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第42話 丘を登りゆく
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コメルスからタクティクの案内の申し出を受けたものの、ステラたちは先を急ぐためにタクティクを出ていく。その代わり、周辺の詳しい地図を受け取った。
渡された地図は確かに詳細に書かれており、さすが商人だと思わされる。
「この辺りは特に異変はないようだね。コリーヌ帝国の方に近付いてみるかい?」
「はい、元よりそのつもりです。冒険者組合に貼り出されたお尋ね者の件もありますからね。裏で何があったのか調べ上げませんと……」
ベルオムの質問に、ステラはそう答えていた。
その後ろでは、リューンは黙ってついて来ている。どうにも二人の間に割って入れないようだった。その辺りは古くからの師匠と弟子という関係が大きいのだろう。
「ほら、リューンもしっかりついて来て下さい。師匠はあくまでもおまけなんですからね」
「おまけとは酷い言い分だな。まぁ、コメルス殿から受けた依頼では、確かにおまけなんだけどね」
ベルオムは気を悪くするどころか、軽く笑い飛ばしていた。これが長命のエルフの余裕なのだろうか。
「弟子とその弟子がどれだけやれるのか、しっかり見させてもらおうかな」
「ふふん、師匠を唸らせてみせますからね」
ベルオムが笑いながら言うと、ステラにしても珍しく自信たっぷりに言ってのけていたのだった。
「ええ、楽しみにしているよ」
それに対して、ベルオムも柔らかな笑みを向けた。
タクティクからコリーヌ帝国への国境へ向けて移動するステラたち。
途中、国境手前の街ロシェへと立ち寄る。それなりに丘を登ってきたのか、ここら一帯は岩石がごつごつとした地帯となっていた。
「先日遭遇したロックバードは、この辺りを生息地帯にしているんだ。岩場に巣を作るからね、リヴィエール王国みたいな場所では暮らしづらいんだよ」
街に着く手前で、ベルオムはステラたちに説明をしていた。
ロックバードは岩場に住むからロックバードというわけなのである。別にロックバード単体なら狩りで説明がつくのだが、ジャイアントベアと徒党を組んでいたがために異変を疑っているのである。
「なるほど、そういうわけなのですね」
「そう、魔物は縄張り意識が強い。他の種族と敵対する事はあれ、共同戦線を張るという事はまずありえないんだ」
ベルオムがリューンに説明している。その説明を、ふむふむと聞き入るリューンである。
「この辺りはステラにも教えてあるのだがな。教えてもらえなかったのかな?」
そんな事を言いながら、ちらりとステラを見るベルオム。すると、ステラは意味もなく咳払いをしていた。痛いところを突かれたようである。
「べ、別にいいじゃないですか。初心者であるなら、そこまで重要な情報ではないでしょう?」
仮面のせいで見えないが、ジト目を向けていると思われる。
「まぁそうだな。こういう情報は場合によっては先入観となってしまう。戦闘ともなれば常に単種を相手にするとは限らないからね。群れる性質を持つ魔物だと、単種でもいろいろ種類が生まれる事もあるしね」
しかし、すました顔で淡々と説明するベルオムである。さすが宮廷魔術師とだけあって落ち着き払っている。
「とりあえずだ。コリーヌ帝国の辺りまでくれば魔物の強さも跳ね上がってくる。ジャイアントベアのような魔物がごろごろいるから、その前に私がしっかりと稽古をつけてやろう」
「はい、よろしくお願いします」
立ち止まってベルオムにしっかりと頭を下げるリューン。ステラはちょっと面白くない気持ちになったようだ。
「むぅ……。お願いしたとはいえども、なんだかすっきりしませんね」
「はははっ、そういうところはまだまだ子どもだな」
思い切り笑うベルオムである。
あまりにも大声で笑うものだから、ステラはベルオムに顔を近付けていた。
「師匠、いい加減に笑うのはやめて下さい。周りを見て下さいよ。私たちは注目の的ですよ」
ステラが訴えてくるので、ベルオムは周りを見てみる。確かに周りを行き交う人たちが、自分たちに物珍しそうな視線を向けていた。
「これはしょうがないね。さあ、早く街で休もうか」
「はあ、まったく師匠は自由ですね」
ついついため息をついてしまうステラだった。
どうにかこうにかロシェで一泊をしたステラたちは、翌日にはコリーヌ帝国との国境へ向けて出発する。
「そういえば、リューンくんの武器をまだ見せてもらっていませんでしたね。歩きながらでいいので見せてもらっていいですかね」
「あ、はい」
ベルオムに言われて、リューンは武器を魔法鞄から出す。
「ほう、ステラの作った魔法鞄ですか」
「やっぱり師匠にはすぐ分かってしまうんですね」
一発で見抜かれて唸るステラである。
「しかし、この剣……。なるほど、ステラが彼をこの旅に連れて来た理由がよく分かりました」
軽く目を伏せるベルオム。
「ですが、ここからはこの剣は使うのはよした方がよさそうですね。あの貼り紙を出したコリーヌ帝国へと入るのですからね」
「確かにそうですね」
ベルオムの意見に賛成するステラ。そして、ベルオムはどこからともなく剣を取り出した。
「どっから出してきたんですか」
「私は君の師匠だよ?」
笑うベルオムにムッとするステラ。
「ロシェで適当に剣を見繕っておいたんですよ。二人に宿を任せている間にね」
