45 / 135
第45話 扉の中へ
しおりを挟む
固く閉ざされた商会長の部屋。この部屋の扉は開けられた形跡が見られない。
となると、この部屋の中には未知なるものが眠っている可能性が強いのだ。
「建物自体は健在だからね。この中はいまだに手付かずの可能性は十分あり得る。何があるか分からないから、十分警戒しよう」
こくりと頷くステラとリューン。
ところが、次の瞬間、ベルオムがとんでもない事を言い出した。
「というわけでステラ、ここを開けてくれるかな?」
「は?」
ステラが困惑交じりの声で反応する。言い出しっぺのベルオムが動かないで振ってきたのだから、そりゃまあそうなるわけだ。
「なんで私なんですか」
「それはそうだろう。ステラは不死の状態にあるのだからね。こういう時の斥候として適役じゃないかな?」
「私は便利屋じゃないですからね?!」
危険な役目を振ってきたベルオムに、ステラは噛みつくように近付いて抗議している。
しかし、ステラはその自覚があるだけに、ため息をつきながら扉に近付いていく。
「まったく、人を罠除け代わりに使うだなんて、人でなしですね。死ぬ前後ってものすごく痛いですし苦しいんですから、その見返りくらいはもらいますからね」
「そのくらいは構わないよ。無茶をさせているんだからね」
言葉を交わし終えたステラは双剣を構える。そして、いざ扉に飛び掛かろうとするのだが、扉に接触する瞬間だった。何か妙な魔法陣が扉に浮かび上がった。
『魔力を認識。ステラリア・エルミタージュの魔力を感知しました』
淡々とした音声が流れ、扉がゆっくりと開き始めた。
「なっ、何なんですか、これは……」
さすがにステラは驚いている。直前にベルオムがべたべたと触っていた時は何も起きなかったからだ。
もちろん、ベルオムとリューンもこれにはたまげていた。
「何をしたんだ、ステラ」
「知りませんよ。近付いただけでこうなっただけです。とりあえず開きましたから、私が先に入って中を確認してきますね」
「あ、ああ……」
「気を付けて下さい、ステラさん」
ベルオムとリューンを残して、ステラは商会長の部屋へと踏み入っていく。
商会長の部屋の中は、特に荒らされた形跡はなかった。天井も壁も床も、そして、部屋の中の家具や本の類も、まったく傷んでいる形跡はなかった。まるで時が止まってしまったかのようである。
ひと通り確認したステラは、ベルオムとリューンを部屋の中に呼ぶ。
部屋に入った二人も、ステラ同様に驚くしかなかった。
「これは……、まさか500年前のままだというのか?」
長生きのエルフでも信じられない状況なのである。
「こんな保存を利かせられるだけの魔法があるとは……。エルミタージュ王国というのは相当な魔法技術を有していたのだな」
ベルオムが感心していたその時だった。
「あっ、扉が!」
リューンが叫ぶので確認すると、商会長の部屋の扉が急に閉まり始める。
「くっ、このままでは閉じ込められてしまう」
ベルオムが急ぐが、何かの力によって部屋の中に弾き返されてしまった。
そして、あえなく三人は部屋に閉じ込められてしまったのである。
「……どうやら進むしかないようですね」
「だが、進むといってもどうやってだ。見たところ普通の部屋でしかないぞ」
「言ったじゃないですか、この部屋には秘密の部屋があると」
困った顔をするベルオムに、ステラは仮面を外した上でにやりと笑っていた。
ここは外から誰も入ってこれないために、ステラは仮面を外したのである。
「そこでです。今からその部屋へ向かう方法を思い出しますので、師匠たちは部屋の中を自由に見て頂いて構いませんよ。失われたエルミタージュの技術の本などもありますからね」
ステラは仮面を魔法鞄にしまい込むと、ベルオムたちに提案をした上で部屋の中を探り始めた。
「ああ、そうさせてもらおう。私がエルミタージュ大陸にやって来たそもそもの理由だからね。さっ、リューンくんも手伝ってくれ」
「は、はい」
ステラが思い出すまでの間、ベルオムは目を輝かせながら、リューンを巻き込んで本棚を手当たり次第に調べ始めた。これがエルフというものなのだろうか。
ベルオムが自由に動く中、ステラは両腕を組みながら部屋の中をうろついている。もちろん、ベルオムたちの動きを気を付けながらだ。
必死に思い出そうとはしているものの、なにせ500年以上も昔の話だ。不死になって何度も死んでは蘇りを繰り返してきたショックのせいで、もうその頃の記憶も曖昧なのである。
ヌフ遺跡の中心たる建物が魔道具を扱う商会の建物だと思い出せたのは、まず奇跡だと言ってもいいくらいである。
(うーん、どうでしたかね。お父様と一緒に、商会長様が部屋で何かをしていたのは間違いないのですが……。さすがに年月が経ちすぎてしまいましたね。ここに入れた理由も分かりませんし)
ステラが壁際でうろちょろとしていると、ふと見た壁に違和感を覚えた。
(これは?)
