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第28話 グレイウルフを討伐せよ
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1体は倒せたグレイウルフだが、その場にはまだ4匹のグレイウルフが残っている。とはいえ、この程度の数であれば状況によっては十分遭遇する可能性がある。リューンはしっかりと剣を構えている。
ステラは殺気を放ちながら、自分に対してグレイウルフが向かってこないようにしておく。あくまでもこれはリューンの力を見るための戦いなのである。
狙い通りステラに臆したグレイウルフたちは、狙いをリューン一人に定めている。そして、ステラの恐怖から早く逃れたいのか、突如としてリューンに襲い掛かってきた。
(落ち着け、落ち着くんだ僕!)
自分に言い聞かせるリューンは、素早くグレイウルフの攻撃を横っ飛びで躱す。とっさの判断で後方ではなく、真横へと跳んだのだ。
これにはステラは感心していた。
リューンに襲い掛かったグレイウルフはすべて前方から飛び掛かってきたのだ。後方へ跳べば、そのまま追撃を許す可能性が高い。だが、横へ跳べば折り重なったグレイウルフがまとめて追撃を入れる事ができない。一度ばらけないといけないので、攻撃の隙を作る事ができるのだ。
「やああっ!」
グレイウルフの攻撃態勢が整わないうちに、リューンは攻撃を仕掛ける。
「ギャイン!」
一番リューンに近い位置で下敷きになっていたグレイウルフに攻撃が命中する。
確かな手応えがあったものの、少し傷が浅い。追撃を入れようとするところへ、残りのグレイウルフは容赦なくリューンへと飛び掛かっていく。
すると、今度は体を捻りながらしゃがみ込んでいく。そして、無防備になった腹部へとリューンの剣が突き上げられる。
今度はクリーンヒットだった。
ようやく1匹撃破したのはいいが、体勢が悪かった。最初の一撃を入れた手負いのグレイウルフが、リューンの上に覆いかぶさってきたのだ。
「くそっ、しつこいよ」
どうにか噛まれるのを凌いでいるが、頭の方からは飛び過ぎたグレイウルフが戻ってきている。このままでは頭を噛まれて終わりである。
「えーいっ!」
次の瞬間、リューンの体が自然と動いていた。
自分に覆いかぶさってきたグレイウルフを蹴り上げて、迫ってきていたグレイウルフたちに叩きつけたのだ。いわゆる巴投げの状態である。
「ギャウン!」
3匹のグレイウルフがぶつかり合って、その場に倒れ込む。素早く起きたリューンは、そこへと攻撃を仕掛けていた。
「これで終わりです」
リューンの攻撃がグレイウルフに炸裂する。そして、襲ってきたグレイウルフはすべて動かなくなったのだった。
「やっ……た……」
戦い終えたリューンが、呆然と立っている。
それもそうだろう。初めての依頼の時に殺されかけた相手5匹を相手に、自分一人で勝ってみせたのだから。ステラに鍛えられてきたとはいえ、リューンは思った以上に強くなっていたようだった。
「ステラさん、やりましたよ!」
「ええ、そうですね。おめでとうございます。でも、その剣はすぐに血を払ってしまっておくべきですよ。手入れを怠れば錆びて使い物にならなくなってしまいます。冒険者たる者、常に気を抜いてはダメですよ」
一応褒めながらもダメ出しはしておくステラである。右も左も分からない状況でほとんど一人で生き抜いてきたステラだけに、その言葉は重いものだった。
ステラに言われて、慌てて剣を振って血を払っておくリューン。そして、そのまま魔法鞄の中へと剣をしまったのだった。
「それでは、グレイウルフもそのままの状態で魔法鞄にしまって、バナルへと戻りましょうか。試験の判定を組合でしてもらわないといけませんからね」
「分かりました」
そんなわけで、リューンはグレイウルフを1体1体魔法鞄へとしまい込んでいく。
さすがはステラお手製の魔法鞄だ。剣を2本にグレイウルフ5匹を余裕で収納する事ができていた。
「……魔法鞄って、こんなに入るものなのですかね」
「どうなのでしょうかね。私の持っているものはすべて自作ですから、普通のものの容量が分からないんですよね」
「自作……」
しれっと出たとんでもない言葉に、リューンは自分の腰に着けている鞄を見る。実はとんでもないものを気軽に渡されたのではないか。リューンはそう考えてしまった。
無事にグレイウルフを倒して、その足でバナルの冒険者組合に戻ったステラとリューン。
倒したグレイウルフを査定に出し、無事にリューンが撃破した事が認められた。これによって、リューンのランクは銅級へと昇級したのである。
「おめでとうございます、リューンさん。その年で銅級というのは実に最速といってもいいと思われます」
「えへへ……」
最速と言われて、ものすごく照れるリューンである。
ところが、職員はステラの方を見て顔をしかめている。
「それはそうと、どうしてステラさんのランクが上がっているんですか? ブラックウルフを討伐したとか出てくるんですけれど、何があったんですか」
「たまたまですよ。一応国境付近の組合で調査をしてもらっていますので、そのうち調査結果が出ると思いますよ」
職員に詰め寄られて、ステラは慌てて事情を説明している。
その中で、1匹だけとはいえ、ブラックウルフが出たという情報に職員たちは驚きを隠せなかった。
「事情は分かりました。ひとまず預かった魔物はこちらで解体させて頂きますね。ともにランクアップしましたので、それを考慮して査定結果を支払わせて頂きます」
ウルフたちの査定結果を受け取ると、ステラたちは安心した様子で組合から出て行く。
「まったく、とんでもない子たちですね。あんな小さいのに、こんな化け物たちを倒しちゃうんですからね」
ステラとリューンの背中を見つめながら、職員は小さくぽつりと呟いたのだった。
ステラは殺気を放ちながら、自分に対してグレイウルフが向かってこないようにしておく。あくまでもこれはリューンの力を見るための戦いなのである。
狙い通りステラに臆したグレイウルフたちは、狙いをリューン一人に定めている。そして、ステラの恐怖から早く逃れたいのか、突如としてリューンに襲い掛かってきた。
(落ち着け、落ち着くんだ僕!)
