰った。時々来てはくれていたけれど、それでもうわべだけの優しさだったわ」
プリムは鬼の形相で恨みつらみの数々をぶちまけている。それはもう、ダクネースに付け入られても仕方のない状況だったのだ。死して地面に埋められた時に、ダクネースは彼女の溜まった闇へと接触したという事のようだった。
「パステル王国では負の感情はすぐに城の地下に送られる仕組みになっていたが、どうやらあいつの感情は、その限度を超えていたって事だな。まぁ、境遇に対しては同情せざるを得ないがな」
話を聞いていたワイスはそのように分析する。
「そうね、子を成しながらもその子の一人は引き離され、自分の待遇は悪いままだもの。恨むなという方が無理なはずよね」
グローリもそんな事を言っている。
「同情はするけれど、復讐にしてはやり過ぎた感じかしらね」
パステルブラウンがサーベルを構える。
「ふん、チュナラの奴が死んでいたのが悪いのよ。だからこそ、すべてを滅ぼす事でしか、私の気は晴らせなかった。恨むなら、チュナラを恨むのね!」
プリムは大きな声で叫んでいた。
「あー、つまりはあれか。確かに境遇は同情するところだけれど、いわゆる夫婦喧嘩ってところか?」
パステルピンクがよく分からないにもそんな感想を呟いていた。
「今でこそほぼなくなりましたが、王侯貴族の時代ならよくある話ですわね。醜聞を隠すために夫婦別居とか。まったく、これでは後で住職を問い詰めなければなりませんわね」
パステルパープルもあまりの話に呆れ返っているようである。
全員の動きが止まる中、シイロは剣を静かに構えてプリムを見た。
「お母さんの話は分かったわ。でも、今の私は女王の護衛騎士。いくらお母さんとはいえども、これ以上の害をなすというのであるなら敵対しなければならないわ!」
そう宣言すると、シイロはプリムへと斬り掛かった。
「そう、あくまでもあの男の味方をするっていうわけね」
プリムは目をつぶると、右手をゆらりと前に突き出す。
「だったら娘といえど、容赦はしないわ! すべてを黒に染めてあげるわ!」
「ふん、我の力を存分に味わえ」
プリムの目が怪しく光ったかと思うと、その後ろに再びダクネースが姿を現した。
「ダクネース・バレット・レイン!」
走ってくるシイロに向けて、プリムとダクネースから漆黒の弾丸が大量に飛んでくる。シイロはそれを弾き飛ばしながら近付いていくが、あまりの弾幕にどうしても近付き切れなかった。
「くそっ!」
仕方なく、シイロは一度引いて距離を取る。
「お母さん! 終わった後にあの男には謝罪でも何でもさせてやるから、ダクネースとは手を切ってくれ!」
シイロが叫ぶが、その言葉はプリムに届く事はなかった。
「ふん、この期に及んで命乞い? 本当に愚かしい事だわ。あれだけの仕打ちを受けておいて、あの男の味方をするだなんて……」
吐き捨てると同時にプリムは両手を高く掲げる。よく見ると後ろのダクネースも同じように両手を掲げていた。……嫌な予感しかしない。
「もう遅いのよ。すべて消え去ってしまいなさい。あの男も、あなたたちも、世界もすべてっ!」
プリムがそう叫ぶと同時に、その手から暗黒のオーラが放たれたのだった。
「お、お母さん?」
そう、シイロの母親プリムだった。
「ふふっ、久しぶりね。我が娘」
「う、嘘よ。お母さんは病気で死んだのよ? こんな所に居るわけが……」
立ち尽くすシイロの顔が青ざめている。だが、目の前に立つ人物は、見れば見るほどシイロの母親そっくりなのである。
「ええ、確かに私は死んだわ。でも、不思議な力でこうやって蘇ったのよ。そして、その力に導かれて、このような素晴らしい力を手に入れたの」
妖麗に笑うプリムだが、その姿にシイロは完全に怯えている。
「そ、それじゃ、あの日私が追いかけていった怪しい人物って……」
「そう、私。蘇らせてくれたお礼に、ダクネースの意思を解き放ったのよ」
剣に手を掛けて構えた状態のシイロ。そのシイロが放った疑問に、プリムはすんなりと答えていた。悪びれないその態度に、シイロはぎりっと唇を噛む。
「おのれっ! パステル王国を滅ぼしただけではなく、レイン様まで石化させておいてっ!」
次の瞬間、シイロはプリムに斬り掛かっていた。
「あらやだ。私はそんな子に育てた覚えはないんだけどね……」
「かはっ!」
プリムが展開した暗黒の気に、シイロはあえなく跳ね返されてしまった。それでもシイロは歯を食いしばって立ち上がる。
「本当に何も教えなかったとはいえ、無知よね。私たちにあの生活を強いたのが一体誰なのか。今だからこそ教えてあげる」
プリムは憂いを含んだ表情を一瞬だけ浮かべると、鋭い目つきでシイロへと振り向いた。
「私たちがあんな生活になったのは、チュナラのせいよ。そして、パステル王国の女王レインは、私の娘であり、あなたの双子の姉なのよ!」
プリムは衝撃の真実をこの場で叩きつけてきた。
「あの男は、私に妊娠させ出産させた事を隠すために、私を城へは迎え入れず、しかも子どもの片方だけを城へと連れて帰った。時々来てはくれていたけれど、それでもうわべだけの優しさだったわ」
プリムは鬼の形相で恨みつらみの数々をぶちまけている。それはもう、ダクネースに付け入られても仕方のない状況だったのだ。死して地面に埋められた時に、ダクネースは彼女の溜まった闇へと接触したという事のようだった。
「パステル王国では負の感情はすぐに城の地下に送られる仕組みになっていたが、どうやらあいつの感情は、その限度を超えていたって事だな。まぁ、境遇に対しては同情せざるを得ないがな」
話を聞いていたワイスはそのように分析する。
「そうね、子を成しながらもその子の一人は引き離され、自分の待遇は悪いままだもの。恨むなという方が無理なはずよね」
グローリもそんな事を言っている。
「同情はするけれど、復讐にしてはやり過ぎた感じかしらね」
パステルブラウンがサーベルを構える。
「ふん、チュナラの奴が死んでいたのが悪いのよ。だからこそ、すべてを滅ぼす事でしか、私の気は晴らせなかった。恨むなら、チュナラを恨むのね!」
プリムは大きな声で叫んでいた。
「あー、つまりはあれか。確かに境遇は同情するところだけれど、いわゆる夫婦喧嘩ってところか?」
パステルピンクがよく分からないにもそんな感想を呟いていた。
「今でこそほぼなくなりましたが、王侯貴族の時代ならよくある話ですわね。醜聞を隠すために夫婦別居とか。まったく、これでは後で住職を問い詰めなければなりませんわね」
パステルパープルもあまりの話に呆れ返っているようである。
全員の動きが止まる中、シイロは剣を静かに構えてプリムを見た。
「お母さんの話は分かったわ。でも、今の私は女王の護衛騎士。いくらお母さんとはいえども、これ以上の害をなすというのであるなら敵対しなければならないわ!」
そう宣言すると、シイロはプリムへと斬り掛かった。
「そう、あくまでもあの男の味方をするっていうわけね」
プリムは目をつぶると、右手をゆらりと前に突き出す。
「だったら娘といえど、容赦はしないわ! すべてを黒に染めてあげるわ!」
「ふん、我の力を存分に味わえ」
プリムの目が怪しく光ったかと思うと、その後ろに再びダクネースが姿を現した。
「ダクネース・バレット・レイン!」
走ってくるシイロに向けて、プリムとダクネースから漆黒の弾丸が大量に飛んでくる。シイロはそれを弾き飛ばしながら近付いていくが、あまりの弾幕にどうしても近付き切れなかった。
「くそっ!」
仕方なく、シイロは一度引いて距離を取る。
「お母さん! 終わった後にあの男には謝罪でも何でもさせてやるから、ダクネースとは手を切ってくれ!」
シイロが叫ぶが、その言葉はプリムに届く事はなかった。
「ふん、この期に及んで命乞い? 本当に愚かしい事だわ。あれだけの仕打ちを受けておいて、あの男の味方をするだなんて……」
吐き捨てると同時にプリムは両手を高く掲げる。よく見ると後ろのダクネースも同じように両手を掲げていた。……嫌な予感しかしない。
「もう遅いのよ。すべて消え去ってしまいなさい。あの男も、あなたたちも、世界もすべてっ!」
プリムがそう叫ぶと同時に、その手から暗黒のオーラが放たれたのだった。
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