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第77話 へーんしん
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「ステラ様、目を覚まされましたか」
目を開いたステラの前には、ちょっと変わったメイド服を着た女性が立っていた。メイドというにはスカートが短く膝上までしかなかった。
「う……ん……。あれ、私、寝ちゃってましたか」
「はい、よくお休みになられていましたよ。何度か揺さぶらせて頂きましたが、まったく起きる気配がございませんでした」
メイドが少々不機嫌気味に話をしている。
そして、落ち着いたところでステラに対して挨拶を始める。
「私、ステラ様のお世話を仰せつかりましたメスティと申します。早速ですが、湯浴みの準備ができております。いかがなさいますか?」
メスティと名乗ったメイドから言われて、ステラはちょっと悩んでいる。
髪を触ってみると、ちょっとべったりしている感じがしたので、湯浴みに向かうことにしたのだった。
「うっわぁ……」
湯浴み用の部屋でステラは大口を開けて息を飲んでいた。
「こんな広い部屋、ものすごく久しぶりですね」
自分がステラリア・エルミタージュであることは伏せているので、ぼかしたように感想を口にするステラである。
なぜステラが伏せたかというと、メスティのさっきの自己紹介の時の言葉があったからだ。
その時メスティは、「ステラリア」ではなく「ステラ」と呼んだ。つまり、ステラがステラリア・エルミタージュであることは伝わっていないというわけだ。
アンペラトリスが気を遣ってくれたのかは分からないが、ひとまず安心するステラである。
とはいえ、アンペラトリスを信じるかどうかというのは別問題だ。彼女の掲げるエルミタージュ大陸統一後の展望というのが見えてこないというのもある。
しかし、それは自分にも言えることだった。エルミタージュ王国の再興を託されたとはいえ、再興した後の事はまったく考えていないからだ。
いろいろと考えることはあるものの、ひとまず今はメスティたちメイドたちの付き添いのもとで湯浴みをしている真っ最中だ。余計なことはひとまず置いておいて、リラックスするステラである。
「はい? これを着ろと仰るのですか?」
湯浴みが終わった後、ステラを待ち構えていたのは着替えである。
用意されていたのはドレスばかりである。
長らく冒険者生活を送っていたステラからすれば、もはや着ることのないと思っていた代物だった。
「はい、皇帝陛下から必ずお召しさせるようにと仰せつかっております。それでは失礼致します」
ステラの質問に答えると、間髪入れずにメイドたちが動き始める。
まだ幼いということでコルセットこそ回避できたものの、メイドたちからいいようにされるステラである。
服を着せられ、髪を整えられ、化粧までされてしまう。特に化粧なんてものは、まだエルミタージュ王国の王女だった頃にも経験した事のないもので、実に初体験である。
あれよあれよという間に、ステラはメイドたちによって飾り立てられてしまった。
「これが……私?」
姿見の前に立たされたステラは、映り込む自分の姿に驚いていた。
ちなみにドレスの色は変装のために変えた髪色に合わせられていた。
(むう……、予想以上にセンスがいい……)
自分の姿に感動した直後に、服装選びのセンスに嫉妬するステラである。
今着ているドレスは、エルミタージュ王家の時にも着た事のないタイプだ。あまり肌を露出させないタイプばかりだっただけに、こうやって肩が露わになっているドレスは何気に初めてだったりする。
ステラの名前に合わせてか、藍色のグラデーションがかかったような色合いに星をちりばめたような装飾が施されたドレス。このセンスに嫉妬しないわけがないのである。
普段は面倒でツインテールにしている髪型も、持ち上げてシニヨンにした上で、余らせた髪を三つ編みにしてシニヨンに巻き付けるという手間のかかりようである。
「素敵ですよ、ステラ様。ああ、まるで皇女様のようですわ」
メスティがステラを見ながらうっとりとしている。
皇女と呼んだのは、ここが帝国だからだ。つまり、そのくらいに高貴な人物に見えるという感想なのである。
これにはさすがにステラもどきっとしてしまう。エルミタージュの王女だとバレたのではないかと、内心ひやひやなのだ。
服を着替えた余韻に浸っていると、部屋の扉が叩かれて声が聞こえてくる。
「ステラ様、準備は整いましたでしょうか。皇帝陛下がお待ちになっておりますので、そろそろお向かい下さいませ」
どうやら、アンペラトリスが待っているらしい。
この呼び出しを受けて、メスティが慌てている。どうやらゆっくりし過ぎたようだった。
「ああ、なんて事なのでしょうか。皇帝陛下のこと忘れていたなんて知れたら、首が、物理的に飛びかねません!」
まったく物騒な事を言って慌てている。でも、機嫌を損ねた使用人に対する処罰としてはありえなくない話だった。
「メスティさん。落ち着いて下さい。慌てるくらいなら、堂々と向かいましょう、ね?」
「ステラ様……」
ステラが声を掛けると、メスティは感動したように動きを止めていた。
「はい、ありがとうございます。では、とっとと向かいましょう」
そして、ちゃっかり開き直る。この変わり身の早さには、ステラも苦笑いをするばかりである。