自分に言い聞かせるリューンは、素早くグレイウルフの攻撃を横っ飛びで躱す。とっさの判断で後方ではなく、真横へと跳んだのだ。
これにはステラは感心していた。
リューンに襲い掛かったグレイウルフはすべて前方から飛び掛かってきたのだ。後方へ跳べば、そのまま追撃を許す可能性が高い。だが、横へ跳べば折り重なったグレイウルフがまとめて追撃を入れる事ができない。一度ばらけないといけないので、攻撃の隙を作る事ができるのだ。
「やああっ!」
グレイウルフの攻撃態勢が整わないうちに、リューンは攻撃を仕掛ける。
「ギャイン!」
一番リューンに近い位置で下敷きになっていたグレイウルフに攻撃が命中する。
確かな手応えがあったものの、少し傷が浅い。追撃を入れようとするところへ、残りのグレイウルフは容赦なくリューンへと飛び掛かっていく。
すると、今度は体を捻りながらしゃがみ込んでいく。そして、無防備になった腹部へとリューンの剣が突き上げられる。
今度はクリーンヒットだった。
ようやく1匹撃破したのはいいが、体勢が悪かった。最初の一撃を入れた手負いのグレイウルフが、リューンの上に覆いかぶさってきたのだ。
「くそっ、しつこいよ」
どうにか噛まれるのを凌いでいるが、頭の方からは飛び過ぎたグレイウルフが戻ってきている。このままでは頭を噛まれて終わりである。
「えーいっ!」
次の瞬間、リューンの体が自然と動いていた。
自分に覆いかぶさってきたグレイウルフを蹴り上げて、迫ってきていたグレイウルフたちに叩きつけたのだ。いわゆる巴投げの状態である。
「ギャウン!」
3匹のグレイウルフがぶつかり合って、その場に倒れ込む。素早く起きたリューンは、そこへと攻撃を仕掛けていた。
「これで終わりです」
リューンの攻撃がグレイウルフに炸裂する。そして、襲ってきたグレイウルフはすべて動かなくなったのだった。
「やっ……た……」
戦い終えたリューンが、呆然と立っている。
それもそうだろう。初めての依頼の時に殺されかけた相手5匹を相手に、自分一人で勝ってみせたのだから。ステラに鍛えられてきたとはいえ、リューンは思った以上に強くなっていたようだった。
「ステラさん、やりましたよ!」
「ええ、そうですね。おめでとうございます。でも、その剣はすぐに血を払ってしまっておくべきですよ。手入れを怠れば錆びて使い物にならなくなってしまいます。冒険者たる者、常に気を抜いてはダメですよ」
一応褒めながらもダメ出しはしておくステラである。右も左も分からない状況でほとんど一人で生き抜いてきたステラだけに、その言葉は重いものだった。
ステラに言われて、慌てて剣を振って血を払っておくリューン。そして、そのまま魔法鞄の中へと剣をしまったのだった。
「それでは、グレイウルフもそのままの状態で魔法鞄にしまって、バナルへと戻りましょうか。試験の判定を組合でしてもらわないといけませんからね」
「分かりました」
そんなわけで、リューンはグレイウルフを1体1体魔法鞄へとしまい込んでいく。
さすがはステラお手製の魔法鞄だ。剣を2本にグレイウルフ5匹を余裕で収納する事ができていた。
「……魔法鞄って、こんなに入るものなのですかね」
「どうなのでしょうかね。私の持っているものはすべて自作ですから、普通のものの容量が分からないんですよね」
「自作……」
しれっと出たとんでもない言葉に、リューンは自分の腰に着けている鞄を見る。実はとんでもないものを気軽に渡されたのではないか。リューンはそう考えてしまった。
無事にグレイウルフを倒して、その足でバナルの冒険者組合に戻ったステラとリューン。
倒したグレイウルフを査定に出し、無事にリューンが撃破した事が認められた。これによって、リューンのランクは銅級へと昇級したのである。
「おめでとうございます、リューンさん。その年で銅級というのは実に最速といってもいいと思われます」
「えへへ……」
最速と言われて、ものすごく照れるリューンである。
ところが、職員はステラの方を見て顔をしかめている。
「それはそうと、どうしてステラさんのランクが上がっているんですか? ブラックウルフを討伐したとか出てくるんですけれど、何があったんですか」
「たまたまですよ。一応国境付近の組合で調査をしてもらっていますので、そのうち調査結果が出ると思いますよ」
職員に詰め寄られて、ステラは慌てて事情を説明している。
その中で、1匹だけとはいえ、ブラックウルフが出たという情報に職員たちは驚きを隠せなかった。
「事情は分かりました。ひとまず預かった魔物はこちらで解体させて頂きますね。ともにランクアップしましたので、それを考慮して査定結果を支払わせて頂きます」
ウルフたちの査定結果を受け取ると、ステラたちは安心した様子で組合から出て行く。
「まったく、とんでもない子たちですね。あんな小さいのに、こんな化け物たちを倒しちゃうんですからね」
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