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第181話 最後の手段
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「そこかあっ!!」
発狂しているフォシンズだが、まだまともな反応をするだけの余力があったようだ。だが、力の制御はできていないようで、振り向いた勢いで飛び散った漆黒のオーラがたまたま大量にパステル戦士たちの近くに落ちただけのようだ。それでも、周りを漆黒のオーラが変化した分身に囲まれてピンチなのには変わりはなかった。
「チェリー、グローリ、ワイス、祈りなさい」
レインは落ち着いたように聖獣たちに命令を出す。だけども、パシモとメルプが居ない事に少し焦っていた。人間化した事など知らないからだ。しかし、聖獣たちの力をたどって、パステルオレンジとパステルブラウンが欠けた二体だと察知すると、驚きながらも落ち着きを取り戻しつつあったのだ。
「はい、女王様!」
レインの呼び掛けに応えて、聖獣たちは祈りを捧げ始める。
「ここはパステル王国です。これ以上私の治める国での狼藉は許せませんよ!」
レインが杖を高く掲げると、聖獣たちから祈りのオーラが漏れ出してくる。
「フォシンズの力が強いと見て、功を焦りましたね、ダクネース」
レインが杖を両手で掴む。
「さあ、シイロ。あなたもいらっしゃい」
「はい、女王陛下」
レインの呼び掛けに応えるシイロだったが、レインの表情に気が付いて、
「あ……、はい、姉さん!」
呼び方を変える。その後ろで住職は一人その様子を眺めていた。
シイロは剣を掲げて、レインの隣に立つと一緒に力を込め始める。
「聖獣、伝説の戦士、そして、私たち王族の力で眠りに就きなさい、ダクネース!」
レインは、暴走するフォシンズに向けて力を一斉に放つ。
伝説の戦士たちが作る星形の結界に向けて、聖獣たちの祈り、そして、女王と護衛騎士の王家の力が注ぎ込まれる。
「うおおおおおっ?!」
一気に強化された星形の結界。それに近付いたフォシンズの分身たちは、パステル戦士たちに触れる事すらできずに結界に焼かれて消滅してしまった。そして、その本体たるフォシンズも強まった結界に体を焼かれ始め、苦しんでいる。
「おのれ……、おのれ、パステル王国の死に損ないどもがっ! この僕に、すべてを押し付けて、仮初めの平和に、浸るつもりかあっ!!」
フォシンズは恨み節たっぷりに叫んでいる。
「このまま……このまま、消されるわけには……いかない! この僕が消える時は、君たちも道連れ、だよっ!!」
フォシンズはばら撒いた漆黒のオーラを回収し始める。そして、少しずつその体を膨れさせ始めた。
「おい……、何だよ、あれは……」
浄化技を放ちながら、パステルピンクが驚愕の表情を浮かべている。
「なんて禍々しい気ですの……」
パステルパープルも歯を食いしばりながら、その光景に胸騒ぎを覚えている。
その光景をよく見ると、膨れ上がる体とは別に、その中心部に逆に収縮していく何かが見えている。
「ちっ、そういう事かよ……」
パステルピンクとワイスが同時に呟く。ワイスは単純に知識があるからこそだが、パステルピンクの反応は似たようなものをどこかで読んだ事がある気がしたからだった。つまり漫画の知識の受け売りだ。
「あいつ、力を凝縮されて、浄化の瞬間に自爆する気だ!」
パステルピンクが叫ぶ。だが、他の面々には距離的に声が届かなかった。なにせ、城を取り囲んでいるのでお互いが離れすぎている上に、フォシンズが力を集める音が立てる轟音のせいで邪魔されていたのだ。
しかし、その声を唯一聞いていた存在が居た。
「女王様、フォシンズは力を自分に集中させて自爆するつもりのようです!」
パステルピンクの相方であるチェリーだった。
「なんですって?!」
レインがらしからぬ声を上げる。
それもそうだろう。あれだけ溜まった負の力を一気に爆発させたらどうなるか、それは実に想像に易いからだ。
たとえ抑え込みに成功したとしても、この城辺りだけは確実に吹き飛んでしまう。そして、失敗しようものならパステル王国全土が容易に吹き飛んでしまう可能性すらある。それほどまでに強力な力がフォシンズに集まりつつあったのだ。石化から解放されたばかりで、力の感覚が戻っていないレインでは、それを抑え込めるか、まったくと言っていいほど分からないのだ。
「そうとなれば、力が集まり切る前に、フォシンズ本体を浄化しきるのが一番……。しかし、それではこちらの力も不十分なので、結局、結果は変わらない……」
力を杖に集中させながら、レインは焦っている。
「ならば、あやつに集まる力を削げばいいのだな」
そこにふと立ち上がった人物が居た。
「お、お父さん?!」
シイロが驚いている。それも無理はない。フォシンズに吹き飛ばされて、まだ体の調子が戻っていない住職が、剣を片手に立ち上がっていたのだから。よく見ると、脇腹を手で押さえている。
「その体で無茶しないで下さい。今のお父さんは軟弱な地球人なのですよ!?」
シイロが住職に向かって叫ぶ。
「シイロ、祈りに集中するんだ!」
住職に怒鳴られて、シイロはビクッと体を震わせる。そして、黙って祈りに意識を戻す。
「今、自由に動けるのは私だけなんだ。ならば、私が奴の力を削ぐしかない。お前たちには苦労を掛けたんだ。こんな時ぐらい、父親らしい事をさせてくれ」
パステル戦士も聖獣も、女王たちも動けない中、唯一フリーになっている住職が、ついに行動を起こしたのだった。
発狂しているフォシンズだが、まだまともな反応をするだけの余力があったようだ。だが、力の制御はできていないようで、振り向いた勢いで飛び散った漆黒のオーラがたまたま大量にパステル戦士たちの近くに落ちただけのようだ。それでも、周りを漆黒のオーラが変化した分身に囲まれてピンチなのには変わりはなかった。
「チェリー、グローリ、ワイス、祈りなさい」
レインは落ち着いたように聖獣たちに命令を出す。だけども、パシモとメルプが居ない事に少し焦っていた。人間化した事など知らないからだ。しかし、聖獣たちの力をたどって、パステルオレンジとパステルブラウンが欠けた二体だと察知すると、驚きながらも落ち着きを取り戻しつつあったのだ。
「はい、女王様!」
レインの呼び掛けに応えて、聖獣たちは祈りを捧げ始める。
「ここはパステル王国です。これ以上私の治める国での狼藉は許せませんよ!」
レインが杖を高く掲げると、聖獣たちから祈りのオーラが漏れ出してくる。
「フォシンズの力が強いと見て、功を焦りましたね、ダクネース」
レインが杖を両手で掴む。
「さあ、シイロ。あなたもいらっしゃい」
「はい、女王陛下」
レインの呼び掛けに応えるシイロだったが、レインの表情に気が付いて、
「あ……、はい、姉さん!」
呼び方を変える。その後ろで住職は一人その様子を眺めていた。
シイロは剣を掲げて、レインの隣に立つと一緒に力を込め始める。
「聖獣、伝説の戦士、そして、私たち王族の力で眠りに就きなさい、ダクネース!」
レインは、暴走するフォシンズに向けて力を一斉に放つ。
伝説の戦士たちが作る星形の結界に向けて、聖獣たちの祈り、そして、女王と護衛騎士の王家の力が注ぎ込まれる。
「うおおおおおっ?!」
一気に強化された星形の結界。それに近付いたフォシンズの分身たちは、パステル戦士たちに触れる事すらできずに結界に焼かれて消滅してしまった。そして、その本体たるフォシンズも強まった結界に体を焼かれ始め、苦しんでいる。
「おのれ……、おのれ、パステル王国の死に損ないどもがっ! この僕に、すべてを押し付けて、仮初めの平和に、浸るつもりかあっ!!」
フォシンズは恨み節たっぷりに叫んでいる。
「このまま……このまま、消されるわけには……いかない! この僕が消える時は、君たちも道連れ、だよっ!!」
フォシンズはばら撒いた漆黒のオーラを回収し始める。そして、少しずつその体を膨れさせ始めた。
「おい……、何だよ、あれは……」
浄化技を放ちながら、パステルピンクが驚愕の表情を浮かべている。
「なんて禍々しい気ですの……」
パステルパープルも歯を食いしばりながら、その光景に胸騒ぎを覚えている。
その光景をよく見ると、膨れ上がる体とは別に、その中心部に逆に収縮していく何かが見えている。
「ちっ、そういう事かよ……」
パステルピンクとワイスが同時に呟く。ワイスは単純に知識があるからこそだが、パステルピンクの反応は似たようなものをどこかで読んだ事がある気がしたからだった。つまり漫画の知識の受け売りだ。
「あいつ、力を凝縮されて、浄化の瞬間に自爆する気だ!」
パステルピンクが叫ぶ。だが、他の面々には距離的に声が届かなかった。なにせ、城を取り囲んでいるのでお互いが離れすぎている上に、フォシンズが力を集める音が立てる轟音のせいで邪魔されていたのだ。
しかし、その声を唯一聞いていた存在が居た。
「女王様、フォシンズは力を自分に集中させて自爆するつもりのようです!」
パステルピンクの相方であるチェリーだった。
「なんですって?!」
レインがらしからぬ声を上げる。
それもそうだろう。あれだけ溜まった負の力を一気に爆発させたらどうなるか、それは実に想像に易いからだ。
たとえ抑え込みに成功したとしても、この城辺りだけは確実に吹き飛んでしまう。そして、失敗しようものならパステル王国全土が容易に吹き飛んでしまう可能性すらある。それほどまでに強力な力がフォシンズに集まりつつあったのだ。石化から解放されたばかりで、力の感覚が戻っていないレインでは、それを抑え込めるか、まったくと言っていいほど分からないのだ。
「そうとなれば、力が集まり切る前に、フォシンズ本体を浄化しきるのが一番……。しかし、それではこちらの力も不十分なので、結局、結果は変わらない……」
力を杖に集中させながら、レインは焦っている。
「ならば、あやつに集まる力を削げばいいのだな」
そこにふと立ち上がった人物が居た。
「お、お父さん?!」
シイロが驚いている。それも無理はない。フォシンズに吹き飛ばされて、まだ体の調子が戻っていない住職が、剣を片手に立ち上がっていたのだから。よく見ると、脇腹を手で押さえている。
「その体で無茶しないで下さい。今のお父さんは軟弱な地球人なのですよ!?」
シイロが住職に向かって叫ぶ。
「シイロ、祈りに集中するんだ!」
住職に怒鳴られて、シイロはビクッと体を震わせる。そして、黙って祈りに意識を戻す。
「今、自由に動けるのは私だけなんだ。ならば、私が奴の力を削ぐしかない。お前たちには苦労を掛けたんだ。こんな時ぐらい、父親らしい事をさせてくれ」
パステル戦士も聖獣も、女王たちも動けない中、唯一フリーになっている住職が、ついに行動を起こしたのだった。
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