マジカル☆パステル

未羊

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第161話　抗う者たち

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　聖獣たちの結界に、ダクネースが必死に抗う。聖獣たちの渾身の力、しかも二人は伝説の戦士と化しているのに抑えきれていない。ダクネースの力がいかに強大かという事が分かる。
「くっそう、やっぱりシイロの時みたいにはいかねえかっ！」
　必死の形相を見せるワイス。サングラスで分かりにくいが、歯を食いしばっている。
「お前らごときに、この我を止められると、思うなあぁっ！！」
　聖獣たちの放った力が、ダクネースの必死の抵抗によって力の侵食を受け始める。立ち上る五色の光が、じわじわと少しずつどす黒く染まっていく。
「やべえ。ぼーっとしてる場合じゃねえ」
　パステルピンクたちはその状況に慌て始める。
「まったくですわね。ワイス、力を貸しましてよ！」
　パステルパープルが構えると。ダクネースへ向けて槍を向ける。
「汚れなき雪よ、穢れしものに静寂を、パステル・スノー・ピューリフィケーション！」
　シイロを救った時のように、聖獣の力に穿たれるダクネースに向けて、パステルパープルは浄化の技を放つ。
「ぐおおっ？！」
　己が意地を賭けて抗うダクネースが苦悶の声を上げる。だが、一人の力が加わった程度では、ダクネースを抑え込むには足りなかった。
「……６人がかりでもまだ動けますの？！」
　よく見ると、反撃を試みるかのように、ダクネースの腕が動いている。それを見たパステルピンクとパステルシアンも動く。
「輝け、ぬくもりの色よ！　舞え、春風に乗せて！　スプリング・カラフル・ストーム！」
「降り注げ、浄化の雨！　パステル・サマー・スコール！」
　ダクネースに反撃させまいと、二人も浄化技を放っていた。
「ぐおおおおっ！　おのれっ、我は、我はやっと自由になったのだ！　まだ……、まだ終わるわけには、いかぬのだあっ！」
　８人の力をその身に浴びようとも、ダクネースはまだ諦めていなかった。
「ここはモノトーン空間。我の、我の力があふれた場所……。さあ、我の手足となって、こやつらを……、滅ぼせぇっ！！」
　ダクネースが声を張り上げると、パステルピンクたちを取り囲むように、化け物たちがあふれ出した。
「必死だねぇ……。だけど、これで僕の力をこれ以上使うわけにはいかないよ。さてさて、どうしたものかな」
　フォシンズはゆったりとした風に喋っているが、内心はとても焦っていた。力を充填している最中だし、ここで使ってしまってはダクネースを浄化するだけの力を溜め直しとなってしまう。とはいえ、無視してダクネースを浄化しようとしても、まだ放てる段階ではない。ある意味選択を迫られている状態になってしまった。
「ここは、私が！」
　そこで動いたのがシイロだった。現女王の護衛騎士たるシイロ。闇に囚われてパステル王国に牙を剥いてしまった事を悔いているのだ。ここで役に立たねば、一生悔やむだけの汚点が残ってしまう。自分の汚点を雪ぐには、ここで動くしかないのだ。
「はあああっ！！」
　シイロは必死に剣を振るう。聖獣やパステル戦士たちがダクネースの浄化に力を注いている今、この状況を打破できるのはシイロだけなのだ。
（くそっ、私にも、姉さんのような力があれば……！）
　すべてを知ったシイロは、レインの事を双子の姉だとしっかり認識していた。パステル王国を治める女王として働いていたレインには、それだけの力があった。
　だが、その護衛騎士としてついていた自分には、剣を振る事しかなかった。
　双子だと分かった今なら、姉であるレインに宿る力を自分も使えるのではないかと考えていた。
「姉さんを、パステル王国を、私は救わねばならないのだあっ！！」
　シイロの魂の叫びが炸裂する。
　するとその時、鋭い一閃が走り、ダクネースが呼び寄せた化け物たちが吹き飛んでいく。
「よく言ったな、シイロ」
　シイロが振り向いたそこには、剣を構えた住職が立っていた。
「お……父……さん？」
　シイロは呆けたように呟く。
「あら、この人だけじゃないわよ。私だって居るんだから」
「お母……さん？！」
　そう、どういうわけかプリムまで立っていた。
「よくも、私の無念を利用して娘と戦わせてくれたわね。まあ、この人と戦ったのは私の気持ちでもあったから許せるけれど、娘の方は許せないわね」
　プリムはダクネースに向けて、吐き捨てていた。
「おのれ、どうやって自我を……？！」
「家族の絆を甘く見ないでちょうだい」
　ダクネースの驚愕の声に、プリムは言い返してやった。
「聖獣様、周りの雑魚たちは私どもにお任せ下さい。そいつを浄化するための時間を稼ぎます」
「ほざけっ！　一度闇に堕ちた分際で、我に抗えると思うなあっ！」
　プリムの宣言に激高するダクネース。だが、聖獣たちの結界には抗えていたものの、さすがに伝説の戦士三人分の浄化技まで加わった今、自分の体を動かす事は叶わず、遠隔で力を呼び寄せるくらいしかできなかった。
「もう少し……、もう少し時間を稼いでくれ」
「ほざけ！　我の積年の怨みと共に、お前たちを漆黒の闇へと染め上げてやる！」
　ダクネースとの最終決戦は、総力戦へと入った。
　この戦い、一体どちらに軍配が上がるというのだろうか。

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