ウィンクをするので思わず吐きたくなるステラである。
こんなでこぼこな感じで、いよいよコリーヌ帝国の国境へとやって来た一行なのである。
ここまでやって来たステラたちは、魔物に起きた異変の原因を突き止める事はできるのだろうか。
渡された地図は確かに詳細に書かれており、さすが商人だと思わされる。
「この辺りは特に異変はないようだね。コリーヌ帝国の方に近付いてみるかい?」
「はい、元よりそのつもりです。冒険者組合に貼り出されたお尋ね者の件もありますからね。裏で何があったのか調べ上げませんと……」
ベルオムの質問に、ステラはそう答えていた。
その後ろでは、リューンは黙ってついて来ている。どうにも二人の間に割って入れないようだった。その辺りは古くからの師匠と弟子という関係が大きいのだろう。
「ほら、リューンもしっかりついて来て下さい。師匠はあくまでもおまけなんですからね」
「おまけとは酷い言い分だな。まぁ、コメルス殿から受けた依頼では、確かにおまけなんだけどね」
ベルオムは気を悪くするどころか、軽く笑い飛ばしていた。これが長命のエルフの余裕なのだろうか。
「弟子とその弟子がどれだけやれるのか、しっかり見させてもらおうかな」
「ふふん、師匠を唸らせてみせますからね」
ベルオムが笑いながら言うと、ステラにしても珍しく自信たっぷりに言ってのけていたのだった。
「ええ、楽しみにしているよ」
それに対して、ベルオムも柔らかな笑みを向けた。
タクティクからコリーヌ帝国への国境へ向けて移動するステラたち。
途中、国境手前の街ロシェへと立ち寄る。それなりに丘を登ってきたのか、ここら一帯は岩石がごつごつとした地帯となっていた。
「先日遭遇したロックバードは、この辺りを生息地帯にしているんだ。岩場に巣を作るからね、リヴィエール王国みたいな場所では暮らしづらいんだよ」
街に着く手前で、ベルオムはステラたちに説明をしていた。
ロックバードは岩場に住むからロックバードというわけなのである。別にロックバード単体なら狩りで説明がつくのだが、ジャイアントベアと徒党を組んでいたがために異変を疑っているのである。
「なるほど、そういうわけなのですね」
「そう、魔物は縄張り意識が強い。他の種族と敵対する事はあれ、共同戦線を張るという事はまずありえないんだ」
ベルオムがリューンに説明している。その説明を、ふむふむと聞き入るリューンである。
「この辺りはステラにも教えてあるのだがな。教えてもらえなかったのかな?」
そんな事を言いながら、ちらりとステラを見るベルオム。すると、ステラは意味もなく咳払いをしていた。痛いところを突かれたようである。
「べ、別にいいじゃないですか。初心者であるなら、そこまで重要な情報ではないでしょう?」
仮面のせいで見えないが、ジト目を向けていると思われる。
「まぁそうだな。こういう情報は場合によっては先入観となってしまう。戦闘ともなれば常に単種を相手にするとは限らないからね。群れる性質を持つ魔物だと、単種でもいろいろ種類が生まれる事もあるしね」
しかし、すました顔で淡々と説明するベルオムである。さすが宮廷魔術師とだけあって落ち着き払っている。
「とりあえずだ。コリーヌ帝国の辺りまでくれば魔物の強さも跳ね上がってくる。ジャイアントベアのような魔物がごろごろいるから、その前に私がしっかりと稽古をつけてやろう」
「はい、よろしくお願いします」
立ち止まってベルオムにしっかりと頭を下げるリューン。ステラはちょっと面白くない気持ちになったようだ。
「むぅ……。お願いしたとはいえども、なんだかすっきりしませんね」
「はははっ、そういうところはまだまだ子どもだな」
思い切り笑うベルオムである。
あまりにも大声で笑うものだから、ステラはベルオムに顔を近付けていた。
「師匠、いい加減に笑うのはやめて下さい。周りを見て下さいよ。私たちは注目の的ですよ」
ステラが訴えてくるので、ベルオムは周りを見てみる。確かに周りを行き交う人たちが、自分たちに物珍しそうな視線を向けていた。
「これはしょうがないね。さあ、早く街で休もうか」
「はあ、まったく師匠は自由ですね」
ついついため息をついてしまうステラだった。
どうにかこうにかロシェで一泊をしたステラたちは、翌日にはコリーヌ帝国との国境へ向けて出発する。
「そういえば、リューンくんの武器をまだ見せてもらっていませんでしたね。歩きながらでいいので見せてもらっていいですかね」
「あ、はい」
ベルオムに言われて、リューンは武器を魔法鞄から出す。
「ほう、ステラの作った魔法鞄ですか」
「やっぱり師匠にはすぐ分かってしまうんですね」
一発で見抜かれて唸るステラである。
「しかし、この剣……。なるほど、ステラが彼をこの旅に連れて来た理由がよく分かりました」
軽く目を伏せるベルオム。
「ですが、ここからはこの剣は使うのはよした方がよさそうですね。あの貼り紙を出したコリーヌ帝国へと入るのですからね」
「確かにそうですね」
ベルオムの意見に賛成するステラ。そして、ベルオムはどこからともなく剣を取り出した。
「どっから出してきたんですか」
「私は君の師匠だよ?」
笑うベルオムにムッとするステラ。
「ロシェで適当に剣を見繕っておいたんですよ。二人に宿を任せている間にね」
ウィンクをするので思わず吐きたくなるステラである。
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