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第30話 初めての訪問
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バナルを離れて森の方へと歩いていくステラ。その後を追うリューン。
「あれ……。こっちって確か、僕が初めて依頼を受けた時に向かった場所のような……」
リューンが表情を曇らせている。
それもそうだろう。初めて受けた依頼である「スライムの核10個を集める」を達成するために出向いた場所だ。見覚えがありすぎるのである。
困惑しているリューンを気にするような素振りはあるものの、ステラはそのまま黙って歩き続けていた。
「さあ、着きましたよ。ここが目的地です」
「ここは……」
目の前に建つ小屋に驚くリューン。まさか、自分が危険な目に遭った場所の近くに、こんな小屋があるだなんて知らなかったのだ。
「ここが私の住む家です。だからこそ、いち早く異変に気が付いて、リューンを助けられたのですよ」
仮面で表情がよく見えないが、声の感じからするとにこりと微笑んでいるように思えた。
ステラは自分の家にリューンを招き入れる。
よく思えば、ステラが家に誰かを招き入れるのも、リューンが誰かの家を訪ねるのも地味に初めてだったりする。
(ステラさんの家ってこんな感じなのか。中は一体どうなっているんだろうか)
家の中が気になって仕方のないリューンだった。訪ねるのが初めてとはいっても、玄関先までは何度かある。中まで入るのは本当にこれが初めてで、リューンはかなり緊張しているようだった。
「し、失礼します」
緊張のあまりに言葉が少しどもるリューン。
ステラの家の中は、かなりシンプルな感じだ。元王女と聞いていたので、派手かと思っていたらそうでもなかったのである。
「リューン、こっちに来て下さい。入口でいつまでも立ってないで下さい」
「はっ、ご、ごめんなさい」
ステラに言われて机のあるあたりまで入ってくるリューン。
「今飲み物を用意しますので、座って待っていて下さいね」
ステラに言われておとなしく椅子に腰掛けるリューン。どうも落ち着かないようで、しきりに辺りをちらちらと見ている。
そこへ、飲み物を用意したステラが戻ってきた。
「お待たせ致しました。……何か珍しいものでもありましたか?」
リューンの態度がおかしいものだから、ついつい確認してしまうステラである。
「あっ、いえ。人の家の中というのが初めてなものですから、ちょっと落ち着かなかっただけです」
それに対して、正直に答えるリューンである。ステラもつい笑ってしまうくらいだった。
しばらく笑って落ち着いたステラは、仮面を取って椅子に座る。どういうわけか椅子が2脚どころか数脚あるのだが、そこは気にしてはいけない。
「それでは、単刀直入に申しましょうか」
ステラは改まったように切り出した。そのステラの様子に、思わずごくりと息を飲んでしまうリューン。
「実は、ちょっと調べたい事が出てきましてね、しばらくバナルを離れる事にしようと考えています」
「ええ?!」
ステラが切り出した話しに、リューンはものすごい声で驚いていた。
その驚きにすぐ反応したステラは、唇に人差し指を直行するように添えて黙るように促す。街から外れた場所とはいえど、近くを誰かが通りかも知れないので慎重なのだ。
「そ、それはどうしてですか。ステラさん」
落ち着いたリューンがステラに確認している。突然の話に動揺しているせいもあって、リューンはちょっと前のめりになっている。
ステラはそのリューンを落ち着かせて、一度咳払いをするという間を空けてから話し始めた
「先日国境付近に現れたブラックウルフについて考えていたんです。元々あの魔物は丘陵地などの高い場所に生息している魔物なのですね」
そこからはステラによる魔物の生態に関する話がしばらく続いた。さすがに500年は生きているステラによる解説だ。実体験も踏まえているので、実に生々しかった。
「そこで、関連項目として浮かんでくるのが、コリーヌ帝国なのです」
「コリーヌ帝国が……。どうしてですか?」
ようやく話が終わって出てきた単語に、リューンはこてりと首を傾げていた。
すると、ステラは呆れたように絶句していた。
「リューン、先日の組合職員の話を覚えていませんか?」
「いいえ。いろいろあったのでよく覚えていません。ごめんなさい……」
ステラが確認するように尋ねると、リューンはしょぼくれながら答えていた。まぁ、ブラックウルフにステラの秘密など、驚く要素はたくさんあったのだ。なら、その前の話題など吹き飛んでも仕方ないのである。
仕方がないとは思いつつ、ステラは改めてリューンに説明を始める。
「コリーヌ帝国は丘陵地帯を中心として女帝が治める国です。場所が正確には分からないので断定はできませんが、丘陵地帯に生息するブラックウルフとの関連が疑われるんですよ」
「な、なるほど……」
「それで、あの貼り紙の件もありますし、一度コリーヌ帝国を調べてみよう思うわけなんですね」
ステラの発言に、驚きを隠せないリューンである。ステラがコリーヌ帝国に向かうという事は、自分とは二度と会えなくなるのではと思ったからだ。
だがしかし、その次の言葉に思わず耳を疑ってしまう。