思わず壁に手を伸ばしてしまうステラ。
その手が壁に触れようかとしたその時だった。
『ステラリア・エルミタージュの魔力を感知。ウティ・マシーヌの遺言を実行致します』
扉の時にも聞こえた妙な声が、部屋の中に響いたのだった。
となると、この部屋の中には未知なるものが眠っている可能性が強いのだ。
「建物自体は健在だからね。この中はいまだに手付かずの可能性は十分あり得る。何があるか分からないから、十分警戒しよう」
こくりと頷くステラとリューン。
ところが、次の瞬間、ベルオムがとんでもない事を言い出した。
「というわけでステラ、ここを開けてくれるかな?」
「は?」
ステラが困惑交じりの声で反応する。言い出しっぺのベルオムが動かないで振ってきたのだから、そりゃまあそうなるわけだ。
「なんで私なんですか」
「それはそうだろう。ステラは不死の状態にあるのだからね。こういう時の斥候として適役じゃないかな?」
「私は便利屋じゃないですからね?!」
危険な役目を振ってきたベルオムに、ステラは噛みつくように近付いて抗議している。
しかし、ステラはその自覚があるだけに、ため息をつきながら扉に近付いていく。
「まったく、人を罠除け代わりに使うだなんて、人でなしですね。死ぬ前後ってものすごく痛いですし苦しいんですから、その見返りくらいはもらいますからね」
「そのくらいは構わないよ。無茶をさせているんだからね」
言葉を交わし終えたステラは双剣を構える。そして、いざ扉に飛び掛かろうとするのだが、扉に接触する瞬間だった。何か妙な魔法陣が扉に浮かび上がった。
『魔力を認識。ステラリア・エルミタージュの魔力を感知しました』
淡々とした音声が流れ、扉がゆっくりと開き始めた。
「なっ、何なんですか、これは……」
さすがにステラは驚いている。直前にベルオムがべたべたと触っていた時は何も起きなかったからだ。
もちろん、ベルオムとリューンもこれにはたまげていた。
「何をしたんだ、ステラ」
「知りませんよ。近付いただけでこうなっただけです。とりあえず開きましたから、私が先に入って中を確認してきますね」
「あ、ああ……」
「気を付けて下さい、ステラさん」
ベルオムとリューンを残して、ステラは商会長の部屋へと踏み入っていく。
商会長の部屋の中は、特に荒らされた形跡はなかった。天井も壁も床も、そして、部屋の中の家具や本の類も、まったく傷んでいる形跡はなかった。まるで時が止まってしまったかのようである。
ひと通り確認したステラは、ベルオムとリューンを部屋の中に呼ぶ。
部屋に入った二人も、ステラ同様に驚くしかなかった。
「これは……、まさか500年前のままだというのか?」
長生きのエルフでも信じられない状況なのである。
「こんな保存を利かせられるだけの魔法があるとは……。エルミタージュ王国というのは相当な魔法技術を有していたのだな」
ベルオムが感心していたその時だった。
「あっ、扉が!」
リューンが叫ぶので確認すると、商会長の部屋の扉が急に閉まり始める。
「くっ、このままでは閉じ込められてしまう」
ベルオムが急ぐが、何かの力によって部屋の中に弾き返されてしまった。
そして、あえなく三人は部屋に閉じ込められてしまったのである。
「……どうやら進むしかないようですね」
「だが、進むといってもどうやってだ。見たところ普通の部屋でしかないぞ」
「言ったじゃないですか、この部屋には秘密の部屋があると」
困った顔をするベルオムに、ステラは仮面を外した上でにやりと笑っていた。
ここは外から誰も入ってこれないために、ステラは仮面を外したのである。
「そこでです。今からその部屋へ向かう方法を思い出しますので、師匠たちは部屋の中を自由に見て頂いて構いませんよ。失われたエルミタージュの技術の本などもありますからね」
ステラは仮面を魔法鞄にしまい込むと、ベルオムたちに提案をした上で部屋の中を探り始めた。
「ああ、そうさせてもらおう。私がエルミタージュ大陸にやって来たそもそもの理由だからね。さっ、リューンくんも手伝ってくれ」
「は、はい」
ステラが思い出すまでの間、ベルオムは目を輝かせながら、リューンを巻き込んで本棚を手当たり次第に調べ始めた。これがエルフというものなのだろうか。
ベルオムが自由に動く中、ステラは両腕を組みながら部屋の中をうろついている。もちろん、ベルオムたちの動きを気を付けながらだ。
必死に思い出そうとはしているものの、なにせ500年以上も昔の話だ。不死になって何度も死んでは蘇りを繰り返してきたショックのせいで、もうその頃の記憶も曖昧なのである。
ヌフ遺跡の中心たる建物が魔道具を扱う商会の建物だと思い出せたのは、まず奇跡だと言ってもいいくらいである。
(うーん、どうでしたかね。お父様と一緒に、商会長様が部屋で何かをしていたのは間違いないのですが……。さすがに年月が経ちすぎてしまいましたね。ここに入れた理由も分かりませんし)
ステラが壁際でうろちょろとしていると、ふと見た壁に違和感を覚えた。
(これは?)
