不死の少女は王女様

未羊

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第50話 トカゲに導かれて

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「ゲゲゲゲ!」

 ステラたちにトカゲが襲い掛かってくる。
 普通のサイズではない、はっきり言ってかなりのでかさを誇るトカゲたちだった。
 近くで見れば見るほどかなり大きく、その迫力と気持ち悪さはリューンを震え上がらせていた。

「ふむ、見た感じ特に能力もない、ただでかいだけのトカゲか。私たちの敵ではないな」

 どこからともなく双剣を取り出すベルオムである。

「リューンはどうしますか?」

 双剣を構えたステラである。

「ぼ、僕だって!」

 せっかく剣を構えたのだからと、リューンは表情を引き締めていた。その姿に、ステラはにこりと笑っていた。

「リューンはまだ未熟ですから、無茶はしないで下さいね。さあ、行きますよ、師匠」

 リューンを気に掛けつつ、ベルオムと一緒にトカゲに斬りかかるステラ。
 しかし、このトカゲたちは明らかに動きがおかしかった。巨体でありながらも動きが素早いのだ。
 そんなトカゲが相手でも、ベルオムはしっかりと捌いている。魔術師の肩書を持つとはいえ、ベルオムは接近戦も十分こなせるだけの技量があるのだ。ステラに師匠と呼ばれるだけあって、その剣捌きは目を見張るものがあった。
 しっぽや舌など、多彩な攻めを見せるトカゲの攻撃を、華麗な剣捌きで簡単にいなすベルオム。その姿にはリューンは感動するばかりである。

「リューン、ぼーっとしてはダメですよ。そちらにも1体いきました」

「は、はいっ」

 ステラの指摘に剣を構え直すリューン。

「これまでの訓練をちゃんとこなせれば、この程度の相手などに負ける事はありません。今までの特訓の成果を見せてあげるのですよ」

「はい、ステラさん!」

 元気よく返事をしたリューンは、突撃してくるトカゲに斬りかかる。さすがに幼いだけあってか、攻撃は隙だらけだ。
 普通なら躱されて反撃されるだけなので、ステラがすぐさまフォローに入ろうと動く。
 ところが、ここで予想外な事が起きた。

「えっ?!」

 トカゲはリューンの攻撃を躱した。
 ここまでは予想通りだったのだが、尻尾でリューンを捕まえると、そのまま背中に乗せて走り出したのだった。
 一体どういう事なのか、ステラもベルオムも理解不能だった。

「お、追いかけますよ」

「ああ。とりあえずこいつらは片付けよう。トレインになったら迷惑だ」

「ですね」

 慌てるステラとベルオムは、相手をしていたトカゲをさっさと片付けると、リューンを連れ去ったトカゲを追いかけたのだった。
 その時、元々トカゲと戦っていた冒険者たちは、ステラたちの異変にはまったく気が付いていなかったのだった。そもそも、トカゲの一部がそっちに動いた事さえも。

 さて、トカゲにさらわれたリューンは、遺跡の中を移動している。それにしても、そんなに急いでどこまで行くというのだろうか。

「うわああ、怖いよぅ!」

 必死にしがみついているものの、その速さにびびりちらしているリューンである。
 どのくらい走ったのだろうか、ようやくトカゲはその動きを止めたのだった。

「こ、ここは……?」

「ゲゲッ、ゲゲゲ、ゲゲ」

 左右をきょろきょろと見回すリューンに対して、トカゲは目の前にあるものへと視線を誘導する。
 そこでリューンが見たものは、なんだか見覚えのある紋章だった。

「はあはあ、追いつきましたよ……」

 ステラとベルオムがようやくリューンに追いついた。無駄な動きをしていてくれたおかげか、思ったよりすぐに追いつけたようだ。
 しかし、トカゲは二人に対して攻撃的だ。
 警戒するステラだったものの、リューンがその時見ていたものに気が付く。

(まさか、あれは……)

 何かに気が付いたステラは、剣を収めている。

「お、おい。何をしているんだ」

 ベルオムの声に反応せず、ステラは魔法鞄からもう一対の双剣を取り出した。
 その双剣に、トカゲが反応する。

「ゲゲ、ゲゲゲ、ゲ」

 すると、ステラを舌で捕らえてリューンの隣へと移動させたのだった。

「うう、ベタベタしますね……」

 まったく予想外の移動方法だった。
 唾液でねっとりしていて、ステラは本気で気持ち悪がっている。あまりに気持ち悪いので、洗浄魔法をかけてきれいにするステラである。

「一体どうしたというんだ」

 ベルオムが近付こうとするが、

「ゲゲ!」

 べしんとしっぽが飛んできて後退せざるを得なかった。

「ステラとリューンの二人だけに用というわけか。仕方がない、私はここで待たせてもらおう」

「ゲ」

 ベルオムがその場で座り込むと、トカゲは警戒を解いてその場に腰を下ろしていた。

「ゲゲゲ、ゲ、ゲ」

 その姿勢から、器用に舌で紋章を指し示すトカゲ。

「様子から察するに、二人が持っている武器の紋章を合わせろという事だろう」

 ベルオムが叫ぶと、トカゲはこくりと頷いた。驚いた事に、言葉を理解しているようだった。

「私はここで待っているから、二人は先に進みなさい。その代わり、何があったのかはぜひとも教えてほしいものだな」

「ゲゲ」

 ベルオムが座って見送っていると、トカゲもまた二人を見送っている。
 ステラとリューンはわけが分からないが、ベルオムの言う通りに紋章へと双剣と剣を向ける。
 その瞬間、辺りが眩く光り輝いたのだった。一体何が起きたというのだろうか。
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