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第16話 似た絵姿の貼り紙
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バナルに戻って来たステラとリューンは、商人たちと別れて冒険者組合で報酬を受け取る。
そんな中、冒険者組合の中で、ヴォワザンでも見かけた貼り紙を見つけてしまった。
「ところで、あの貼り紙は何ですか?」
ステラがミュスクに問い掛ける。いつもロビーで座ってばかりいるので、少しは職員らしい仕事をさせるのが狙いである。
すると、ミュスクはめんどくさそうに貼り紙を見ながら、ステラの質問に答える。
「ああ、つい昨日だが、妙な連中が来て勝手に貼っていったんだ。組合長に許可を取ってから貼れって言ったのに、無視して貼っていっただよ」
「だったら、なぜそのまま貼ってあるんですか? 無許可なら剥がせるでしょうに」
ミュスクの説明に、ステラはすぐに質問を返す。すると、ミュスクはものすごく嫌そうな顔をしていた。
「剥がしたら街を焼き討ちにするとか物騒な事を言ってきたんだよ。仕方ねえからこうやってそのままにしてあるんだ。まったく、どこの兵士だよ、あいつらは」
「兵士?」
ステラとリューンが同時に反応する。
「ああ、あの兵士でしたらコリーヌ帝国の兵士ですね。特徴的な紋章をつけていましたので、知っている人は知っていますよ」
「コリーヌ帝国?」
中から出てきた受付の女性の言葉に、リューンが首を傾げながら反応している。
「はい。このエルミタージュ大陸を実質支配しているといっていいくらいの兵力を持った、丘陵地帯に城を構える帝国です。噂によれば、今は女帝が治めているようですね」
「へえ、女帝が治める国ですか」
受付の説明を聞いて、ステラはちょっと興味を示したようである。
しかし、掲示されたお尋ね者の貼り紙はまったく別の話だ。
「それにしても、この”ステラリア・エルミタージュ”って何者なのですかね。聞いた事のない名前なんですけれど」
ステラは首を傾げながら貼り紙を見ている。その反応はヴォワザンの時とはまったく違っていた。
「さあ、私には分かりかねますね。ですが、エルミタージュというと、過去にこの大陸を支配していた王国の名前を思い出しますね」
「そんな国があったのですか?!」
考え込む仕草をする職員の言葉に、リューンが思わず声を出してしまう。
「はい。何百年か前まで存在していた国ですね。ある日突然滅んだという風に伝わっていますが、真相までは分かりかねますね」
「そうなんですね……」
思わず暗い表情になってしまうリューンである。
その後ろでは、ステラがさっきから黙り込んでいる。
「どうなさったのですか、ステラさん」
ステラの様子がおかしいと気が付いた職員が声を掛ける。すると、ステラは驚いたような反応をして職員の方へと顔を向けていた。
「ええと、何でしょうか」
「いえ、急にぼーっとされていたので、気になってしまいましてね」
ステラに聞き返された職員は、困ったように反応していた。
「そ、そういえば、ステラさんと名前が似てらっしゃいますよね、この貼り紙の方って」
「それがどうかされたんですか。名前が似てるからって、私を疑うおつもりですか?」
ごまかそうとした職員は、かえってステラの怒りに触れてしまった模様。ステラの声が今までに聞いた事がないくらい怒りに満ちていた。
「し、失礼致しました」
深々と頭を下げる職員。その姿を見たステラの雰囲気が、一気にいつもの穏やかなものへと変わっていった。
「おほん、失礼しました。そう仰られるのも無理はないでしょうね。どことなく私と雰囲気も似ていますからね」
つい凄んでしまった事を謝罪するステラ。そして、改めて貼り紙をじっと眺めている。
その貼り紙を見つめるステラの姿を見て、リューンは何かを感じたのか眉をひそめているようだった。
「どうかしましたか、リューン」
「いえ、なんでもありません」
急に声を掛けられて、ふいっと顔を背けるリューン。その態度を少し不思議に思ったステラだったが、無事に依頼を終えたのでリューンを家まで送って、そのまま解散となったのだった。
森の近くにある家に戻ったステラは、いつものようにマントと仮面、それと双剣を外してくつろいでいる。だが、今回はその表情は少々険しいものだった。
「まさか、今になってあんなものを見るとは思いませんでしたね」
ステラが険しい表情をするのも無理はない。なにせあの貼り紙に描かれていた顔は、まるで自分の素顔そのものだったのだから。その事を思うと、ますます人前では仮面を外すわけにはいかなくなってしまった。
「それにしても、コリーヌ帝国ですか……。実に面倒な事をしてくれたものです。あの名前と姿を、一体どこで見つけてきたというのでしょうかね」
あの貼り紙ひとつだけで、ずいぶんとステラの気持ちは落ち着かなくなっていた。
(それにしても、数百年ですか……。あれからそんなに時が経つんですね)
そう思ったステラは、気が付いたら引き出しに入っている勲章を取り出していた。そして、その勲章をぎゅっと握りしめ、口づけをするように顔に近付けるステラ。
(しかし、なぜこの時期にあんなものが出回ってきたのでしょうか。コリーヌ帝国は一体何を考えているのでしょうかね)
冒険者組合で見かけた貼り紙に、ステラは疑問を抱いていた。