「そこでです。リューン、あなたも一緒に行くつもりはありませんか?」
なんと、ステラから同行の誘いを受けたのである。
「あれ……。こっちって確か、僕が初めて依頼を受けた時に向かった場所のような……」
リューンが表情を曇らせている。
それもそうだろう。初めて受けた依頼である「スライムの核10個を集める」を達成するために出向いた場所だ。見覚えがありすぎるのである。
困惑しているリューンを気にするような素振りはあるものの、ステラはそのまま黙って歩き続けていた。
「さあ、着きましたよ。ここが目的地です」
「ここは……」
目の前に建つ小屋に驚くリューン。まさか、自分が危険な目に遭った場所の近くに、こんな小屋があるだなんて知らなかったのだ。
「ここが私の住む家です。だからこそ、いち早く異変に気が付いて、リューンを助けられたのですよ」
仮面で表情がよく見えないが、声の感じからするとにこりと微笑んでいるように思えた。
ステラは自分の家にリューンを招き入れる。
よく思えば、ステラが家に誰かを招き入れるのも、リューンが誰かの家を訪ねるのも地味に初めてだったりする。
(ステラさんの家ってこんな感じなのか。中は一体どうなっているんだろうか)
家の中が気になって仕方のないリューンだった。訪ねるのが初めてとはいっても、玄関先までは何度かある。中まで入るのは本当にこれが初めてで、リューンはかなり緊張しているようだった。
「し、失礼します」
緊張のあまりに言葉が少しどもるリューン。
ステラの家の中は、かなりシンプルな感じだ。元王女と聞いていたので、派手かと思っていたらそうでもなかったのである。
「リューン、こっちに来て下さい。入口でいつまでも立ってないで下さい」
「はっ、ご、ごめんなさい」
ステラに言われて机のあるあたりまで入ってくるリューン。
「今飲み物を用意しますので、座って待っていて下さいね」
ステラに言われておとなしく椅子に腰掛けるリューン。どうも落ち着かないようで、しきりに辺りをちらちらと見ている。
そこへ、飲み物を用意したステラが戻ってきた。
「お待たせ致しました。……何か珍しいものでもありましたか?」
リューンの態度がおかしいものだから、ついつい確認してしまうステラである。
「あっ、いえ。人の家の中というのが初めてなものですから、ちょっと落ち着かなかっただけです」
それに対して、正直に答えるリューンである。ステラもつい笑ってしまうくらいだった。
しばらく笑って落ち着いたステラは、仮面を取って椅子に座る。どういうわけか椅子が2脚どころか数脚あるのだが、そこは気にしてはいけない。
「それでは、単刀直入に申しましょうか」
ステラは改まったように切り出した。そのステラの様子に、思わずごくりと息を飲んでしまうリューン。
「実は、ちょっと調べたい事が出てきましてね、しばらくバナルを離れる事にしようと考えています」
「ええ?!」
ステラが切り出した話しに、リューンはものすごい声で驚いていた。
その驚きにすぐ反応したステラは、唇に人差し指を直行するように添えて黙るように促す。街から外れた場所とはいえど、近くを誰かが通りかも知れないので慎重なのだ。
「そ、それはどうしてですか。ステラさん」
落ち着いたリューンがステラに確認している。突然の話に動揺しているせいもあって、リューンはちょっと前のめりになっている。
ステラはそのリューンを落ち着かせて、一度咳払いをするという間を空けてから話し始めた
「先日国境付近に現れたブラックウルフについて考えていたんです。元々あの魔物は丘陵地などの高い場所に生息している魔物なのですね」
そこからはステラによる魔物の生態に関する話がしばらく続いた。さすがに500年は生きているステラによる解説だ。実体験も踏まえているので、実に生々しかった。
「そこで、関連項目として浮かんでくるのが、コリーヌ帝国なのです」
「コリーヌ帝国が……。どうしてですか?」
ようやく話が終わって出てきた単語に、リューンはこてりと首を傾げていた。
すると、ステラは呆れたように絶句していた。
「リューン、先日の組合職員の話を覚えていませんか?」
「いいえ。いろいろあったのでよく覚えていません。ごめんなさい……」
ステラが確認するように尋ねると、リューンはしょぼくれながら答えていた。まぁ、ブラックウルフにステラの秘密など、驚く要素はたくさんあったのだ。なら、その前の話題など吹き飛んでも仕方ないのである。
仕方がないとは思いつつ、ステラは改めてリューンに説明を始める。
「コリーヌ帝国は丘陵地帯を中心として女帝が治める国です。場所が正確には分からないので断定はできませんが、丘陵地帯に生息するブラックウルフとの関連が疑われるんですよ」
「な、なるほど……」
「それで、あの貼り紙の件もありますし、一度コリーヌ帝国を調べてみよう思うわけなんですね」
ステラの発言に、驚きを隠せないリューンである。ステラがコリーヌ帝国に向かうという事は、自分とは二度と会えなくなるのではと思ったからだ。
だがしかし、その次の言葉に思わず耳を疑ってしまう。
「そこでです。リューン、あなたも一緒に行くつもりはありませんか?」
なんと、ステラから同行の誘いを受けたのである。
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