マジカル☆パステル

未羊

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第191話 虹色の扉

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 挨拶を済ませると、パステルピンク、パステルシアン、パステルパープルの三人と住職は、扉の前に立つ。
「これでお別れなんだね」
「ああ、多分……な」
 チェリーの寂しそうな声に、パステルピンクが反応する。
「なんでだろうな。女にされた上に戦いまでさせられてたってのに、ずいぶんと楽しい思い出になっちまってるよ」
 パステルピンクが困ったような顔をして笑っている。それに関しては、パステルシアンも同じような感じだった。
「本当に不思議な体験だったわ。ねえ、グローリ。また会えるかしらね」
「私だって、また会いたいわよ。パステルシアンって放っておけないもの」
 パステルシアンが寂しそうに言えば、グローリは泣きながらパステルシアンに飛びつく。そして、顔をぐりぐりと押し付けていた。
「まったく、いい助手ができたと思いましたのに……、まったく残念でしたわね」
「けっ、いいように使ってくれてよう……。だが、なかなか楽しい経験だったぜ。あれだけ機械を使いこなす聖獣は、俺っちくらいなもんだぜ」
 愚痴を言い合うパステルパープルとワイスだったが、その表情はすごく明るく笑っていた。なんだかんだで気の合う二人だったのだ。
「まったく、また一人暮らしに戻るのか。私一人が暮らすには、あの寺は広すぎるんだ」
 住職もため息を吐きながら愚痴っている。
「確かにあのお寺は広すぎたわね」
「全然掃除が行き届いてなかったけれど、あたしたちにも無理だったわね」
 色鮮寺での暮らしを思い出しながら、パステルオレンジとパステルブラウンが腕を組みながら唸っている。数か月とはいえども、あの寺で暮らしていた二人。既に感慨深くなってしまっているようだった。
「寂しくなるといえば、私たちもですよ、お父様」
「まったくですよ。せっかく再会できたというのに、すぐにまた親とは離れ離れとは……。正直落ち着きませんね」
 レインとシイロも口々に言っている。こちらは親子だから、なおの事なのだろう。
「しかしだな……。私はそちらでは死んでしまった存在だろう? 一緒に暮らすというわけにはいかないだろう」
「それはそれ、これはこれだ」
「そうですよ、お父様」
 住職が体裁的な事を言うと、娘二人から思いっきり反発されてしまった。これには住職も笑うしかなかった。
「では、そろそろお別れのようですね」
 ひと通り言葉を交わし終わったところで、レインが呟く。その言葉に全員が扉を見ると、少しずつ光が弱まってきていたのだ。このまま光が弱まってしまえば、扉をくぐれなくなる可能性がある。……残された時間は少ないようだった。
「それでは、異世界の戦士たちよ。よくぞダクネースを倒し、パステル王国をお救い下さいました。皆様が元の世界に戻られて、無事に過ごされる事を強く祈っております」
 レインは再び頭を下げる。パステルピンクたちはどこか感慨深くなって、言葉を発する事なく互いの顔を見合わせた。
「それでは、扉をくぐってお行き下さい。皆様の居るべき世界へと」
 その言葉に、こくりと頷くパステルピンクたち。そして、扉に手を掛けてそのままゆっくりと押した。
 ギギギ……っと扉が開いて光が眩くあふれている。
「それじゃあな。また会えたら、会おうぜ」
 最初にパステルピンクがくぐる。光に包まれたその姿があっという間に見えなくなってしまった。
「ええ、つらかった時もあったけど、楽しかったわ」
 続いてパステルシアンがくぐる。
「生意気な羊でしたけれど、最高のパートナーでしたわよ」
「けっ、一言多いんだよ。だが、俺っちも同じ感想だな」
 ぷんすかと怒って腕を組んで横を向くワイスを尻目に、くすくすと笑いながらパステルパープルが扉をくぐる。
「二人とも、本当に立派になったな。父親として誇らしく思うよ」
「お父様、ありがとうございます」
「父さん。私はこれからも姉さんを支えていく。だから、安心して向こうの世界でゆっくり過ごしてくれ」
 レインとシイロは、キリっとした表情で住職を見つめている。その姿に、住職はとても安心した表情をして扉をくぐっていった。
 全員が扉をくぐっていくと、ゆっくりと扉が閉まっていく。そして、完全に扉が閉まると、さっきまで色鮮やかに放たれていた光は消え失せ、辺りに静寂が戻ったのだった。
 レインたちはしばらくの間、その閉まってしまった扉を目の前にして、じっと視線を送り続けていたのだった。その瞳にはあふれんばかりの涙が湛えられていた。

 こうして、パステル王国を無事に救えたパステルピンクたちは扉をくぐってパステル王国を去った。果たしてパステルピンクたちは、無事に日本へと戻る事ができたのだろうか。辺りを眩い光が包み込む中、パステルピンクたちはゆっくりとその目を開いていった。
 ようやく視界が落ち着くと、そこはどこかの木造建築の中だった。ここが一体どこなのかを確かめるべく、パステルピンクたちは慌てて出入り口を探すのだった。
 そして、ようやく見つけた扉を開けると、パステルピンクたちの目の前には驚くべき光景が広がっていたのだった。
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