その理由は何かは分からないが、人前で素顔を晒す事は絶対に避けねばならないという決意を、ステラは改めて固く誓うのであった。
そんな中、冒険者組合の中で、ヴォワザンでも見かけた貼り紙を見つけてしまった。
「ところで、あの貼り紙は何ですか?」
ステラがミュスクに問い掛ける。いつもロビーで座ってばかりいるので、少しは職員らしい仕事をさせるのが狙いである。
すると、ミュスクはめんどくさそうに貼り紙を見ながら、ステラの質問に答える。
「ああ、つい昨日だが、妙な連中が来て勝手に貼っていったんだ。組合長に許可を取ってから貼れって言ったのに、無視して貼っていっただよ」
「だったら、なぜそのまま貼ってあるんですか? 無許可なら剥がせるでしょうに」
ミュスクの説明に、ステラはすぐに質問を返す。すると、ミュスクはものすごく嫌そうな顔をしていた。
「剥がしたら街を焼き討ちにするとか物騒な事を言ってきたんだよ。仕方ねえからこうやってそのままにしてあるんだ。まったく、どこの兵士だよ、あいつらは」
「兵士?」
ステラとリューンが同時に反応する。
「ああ、あの兵士でしたらコリーヌ帝国の兵士ですね。特徴的な紋章をつけていましたので、知っている人は知っていますよ」
「コリーヌ帝国?」
中から出てきた受付の女性の言葉に、リューンが首を傾げながら反応している。
「はい。このエルミタージュ大陸を実質支配しているといっていいくらいの兵力を持った、丘陵地帯に城を構える帝国です。噂によれば、今は女帝が治めているようですね」
「へえ、女帝が治める国ですか」
受付の説明を聞いて、ステラはちょっと興味を示したようである。
しかし、掲示されたお尋ね者の貼り紙はまったく別の話だ。
「それにしても、この”ステラリア・エルミタージュ”って何者なのですかね。聞いた事のない名前なんですけれど」
ステラは首を傾げながら貼り紙を見ている。その反応はヴォワザンの時とはまったく違っていた。
「さあ、私には分かりかねますね。ですが、エルミタージュというと、過去にこの大陸を支配していた王国の名前を思い出しますね」
「そんな国があったのですか?!」
考え込む仕草をする職員の言葉に、リューンが思わず声を出してしまう。
「はい。何百年か前まで存在していた国ですね。ある日突然滅んだという風に伝わっていますが、真相までは分かりかねますね」
「そうなんですね……」
思わず暗い表情になってしまうリューンである。
その後ろでは、ステラがさっきから黙り込んでいる。
「どうなさったのですか、ステラさん」
ステラの様子がおかしいと気が付いた職員が声を掛ける。すると、ステラは驚いたような反応をして職員の方へと顔を向けていた。
「ええと、何でしょうか」
「いえ、急にぼーっとされていたので、気になってしまいましてね」
ステラに聞き返された職員は、困ったように反応していた。
「そ、そういえば、ステラさんと名前が似てらっしゃいますよね、この貼り紙の方って」
「それがどうかされたんですか。名前が似てるからって、私を疑うおつもりですか?」
ごまかそうとした職員は、かえってステラの怒りに触れてしまった模様。ステラの声が今までに聞いた事がないくらい怒りに満ちていた。
「し、失礼致しました」
深々と頭を下げる職員。その姿を見たステラの雰囲気が、一気にいつもの穏やかなものへと変わっていった。
「おほん、失礼しました。そう仰られるのも無理はないでしょうね。どことなく私と雰囲気も似ていますからね」
つい凄んでしまった事を謝罪するステラ。そして、改めて貼り紙をじっと眺めている。
その貼り紙を見つめるステラの姿を見て、リューンは何かを感じたのか眉をひそめているようだった。
「どうかしましたか、リューン」
「いえ、なんでもありません」
急に声を掛けられて、ふいっと顔を背けるリューン。その態度を少し不思議に思ったステラだったが、無事に依頼を終えたのでリューンを家まで送って、そのまま解散となったのだった。
森の近くにある家に戻ったステラは、いつものようにマントと仮面、それと双剣を外してくつろいでいる。だが、今回はその表情は少々険しいものだった。
「まさか、今になってあんなものを見るとは思いませんでしたね」
ステラが険しい表情をするのも無理はない。なにせあの貼り紙に描かれていた顔は、まるで自分の素顔そのものだったのだから。その事を思うと、ますます人前では仮面を外すわけにはいかなくなってしまった。
「それにしても、コリーヌ帝国ですか……。実に面倒な事をしてくれたものです。あの名前と姿を、一体どこで見つけてきたというのでしょうかね」
あの貼り紙ひとつだけで、ずいぶんとステラの気持ちは落ち着かなくなっていた。
(それにしても、数百年ですか……。あれからそんなに時が経つんですね)
そう思ったステラは、気が付いたら引き出しに入っている勲章を取り出していた。そして、その勲章をぎゅっと握りしめ、口づけをするように顔に近付けるステラ。
(しかし、なぜこの時期にあんなものが出回ってきたのでしょうか。コリーヌ帝国は一体何を考えているのでしょうかね)
冒険者組合で見かけた貼り紙に、ステラは疑問を抱いていた。
その理由は何かは分からないが、人前で素顔を晒す事は絶対に避けねばならないという決意を、ステラは改めて固く誓うのであった。
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