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第163話 消滅の時
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フォシンズが叫ぶと、第二段階目が発動する。伝説の戦士たち五人分の浄化技の肩代わりだった。
「ぐおおおっ! 我は……不滅。諦め……ぬぞぉ!」
それをその身に食らいながらもまだ反撃を試みるダクネース。さすがラスボスというのはタフでしつこい。だが、さすがにかなり力を削られているだけあって、生み出す軍勢にはすでに力がほとんどなかった。シイロたちに簡単に蹴散らされるどころか、フリーになった聖獣たちですら余裕で倒せるほどだった。
「さあ、仕上げといこうか。しつこかったけれどこれで終わりだよ、ダクネース!」
フォシンズが三段階目の力を発動させる。
ところが、これで変化が現れたのは、パステルピンクたちだった。体が突然光り輝き始めたので、最初こそ驚き戸惑っていた。しかし、頭の中に言葉が浮かんでくると、互いに黙って頷き合う。そして、聖獣と自分たちの浄化技が発動しているポイントの、さらに外の位置に立つ。
「さあ、また永い眠りに就くといいよ。だけど、僕は君にはもう取り込まれたりはしない。君の夢は、今ここに完全に潰えるんだ!」
「おのれぇっ! 我は、我はただでは消えぬぞぉっ!」
フォシンズの煽りに、ダクネースは憎悪に顔を歪ませて力の限りに叫ぶ。だが、それも長くは続かなかった。
「命目覚める時、春の妖精パステルピンク」
「命輝く時、夏の妖精パステルシアン」
「命彩る時、秋の妖精パステルオレンジ」
「命実る時、秋の妖精パステルブラウン」
「命安らぐ時、冬の妖精パステルパープル」
五人が変身時の名乗りを唱えると、星形の結界の三つ目が形成される。
「命は目覚め」
「命は躍動し」
「命は色を染め」
「命は成熟し」
「命はやがて眠る」
五人が呪文を唱えると、星形の結界が発動する。その光が立ち上ると、ダクネースの力はうちに封じ込められ、暴れていたダクネースの軍勢がすべて消え去ってしまう。
「バカな、バカなバカなバカなっ! この我が、我がっ!!」
ダクネースは力を放出できずに結界の中でもがいている。
「おのれえっ! 我はダクネース、この世界の支配者っ!!」
ダクネースは隻腕の体でありながら、渾身の力をもって結界を砕こうとする。だが、すでに安定に入ってしまった結界に、ひびすら入れる事は叶わなかった。
「赤は情熱、桃は愛情」
「青は安定、水は自由」
「黄は希望、橙は陽気」
「緑は調和、茶は堅実」
「紫は再生、白は純粋」
「五人五体、十色の力をもって、黒の孤独をここに救わん!」
パステルピンクたちの詠唱が完了する。
「やめろおぉぉぉっ!」
「覚悟するんだね、ダクネース。君の野望は、ここで終焉を迎える。もう抗えないよ」
フォシンズはダクネースを強く睨み付け、そして、高らかに鳴いた。
「パステル・ピューリフィケーション・シンフォニア!」
フォシンズの鳴き声に呼応するように、パステル戦士たちの仕上げの言葉が響き渡る。
星形の結界の中を、浄化の白い光が満たしていく。
「ぐわあぁぁぁっ!!!」
浄化の光に焼かれて、ダクネースは苦痛の叫び声を上げる。
「このまま消し去られるというのなら……、せめて、最期に一矢、報いてやるぞぉっ!」
ダクネースは渾身の力を込めて、失われつつある力を最期に爆発させる。
「ふははははっ! 貴様ら全員、道連れだっ!」
ダクネースはそう言い残して、浄化の光の彼方へと消え去っていった。
だが、さすがのダクネースの最期の攻撃も、パステル戦士やフォシンズの防御は貫けなかった。
しかし、それ以外の者にとっては脅威である事には違いなかった。
「最後になんて厄介な事を……」
住職もその一人だ。住職は剣でもってその攻撃を捌いていたが、
「はっ、シイロ!」
その中で思わぬ光景を目撃してしまう。
「なっ!?」
同じように攻撃を捌いていたシイロの背後に、ダクネースの潜ませた一撃が迫っていたのだ。
「危ない、シイロ!」
ところが、間一髪、シイロはその攻撃を食らわなかった。
……プリムが代わりにその攻撃をその身に受けたのだ。
「……シイロは、母親の私が守る……!」
体を貫かれながらも、プリムは歯を食いしばってその攻撃をその身に留まらせた。
「母さんっ!」
ダクネースの攻撃を必死に体に留まらせるプリムに、シイロが青ざめた表情で声を掛ける。
「ふぅ……、やっと母親……らしい事ができた、かしら……」
プリムは口から血を吐きながら、呟いている。
「母さん、今助ける」
「無駄よ、シイロ」
泣きじゃくるシイロ。追い打ちを掛けるように、その目の前でプリムの体が少しずつ消え去り始めた。
「母さん、体が!」
「ダクネースの力で、復活してたような……ものだからね。……そのダクネースが消えた今……、私の体も、形を保てなく、なったようね……」
段々と透明になっていくプリムの体を、シイロは抱きかかえたくなる。しかし、まだダクネースの残滓がプリムの体を貫いており、それは叶えられない事だった。
「そんな顔、しないで……。あなたの騎士姿を見られて、本当によかったわ」
「プリム!」
シイロとプリムのところへ、住職が駆け寄ってくる。
「ああ、あなたね。姿が代わっても、すぐに分かったわ」
もう閉じてしまいそうな目を、必死に住職の方へと向けるプリム。
「すまない。私は君には我慢ばかり強いる事になってしまって……」
「恨んでいないと言えば、嘘になるかしらね……。大丈夫よ、シイロの立派な姿を見たら……もう、どうでもよくなっちゃったわ……」
「プリム……」
プリムの言葉に、住職は言葉が詰まってしまう。
「ああ、もう駄目ね。もう一人の娘、レインの姿を……ひと目見たかった、わ……」
プリムはこうとだけ言い残し、光の粒となって消え去ってしまうのだった。
「ぐおおおっ! 我は……不滅。諦め……ぬぞぉ!」
それをその身に食らいながらもまだ反撃を試みるダクネース。さすがラスボスというのはタフでしつこい。だが、さすがにかなり力を削られているだけあって、生み出す軍勢にはすでに力がほとんどなかった。シイロたちに簡単に蹴散らされるどころか、フリーになった聖獣たちですら余裕で倒せるほどだった。
「さあ、仕上げといこうか。しつこかったけれどこれで終わりだよ、ダクネース!」
フォシンズが三段階目の力を発動させる。
ところが、これで変化が現れたのは、パステルピンクたちだった。体が突然光り輝き始めたので、最初こそ驚き戸惑っていた。しかし、頭の中に言葉が浮かんでくると、互いに黙って頷き合う。そして、聖獣と自分たちの浄化技が発動しているポイントの、さらに外の位置に立つ。
「さあ、また永い眠りに就くといいよ。だけど、僕は君にはもう取り込まれたりはしない。君の夢は、今ここに完全に潰えるんだ!」
「おのれぇっ! 我は、我はただでは消えぬぞぉっ!」
フォシンズの煽りに、ダクネースは憎悪に顔を歪ませて力の限りに叫ぶ。だが、それも長くは続かなかった。
「命目覚める時、春の妖精パステルピンク」
「命輝く時、夏の妖精パステルシアン」
「命彩る時、秋の妖精パステルオレンジ」
「命実る時、秋の妖精パステルブラウン」
「命安らぐ時、冬の妖精パステルパープル」
五人が変身時の名乗りを唱えると、星形の結界の三つ目が形成される。
「命は目覚め」
「命は躍動し」
「命は色を染め」
「命は成熟し」
「命はやがて眠る」
五人が呪文を唱えると、星形の結界が発動する。その光が立ち上ると、ダクネースの力はうちに封じ込められ、暴れていたダクネースの軍勢がすべて消え去ってしまう。
「バカな、バカなバカなバカなっ! この我が、我がっ!!」
ダクネースは力を放出できずに結界の中でもがいている。
「おのれえっ! 我はダクネース、この世界の支配者っ!!」
ダクネースは隻腕の体でありながら、渾身の力をもって結界を砕こうとする。だが、すでに安定に入ってしまった結界に、ひびすら入れる事は叶わなかった。
「赤は情熱、桃は愛情」
「青は安定、水は自由」
「黄は希望、橙は陽気」
「緑は調和、茶は堅実」
「紫は再生、白は純粋」
「五人五体、十色の力をもって、黒の孤独をここに救わん!」
パステルピンクたちの詠唱が完了する。
「やめろおぉぉぉっ!」
「覚悟するんだね、ダクネース。君の野望は、ここで終焉を迎える。もう抗えないよ」
フォシンズはダクネースを強く睨み付け、そして、高らかに鳴いた。
「パステル・ピューリフィケーション・シンフォニア!」
フォシンズの鳴き声に呼応するように、パステル戦士たちの仕上げの言葉が響き渡る。
星形の結界の中を、浄化の白い光が満たしていく。
「ぐわあぁぁぁっ!!!」
浄化の光に焼かれて、ダクネースは苦痛の叫び声を上げる。
「このまま消し去られるというのなら……、せめて、最期に一矢、報いてやるぞぉっ!」
ダクネースは渾身の力を込めて、失われつつある力を最期に爆発させる。
「ふははははっ! 貴様ら全員、道連れだっ!」
ダクネースはそう言い残して、浄化の光の彼方へと消え去っていった。
だが、さすがのダクネースの最期の攻撃も、パステル戦士やフォシンズの防御は貫けなかった。
しかし、それ以外の者にとっては脅威である事には違いなかった。
「最後になんて厄介な事を……」
住職もその一人だ。住職は剣でもってその攻撃を捌いていたが、
「はっ、シイロ!」
その中で思わぬ光景を目撃してしまう。
「なっ!?」
同じように攻撃を捌いていたシイロの背後に、ダクネースの潜ませた一撃が迫っていたのだ。
「危ない、シイロ!」
ところが、間一髪、シイロはその攻撃を食らわなかった。
……プリムが代わりにその攻撃をその身に受けたのだ。
「……シイロは、母親の私が守る……!」
体を貫かれながらも、プリムは歯を食いしばってその攻撃をその身に留まらせた。
「母さんっ!」
ダクネースの攻撃を必死に体に留まらせるプリムに、シイロが青ざめた表情で声を掛ける。
「ふぅ……、やっと母親……らしい事ができた、かしら……」
プリムは口から血を吐きながら、呟いている。
「母さん、今助ける」
「無駄よ、シイロ」
泣きじゃくるシイロ。追い打ちを掛けるように、その目の前でプリムの体が少しずつ消え去り始めた。
「母さん、体が!」
「ダクネースの力で、復活してたような……ものだからね。……そのダクネースが消えた今……、私の体も、形を保てなく、なったようね……」
段々と透明になっていくプリムの体を、シイロは抱きかかえたくなる。しかし、まだダクネースの残滓がプリムの体を貫いており、それは叶えられない事だった。
「そんな顔、しないで……。あなたの騎士姿を見られて、本当によかったわ」
「プリム!」
シイロとプリムのところへ、住職が駆け寄ってくる。
「ああ、あなたね。姿が代わっても、すぐに分かったわ」
もう閉じてしまいそうな目を、必死に住職の方へと向けるプリム。
「すまない。私は君には我慢ばかり強いる事になってしまって……」
「恨んでいないと言えば、嘘になるかしらね……。大丈夫よ、シイロの立派な姿を見たら……もう、どうでもよくなっちゃったわ……」
「プリム……」
プリムの言葉に、住職は言葉が詰まってしまう。
「ああ、もう駄目ね。もう一人の娘、レインの姿を……ひと目見たかった、わ……」
プリムはこうとだけ言い残し、光の粒となって消え去ってしまうのだった。
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