思わず壁に手を伸ばしてしまうステラ。
その手が壁に触れようかとしたその時だった。
『ステラリア・エルミタージュの魔力を感知。ウティ・マシーヌの遺言を実行致します』
扉の時にも聞こえた妙な声が、部屋の中に響いたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから
渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。
朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。
「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」
「いや、理不尽!」
初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。
「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」
※※※
専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり)
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
王家を追放された落ちこぼれ聖女は、小さな村で鍛冶屋の妻候補になります
cotonoha garden
恋愛
「聖女失格です。王家にも国にも、あなたはもう必要ありません」——そう告げられた日、リーネは王女でいることさえ許されなくなりました。
聖女としても王女としても半人前。婚約者の王太子には冷たく切り捨てられ、居場所を失った彼女がたどり着いたのは、森と鉄の匂いが混ざる辺境の小さな村。
そこで出会ったのは、無骨で無口なくせに、さりげなく怪我の手当てをしてくれる鍛冶屋ユリウス。
村の事情から「書類上の仮妻」として迎えられたリーネは、鍛冶場の雑用や村人の看病をこなしながら、少しずつ「誰かに必要とされる感覚」を取り戻していきます。
かつては「落ちこぼれ聖女」とさげすまれた力が、今度は村の子どもたちの笑顔を守るために使われる。
そんな新しい日々の中で、ぶっきらぼうな鍛冶屋の優しさや、村人たちのさりげない気遣いが、冷え切っていたリーネの心をゆっくりと溶かしていきます。
やがて、国難を前に王都から使者が訪れ、「再び聖女として戻ってこい」と告げられたとき——
リーネが選ぶのは、きらびやかな王宮か、それとも鉄音の響く小さな家か。
理不尽な追放と婚約破棄から始まる物語は、
「大切にされなかった記憶」を持つ読者に寄り添いながら、
自分で選び取った居場所と、静かであたたかな愛へとたどり着く物語です。
老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜
二階堂吉乃
ファンタジー
瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。
白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。
後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。
人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。
地味令嬢を見下した元婚約者へ──あなたの国、今日滅びますわよ
タマ マコト
ファンタジー
王都の片隅にある古びた礼拝堂で、静かに祈りと針仕事を続ける地味な令嬢イザベラ・レーン。
灰色の瞳、色褪せたドレス、目立たない声――誰もが彼女を“無害な聖女気取り”と笑った。
だが彼女の指先は、ただ布を縫っていたのではない。祈りの糸に、前世の記憶と古代詠唱を縫い込んでいた。
ある夜、王都の大広間で開かれた舞踏会。
婚約者アルトゥールは、人々の前で冷たく告げる――「君には何の価値もない」。
嘲笑の中で、イザベラはただ微笑んでいた。
その瞳の奥で、何かが静かに目覚めたことを、誰も気づかないまま。
翌朝、追放の命が下る。
砂埃舞う道を進みながら、彼女は古びた巻物の一節を指でなぞる。
――“真実を映す者、偽りを滅ぼす”
彼女は祈る。けれど、その祈りはもう神へのものではなかった。
地味令嬢と呼ばれた女が、国そのものに裁きを下す最初の一歩を踏み出す。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを
青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ
学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。
お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。
お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。
レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。
でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。
お相手は隣国の王女アレキサンドラ。
アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。
バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。
バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。
せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる