191 / 197
第191話 虹色の扉
しおりを挟む
挨拶を済ませると、パステルピンク、パステルシアン、パステルパープルの三人と住職は、扉の前に立つ。
「これでお別れなんだね」
「ああ、多分……な」
チェリーの寂しそうな声に、パステルピンクが反応する。
「なんでだろうな。女にされた上に戦いまでさせられてたってのに、ずいぶんと楽しい思い出になっちまってるよ」
パステルピンクが困ったような顔をして笑っている。それに関しては、パステルシアンも同じような感じだった。
「本当に不思議な体験だったわ。ねえ、グローリ。また会えるかしらね」
「私だって、また会いたいわよ。パステルシアンって放っておけないもの」
パステルシアンが寂しそうに言えば、グローリは泣きながらパステルシアンに飛びつく。そして、顔をぐりぐりと押し付けていた。
「まったく、いい助手ができたと思いましたのに……、まったく残念でしたわね」
「けっ、いいように使ってくれてよう……。だが、なかなか楽しい経験だったぜ。あれだけ機械を使いこなす聖獣は、俺っちくらいなもんだぜ」
愚痴を言い合うパステルパープルとワイスだったが、その表情はすごく明るく笑っていた。なんだかんだで気の合う二人だったのだ。
「まったく、また一人暮らしに戻るのか。私一人が暮らすには、あの寺は広すぎるんだ」
住職もため息を吐きながら愚痴っている。
「確かにあのお寺は広すぎたわね」
「全然掃除が行き届いてなかったけれど、あたしたちにも無理だったわね」
色鮮寺での暮らしを思い出しながら、パステルオレンジとパステルブラウンが腕を組みながら唸っている。数か月とはいえども、あの寺で暮らしていた二人。既に感慨深くなってしまっているようだった。
「寂しくなるといえば、私たちもですよ、お父様」
「まったくですよ。せっかく再会できたというのに、すぐにまた親とは離れ離れとは……。正直落ち着きませんね」
レインとシイロも口々に言っている。こちらは親子だから、なおの事なのだろう。
「しかしだな……。私はそちらでは死んでしまった存在だろう? 一緒に暮らすというわけにはいかないだろう」
「それはそれ、これはこれだ」
「そうですよ、お父様」
住職が体裁的な事を言うと、娘二人から思いっきり反発されてしまった。これには住職も笑うしかなかった。
「では、そろそろお別れのようですね」
ひと通り言葉を交わし終わったところで、レインが呟く。その言葉に全員が扉を見ると、少しずつ光が弱まってきていたのだ。このまま光が弱まってしまえば、扉をくぐれなくなる可能性がある。……残された時間は少ないようだった。
「それでは、異世界の戦士たちよ。よくぞダクネースを倒し、パステル王国をお救い下さいました。皆様が元の世界に戻られて、無事に過ごされる事を強く祈っております」
レインは再び頭を下げる。パステルピンクたちはどこか感慨深くなって、言葉を発する事なく互いの顔を見合わせた。
「それでは、扉をくぐってお行き下さい。皆様の居るべき世界へと」
その言葉に、こくりと頷くパステルピンクたち。そして、扉に手を掛けてそのままゆっくりと押した。
ギギギ……っと扉が開いて光が眩くあふれている。
「それじゃあな。また会えたら、会おうぜ」
最初にパステルピンクがくぐる。光に包まれたその姿があっという間に見えなくなってしまった。
「ええ、つらかった時もあったけど、楽しかったわ」
続いてパステルシアンがくぐる。
「生意気な羊でしたけれど、最高のパートナーでしたわよ」
「けっ、一言多いんだよ。だが、俺っちも同じ感想だな」
ぷんすかと怒って腕を組んで横を向くワイスを尻目に、くすくすと笑いながらパステルパープルが扉をくぐる。
「二人とも、本当に立派になったな。父親として誇らしく思うよ」
「お父様、ありがとうございます」
「父さん。私はこれからも姉さんを支えていく。だから、安心して向こうの世界でゆっくり過ごしてくれ」
レインとシイロは、キリっとした表情で住職を見つめている。その姿に、住職はとても安心した表情をして扉をくぐっていった。
全員が扉をくぐっていくと、ゆっくりと扉が閉まっていく。そして、完全に扉が閉まると、さっきまで色鮮やかに放たれていた光は消え失せ、辺りに静寂が戻ったのだった。
レインたちはしばらくの間、その閉まってしまった扉を目の前にして、じっと視線を送り続けていたのだった。その瞳にはあふれんばかりの涙が湛えられていた。
こうして、パステル王国を無事に救えたパステルピンクたちは扉をくぐってパステル王国を去った。果たしてパステルピンクたちは、無事に日本へと戻る事ができたのだろうか。辺りを眩い光が包み込む中、パステルピンクたちはゆっくりとその目を開いていった。
ようやく視界が落ち着くと、そこはどこかの木造建築の中だった。ここが一体どこなのかを確かめるべく、パステルピンクたちは慌てて出入り口を探すのだった。
そして、ようやく見つけた扉を開けると、パステルピンクたちの目の前には驚くべき光景が広がっていたのだった。
「これでお別れなんだね」
「ああ、多分……な」
チェリーの寂しそうな声に、パステルピンクが反応する。