メスティが先導する中、アンペラトリスが待つという部屋に向かうステラ。向かった先では何が待ち受けているのだろうか。ステラは十分に警戒を行うのだった。
目を開いたステラの前には、ちょっと変わったメイド服を着た女性が立っていた。メイドというにはスカートが短く膝上までしかなかった。
「う……ん……。あれ、私、寝ちゃってましたか」
「はい、よくお休みになられていましたよ。何度か揺さぶらせて頂きましたが、まったく起きる気配がございませんでした」
メイドが少々不機嫌気味に話をしている。
そして、落ち着いたところでステラに対して挨拶を始める。
「私、ステラ様のお世話を仰せつかりましたメスティと申します。早速ですが、湯浴みの準備ができております。いかがなさいますか?」
メスティと名乗ったメイドから言われて、ステラはちょっと悩んでいる。
髪を触ってみると、ちょっとべったりしている感じがしたので、湯浴みに向かうことにしたのだった。
「うっわぁ……」
湯浴み用の部屋でステラは大口を開けて息を飲んでいた。
「こんな広い部屋、ものすごく久しぶりですね」
自分がステラリア・エルミタージュであることは伏せているので、ぼかしたように感想を口にするステラである。
なぜステラが伏せたかというと、メスティのさっきの自己紹介の時の言葉があったからだ。
その時メスティは、「ステラリア」ではなく「ステラ」と呼んだ。つまり、ステラがステラリア・エルミタージュであることは伝わっていないというわけだ。
アンペラトリスが気を遣ってくれたのかは分からないが、ひとまず安心するステラである。
とはいえ、アンペラトリスを信じるかどうかというのは別問題だ。彼女の掲げるエルミタージュ大陸統一後の展望というのが見えてこないというのもある。
しかし、それは自分にも言えることだった。エルミタージュ王国の再興を託されたとはいえ、再興した後の事はまったく考えていないからだ。
いろいろと考えることはあるものの、ひとまず今はメスティたちメイドたちの付き添いのもとで湯浴みをしている真っ最中だ。余計なことはひとまず置いておいて、リラックスするステラである。
「はい? これを着ろと仰るのですか?」
湯浴みが終わった後、ステラを待ち構えていたのは着替えである。
用意されていたのはドレスばかりである。
長らく冒険者生活を送っていたステラからすれば、もはや着ることのないと思っていた代物だった。
「はい、皇帝陛下から必ずお召しさせるようにと仰せつかっております。それでは失礼致します」
ステラの質問に答えると、間髪入れずにメイドたちが動き始める。
まだ幼いということでコルセットこそ回避できたものの、メイドたちからいいようにされるステラである。
服を着せられ、髪を整えられ、化粧までされてしまう。特に化粧なんてものは、まだエルミタージュ王国の王女だった頃にも経験した事のないもので、実に初体験である。
あれよあれよという間に、ステラはメイドたちによって飾り立てられてしまった。
「これが……私?」
姿見の前に立たされたステラは、映り込む自分の姿に驚いていた。
ちなみにドレスの色は変装のために変えた髪色に合わせられていた。
(むう……、予想以上にセンスがいい……)
自分の姿に感動した直後に、服装選びのセンスに嫉妬するステラである。
今着ているドレスは、エルミタージュ王家の時にも着た事のないタイプだ。あまり肌を露出させないタイプばかりだっただけに、こうやって肩が露わになっているドレスは何気に初めてだったりする。
ステラの名前に合わせてか、藍色のグラデーションがかかったような色合いに星をちりばめたような装飾が施されたドレス。このセンスに嫉妬しないわけがないのである。
普段は面倒でツインテールにしている髪型も、持ち上げてシニヨンにした上で、余らせた髪を三つ編みにしてシニヨンに巻き付けるという手間のかかりようである。
「素敵ですよ、ステラ様。ああ、まるで皇女様のようですわ」
メスティがステラを見ながらうっとりとしている。
皇女と呼んだのは、ここが帝国だからだ。つまり、そのくらいに高貴な人物に見えるという感想なのである。
これにはさすがにステラもどきっとしてしまう。エルミタージュの王女だとバレたのではないかと、内心ひやひやなのだ。
服を着替えた余韻に浸っていると、部屋の扉が叩かれて声が聞こえてくる。
「ステラ様、準備は整いましたでしょうか。皇帝陛下がお待ちになっておりますので、そろそろお向かい下さいませ」
どうやら、アンペラトリスが待っているらしい。
この呼び出しを受けて、メスティが慌てている。どうやらゆっくりし過ぎたようだった。
「ああ、なんて事なのでしょうか。皇帝陛下のこと忘れていたなんて知れたら、首が、物理的に飛びかねません!」
まったく物騒な事を言って慌てている。でも、機嫌を損ねた使用人に対する処罰としてはありえなくない話だった。
「メスティさん。落ち着いて下さい。慌てるくらいなら、堂々と向かいましょう、ね?」
「ステラ様……」
ステラが声を掛けると、メスティは感動したように動きを止めていた。
「はい、ありがとうございます。では、とっとと向かいましょう」
そして、ちゃっかり開き直る。この変わり身の早さには、ステラも苦笑いをするばかりである。
メスティが先導する中、アンペラトリスが待つという部屋に向かうステラ。向かった先では何が待ち受けているのだろうか。ステラは十分に警戒を行うのだった。
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