「なんでだろうな。女にされた上に戦いまでさせられてたってのに、ずいぶんと楽しい思い出になっちまってるよ」
パステルピンクが困ったような顔をして笑っている。それに関しては、パステルシアンも同じような感じだった。
「本当に不思議な体験だったわ。ねえ、グローリ。また会えるかしらね」
「私だって、また会いたいわよ。パステルシアンって放っておけないもの」
パステルシアンが寂しそうに言えば、グローリは泣きながらパステルシアンに飛びつく。そして、顔をぐりぐりと押し付けていた。
「まったく、いい助手ができたと思いましたのに……、まったく残念でしたわね」
「けっ、いいように使ってくれてよう……。だが、なかなか楽しい経験だったぜ。あれだけ機械を使いこなす聖獣は、俺っちくらいなもんだぜ」
愚痴を言い合うパステルパープルとワイスだったが、その表情はすごく明るく笑っていた。なんだかんだで気の合う二人だったのだ。
「まったく、また一人暮らしに戻るのか。私一人が暮らすには、あの寺は広すぎるんだ」
住職もため息を吐きながら愚痴っている。
「確かにあのお寺は広すぎたわね」
「全然掃除が行き届いてなかったけれど、あたしたちにも無理だったわね」
色鮮寺での暮らしを思い出しながら、パステルオレンジとパステルブラウンが腕を組みながら唸っている。数か月とはいえども、あの寺で暮らしていた二人。既に感慨深くなってしまっているようだった。
「寂しくなるといえば、私たちもですよ、お父様」
「まったくですよ。せっかく再会できたというのに、すぐにまた親とは離れ離れとは……。正直落ち着きませんね」
レインとシイロも口々に言っている。こちらは親子だから、なおの事なのだろう。
「しかしだな……。私はそちらでは死んでしまった存在だろう? 一緒に暮らすというわけにはいかないだろう」
「それはそれ、これはこれだ」
「そうですよ、お父様」
住職が体裁的な事を言うと、娘二人から思いっきり反発されてしまった。これには住職も笑うしかなかった。
「では、そろそろお別れのようですね」
ひと通り言葉を交わし終わったところで、レインが呟く。その言葉に全員が扉を見ると、少しずつ光が弱まってきていたのだ。このまま光が弱まってしまえば、扉をくぐれなくなる可能性がある。……残された時間は少ないようだった。
「それでは、異世界の戦士たちよ。よくぞダクネースを倒し、パステル王国をお救い下さいました。皆様が元の世界に戻られて、無事に過ごされる事を強く祈っております」
レインは再び頭を下げる。パステルピンクたちはどこか感慨深くなって、言葉を発する事なく互いの顔を見合わせた。
「それでは、扉をくぐってお行き下さい。皆様の居るべき世界へと」
その言葉に、こくりと頷くパステルピンクたち。そして、扉に手を掛けてそのままゆっくりと押した。
ギギギ……っと扉が開いて光が眩くあふれている。
「それじゃあな。また会えたら、会おうぜ」
最初にパステルピンクがくぐる。光に包まれたその姿があっという間に見えなくなってしまった。
「ええ、つらかった時もあったけど、楽しかったわ」
続いてパステルシアンがくぐる。
「生意気な羊でしたけれど、最高のパートナーでしたわよ」
「けっ、一言多いんだよ。だが、俺っちも同じ感想だな」
ぷんすかと怒って腕を組んで横を向くワイスを尻目に、くすくすと笑いながらパステルパープルが扉をくぐる。
「二人とも、本当に立派になったな。父親として誇らしく思うよ」
「お父様、ありがとうございます」
「父さん。私はこれからも姉さんを支えていく。だから、安心して向こうの世界でゆっくり過ごしてくれ」
レインとシイロは、キリっとした表情で住職を見つめている。その姿に、住職はとても安心した表情をして扉をくぐっていった。
全員が扉をくぐっていくと、ゆっくりと扉が閉まっていく。そして、完全に扉が閉まると、さっきまで色鮮やかに放たれていた光は消え失せ、辺りに静寂が戻ったのだった。
レインたちはしばらくの間、その閉まってしまった扉を目の前にして、じっと視線を送り続けていたのだった。その瞳にはあふれんばかりの涙が湛えられていた。
こうして、パステル王国を無事に救えたパステルピンクたちは扉をくぐってパステル王国を去った。果たしてパステルピンクたちは、無事に日本へと戻る事ができたのだろうか。辺りを眩い光が包み込む中、パステルピンクたちはゆっくりとその目を開いていった。
ようやく視界が落ち着くと、そこはどこかの木造建築の中だった。ここが一体どこなのかを確かめるべく、パステルピンクたちは慌てて出入り口を探すのだった。
そして、ようやく見つけた扉を開けると、パステルピンクたちの目の前には驚くべき光景が広がっていたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
転生先はご近所さん?
フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが…
そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。
でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる